月別アーカイブ: 4月 2016

今井アートギャラリー

 

月山の麓の鶴岡市羽黒町にある「羽黒・芸術の森 今井アートギャラリー」にこの前の日曜日に行ってきました。田畠が広がる風景の中の、広い屋敷にある江戸中期の土蔵作りという大きくてすばらしく立派な建物にまず驚きました。かつての鶴岡の豪商の蔵だったものを移築したものだそうです。シチュエーションは抜群です。

前身の「今井繁三郎美術収蔵館」は洋画家- 今井繁三郎(1910~2002)の作品収蔵を主体にしていたものですが、今後は氏の絵の常設展示以外に若手芸術家の作品発表や創作の場も提供していくということで、リニューアルして4月23日にオープンしたばかり。私は息子やその友だち(小5)を連れていったのですが、けっこうおもしろがっていました。今井氏が集めた世界各地の民俗的小物もたくさん陳列されていましたしね。

1階の貸しギャラリーには新規開館に合わせて写真や絵画・染色に取り組んでいる4名の方が作品展示をされていました。なかなかのものです。しかしなんといっても今井繁三郎の大きな絵は圧巻。私は名前は知っていましたし印刷物などで作品をみたことはあったように思うのですが、実物を間近かに見ると圧倒されるような思いがしました。具象と抽象とが複雑に絡み合っているような絵です。

入場料は維持管理協力金として大人500円、中学生以上300円。開館は4月中旬〜11月末の土・日・祝日、10〜16時。電話&FAX 0235−62−3667(開館時のみ) 住所は山形県鶴岡市羽黒町仙道字一本松5−175

なお、室内は撮影不可でしたので、駐車場からの建物概観のみの写真です。よく「撮影禁止」の掲示があるにもかかわらずスマートフォンなどで写真を撮っている方がどの美術館でもいますが、他のお客の邪魔になるばかりか、撮影に気をとられて作品にぶつかってしまうなどの恐れもあるので、厳に慎むべきですね。

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シテ句会 2016.4.20

 

これまでは奇数月ごとに開催してきたシテ句会ですが、今月から毎月行うことになりました。毎月第三水曜日の18:30〜21:00、酒田市駅前にほど近い「アングラーズ・カフェ」というお店をその時間は借りきって句会を行います。『シテ』は現代詩や俳句や短歌等の短詩形文学の作品発表と批評を目的とする同人誌ですが、こちらも年3回発行だったものを6月以降は3ヶ月毎の年4回発行=季刊となります。現在9号まで発行しています。

今回の参加者は相蘇清太郎・伊藤志郎・今井富世・大江進・大場昭子・齋藤豊司・南悠一と、見学の方が二人の、合わせて9名でした。事前に無記名で2句投句し、句会当日は清記された句群=其の一&其の二の中からおのおの2句ずつ選びます。その句を取った人、また取らなかった人がそれぞれ披講を行い、そのあとで初めて作者が明かされます。もちろん作者のその句に対する思いや作句の意図なども話すことになります。このような句会の進め方はおおむねどこの句会でもほぼ同じで、先入観を排し忌憚のない批評を述べてもらうための古来からの工夫です。

以下の記述は句会の主宰をつとめる私(大江進)からみての講評です。ときどき遠慮会釈のない辛口批評を含むことがありますが、どうかご容赦ください。異論や反論はとうぜんあるかと思いますが、コメントをいただければうれしいです。賛同であれ大反対であれ、反応があることはたいへんありがたいことと受け止めています。よろしくお願いします。では其の一から。

2 水仙月の夜会のはじまりぬ
1 春の霜いのつちかの間燦ざめく
5 だめですと言えないままに春の雨
1 寂しさもこれくらいなら春よ来い
4 遠近に舫い往き来て春暮れん
1 花地蔵こちょこちょをして帰りたし
4 ひび割れて吉祥模様や春の泥

最高点は5点句の<だめですと〜>です。私も取ったことは取ったのですが、あまりにも漠然としすぎており、どうかなという感じはしました。春の雨なので、おだやかでけぶるような、静かでほの暖かい雨という意味合いをもともと含んでいるわけですが、それが上五・中七と妙に合っていることがこの句の場合は逆に弱みです。またシテ句会の投句は「おおむね当季の季語を入れる」ということをルールとしているとはいえ、「春の雨」は容易に動くでしょうね。作者は伊藤志郎さん。

次点4点句は2句あります。はじめの<遠近に〜>は「舫い」を最初私はよくわからず、舫う=船の係留かと思っていました。岸につながれた船の「静」と、往来する船の「動」とではミスマッチかなと。しかし作者の齋藤豊司さんによれば舫いは船自体のことだそうです。その船が夕刻に港付近を行き来している光景のこととか。なるほどそれだとよく分かりはしますが、一方ではそれは水墨画的予定調和に陥ってしまうかもしれません。貨物船や客船などの大型の船舶ではなく、もし漁船などの小型の船舶の行き来を意味するのであれば「舟の」とする方法もありそうです。

次点句の二つ目<ひび割れて〜>は、春泥が乾いて亀甲模様などを描くさまを詠んでいます。つまり雪が溶けてどろどろにぬかるみなんとも始末に負えないやっかいな存在、忌み嫌われる存在が、一転して吉祥のシンボルになるというおもしろさを言っているのですが、泥が乾燥した際にえがく形状がぱっと脳裡に浮かばないと観賞は難しいかもしれないですね。作者は私です。

2点句の<水仙月の〜>はじつは『シテ』の最新号の9号のキャッチコピーにも「水仙月の夜会」という言葉が使われており、まあネタばれですね。水仙月(すいせんづき)は宮沢賢治の造語のようですが、そのことを知らなくとも水仙が咲くようなまだ肌寒い早春の頃だろうという想像はできます。淡い照明に浮かぶ白い花の点々とした景が目に浮かぶようで、「夜会」という言葉とも雰囲気はよく馴染んでいます。私も取りました。もっとも水仙は俳句歳時記では冬の季語とされていて、当地の季節感とは1ヶ月ほどのずれがあります。作者は南悠一さん。

1点句は3句あります。<春の霜〜>は中七・下五がそのまま季語の説明になってしまっているようです。<寂しさも〜>は小林一茶の<目出度さも中くらいなりおらが春>をどうしても連想してしまいます。損していますね。また一茶の句は意味合いもそれとなく理解できそうですが、挙句ではなにが寂しくて、それなのにそして「春よ来い」と言っているのか見当がつきません。<花地蔵〜>は桜の花びらが降り掛かっているお地蔵さんでしょうか。口語の「こちょこちょ」が効いているかといえば、ちょっと難しいかな。

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人数も最近のシテ句会としては多めで、しかも新参の見学者もふたりおり、かなり若い方も混じっていることもあってか、発言が活発に成されていました。むしろ時間が足りないくらい。このままメンバーが増えてくれればありがたいですね。さて小休止の後、其の二です。

4 クラス写真の五秒前山笑う
2 四葉の五葉の六葉のまだクローバー
0 帳おり海の果てに雲雀東風
3 バレリーナ アン・ドゥ・トロワと咲きにけり
1 野ざらしの左手首のトルソーよ
5 ちひさきはちひさく咲くよいぬふぐり
3 指先のこごえる朝の初鰹

最高点は5点句の<ちひさきは〜>でした。私も取りましたが、「いぬふぐり」を私は最近の圧倒的に多い外来種のオオイヌノフグリではなく、むしろそれより小型のイヌノフグリ(在来種)やもっとずっと小型のタチイヌノフグリ(外来種)をイメージしてしまいした。しかしいまではほとんどの人がオオイヌノフグリをイメージするでしょうから、花径1cmほどの青色の平開するその花は、私にはけっして「小さい花」という感じはしません。小さいものを小さいと詠むことはなるほどとは思うのですが、それが「いぬふぐり」では常識的で軽すぎますし、きっと他の人が同工異曲の句をなんども詠んでいるにちがいありません。作者は大場昭子さん。

次点4点句<クラス写真の〜>は、それほどはかしこまらない雰囲気の写真撮影で、周囲の山々も新緑で萌えているのでしょう。しかし「五秒前」をどうとらえるかはなかなかくせものかもしれません。「さあ写すよ」という声がかかる前のざわつきを言ってるのか、整列が終わって写し終わるまでの時間なのか、それとも単に五音にそろえるために3秒前とかでなく5秒前にしたのか。いずれにしても「山笑う」という春の季語とはそれなりに馴染んではいるかもです。作者は伊藤志郎さん。伊藤さんは其の一と合わせて9点獲得。

3点句はふたつ。<バレリーナ〜>ですが、作者以外は皆、バレリーナを文字通りに踊り子のことと考えたようです。その衣装が体の動きにつれて開いてゆれるようすを花が咲いたようだと。比喩としては平凡ではあるけれども、最初にバレリーナときて次いでアン・ドゥ・トロワと続く流れるような語調はたいへんいいです。ところが作者の相蘇清太郎さんによればバレリーナとはバラの品種名のことだそうで、それは他者にはまず伝わりませんねえ。

<指先の〜>は、中七が「こごえる」とあるので冬・新年の景とうけとめた人がいましたが、初鰹は6月頃に出回るカツオのことで、夏の季語。そうすると指先がこごえるという表現とは合わないように思います。もっとも今は近場で採れた魚ではなく、全国どこで採れたものでも外国産でも容易に手に入るわけで、季節感が混乱してしまいます。実際、作者の今井富世さんは先頃市場で売られていたカツオを買い求めたのだとかおっしゃっていたように思うので、それは沖縄産のものだったかもしれないですね。

2点句の<四葉の〜>は問題句。クローバー(白詰草、または苜蓿)は3小葉が基本形ですが、ときどき四葉もありそれは幸福のシンボルのように言われます。そのため、ほとんどの人が四葉のクローバーを探したことがあるかと思います。ところがよくよく探すと五葉や六葉やそれ以上の葉をもつ個体もあり、しまいにはクローバーという概念が歪んできそうです。それで「まだ」ということなのですが、わかりにくい句ですね。作者は私です。

<野ざらしの〜>は一読して前回の句会で出た「手袋のやうな手首を拾ひけり」を思い出してしまいました。それに今回の句には季語がありませんし、俳句というより詩のなかの一節のような感じがしてしまいます。<帳おり〜>も問題の句です。「東風(こち)」は東からふく早春の風のことですが、これにさらに他の言葉をつけくわえて「雲雀東風」「鰆東風」「梅東風」「桜東風」などと使われると歳時記では説明されています。しかしやはりこれは西日本あるいは表日本の感覚でしょうし、語源的には陰陽五行説での春=東によるもので、実際の季節風の風向きとはあまり関係がありません。東風だけでも本来の季節感は希薄なのにさらに雲雀東風では訴求力がありません。

 

特大の黒柿角形刳物 完成

 

11月2〜8日に酒田市のデパート「清水屋」の画廊で個展を開きます。それに展示するものをいろいろ製作しているのですが、今回の個展のメインである刳物(くりもの)の箱の中でも、さらにアイキャッチャーになるような特別な品も必要です。

ということで銘木中の銘木といえる黒柿の、当工房で持っている材で可能な最大サイズの刳物を作ってみました。出来上がり寸法は横332mm、縦204mm、高さは41mm、実(み)の深さが28mmです。最初はA4=297×210mmサイズの書類が入れられるようにと思って向かったのですが、干割れや葉節の部分などを除いていったら縦(材料的には横幅)の寸法がすこし小さくなってしまいました。

黒い紋様は大部分が孔雀杢になっており、材料的にいっても最高級の部類といえます。これくらいの刳物ができるほどしっかりした幅と厚みのある乾燥材は、黒柿の場合は入手すること自体がすでに至難の業です。加工しているときも失敗したら取り返しのきかない材料なので、何重にも注意を払いながら慎重に作業をしました。

蓋の縦と横の比率は1:1.628で、黄金比の1:1.618にほぼ近い値になりました。というか長さ方向にはいくらか余裕があったので、そうしました。形は完全に直線にしてしまうと強度的な心配があるので、側面はR4000〜7500mm程度のゆるやかな曲面にしています。仕上げは半艶塗装です。

 販売価格については個展開催の直前にならないと確定しません。しかし製作原価から計算してのおおよその値段を算出することはできますので、仮予約というかたちでの予約は受け付けています。ただし納品は原則として展示会終了後になりますし、お支払いも画廊との売買・契約となります。ご興味のある方はメールにてお問い合わせください。

 この品は売切れとなりました。寸法違い(すこし小さく)&紋様違い(孔雀杢まではいかない)でまた黒柿の角形被蓋刳物を製作することはあるかもしれません。  2016.4.28

 

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ブナの若葉

 

3月21日の記事で、庄内町のSさんから庭に植えられていたブナを伐採したものをいただいたことを紹介しましたが、なんとそのときの丸太の一部から若葉が出ていました。

伐ってすぐとはいえ、ずっと車内や室内に置いていたのでそれなりに乾燥してきているとは思うのですが、新葉が萌え出ているということは内部にはまだまだ水気がたっぷりあるということでしょう。たくましい生命力です。このあと様子をみながら、自宅の庭に挿し木でもしてみましょうかね。

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コーヒーブレーク 77 「一万八千」

 

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青き山々一万八千春曙

国土地理院発行の1/25000地形図に載っている山名、および旧の1/50000地形図には載っていたものも合わせて約18000あるという。言うまでもなくこれでも日本全国にある山の名前の一部分でしかなく、実数ははるかに多いであろう。/よく紀行文や小説などで「名も無い山々が〜」などと表現されることがあるが、馬鹿を言ってはいけない。よそ者がある土地に来て簡単に眺めることができるような、比較的人里に近くそれと指呼できるような山が、無名であるなどということはありえない。むしろ驚くほど細かく名前がつけられていることがしばしばである。/山名よりもさらに細かく名前がつけられているのが河川で、古い絵図などを見ると山中のごく小さな沢にまでことごとく名前が付されていることに、ほんとうにあっけにとられる思いをすることがある。/名付けとはつまり他との弁別であり、ある山や川が他の山や川と違うものであると明確に区別する必要に迫られて行われるものであるだろう。山菜や鳥・獣・魚などの採取・捕獲の目印として、あるいは領地や村の境界線として、日常世界と非日常世界の切れ目として。

鷲の巣や暗き谷間の喉開く

鷲や鷹などの猛禽類はどうして断崖絶壁に巣を作るのであろうか。その岩壁も垂直よりもさらにいくらか逆勾配(オーバーハング)になっていて多少の小雨なら避けられるとか、近くに松などが生えていて適度に日射や風をさえぎるといった条件があれば最高である。むろんそれは卵や幼鳥が蛇や獣などから襲われないようにという理由がいちばんにあると思うが、それならば鷲や鷹などでなくとも他の鳥類にしても同じ理由で、切り立った崖に営巣してもよさそうなものだが、あまりそういう例はないように思う。/その地の崖の一等地は先に猛禽類が占めてしまっている事情があるかもしれず、また逆にそういう場所に巣を構えていたら、鷲や鷹などのかっこうの餌食になってしまいそうではある。むしろ細かい枝葉の入り組んだ樹木の一隅などのほうが目隠しにもなり、大型の鳥にとっては枝葉が障害物になるということだろうか。いやいや営巣の場所もなにも、とにかく「数で勝負」という生存戦略で大分の犠牲は織り込み済みであって、容易に得られる営巣地でとにかくたくさんの個体がたくさんの仔をなしていけば、たとえ敵に襲われてもある程度は生き残るにちがいないということか。

満開なれば闇を抱きて花篝

これまで何度か書いたような気がするが、私はとりたてては桜の花を好まない。ソメイヨシノはともかくとしても、山桜の仲間などの花はきれいだなと思うものの、それは同じ頃に咲くたくさんの草木の花と基本的には同列である。桜だけが特別という感覚も思考も私にはない。したがって人為的に植栽された桜並木などのライトアップや篝火を焚いての観桜会なども、ちっとも興味がない。むしろその特別視や過剰な演出に辟易しているというのが正直なところ。

 

風化した道標

 

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鳥海山南西麓の高瀬峡ですが、山ノ神からの遊歩道で長坂道(右)と遊歩道の奥の大滝方面(左)の分岐点Y字路にかかげた道標が、かなり風化し、杉の木にしばりつけたシュロ縄も切れて地面に落ちていました。大きさは18×83×320mmくらいです。

この道標はたしか5年以上も前に、地元の高校のフィールドワークのときに私が主導して生徒の手で付けたものだったと思います。板自体はヒノキなので、まだ朽ち果てた感じではありませんが、油性マーカーで書いた文字や矢印はすっかり風化して判読しにくい状態になっています。紐もだめになっているので、早急に交換する必要があります。ただ興味深いのは文字のところだけがわずかに盛り上がっており、これは市販の普通の油性マーカーといえど多少は耐候性があるのだということの証拠です。墨書であればもっと保つかも、ですね。

ということで、持ち帰ってきました。直すか、もしくは新しく作り替えしたほうがいいかもしれません。このように道標にかぎりませんが、「道は人が歩いたところが自ずと道となる」のでは決してなく、誰かが「ここを道として維持しよう」という意思のもとに不断に手入れをしているからこそ道であるのだということを理解していただけたらと思います。

 

経机の修理

 

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酒田市内のある方のお宅で、仏壇前に置いて使われている経机の修理を頼まれました。4本ある脚の1本が折れてしまい、上に置いていたものがみなひっくり返ってたいへんなことになったそうです(もちろん当工房で製作した机ではありません)。

工房に持ち帰って仔細に点検してみたところ、脚の上端に埋め込んだホゾを地板のホゾ穴にただ差し込んだけで、しかもホゾ穴の大きさに比べホゾが若干細いため、折れてしまった1本以外にもすべての脚がすこしぐらついていました。写真でもすぐわかるようにそもそもが外向きに反っている脚なので、ただでさえ横向きの力がかかります。これでは正確にホゾとホゾ穴を作りよほどしっかりとホゾ組をしない限り強度的に無理があります。

しかも驚いたことに脚を抜いてみると、ホゾのゆるみをいくらかでも抑えるためかセロテープを巻いていました。はじめからだったのか、一度ゆるみが生じたので誰かが以前に巻いたんでしょうか? 酷すぎますね。

折れたホゾを除去し、他のホゾも厚みを調整してかたく打ち込みました。

今回の経机は紫檀の突き板を合板(一部はMDF?)に貼った既製品のようですが、まあなんとか修理をすることができたのは不幸中の幸いでした。ものによっては修理不能な場合もありますし、たとえ修理できても新品を買うより高くつくこともあります。

 

黒柿角形刳物3点 個々のご紹介

 

地元、酒田市のデパート「清水屋」の画廊で、今年11月2〜8日に個展を行ないます。それに向けて昨年末から品物を作っているのですが、展示品は一点物の刳物(くりもの)の箱が中心です。

銘木の黒柿を用いての作品は、木工旋盤を使っての丸形のものはこれまで10点ほど作りましたが、今回の3点は旋盤を用いないで掘り込んで作った角形の刳物です。蓋が実にすっぽりとかぶさる形の被蓋(かぶせぶた)が2点、蓋と実が面一になる合蓋(あわせぶた)が1点です。

※ 販売価格については個展開催の直前にならないと確定しません。しかしながら製作原価から計算してのおおよその値段を算出することはできますので、仮予約という形での予約は受け付けています。ただし納品は原則として展示会終了後となりますし、お支払いも画廊との売買・契約というかたちです。ご興味のある方はメールにてお問い合わせください。

 

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No.522 黒柿方形被蓋刳物 サイズ 縦84×横84×高さ37×実の深さ23mm 手の平に載るくらいの大きさで、強度を考慮して側面は若干の曲面となってはいるが、ほぼ正方形の小箱です。孔雀杢に準ずる上杢。旋盤で加工した丸形とはやはりずいぶん雰囲気が異なります。艶消塗装仕上。 売切れ

 

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No.523 黒柿角形被蓋刳物 サイズ 縦89×横131×高さ38×実の深さ25mm 522よりやや大きく、1:√2の長方形。蓋はふっくらとしており、孔雀杢に準ずるたいへん整った杢。艶消塗装仕上。 売切れ

 

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No.524 黒柿角形合蓋刳物 サイズ 縦88×横141×高さ55×実の深さ25mm 三つのなかではいちばんのボリューム。こういった木工芸の品では本来は一木を上下に切り分けて、それぞれに縁に段欠をつけて噛み合わせるのですが、この例では蓋と実は別の板から木取して加工し、「黒と白」との対比をねらっています。蓋は孔雀杢に準ずる上杢です。艶消塗装仕上。 売切れ

 

W坂の桜並木

 

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山形県遊佐町の南東方、蕨岡地区の通称上寺(うわでら)にある、アルファベットのWの字を横に倒したようなつづら折りの坂=W坂(だぶりゅうざか)の桜並木です。何十年も前の子供の頃から、たまに花見や遠足に出かけたように記憶しています。

樹種はソメイヨシノですが、樹齢的にはそろそろ限界で、ところどころ歯抜け状態になっています。それにスギの植林等がじゃましているし、Wの最初の1画(というのかどうか)は、新しい道路で切断されてしまっています。

ご神体の鳥海山をまつる大物忌神社の口ノ宮がこの小山の中腹にあり、太古の時代の断層の跡という急斜面なので、往来につづら折りの道を普請したというわけです。かつては一帯は社前町としてとても栄えたところです。

私は個人的には桜にはさほど関心はなく、同じ桜なら園芸品種のソメイヨシノではなく自然植生のオオヤマザクラなどのほうが断然好きです。しかしせっかくの景観であり、観光資源にもなりうるのにこのまま廃れてしまうのはやはり惜しいと思います。

 

木箱勢揃い

 

一品ものの小物木製品を収納・保管するための木箱が20個近く勢揃いしました。先日(3/30)の記事でご紹介したスプルス(ベイトウヒ。北米産の針葉樹)でこしらえたものですが、中に入れる品物に合わせてみな寸法が異なることもあり、予想外に時間がかかってしまいました。同じ寸法の箱をたくさん作るのであればずっと簡単なんですが。このあと蓋に電熱ペンを使って品名・製作所・製作者・年月日・品番を記入します。

それに中身にくらべずいぶん大振りな感じがしますが、それは布で包んだ品物(作品)を出し入れするのに楽なようにするためです。品物と箱の間に指が入れられるだけの空きを20mm程度は設ける必要があり、また木箱の板の厚さ自体も両側で15mmになります。すなわち直径120mmの品物でも木箱の縦横の外形寸法は155×155mmになるわけです。

保管用の木箱とはいえ、中身につりあったレベルのものが要求されるのは当然のこと。材料(木材・布・紐)と加工費を合わせて、ざっとですが中身が製作原価10万円ならその個別専用のパッケージも最大1万円=1割くらいまでならまあいいかなという感じがしています。今回の木箱はそこまでは経費がかかっていませんが、サイズがもっと大きくなって両手で持つしかないような大きな箱の場合はその可能性が大です。

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