5月12日にハイキングに行った、鳥海山北面の中島台&獅子ヶ鼻湿原の続きです。遊歩道の「あがりこ大王」への分岐を往復したあと、さらに歩を奥にすすめると小さな尾根にあがります。遊歩道はここで左右に分かれますが、右回り・左回りともに獅子ヶ鼻湿原の外縁をぐるりと回ることができます(約50分)。湿原は26ヘクタールにおよび、天然記念物に指定されています。
まずは左に入り「出壷(でつぼ)」を目指しました。出壷は湿原の最上流部に位置する大きな湧水の流出口で、丸い池の底からも水が勢いよく湧いて出ているように見えることから出壷と呼ばれているようです。上の写真の1枚目がそれで、手前が上流側です。以前は水辺まで近づいてその湧水に触れることができたのですが、やはり来訪者が多くなったために今は柵が設置されています。写真の2枚目は右端中央が出壷で、ここから左方(北側)に流れ出した湧水はあたり一面を湿原と化していきます。湧泉としてはこれが最大かと思いますが、ほかにも湧泉はたくさんあります。この先は急斜面にまだ多くの雪が残っており、子供連れでは歩行困難なので引き返すことにしました。
先ほどの尾根上の分岐まで遊歩道をもどり、今度は右のほうにすすみます。ゆるやかな谷をすこし行くと激しい水音が迫ってきます。湿原下流部に集まった湧水による沢音です。本来ならそれぞれの湧泉から出た水はまだ行く筋もの小沢を成してさらに流れ下っていくのですが、それらの流れをさえぎり集結するように横向きにコンクリートの堤防が築かれています。幅2m深さ1m半くらいの人工水路をたどって行くと水はトンネルに吸い込まれていきますが、これはやがて水力発電所(東北電力横岡発電所)に至ります。なんと湧水を利用して通年で発電をしているのです。それくらいすごい水量です。
写真上2枚は「鳥海マリモ」という標識のある側道からの湿原の展望ですが、水中の緑はハンデルソロイゴケとヒラウロコゴケがからみあってマット状または半球状になっています。それでマリモ(鞠藻)のようだというわけですが、マリモは苔ではなく藻類なので、このネーミングは私は不適だと思います。3枚目の写真は下流側の、湿原の湧水が合流して渓流をなしているところです。水はpH4.4〜4.6とかなり強い酸性です。水温は7〜8℃ということですが、湧出口での温度でしょうか。
こうして昼食等も含め約3時間のハイキングが終了しました。残雪がまだあるためか、晴天にもかかわらず人出でごったがえすようなこともなく、わりあい静かに自然を楽しむことができました。しかし写真撮影の十数人のグループが、木道を占拠するようにして写真を写しているのには腹が立ちました。添乗員(ガイド?)はいったい何をしてるんでしょうか。