トチノキに奇跡的に生じた変杢(かわりもく)で箱を作りました(Ser.No.111)。大きさは幅212ミリ、奥行128長ミリ、高さ33ミリで、蓋は実にほぼ全体がかぶさる形の箱です。上面はフラットです。立ち木で生きている状態で虫食いのピンホールが点々と入り、そこから変色がはじまっています。普通ならただのシミになるところですが、もともとが縮みが入った木であったためにシミはうねうねとした、まるでなにか得体の知れない生き物が集団で押し寄せたような不思議な紋様になりました。
11月19日のブログにのせた極上の縮みは、たしかにすばらしいものですが、評価も歴史的に高水準で一定しているのでウンとお金を出せば入手できないわけではありません。それに対し、写真のような変わった杢の材は数々の偶然と幸運が重なってできた、きわめて稀なものです。欲しいと思い探してもまず同じような材料は手に入れることはできないでしょう。
数年前に、中が空洞になった巨大なトチノキからとれた盤を購入。それを挽き割った際の十数枚の板の中の2枚、それも一部分に生じていた変わり杢でした。写真のような箱を3個くらいかろうじて作れる程度のわずかな量です。放っておけば虫穴のあたりからはじまって全体が腐ってしまう運命にあったものが、そこまで至らないうちにたまたま材木屋さんの手に渡り、製材・乾燥・保管されていたものが、回り回って私のところに来たわけです。