日別アーカイブ: 2015年12月22日

ペーパーウェイトの素材 6 シャム柿

 

年内に発売予定のペーパーウェイトD、約60本。それに用いた素材9種類について順次説明をしています。スーヤバール、マスールバーチ、タモバール、キハダ縮杢&スポルト、ケヤキ樫目杢に続いて今回6回目はシャム柿です。

シャムといえばタイ国の古い名称ですが、樹木のほうのシャム柿はじつはタイにも柿の木にもまったく縁もゆかりもありません。ごらんのように黒々とした木材で不規則な模様が入っており、日本産の黒柿にわりあい似ています。そのため数十年前からすでに高価かつ希少な材となりつつあった黒柿(クロガキ)の代替え材として、ある業者が中南米からこの木材を輸入しました。その際、他の競争相手(銘木屋さん)に産地を知られないように「シャム柿」と勝手に名付けたということです。

植物学的にはカキノキ科ではなくムラサキ科に属する広葉樹で、学名はCordia dodecandra、中南米のメキシコやグァテマラ等に生育していますが、現地でも稀産種のようです。学名のコルディア-ドデカンデラという名前からして怪しい雰囲気ですが、現地ではシリコレ(Ciricore)と呼ばれています。ちなみにシリコテ、ジリコテなどは誤表記でしょうね。

気乾比重は0.9〜1.0くらいあり、非常に重く硬い木です。木理が交錯していて加工もしにくいのですが、ていねいに研削すればきわめて滑らかで光沢のある肌合いになるのは黒柿や黒檀などと共通しています。ただ黒柿と大きく異なるのは、黒柿の黒い紋様が年輪などには無関係に年輪の境界を越えて不規則に広がっているのに対し、このシャム柿の場合はバブル状の黒い紋様があくまでも年輪内にとどまっていることです。摩訶不思議な模様とはいえ、黒柿とはちがってその樹本来の正常な組成ということですね。

板目で使うともやもや、ぐねぐねとした不気味な表情になることもしばしばで、よほどうまく使わないと下品になってしまいがちです。黒柿はどこまでいっても品がある杢なので、やはり黒柿にはかないませんし、見る人が見れば黒柿とは違う材であることはすぐにわかりますので、厳密には黒柿の代替え材にはならないと思います。もっとも値段的にはシャム柿もけっして安いものではありません。1立法m当たり200〜400万ほど。上等品だとローズウッドやクラロウォールナットなどと同じくらいしますね。→黒柿は同700〜3000万くらいです。

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