
新築工事中の自宅ですが、雨天続きでのびのびになっていた屋根の瓦葺きがやっと終わりました。写真は東側のいわば裏からみた状態です(左の切妻側に玄関)。外壁は天気その他の理由もあってまだごく一部しか張られていませんが、仕上がりは真っ白の壁なので、上の写真のタイベック(透湿防水シート)を張ってある現状とだいたい同じような印象になるはずです。全体として白と黒のモノトーン+単純な三角屋根の建物で、あまり住宅らしくない雰囲気になるかもしれませんね。
細長い平屋で6寸勾配のやや急な屋根なので、見た目の量感として屋根の分量がかなりあります。つまり外観的には屋根をどういう素材のどんな色にするかでずいぶんイメージが違ってくるでしょう。最初の見積ではガルバリウム鋼板で葺く場合も試算してもらったのですが、やはり耐久性や全体の形状、壁等のバランスを考えると瓦葺きがいちばんいいということになりました。しかも洋風の瓦とか色付きの瓦ではなく、純和風の波状の真っ黒い瓦です。現在では主流ともいえるガルバリウム鋼板にくらべて屋根の単価は5割くらい上がってしまいましたが、そのかわり鬼瓦その他の装飾的な要素は極力省いてもらいました。まあ予算がもし潤沢にあったとしてもそういった飾り物は私は好みませんけれど。
いよいよ瓦を葺くという段になって、ずっと気にしていたのは軒先の瓦です。これもふつうは特にお客がなにも言わないかぎり丸みのついた饅頭(万十)軒という軒瓦になるらしいのです。が、あらためて瓦について調べたり既存の他の建物を仔細に見てみると、比率はずっと下がるものの饅頭以外にもいろいろな形状の軒先があるようです。それでもう一度瓦屋さんと詳細な打ち合わせをし(この過程で当初予定の業者から別の業者に変更)、メーカーから見本もいくつか取り寄せてもらって、それで決めたのが下の「ストレート軒」という瓦です。先端の木口と下端が平になっています。写真はまだ木部の塗装をしていない段階のものですが、シンプルでなかなかいい感じです。

もっとも瓦の種類を決めたそのあとがたいへんで、このストレート軒瓦を使う人はこのあたりではほとんどいないらしく、しかもメーカーにも真っ黒のは在庫がないということで(産地の愛知県周辺では銀灰色が主とのこと)、注文で作ってもらうことになってしまいました。屋根材は瓦に限りませんが水対策の関係でかならず一番下から葺きはじめます。下から上に向かって順に葺いていって棟を最後に施工。ということは今回は軒先の瓦ができてこないことには屋根工事が始まらないということです。その後の悪天候も重なって、結局発注してから工事が終わるまで1ヶ月半ほどかかりました。
付け加えるならば、下からはまったく分かりませんが棟には瓦葺用の換気部材が4カ所付いています。通常は壁の切妻部分の最上部に換気口を設けるのですが、どうも見た目の納まりがよくありません。とりわけ今回の建物は「シンプル・イズ・ベスト」を旨としているので、目立つところにぽっかり穴なり格子なりフードなりが付いているのはなんともそぐわない。それで瓦屋さんとも相談して棟のところで換気することにしました。物理的にもいちばん理にかなっています。
あとは雪止めですね。これも桁の上あたりにだけ雪止めの突起(現在は瓦と一体になっています)が付いているのは「いかにも」という感じで美しくないので、屋根全体に散らばしてもらいました。下のほうは「千鳥」、上は「大千鳥」という配置とのことです。基本的に雪は屋根に広く薄く平均して載せたままにするという指向です。
