耳の奥より己の声や四月馬鹿
はるかに昔のことになるが、小学生のときにテープレコーダーに吹き込まれた自分の声を初めて聴いたときに、それが自分の声であるとは信じられなかった。機械のほうの調子がおかしいのではないかと思って、友達にきいてみると「いや、そっくりだよ」と笑って言う。そうか、自分の声は他人にはこんなふうに聞こえているのか。/それは自分が考えていたものと比べると全体に低い声で、すこし鼻にかかったような声だった。特徴がある声音でもあって、これでは顔姿が見えなくとも誰が話しているのか、すぐにわかってしまうなとも思った。悪い事はできない。
春雷の三三七拍子には足らず
三三七拍子は文字通りに、○○○ ○○○ ○○○ ○○○○○○○ 合計計13拍のことだとか。テンポも速く、主に応援団の手拍子として用いられる。それに対し、一本締めの手締めは ○○○ ○○○ ○○○ ○○○ ○ で合計10拍、三本締めは一本締めを3回繰り返すこと。俗に関東一本締めと呼ばれるものは、ヨォー ○ だという一本締めは宴会等での中締めとして用いられることが多く、三本締めは完全にお開きの場合に用いられる(他の説もあり)。なるほどね。/最近は簡素化のためなのかどうか、上記のうちの ヨォー ○ という”一本締め”が多くなったような気はする。私的にはこれくらいか、せいぜい本来の一本締めくらいがいいかな。本格的な三本締めなんかやられた日にはうっとうしくてたまらんし、なんだかしらけてしまいそうだ。
ラテン語の苗札の直立不動かな
昔はサボテンマニアで、多い時は300種類ほどのサボテンを自製のフレームで育てていた。さらに昔の中学・高校生の頃だと、親からもらう小遣いでたまに通販で入手するくらいなので、当然高価なもの珍奇なものは買えるわけもなく、数百円程度の小さなサイズのものだけだった。値段の安いものは要するに戦前くらいから日本に導入されていて、栽培・繁殖も比較的容易だからである。それらにはみな日本独自の名前=和名がつけられていたが、輸入業者等によるまったくの恣意的なものか、ラテン語の学名の発音のもじりがほとんどである。/それはそうで、ラテン語で表記された学名そのままでは、ごく一部の人をのぞいてそもそもなんと読むのかすらわからないし、意味も不明だし、なかなか覚えらない。英語もおぼつかないのに、ラテン語なんぞはとんでもない!というのはよくわかる。/しかし、そのおかげで特徴を的確にとらえかつ情趣のある名付けがいろいろ成されたことも事実だ。兜丸、般若、鳳凰玉、鯱頭、金鯱、花王丸、鶴巣丸、天晃、紅鷹、光琳玉、海王丸、守殿玉、鳥羽玉、望月、白星、月宮殿、振武玉、花籠、菊水、宝山、月影丸、入鹿、などなど、枚挙にいとまがないほど。しかし野生種のサボテンだけで5000種以上ともいわれるすべてに和名を付けるのはさすがに無理があり、ここ数十年くらいの比較的新しく発見された種類については学名のままに流通することが普通になった。これだと学名と和名との混乱という事態は避けられるものの、やはり名前を覚えられないなあ。
(※ 山形と秋田の県境に位置する三崎海岸。写真は、そのすぐ南側にある湾で、日本海の波に洗われた丸石が一面にごろごろしている。一つの湾の中でもその位置により岩の丸みの程度や大きさが顕著に異なり、たいへん面白い。)