イタヤカエデの狐

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イタヤカエデの枝を鉈で6つに割り、小刀で片側に狐の頭部をざっとこしらえた玩具です。先日、秋田県立博物館に行った際に、ミュージアムショップで買い求めました。大きさは枝の径で45mm、高さは65mmです。

じつによくできています。色が白く滑らかで強靭なイタヤカエデの特長をいかし、最低限度の加工でキツネの姿を適格に表現しています。尖った耳と長く延びた口吻、ほっそりした体つき……。割面や樹皮の荒々しい肌合いも、野生の獣という雰囲気を効果的にかもしだしています。傑作です。

この狐は秋田県角館地方で伝統的に作られてきた玩具のようですが、首下から腹にかけてすこしくぼみを付け、ころあいの箸置としても活用できるようにしてあります。もっとも無塗装の白木なので、ふだん使いには難があるかもしれません。わが家でも箸置は陶製やガラスのものがいくつかあるので、これは木工品のお手本として飾っておくことにします。

正直に言うと、こういう細工物をみると木工を生業とする人間としては少なからぬショックがあります。特別な材料を用い、うんと時間をかけて「作品」を作ることは(良し悪しは別としても)プロであれば基本的にはそう難しいことではありません。しかしちょっとした小遣いでも買えるような値段で、しかもけっして粗末なわけではない、むしろその簡略な作りが逆に魅力に転化するような手作りの木工品というのは、至難の業です。時間的なことであえていえば、おそらく6個1組を製作するのに15分くらいでしょうか。負けてしまいますね。

 

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