月別アーカイブ: 12月 2015

多肉植物の引っ越し

 

暖冬とはいえいよいよ雪が積もるようになってきて、玄関先のポーチ、すなわち半野外に並べていた多肉植物やサボテン十数鉢を室内に移動しました。耐寒性は種類によりだいぶ差があり、プラス3〜5℃くらいが限度のもの(つまり零下だと凍結し枯れてしまう)や、マイナス5℃くらいまでなら大丈夫なものなどいろいろです。総じては乾燥にはめっぽう強いものの、寒さにはそれほどではありません。

というわけで安全を期してみな玄関内や洗面脱衣室・トイレの窓辺に引っ越ししました。わが家は全室床暖房になっているので、深夜や外出時でも最低10℃くらいには保たれています。

最初は飼い猫が多肉植物をかじってしまうこともある程度は覚悟していたのですが、いまのところは大丈夫なようです。一昨年や昨年はそれでだいぶやられたので、基本的に室内に鉢植えをかざるのは避けていたのですが、猫も仔猫ではなくなったからか(アルビフロラの場合)やたらとものをかじることはなくなりました。

 と思っていたら、このあと猫が植物のいくつかをかじったり鉢を下に落としたりしてしまい、大半をやむなく玄関内にまた引っ越ししました。

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コーヒーブレーク 66 「卵塊」

 

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大北風の刈り取りゆける地面かな

大北風は「おおきた」と読むが、これは俳句的な言葉使いで、五七五の基本的な音調に合わせるように通常の音を縮めたり伸ばしたりすることがよくある。夕焼(ゆうやけ)を「ゆやけ」、夕立(ゆうだち)を「ゆだち」、梅雨入り(つゆいり)と「ついり」、地震(じしん)を「ない」、斑雪(はだれゆき)を「はだれ」、寄居虫(やどかり)を「ごうな」、蚕(かいこ)を「こ」、南風(みなみかぜ)を「みなみ」「はえ」「まじ」「まぜ」とよぶ等々。古語や地域語がふいに混じってきて、ある程度しっかりと俳句作りをしていないとまったく意味がわからないことがあるので要注意だ。とりわけ方言は、同じ言語圏に属する者同士のやりとりならともかく、他者にとっては外国語同然と思ったほうがいい。

地吹雪の天に向かいて降りこみぬ

吹雪は降雪中の雪や積雪が強風によって空中に舞い上げられることにより視界が損なわれることであるが、降雪がともなわない場合は地吹雪とよばれる。空はきれいに晴れて青空がひろがっているのに、地表近くだけ猛烈なホワイトアウトになっていることも珍しくない。/気象庁の定義によれば、風速10m/s未満の降雪は風雪、風速10m/s以上を吹雪、風速15m/s以上を猛吹雪と呼ぶようである。/この風速◯mというのも一般にはぴんと来ない表現ではないかと思う。それが1秒間に◯メートル移動するような風の速さ(強さ)を意味しているということさえあまり理解されていないのではないかと疑っている。秒速10m/ということは時速にすれば36km、秒速20mなら時速72km、秒速30mならば時速108kmである。自動車でもし高速道路を走っていて窓を全開していたらものすごい風で、車中のものが散乱してしまいそうである。自家用車がこれだけ普及した今となっては、風速を時速で表したほうがその速さを実感的に理解できるようになるかもしれない。

ひとすじの氷柱蟷螂の卵塊より

よくカマキリの卵嚢(らんのう)が地上からおおむねどれくらいの高さに産みつけられているかによって、その冬の積雪を予測できるという話があるが、これは科学的にほぼ否定されている。実証的に数多くの卵嚢の位置と、その年のそこでの積雪の深さを調べて統計的に処理しても相関関係はなんら見いだされなかったようである。カマキリの卵が積雪深を予知するという説の前提とされる「卵嚢は雪に埋もれると孵化困難」という仮説も反証されてしまった。/一見科学的な話のようでありながら、じつは迷信や単純な誤解であることはよくある。いわゆるネイチャーゲームの定番ともなっている「樹液の流れる音を樹の幹に聴診器をあてて聴く」というのもその類いのひとつで、その程度の簡易な道具で流れが感知できるほど樹液の流速流量は大きくはない。聴診器で聞こえるのはおおかたは近くを流れる渓流のせせらぎか、風で揺れる枝葉のざわめきか、すこし離れてはいるが道路を走る車の振動などである。

 

(※ 写真は月光川本流の自然産卵のサケの群れ。人工的に孵化されたサケとはまた違った生態が間近かに観察できる。捕獲は禁止。)

 

ペーパーウェイトDタイプ、新素材で62本、本日発売!

 

長らくお待たせしました。
ペーパーウェイトDタイプ62本、本日午前7時をもって発売開始しました。

今回用いた木の種類は全部で9種類。どれもペーパーウェイトとしては初めて用いた材料ばかりで、さらにそのうち6種類は当工房のすべての製品を含めても初めて披露するものです。写真はパッケージングしたペーパーウェイトですが、各品ならびに材料の詳細はトップページの「オンライン販売」のコーナー、ならびに当ブログの12月17〜24日の各記事をごらんください。

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ペーパーウェイトDタイプ×62本、明日発売!

 

新たに作ったペーパーウェイトDタイプ 62本、明日12月26日午前7時をもって発売開始します。

今回の素材は当工房で製品化するのは初めてのもの=スーヤバール・マスールバーチ・タモバール・キハダ縮杢+スポルト・ケヤキ樫目杢・ハードメープル縮杢、あるいはペーパーウェイトとしては初めて使用したもの=キハダ縮杢・シャム柿・オニグルミ変杢、という豪華絢爛な顔ぶれです。黒柿クラスの世界的にみても非常に希少で珍重、高価な材料もいくつか含まれています。

それぞれの素材については当ブログの12月17〜24日の記事で詳述しました。価格につきましてはトップページの「オンライン販売」のコーナーに明日午前7時に表示しますので、ご覧ください。これまで取引実績のある方には値引その他の優遇もありますので、よろしくお願いいたします。

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ペーパーウェイトの素材 8 オニグルミの変杢

 

年内に発売予定のペーパーウェイトD、約60本。それに用いた素材9種類について順次説明をしてきましたが今回は最終回。スーヤバール、マスールバーチ、タモバール、キハダ縮杢&スポルト、ケヤキ樫目杢、シャム柿、ハードメープル縮杢に続いて、締めくくりはオニグルミの変わり杢です。

オニグルミはふつう略して単にクルミと呼ばれています。ヤチダモがタモと呼ばれるようなもの。つまりはそれほどには珍しい樹ではなく、当工房では家具材としては最も使用頻度の高い材料です。硬すぎず柔らかすぎず、色合いも濃すぎず淡すぎないことや、散孔材なので細かい加工にも向いていて、硬度がさほどではないわりにはじゅうぶん強度もあるからです。赤味を帯びた淡褐色はとてもおだやかな雰囲気があり、とくに洋家具にはぴったりです。

希少材ではないとはいえ、植林などはほとんどされておらず自然植生でも群落を成すことはないので(アレロパシー=他感作用による)、材積的にはいわゆる家具メーカーが使用するほどの量はとても確保できません。それを逆手に取るかたちで、当工房ではクルミをメインに使うことで零細小規模の木工房としての特色を出そうとしているわけです。

しかしよく使う材料でありながら、杢の出現は他の広葉樹にくらべると相当すくないほうです。太い枝の出た箇所や幹の股、根に近いところなどに部分的にしわ状の杢が見られるくらいで、板や角材全体に杢が生じているなどということはまずありません。ところがこれまでにたった1枚だけ、寸二厚(36mm厚)、長さ2mほどの板全体に鳥の羽根様の杢が生じていました。鶉(うずら)杢といえるような細かく明瞭なところは旋盤でいくつか蓋物をこしらえたのですが、今回のペーパーウェイトはその残りです。杢の程度はおだやかですこしもの足りない気もしますが、普段使いで気軽に使うにはかえっていいかもしれません。

玉杢や縮杢や波状杢・鳥眼杢・キルテッド(布状のはっきりしたしわ杢)といった明白な杢ではなく、なんといって呼んだらいいかはっきりしない。またひとつの材料の中なのに杢の表情にずいぶんと差があるといった場合は、まあ苦し紛れですが「変わり杢」と呼んでいます。

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ペーパーウェイトの素材 7 ハードメープルの縮杢

 

年内に発売予定のペーパーウェイトD、約60本。それに用いた素材9種類について順次説明をしています。スーヤバール、マスールバーチ、タモバール、キハダ縮杢&スポルト、ケヤキ樫目杢、シャム柿に続いて今回7回目はハードメープルの縮杢です。

じつはハードメープルという樹木は存在しません。たくさんの種類がある北米産のカエデの仲間のうち、比較的硬質のカエデ類をハードメープル、軟質のカエデ類をソフトメープルと流通上便宜的に呼んでいるだけです。下の写真はアメリカ産の「ハードメープル」として輸入され販売されていた板でこしらえたペーパーウェイトですが、おそらくはシュガーメープル(サトウカエデ)かと思います。日本での近似種というとイタヤカエデあたりでしょうか。

辺材は灰白色、心材は淡灰黄褐色。肌合いは名前のとおりかなり硬く緻密で滑らか。気乾比重は0.7くらいあるので、かなり重いほうの部類に入ります。強度も非常に高く、家具・什器・建築・フローリング・楽器など、広範囲に利用されています。ただし加工は逆目が立ちやすく、切れのわるい刃物ではうまく切削できず焦げ目がつきやすいなど、けっして楽とはいえません。

ちなみにソフトメープルと呼ばれるカエデ類はレッドメープル、シルバーメープル、ビッグリーフメープル、ボックスエルダーなどの樹種をいい、材の色は総じてハードメープルよりやや濃色で、比重は0.54程度、硬さはハードメープルの3/4ほどとされています。

ハードメープル、ソフトメープルもともに北米では長年計画的に大量に植樹・生産されていて、チェリーやウォールナットなどにくらべればわりあい安価に入手することができます。ただ今回のような無地で縮みがきれいに出ている材はもちろん稀で、値段もぐんと高くなります。1m^3で100〜150万くらいでしょうか。

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ペーパーウェイトの素材 6 シャム柿

 

年内に発売予定のペーパーウェイトD、約60本。それに用いた素材9種類について順次説明をしています。スーヤバール、マスールバーチ、タモバール、キハダ縮杢&スポルト、ケヤキ樫目杢に続いて今回6回目はシャム柿です。

シャムといえばタイ国の古い名称ですが、樹木のほうのシャム柿はじつはタイにも柿の木にもまったく縁もゆかりもありません。ごらんのように黒々とした木材で不規則な模様が入っており、日本産の黒柿にわりあい似ています。そのため数十年前からすでに高価かつ希少な材となりつつあった黒柿(クロガキ)の代替え材として、ある業者が中南米からこの木材を輸入しました。その際、他の競争相手(銘木屋さん)に産地を知られないように「シャム柿」と勝手に名付けたということです。

植物学的にはカキノキ科ではなくムラサキ科に属する広葉樹で、学名はCordia dodecandra、中南米のメキシコやグァテマラ等に生育していますが、現地でも稀産種のようです。学名のコルディア-ドデカンデラという名前からして怪しい雰囲気ですが、現地ではシリコレ(Ciricore)と呼ばれています。ちなみにシリコテ、ジリコテなどは誤表記でしょうね。

気乾比重は0.9〜1.0くらいあり、非常に重く硬い木です。木理が交錯していて加工もしにくいのですが、ていねいに研削すればきわめて滑らかで光沢のある肌合いになるのは黒柿や黒檀などと共通しています。ただ黒柿と大きく異なるのは、黒柿の黒い紋様が年輪などには無関係に年輪の境界を越えて不規則に広がっているのに対し、このシャム柿の場合はバブル状の黒い紋様があくまでも年輪内にとどまっていることです。摩訶不思議な模様とはいえ、黒柿とはちがってその樹本来の正常な組成ということですね。

板目で使うともやもや、ぐねぐねとした不気味な表情になることもしばしばで、よほどうまく使わないと下品になってしまいがちです。黒柿はどこまでいっても品がある杢なので、やはり黒柿にはかないませんし、見る人が見れば黒柿とは違う材であることはすぐにわかりますので、厳密には黒柿の代替え材にはならないと思います。もっとも値段的にはシャム柿もけっして安いものではありません。1立法m当たり200〜400万ほど。上等品だとローズウッドやクラロウォールナットなどと同じくらいしますね。→黒柿は同700〜3000万くらいです。

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ペーパーウェイトの素材 5 ケヤキの樫目杢

 

年内に発売予定のペーパーウェイトD、約60本。それに用いた素材9種類について順次説明をしています。スーヤバール、マスールバーチ、タモバール、キハダ縮杢&スポルトに続いて今回5回目はケヤキの樫目杢です。

樫目とは「カシノキの木目によく似た杢」ということですが、そもそもシロガシやアカガシの木目はどんなものか判然としません。鉋の台やノミの束などにカシノキはよく使われるとはいえ、私が使っているそれらの道具を見ても実際にはさまざまな木目をしています。ただいちばん上等な台であると親方から昔いわれた鉋の台はたしかに、下の写真の手前のペーパーウェイトの上面に似ていなくもない気がします。

ケヤキの杢といえばなんといっても玉杢やその系列の杢が有名ですが、今回の樫目杢は逆にあまりにも杢が細かすぎて、遠目にちょっと見ただけでは杢ではなく単なる材面そのものの模様と思われかねません。よく見るときわめて複雑にして繊細、しかも鏡面塗装によって立体的な深みがあり凹凸面かと錯覚するような魅力的な杢です。1本ごとに微妙に表情が異なります。奥のほうの側面には縮みも見えていますね。

 インターネットで杢について検索していたら「如鱗杢(じょりんもく)」というものがありました。魚のうろこを連想させるような杢ということで、今回の杢はたしかにそんな感じもあります。ケヤキの杢のなかでも最高級のものだそうです。

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ペーパーウェイトの素材 4 キハダの縮杢&スポルト

 

年内に発売予定のペーパーウェイトD、約60本。それに用いた素材9種類について順次説明をしています。スーヤバール、マスールバーチ、タモバールに続いて今回4回目はキハダの縮杢と縮杢+スポルトです。

キハダは漢字では黄檗または黄肌・黄膚と書きます。ミカン科の落葉高木ですが、内樹皮がカレー粉のようにまっ黄色をしており、その部分を煎じて胃腸薬に使われたり、染料として利用されています。材木としては比較的大きくなる樹なので家具調度品などにしばしば使用されるのですが、木目はクリによく似ているものの色味はやはりいくらか黄緑色を帯びています。薬用成分ベルベリン等を含む樹脂成分のせいか、色やけ日焼けをおこしやすいのが欠点といえば欠点です。それを防ぐために(目立たないようにするために)濃いめの着色をして和家具などに用いられることがふつうです。

キハダは通常はたいへん素直な木目なのですが、まれに老大木で縮杢や玉杢などを生ずることがあります。写真の手前の正立しているペーパーウェイトが縮杢(部分的にはさらにキルテッド=しわ杢)で、奥の横倒しにしてあるものには縮杢にくわえて黒い色素が木目に沿って沈着。まるでキジ猫のような紋様と色あいですね。これはものすごく希少で貴重なものです。

杢ともなんとも名付けようのない、非常に変わった紋様や虫食いや変色が生じた材のことをスポルトと呼んでいます。スポルトはスポーツの語源ですが、なんともともとは「冗談・戯れ言・楽しみ・変わり者」という意味があるのだそうです。

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ペーパーウェイトの素材 3 タモのバール

 

年内に発売予定のペーパーウェイトD、約60本。それに用いた素材9種類について順次説明をしています。スーヤバール、マスールバーチに続いて今回3回目はタモのバールです。

材木屋さん家具屋さんでタモというと通常はヤチダモのことをさします。モクセイ科の落葉広葉樹で、樹高最大35m、胸高径1mにもなるとても大きな木です。広葉樹には珍しく幹が通直で、木目の整った長い材が取れるので、家具や各種器具、建具、建築造作材など広範に用いられています。ただ成長が比較的はやく大きくなるぶんだけ木味は素直すぎて、小物類にはあまり向いていないともいえます。

今回のタモは同じタモでもバール(burl)=瘤材。複雑に曲がりくねった年輪や無数ともいえる葉節の跡が絡まり合って、たいへん奇妙で面白みのある表情を呈しています。落葉広葉樹でケヤキやニレなどでは瘤杢はさほど珍しくはありませんが、タモはめったにないと思います。当工房でもはじめてお目にかかりました。

ただしバールと名のつく材は総じて乾燥が難しく、一般的な木材より歪みやひび割れなどが生じやすいので注意が必要です。カットする方向によっても雰囲気がまるで違ってくるのですが、せっかく苦労して木取・下拵えを終えた材が結局使いものにならなかったということもあります。今回はまずまずうまくいきました。

写真は手前は正立、奥は向こう側に倒した状態ですが、赤味の部分と白太の部分とできれいなツートンカラーをなしています。

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