日別アーカイブ: 2016年4月23日

コーヒーブレーク 77 「一万八千」

 

DSCN7237_2

 

青き山々一万八千春曙

国土地理院発行の1/25000地形図に載っている山名、および旧の1/50000地形図には載っていたものも合わせて約18000あるという。言うまでもなくこれでも日本全国にある山の名前の一部分でしかなく、実数ははるかに多いであろう。/よく紀行文や小説などで「名も無い山々が〜」などと表現されることがあるが、馬鹿を言ってはいけない。よそ者がある土地に来て簡単に眺めることができるような、比較的人里に近くそれと指呼できるような山が、無名であるなどということはありえない。むしろ驚くほど細かく名前がつけられていることがしばしばである。/山名よりもさらに細かく名前がつけられているのが河川で、古い絵図などを見ると山中のごく小さな沢にまでことごとく名前が付されていることに、ほんとうにあっけにとられる思いをすることがある。/名付けとはつまり他との弁別であり、ある山や川が他の山や川と違うものであると明確に区別する必要に迫られて行われるものであるだろう。山菜や鳥・獣・魚などの採取・捕獲の目印として、あるいは領地や村の境界線として、日常世界と非日常世界の切れ目として。

鷲の巣や暗き谷間の喉開く

鷲や鷹などの猛禽類はどうして断崖絶壁に巣を作るのであろうか。その岩壁も垂直よりもさらにいくらか逆勾配(オーバーハング)になっていて多少の小雨なら避けられるとか、近くに松などが生えていて適度に日射や風をさえぎるといった条件があれば最高である。むろんそれは卵や幼鳥が蛇や獣などから襲われないようにという理由がいちばんにあると思うが、それならば鷲や鷹などでなくとも他の鳥類にしても同じ理由で、切り立った崖に営巣してもよさそうなものだが、あまりそういう例はないように思う。/その地の崖の一等地は先に猛禽類が占めてしまっている事情があるかもしれず、また逆にそういう場所に巣を構えていたら、鷲や鷹などのかっこうの餌食になってしまいそうではある。むしろ細かい枝葉の入り組んだ樹木の一隅などのほうが目隠しにもなり、大型の鳥にとっては枝葉が障害物になるということだろうか。いやいや営巣の場所もなにも、とにかく「数で勝負」という生存戦略で大分の犠牲は織り込み済みであって、容易に得られる営巣地でとにかくたくさんの個体がたくさんの仔をなしていけば、たとえ敵に襲われてもある程度は生き残るにちがいないということか。

満開なれば闇を抱きて花篝

これまで何度か書いたような気がするが、私はとりたてては桜の花を好まない。ソメイヨシノはともかくとしても、山桜の仲間などの花はきれいだなと思うものの、それは同じ頃に咲くたくさんの草木の花と基本的には同列である。桜だけが特別という感覚も思考も私にはない。したがって人為的に植栽された桜並木などのライトアップや篝火を焚いての観桜会なども、ちっとも興味がない。むしろその特別視や過剰な演出に辟易しているというのが正直なところ。