年内に発売予定のペーパーウェイトDタイプ約60本ですが、計9種類の木質素材はこれまで他の家具・木製品も含めて未使用、またはペーパーウェイトとしては未使用のものを8種類含んでいます。そこでこれを機会にそれぞれの素材についてやや詳しい説明を順次行っていきたいと思います。
まずはスーヤ バール(Thuja burl)です。バールは樹の瘤のことですが、スーヤ(またはツーヤ)はヒノキ科クロベ属のことで、その属に分類される針葉樹の一種ということになります。日本名を「ニオイヒバ」とする説もあるようですが、あまりはっきりしません。産地は購入先の銘木屋さんの言によればアフリカ大陸北西部の国のモロッコだということですが、これもほんとうに確かなことなのかの確信は持てません。なにしろ木材図鑑にもインターネット上にもほとんど情報がないからです。一部に、高級車の内装材として使われることがあるとか、ビリヤードのキューの最高級素材として使われることもあるなどの話もありますが、その程度の不確かな話です。
しかしながら針葉樹にしてはずいぶん硬くて重く、計算してみると比重は乾燥材で0.95ほどあります。つまりかろうじて水に浮くということです。樹脂分がずいぶん多く、サンディングするとペーパーの研粒がすぐに目詰まりをおこしてしまいます。ニオイヒバとも呼ばれるようにたしかにヒノキやヒバとよく似た匂いが強く漂います。私は若干アレルギー体質なので、このスーヤバールの粉塵に長時間さらされると呼吸器のまわりがひりひりしてきそうです。
見た目にはなんといっても豹柄ですね。赤褐色の地に芯のある黒点がランダムに散らばっています。もちろん一個のスーヤバールの素材全体に満遍なく豹柄が存在しているわけではないので、木取をする際には仕上がりの表情を予測して慎重にカットし削っていきます。
今回は4本完成しましたが、下の写真は手前が正立、奥が横倒しした状態です。底面に電熱ペンで工房名・通し番号・素材名を焼き入れしてあるのも見えています。実物は透明な被曝をかぶったかと思うほどの艶のある塗装仕上げとなっています。