月別アーカイブ: 5月 2013

電動工具連動型集塵機

新しい集塵機がすこぶる具合がいいです。マキタの474(P)というモデルですが、特長はなんといっても他の電動工具を接続して集塵をワンスイッチで連動させることができることです。

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それまで使っていた掃除機能メインの機種は十数年前に導入したものですが、同じマキタの集塵機ながら電動工具との連動機能は付いていません。というよりも当時はそのようなタイプの集塵機はおそらくどの木工機械メーカーからも出ていなかったように思います。今ほどには作業環境における粉塵対策の意識がすすんでいなかったからかもしれません。現在はリフォーム工事は当然として、たとえ新築現場などであっても材料の加工時に周囲に塵埃が飛散することは忌み嫌われています。とくに細かいパウダー状になってしまう、いわゆる新建材の切断などでは、集塵させつつ加工するのが標準(現場によっては必須)となっているようです。

前の集塵機の場合は、ホースを通常の掃除用の太い径38mmのものからオプションの径28mmの工具接続用の細いものに差し換え、集塵機本体の電源コードに中間スイッチを設けながら使っていました。しかし連動機能はないので、接続した工具たとえば丸ノコのスイッチを入れる前にまず集塵機のスイッチを入れ、それから丸ノコのスイッチを入れて加工を行い、それが終わると集塵機のスイッチをに切ってという手順が必要でした。ひとつの作業がある程度長時間連続するならそうでもないのですが、細切れかつ連続となると一連のスイッチのオン・オフがわずらわしく感じられます。

その点、新しい集塵機は丸ノコのスイッチだけの操作で済むので楽です。無駄に集塵機が回ることも、逆に集塵をうっかり忘れてホースが詰まってしまうおそれもありません。集塵機のオンは接続した電動工具のオンと同時に働くのですが、オフのほうは工具のオフより数秒遅れて集塵機がオフになります。これはホース中にまだある塵埃を完全に集塵機に吸い込むためです。当たり前といえば当たり前の機能なのですが、初めて使うとこんなことにも感心してしまいます。

集塵容量は15リットルです。マキタには同シリーズで8リットルと25リットルのものがあり、また粉塵専用(電動工具連動専用)のものと、掃除機を兼ねた乾・湿両用タイプのものなど、合わせて10種類くらいのモデルがあるのですが、風量が大きい(3.5m^3/min)乾湿両用型でかつ現場にも持ち込みやすいややコンパクトなタイプを選びました。消費電力は1050W、吸込仕事率は最大300Wですが、ダイヤルで無段階調整できます。

いちばん下の写真はモーター・制御部分と集塵タンクとを分離した状態ですが、吸い込む物の別によりクロスフィルタ、水用フィルタ、パウダフィルタ、プレフィルタ、ダンパ、紙パック、ポリ袋などと組み合わせて使います。なお写真中で「ON・OFF」や「吸込力調整・連動・切・入」などの白銀色の文字がありますが、これは型押しされたプラスチックの文字などがそのまままでは見えにくいし分かりづらいので、ペイントマーカーのシルバーで自分で着色したものです。メーカーが製造段階でやってくれればいいのですが、その分また値段が高くなってしまうでしょうね。ちなみにこの474(P)は径28mmの集塵用ホースなしで税抜定価50000円です。ホームセンターなどで1万くらいの集塵機もあるのと比べればとても高価ではあります。

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5月の胴腹ノ滝

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5月は胴腹ノ滝へ3回、調査と水汲みに行きました。5月10日・20日・28日です。水量は3月上旬以降ほぼ一本調子で増えてきていたのですが、5月28日はやや減少に転じています。上の写真はいずれも5月20日午前8時頃のもので、次回の訪問(6月上旬)を待たないと断言できませんが、おそらくこれが今年の最大水量になる可能性が高いと思います。

つごう3回の水温等は以下の通りです。5月10日、右が8.7℃、左8.6℃、気温21.1℃(午前11:13)。5月20日、右・左とも8.5℃、気温14.3℃(午前8:08)。5月28日、右8.7℃、左8.6℃、気温23.1℃(午前12:44)。

一昨年の場合は5月11日に最大水量を記録し、水温も左右ともに8.9℃。5月18日は水量がやや下がり、水温も右8、8℃、左8、7℃でした。昨年は5月8日が最大水量で、次の5月19日には減少に転じています。水温も5月8日の右8.9℃、左8.8℃に対し、水量が減ってきた5月19日は右8.7℃、左8.6℃と、パターンは非常に似ています。ところが今年の場合は、最大水量と思われる5月20日だけ左右とも8.5℃と、前後に比べぐんと低いのです。これは、やはり今冬〜春にかけての気温が例年より低めだったことや、積雪量が例年よりかなり多かったことが影響しているのかもしれません。

胴腹ノ滝の主な涵養域は、総合地球環境学研究所の中野孝教さんの詳細な水質分析などから、吉出山よりもうすこし上部の標高約400〜600m付近、通称「大谷地」と推測されています。麓から眺めたこのあたりの残雪の縮小の推移と、胴腹ノ滝の水量・水温の変化とは相関性がかなり高そうです。

 

甲板矧合

デスクの甲板を2枚、矧合せしています。仕上がり寸法で600×1100mmと小ぶりのもので、材料はクリです。写真はパイプクランプで締結したものをパネルソーの前に立てかけているところですが、手前の板は無地柾目板の3枚合わせ、後ろの板は追柾と板目の板を3枚合わせています。

他の仕事と同時並行してすすめていることと、下拵えした材料の養生期間を延長したことなどにより、予定より時間がかかっています。

材料の幅が所定の寸法に足りない場合は何枚かの板を矧合せしますが、同寸法のものが多数あるときは建具用の組立機、今回のように数が少ない場合や薄板・方形ではない変形の板などの矧合せの場合は端ガネ等のクランプを使用します。それぞれ一長一短があるので、適宜使い分けるわけです。

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馬と兎の雪形

5月19日の記事の中で、鳥海山(2236m)の馬と兎の雪形に言及しましたが、「よく分からないので詳しく教えて」という声がありましたので、お答えします。写真は昨日5月25日の夕方に撮ったものです。

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イラストに付した番号で、は笙ケ岳(1635m)南面の種まき爺さん(または婆さん)です。腰をかがめて左向きになって種をまいているのですが、雪解けがすすんでちょっと太めになっており、わかりづらくなってきていますね。

が鍋森(1652m)の下の、飼葉桶に首を突っ込む右向きの馬ですが、四肢と尻尾も見て取れます。サイズが小さいのが残念ですが、比較的長い期間表れているし分かりやすい雪形です。少なくとも登山者には昔からよく知られている雪形と思います。は月山森(1650m)南西面の、跳ねとぶ左向きの兎です。ただ肝心の長い耳が明確に同時的には出現しないこともあり、やや苦しいかもしれません。

他にもたくさんの雪形が口上にのぼることがありますが、表れるのがごく短期間である、年によって差が大きい、見る位置や角度による異同がはげしい、いちばんいい状態でも「そう見えなくもないかな」程度の不明瞭な形である、などの理由で、あまり市民権を得てはいないようです。

 

アマゾンの梱包

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インターネット通販のアマゾンから届いた書籍とCDです。品物は段ボール紙の台紙にシュリンクフィルム(熱収縮性のラップフィルム)で一括で包まれ、箱の底にホットメルトの接着剤で固定されています。

こうした通販でよく疑問視されるのが、中身の大きさに対して梱包が大きすぎるということです。たとえば「消しゴム一個にA4判サイズを超えるような箱では空気を運んでいるようなもので無駄が多すぎる」といった批判です。しかしそうした批判はあきらかに的はずれですね。

写真の段ボールの箱のサイズは約6×25×33cmです。商品の体積はそれの4分の1もありません。しかしどのような商品がどれだけの数の注文があるかはまったく個々ばらばらで、しかも同時配達であればその組み合わせも種々雑多です。もし品物と包装・梱包との間の空隙を最小限にしようとすれば、梱包作業の手間は倍加するでしょう。また梱包の終わった箱や袋などのサイズや形状があまりにもまちまちである場合は、それを台車やトラックに積み込む際も非常に手間がかかるし、無駄な空間がたくさん生ずると思います。

もちろん通販会社といえど梱包のサイズ等は1種類ではありえず、何種類か用意しているはずですが、その種類はできるだけ少ないほうがコストを低くできます。どの梱包がいいか試行錯誤する手間もかかりませんし、梱包材の単価や管理もそのぶん省けるでしょう。アマゾンと配送会社との間の契約がどういうものなのかはむろん私にはわかりませんが、双方がコストカットをめぐって熾烈なせめぎ合いがあるはずです。もちろん安全迅速確実にお客に品物を届けることが至上命題で、それとの戦いでもあります。

私の仕事は家具や木製小物などのデザインと製作ですが、ほとんどがお客様からの直接注文ですから、その寸法や形は一件一件異なります。したがって品物が完成してから包装し梱包する際はかなりの手間がかかりますし、悩むこともしばしばです。小物についてはあらかじめ個包装の化粧箱を用意してありますが、それでも梱包と発送の手間は少なからぬものがあると痛感しています。ですからアマゾン等の大手通販の包装と梱包・配送のシステムは非常にみごとなものだと感心します。無駄な空間が多すぎるというような感想を抱いたことはありません。

 

ニリンソウの大群落

工房からすこし離れた集落ですが、人家にほど近い車道ぞいにニリンソウ( Anemone  flaccida :キンポウゲ科イチリンソウ属)のたいへん大きな群落を見つけました。今の時期、ニリンソウはあちこちに咲いているとはいえ、これくらいまとまった大群落はめったにありません。幅30mくらいあるかもしれません。一枚目の写真で白い紐を張ってあるところがおそらく民有地敷地の境界線かと思いますが、ニリンソウは手前の道路の方にも盛大に侵出してきています。

たまたま自然にこういうふうになったというのではなく、意図的にニリンソウ主体で草が繁茂するように手入れをしているにちがいありませんが、いわゆる花壇みたいに整然としすぎていないところがまたとてもいいですね。

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イタヤカエデの狐

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イタヤカエデの枝を鉈で6つに割り、小刀で片側に狐の頭部をざっとこしらえた玩具です。先日、秋田県立博物館に行った際に、ミュージアムショップで買い求めました。大きさは枝の径で45mm、高さは65mmです。

じつによくできています。色が白く滑らかで強靭なイタヤカエデの特長をいかし、最低限度の加工でキツネの姿を適格に表現しています。尖った耳と長く延びた口吻、ほっそりした体つき……。割面や樹皮の荒々しい肌合いも、野生の獣という雰囲気を効果的にかもしだしています。傑作です。

この狐は秋田県角館地方で伝統的に作られてきた玩具のようですが、首下から腹にかけてすこしくぼみを付け、ころあいの箸置としても活用できるようにしてあります。もっとも無塗装の白木なので、ふだん使いには難があるかもしれません。わが家でも箸置は陶製やガラスのものがいくつかあるので、これは木工品のお手本として飾っておくことにします。

正直に言うと、こういう細工物をみると木工を生業とする人間としては少なからぬショックがあります。特別な材料を用い、うんと時間をかけて「作品」を作ることは(良し悪しは別としても)プロであれば基本的にはそう難しいことではありません。しかしちょっとした小遣いでも買えるような値段で、しかもけっして粗末なわけではない、むしろその簡略な作りが逆に魅力に転化するような手作りの木工品というのは、至難の業です。時間的なことであえていえば、おそらく6個1組を製作するのに15分くらいでしょうか。負けてしまいますね。

 

高瀬峡の滝七景

5月19日、高校の特別授業の下見で鳥海山の高瀬峡に下見に行きました。車道終点の山ノ神の駐車場からだと、遊歩道のいちばん奥まで往復しても正味1時間半くらいですが、道すがらいくつもの滝に出会うことができます。順番に写真をかかげてみます。

高瀬峡一帯にはもっとたくさんの滝があるのですが、ふつうに遊歩道を歩いていて簡単に見ることができるものに限定です。それらの滝は湧水起源のもの、湧水と雨水が混じっているもの、主に雨水起源のものなど、水源はいろいろですが、いずれも鳥海山に降る膨大な雨雪が大元になっています。

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第一吊橋をすぎて間もなくの遊歩道分岐を右にすすんで行くと最初に出会う滝で、ヒノソの蔭ノ滝。くの字の斜めの滝ですが、主に雨水起源です。水量の増減が激しく、冬は雪に閉ざされてしまいます。

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第二の吊橋に向かって急斜面を斜めにおりていく途中で、スギ木立の間から左側にみえる滝で、バンバ沢の由蔵滝(よしぞうだき)です。これの滝壺は婆様淵と呼ばれており、姥捨伝説があるとか。湧水と雨水が半々くらいに混じっています。

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バンバ沢にかかる吊橋(遊歩道の第二吊橋)のすぐ上流に見える滝です。落差は5mくらいかと思います。

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吊橋を渡り、次いでやせ尾根に上がってその尾根をすこし南下していくと擬木の柵があります。そのあたりでアカマツやミズナラなどの樹間ごしに直下に見える滝で、バンバ沢の薬師滝です。下部は直瀑になっています。

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長大な急斜面をジグザグに下りていくと、沢の対岸岩壁にかかる滝が正面に見えてきます。カラ沢に落ちる剣龍ノ滝ですが、岩盤(地層)の境界線から吹き出す湧水100%の滝です。右側の小さな滝も同様に湧水起源のもの。写真右隅に見える流れがカラ沢の本流です。

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遊歩道はカラ沢の谷底で渓流にそって上流に続いていますが、 株立ちのサワグルミの大木をすぎると、やはりカラ沢の対岸に見える滝があります。白糸ノ滝です。これは主に雨水起源で、初夏以降で晴天が続くと涸れてしまいます。

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最後は真打ちといいますか、カラ沢本流にかかる大滝です。節理が発達したオーバーハング気味の断崖絶壁を水がまっすぐ落ちています。雨水と湧水とが混じっていますが、平均すると雨水の比率のほうが高いようです。ただ厳寒期でもアイスフォールになりこそすれ、完全に落水が止まることはありません。写真の右下の落水はごく小さなものですが湧水です。

 

イワカガミ!

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鳥海山の某所、標高237m付近に咲くイワカガミです。私がこれを発見したのは一昨年のことですが、今年も確認できました。同所では4個体が開花。他にも咲きそうな個体が小群落を成しています。

イワカガミはイワウメ科イワカガミ属の多年草ですが、通常のイメージとしては「高山植物」の仲間です。図鑑では高山帯だけでなく「山地にも」と記してあるものがありますが、緯度や地域にもよるでしょうが、少なくとも鳥海山周辺でこれほど標高の低いところに生えている例は、私は他に知りません。山によく登っている方数人に訊いても、はじめは「イワウチワのまちがいじゃないか?」といわれたほどです。

他に3枚の写真も紹介。上のイワカガミのように生息地的に珍しいというわけではありませんが、いずれも清楚で美しい春の花です。上から順にミヤマカタバミ(カタバミ科)、オオバキスミレ(スミレ科)、ヒトリシズカ(センリョウ科)。

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残雪と新緑の鳥海山

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例年より10日ほど遅れていま庄内平野ではさかんに田植えが行われています。鳥海山の雪解けも最近は急速にすすみ、笙ケ岳南面の種まき爺さんや、鍋森下の飼い葉桶に首を突っ込む馬、そして月山森右側の跳ねる兎などが見えています。

写真は2枚とも昨日の午後6時すぎのものですが、残雪と新緑と白雲のおりなす変化に富んだ光景や、代掻きがすんで苗を植えるばかりとなった水田に写る逆さの鳥海山などがたいそう美しいです。こういうときはおおげさでなく、鳥海山の麓に生まれ育ったことの幸せを感じます。

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