月別アーカイブ: 12月 2010

新しいスライド丸ノコ

100Vの可搬型丸ノコは、数十年前から大工仕事などの木工には欠かせない電動工具となってきました。そして10数年ほど前からはさらに、現場仕事では必須の電動工具といえるのがスライド丸ノコです。この機械の丸ノコ部分は基本的に手持ちの丸ノコと同じものですが、下のテーブルにセットした材料を、精密なレールに沿って丸ノコが後方に移動しつつ材料をカットしていきます。刃は左右に大きく傾きテーブルも回転するので、二方向に任意の角度の付けて切ることができます。ストッパーを利用して一定の長さに切りそろえることも得意です。

機種によって切断可能な厚さや幅や角度はかなり差がありますが、大きな刃を装着できる機械は全体の寸法や重量も大きくなり、持ち運びするのはそのぶんたいへんになります。そのため、建設現場などでいちばん多く使われているのは直径190mmのタイプでしょうか。最近はその下の165mmタイプもときどき見かけるようになりました。

写真の機械は当工房で2台目のスライド丸ノコで、マキタの最新型LS0814FLです。刃の直径は216mmで、直角切断が65~75mm、左45度傾斜で47~50mm、右45度傾斜で20~30mmの切断ができます。20年近く昔に買った日立工機の最初のスライド丸ノコC8Fは、テーブルは回転せずヘッドも左にしか傾かなかったので、それにくらべればおどろくばかりに使い勝手がよくなりました。あと特徴としては切断する箇所のあたりをつけるのに便利なレーザー照射装置がついていること、手元を明るくするフレキシブルな蛍光灯、サイクロン式のダストバッグ、刃の電磁ブレーキ、といったところです。スライドは上下各2本の連動式で、切断最大幅は90度で312mmです。

この種の機械でいちばん重要なのは、いうまでもありませんが切断の精度です。じつは前の機種から買い替えたのもそれが大きな理由のひとつでした。ずっと使ってきての各部の摩耗もあると思いますが、切断面に刃の痕跡=ナイフマークがはっきり出てしまい、そのままでは接合ができなくなっていました。たとえば木口を45度で切った(留め切りした)角材を4本合わせて額物を作るといった場合でも、切断面が荒れているので手作業での修正が必要です。無駄な手間ですね。

大型200Vの固定式スライド丸ノコや軸傾斜丸鋸盤ほどではありませんが、こんどのLS0814FLは切った木口そのままで接合可能な程度の精度は出ています。レーザーやサイクロン式集塵装置も快適です。ただ、角度微調整の機構は奥まった位置に目盛があるなど若干難があります。

スライド丸ノコは可搬型の100V電動工具のなかでは、値段はもっとも高い部類に入ります。LS0814FLも定価だと113,000円(税別)。ホームセンターなどでちょっと見た目にはそっくりで値段がこれの1/3~1/4といったスライド丸ノコが売られていますが、精度や耐久性ははっきり言って話になりません。よけいなお世話かもしれませんが、まあやめたほうがいいです。

栃変杢角形被蓋くり物

トチノキに奇跡的に生じた変杢(かわりもく)で箱を作りました(Ser.No.111)。大きさは幅212ミリ、奥行128長ミリ、高さ33ミリで、蓋は実にほぼ全体がかぶさる形の箱です。上面はフラットです。立ち木で生きている状態で虫食いのピンホールが点々と入り、そこから変色がはじまっています。普通ならただのシミになるところですが、もともとが縮みが入った木であったためにシミはうねうねとした、まるでなにか得体の知れない生き物が集団で押し寄せたような不思議な紋様になりました。

11月19日のブログにのせた極上の縮みは、たしかにすばらしいものですが、評価も歴史的に高水準で一定しているのでウンとお金を出せば入手できないわけではありません。それに対し、写真のような変わった杢の材は数々の偶然と幸運が重なってできた、きわめて稀なものです。欲しいと思い探してもまず同じような材料は手に入れることはできないでしょう。

数年前に、中が空洞になった巨大なトチノキからとれた盤を購入。それを挽き割った際の十数枚の板の中の2枚、それも一部分に生じていた変わり杢でした。写真のような箱を3個くらいかろうじて作れる程度のわずかな量です。放っておけば虫穴のあたりからはじまって全体が腐ってしまう運命にあったものが、そこまで至らないうちにたまたま材木屋さんの手に渡り、製材・乾燥・保管されていたものが、回り回って私のところに来たわけです。

対人地雷除去機

トミカの模型で、No.014 コマツ対人地雷除去機 D85MS 、スケールは1/142です。全長7cm程度の小さなものですが、機能的な美しさをよくあらわしていると思います。ちなみに値段は定価378円。

本物のほうは27トンの通常の建設機械であるブルドーザーに、対人地雷を安全かつ効率的に除去する(爆破処理する)ための特別仕様をほどこしたものです。対人地雷が対象といっても、実際にはもっと大きな対戦車地雷などが混じっていることもあるため、搭乗はせずに無線による遠隔操作もできるようになっています。

日本製の地雷除去機としては山梨日立建機のパワーショベル型のものが、テレビ番組で何度も紹介されるなど、一般にもよく知られています。民間企業のこうした取り組みはもちろん賞賛されてしかるべきことですが、実際配備された台数はそれほどたいしたものではありません。山梨日立建機の場合は地方の中小企業が莫大な赤字を出しながらの開発・提供だったといいますし、コマツの機械も実数は数台程度という話もあります(現在のはっきりした実績をご存知の方はお知らせください)。

日立やコマツといった大企業の「社会貢献」の宣伝材料にすぎないという批判もないわけではありませんが、ほんとうはこういった事業は民間企業よりも日本政府こそが本腰を入れて行うべき活動ではないでしょうか。

iMac 27インチ

これまで7年使用していたパソコンはアップルのPower Mac G5でしたが、ついに命が尽きてしまいました。どうもマザーボードあたりの不具合らしく、スイッチオンにしても反応がなくディスプレイがまったく写りません。導入時は「10年は使おう」と思っていたのですが、それは残念ながらかないませんでした。

中央演算処理装置(CPU)がIBMのPower PC 970で、G4に比べ性能は格段に上がったものの、そうとうの熱が発生します。それを逃がすために本体がアルミ合金でできており、躯体の前後がメッシュになっていて冷却ファンが常に回っている状態です。それでもとくに夏場で大量のデータを処理するときなどはほとんど轟音といっていいほどの音が出ていました。「このまま壊れてしまうんじゃないか?」と不安になるくらい。また冬は室温が2度以下くらいまで下がるとうまく起動せず、ストーブで部屋がある程度あたたまるまで30分から1時間ほど待たなければいけません(外気温と変わらない部屋というのもモンダイですが)。

デザインは今でも非常に気にいっていて、むしろそれが最大の理由で7年前に他のメーカーやiMacなどではなくPower Mac G5を自分初のパソコンに選んだのですが、起動しないのでは論外です。2006年からアップルのパソコンのCPUは全面的にインテルのものに移行しており、そのためにアプリケーションソフトのいくつかはバージョンアップしようにも、CPUがPower PCあるいはOSが10.4のままでは不可能な状況になってしまっていました。当工房のホームページが長期間停滞していたのもそのへんが理由です。私にはパソコン関係のノウハウがまったくといっていいほどないので推測でしかないのですが。

それで約2ヶ月前になりますが、新しいパソコンに買い替えをしました。それが写真のiMacです。ディスプレイの大きさは27インチ、16:9のワイドスクリーン。CPUはインテルの3.2GHzのCore i3、1TBのハードドライブ、4GBのメモリといったところ。上位機種のMac Proなどにくらべると見劣りはしますが、私の用途と目的ではこれでもう充分でしょう。前機種のPower Mac G5が1.8GHzのプロセッサ、160GBのハードドライブ、512KBのメモリ(後から2.5GBまで増設しましたが)でしたから、コンシューマータイプのモデルにもかかわらずこれだけの性能があれば言うことなしです。

届いてみて驚いたのはやはり画面の大きさと美しさです。前のも22インチと大きめではあったのですが、今度のは現在の書類サイズの基本形であるA42枚を余裕で並べることができます。いちいちスクロールする必要がないので、書類の作成やサイトの作成・編集にたいへん便利です。液晶バックライトの画面は発色が均一で美しくより繊細で、写真や動画などがよく映えます。前のは本体とディスプレイが別々で、その本体は灯油の18リットルポリタンクほどの大きさがありましたが、今回のiMacは一体型で厚さは最も厚いところでも6cmほどしかなく、非常にコンパクトです。

基本的にハードディスクで動いているのでいつも冷却ファンが回ってはいるのですが、夜中でもぜんぜん気にならないレベルの音量です(操作していないときで18デシベル)。キーボードとマウスはセットの標準品ですが、どちらもワイヤレスで軽く薄く、非常に快適。電池の持ちもいいようで、単三2本で一ヶ月以上もっています。その電池もサンヨーの充電池エネループなのでコストは激安です。

本体にあらかじめ自動のデータ保存ソフト「Time Machine」が組み込まれていますが、それ用に外付けで1TBのハードディスクドライブをつないでいるので、万一の場合もまずは安心です。パソコンもあまりカスタマイズしすぎると弊害も多いので、できるだけ初期設定のままで使おうと思っています。アプリケーションソフトもバージョンアップがわずらわしいので、最低限の導入ですませるつもりです。

あと交代が必要としたら、やはり7年間使ってきてだいぶくたびれてきたインクジェットのプリンターですが、まあそれは来年ということで。

デスク用キャビネット

以前ウォールナットの一枚板でデスクを製作しましたが、そのお客様からデスク下の左右に置くキャビネット(主に書類入れ)のご注文をいただきました。

デスクのほうが第一級の材料でしたので、キャビネットもそれに負けないような作りにしないといけません。そこで抽斗の前板を左右で連続するようにしました。右側の下の抽斗はA4のファイルを入れられるように深くなっていますが、これの前板と、左側の中段・下段の前板はもともとは一枚の板です。左右の上段どうしも同様。

キャビネット全体の大きさは幅420mm、奥行500mm、高さ560mmです。デスクの高さが700mmでしたので、幕板の下端とキャビネット天板との間は33mmくらいの隙間があり、ここにも新聞や雑誌・カッティングボードなどを一時的に置いておくことができます。側面の板と天板とは9枚組手で合わせています。抽斗内部はすべて無地柾目のスプルス(マツ科トウヒ属の針葉樹)で、合板・集成材などはいっさい使っていません。本体背板ももちろんウォールナットの無垢板です。

こういったタイプの家具でよくあるようなキャスターや抽斗用の金属のスライドレールは、このキャビネットではあえて不採用としました。人それぞれ、また工房や木工所によって考えがちがうと思いますが、当工房ではできるだけ金物類、とくに現代的な高機能金物は使わないようにしています。金物の耐久性や、将来の交換に対する不安(すぐに廃番になる金物が多い)という理由もありますが、それ以上に理屈抜きにそういう「便利な」家具はなんだか私はあまり面白くないんです。

タモのバール

原因はよく分かりませんが、樹木にはときおり瘤が生ずることがあります。そのせいで枯れてしまったというような話はきかないので、別に病気というのではなさそうですが、まあいずれにしろ奇形にはちがいありません。

用材としては一般的にはマイナス要因になるのですが、反面その瘤の部分に非常におもしろい杢があらわれることがあります。繊維組織が複雑に入り組んでいるので、乾燥途中に割れたりねじまがったりすることも多く、また虫害や腐朽がすすんでいる場合も珍しくありません。しかしまれにはそうした大きな欠陥がなく、木工の貴重な素材となることがあります。

写真のタモ(ヤチダモ)の瘤材もそういう希有な材料のひとつです。最近は瘤というより英名のバール(burl)と呼んだほうが、むしろ通りがいいかもしれませんが、タモのバールはめったにないのではないかと思います。私は初見です。タモの玉杢や縮みなどはわりあいよく見かけますし、当工房でもいくつか持っていますが、他の樹種にくらべるとそういう変わった杢でもあまりうるさくないのがタモのいいところです。

写真は木裏側でほぼ全体が写っていますが、サイズは厚さ110~200mm、幅は420mm、長さが750mmといったところです。厚みがそうとうあるので、いろいろな加工ができそうですが、さて。

アングルドリル

ごくたまにしか使わないものですが、いざというときにはそれがなくては仕事にならない道具というものが、木工にもいろいろあります。写真のアングルドリルもそのひとつ。

ふつうドリルはモーターの回転軸とドリルの軸は一直線上に連なっていますが、それは穴をあけるときに最も力を入れやすく、構造的にも単純明快にできるからです。しかしそのぶんどうしても全長は長くなってしまうので、手がかろうじて入るような狭い場所ではドリルを使うことができません。そうしたときに出番となるのがアングルドリルです。先端が下向きにおれまがっていますが、モーターの回転軸からの力をギアを介して90度まげているわけです。

穴をあけたりネジをまわしたりするために一番先にはキリやドライバービットを装着するためのチャックがついていますが、これもできるだけ丈が短くなるような工夫があれこれなされています。ヘッドの高さ=ヘッドハイトはチャックの先まで(爪を除く)66mmしかありません。ただこれにキリやビットの長さがプラスされるし、ネジ止めであればネジの長さ分も加わるので、実際には最低でも100mmくらいの空間がないとこのドリルでも使えません。

それでも通常のドリルの場合、当工房で持っている最短のドリルでボディ後部からチャック先端まで145mmありますから、145-66=79mmの差は実際作業する上ではかなり大きな差といえます。写真では19mmの超短のプラス2ドライバービット+38mmのステンレスコーススレッド、刃先を照らすLEDの照明、ふれ止めのグリップをいっしょに写しこんでいます。

このアングルドリルは充電式です。14.4V3.0AhのリチウムイオンのバッテリーBL1430。このバッテリーはマキタのなかでも最も汎用性の高いもので、現在48機種の電動工具等に共用可能です。当工房の場合は、インパクトドライバー、ドリルドライバー、丸ノコ、掃除機、作業灯です。リチウムイオンの充電池は自然放電がほとんどないこと、メモリー効果がないので継ぎ足し充電が可能なことが大きな特徴です。

吊り棚&額縁

当工房では主に注文家具を製作していますが、テーブルや戸棚、簞笥やベッドといった大きな家具だけではありません。

写真のような壁にかける小さな飾り棚や額縁なども一点からお作りします(写真の品はともにウォールナット製)。サイズも材料も、それから形状やデザインも、だいたいどんなご希望にも応じることができます。ただし「難点」がひとつ。それは小さくて簡単な構造のものであっても、けっこうな価格になってしまうこと。

もちろん値段は、かかった材料や手間を厳密に記録・計算し、それに常識的な利率をくわえて出していますが、市販の量産された小家具や木製小物にくらべるとずいぶん高いと思われることが実際あります。

同じものを何百何千とあらかじめ作るのとくらべれば、たとえ額縁一枚でもお客様と打ち合わせをし、デザインを考え、場合によっては試作をし、図面と見積もりを提示、それから製作と最後に納品するまで、多くの手間暇がかかります。小物一個だから簡単にすぐできるということはけっしてありません。

それでもよろしければ、どうぞご注文ください。

スポルテッド・メープル

当工房の旧ホームページでスポルテッドという材料についてはわりあい詳しく書いたことがあるので、できればそれをお読みいただければさいわいですが  (→http://e-o-2.com/eo2_Old_Page/daydesignp132a.html  → http://e-o-2.com/eo2_Old_Page/daydesignp133a.html )、そこで具体的に取り上げたのは国産のイタヤカエデとカシノキのスポルテッド材でした。今日ご紹介するのは同じカエデ類でもアメリカ産のソフトメープルです。

ソフトメープルというのも材木流通上の通称で、ハードメープルに対するソフト、つまり比較的軽く柔らかいカエデの総称です。シルバーメープル、レッドメープル、ビッグリーフメープル、ボックスエルダーといった樹種のようですが、写真の材料がなんという種かはよく分かりません。しかしながら、これはたいへんみごとな紋様です。

黒いランダムな筋と、それで区切られた微妙な色合いのモザイク。そのバランスが絶妙といっていいですね。自然界の偶然の産物なわけですが、まるで抽象絵画かなにかのよう。大きさは幅154mm、長さ600mmですが(写真は材料の全体像)、厚さは50mmとこの手の材料としては厚みがあります。薄板だとそれでしか使えませんが、厚みがあれば角材にしたりブックマッチに挽きわったり、それから旋盤や掘り物にも使えます。カットする場合はその位置や方向や角度によって紋様は大きく変化します。その変貌ぶりが楽しみでもあり悩みでもあります。

山道

登山道とはいえどすべて誰かがはっきりとした意思をもって最初に切り開き、その後もずっと誰かしらが維持管理してきたからこそ、いま現在もそれは道として存在します。道は「自然に」道になるのではありません。とりわけ森林限界以下の中・低山地の場合、人が歩かなくなれば、もしくは誰かが刈り払いや補修などをしなくなれば、たちまち薮化してしまい、ほどなく廃道になってしまいます。

そうした背景を抜きにしても、山中の樹木に囲まれた細い道は、私にはたいへん惹かれるものがあります。ことに自然林のなかをすこし曲がりくねりながら遠くへとのびている道は、なぜか夢や郷愁をさそうものがあります。

鳥海山などに登っていて、ああいい道だなあと感じたときは、その余裕があればですができるだけ写真を撮るようにしています。その中からいくつかピックアップしました。1枚目と4枚目が出羽山地(出羽丘陵)、その他は鳥海山です。季節は5月〜11月。