日別アーカイブ: 2012年12月15日

刃が立つ

 

ものは試しと鉋の刃を立ててみました。もちろんタネも仕掛けもいっさいありません。砥石と刃がほぼ完全な平面になっていれば水分を含んだ研泥を媒介として密着します。

刃の角度は35度くらいなので、その研いでいる面の大きさより何倍もある鋼の重い鉋刃全体が斜めになったままずっと倒れないでいるのは、一見不思議な光景です。しかしプロならば、ミクロン単位の薄削りなどと同様に、できて当たり前でとくべつ自慢するようなことではありません。

まっすぐ平らに研いだ刃は切れ味がいいのは当然ですが、長切れするようにも思います。それは私のイメージでは、食品などの包装のポリ袋にある小さな切れ目のようなものかもしれません。袋を破こうとしたときに袋の端1カ所に小さな切り欠きが設けてあると、力がそこに集中するので簡単に破くことができます。刃物もまっすぐ圴一に研がれていないと、ミクロ的にみて刃先が他のところよりも粗い部分に衝撃が集中しごく小さな刃こぼれを起こす。それが連鎖していって刃が早期に切れなくなる、というような感じです。

ちなみに上の写真のような状態はふつうでは起きません。それはもうすこし研面に水気があったほうが研ぎやすいことと、鉋の刃は材料を削ったときに耳が立たないように左右両端がわずかにカーブを描くように研ぐのが通例だからです。言うまでもありませんが、そのカーブは任意のカーブであって、研ぎが下手な人がいやおうなしに丸っ刃になってしまうのとは違います。刃をまっすぐに研ぐ。その上で意識的に必要なだけの丸みをつけるということです。