月別アーカイブ: 11月 2010

組立機

建築物の引戸や扉などの建具を組み立てるのが本来の役目の機械です。建具屋さんでは必須の機械ですが、家具作りをメインとする小規模の木工房でこの組立機を備えているところは少ないと思います。しかし家具でもキャビネット類には引戸や扉はつきものですし、矧合(はぎあわせ)といって、幅の狭い板を何枚も接合して幅広の板を作ることがよくあります。そういうときにはとても重宝する機械です。

組立機がない場合は棒状のクランプを数本〜十数本も用意してそれで部材の組み立てや板のはぎ合わせをしますが、大物や数があるときはかなりたいへんな作業となります。腕力もけっこう必要となりますね。

ただもともとが建具用ですから、これで締め付けが可能なサイズは厚さはせいぜい50mmくらいまで、長さが2300mm、幅が1420mmまで。また傾斜や曲線がついたものは困難です。逆に言うと四角四面の部材や板であれば均等に強力にいとも簡単に接合することができます。

締め付けは上部にある頑丈なビーム(?)を、左右の太く長い2本の角ネジをモーターでまわして降下させて行うメカニカルなものなので、いったん締めてしまえば電気を切っても大丈夫。圧力の調整はバネを巧みに利用した仕組みのダイヤルで簡単にできますが、適正圧力できちんと締めないと接合不良をきたすか反対に材料が破損してしまいます。必要な圧力の算出は例えば板はぎの接着であれば、使用する接着剤の適正圧が1cm2あたり仮に3kgとすると、厚さ3cm長さ200cmの板なら3×3×200=1800kgの力を加えないといけないことになります。写真の機械は最大10トンまで圧締可能です。

木工房で組立機があまり普及していないのはごらんのとおり図体がずいぶん大きいことと、新品だと100万近くするので、多少めんどうでもふつうの棒状のクランプで作業はできるからです。当工房でもとうぜんのことながら新品など買えるわけはありませんので、廃業した建具屋さんからすこぶるつきの年期物を安くゆずってもらいました。

上の写真は締め付ける前の準備段階のもので、機械の盤面に接着剤が付着しないようにポリスチレンの中空の細板を9本仮止めしています。下の写真は厚さ3cm長さ222cmのスプルス(針葉樹でヒノキなどの仲間)の無地柾目の板を6枚はぎ合わせて、幅920mmの一枚の大きな板を作ろうとしているところです。

サーモスの魔法瓶

サーモス(THERMOS)の魔法瓶を数年前から愛用しています。写真は工房で使用中のTHJ-2000(左)とTHS-2000(右)ですが、左のほうは旧型です。自宅では新型のTHS-1500と、アウトドア用のFET-600Wを使用中。いずれも二重のステンレスの真空断熱構造で、性能はすこぶるいいです。口がぐわんと大きいので保冷用に氷のブロックを入れることもできるし、内部の洗浄も楽にできます。

魔法瓶といえば25年以上にわたる工房での作業で、内瓶がガラス製のものから始まって、電気でわかし保温するものまでいろいろ使ってきましたが、今はサーモスのこれにまさるものはないと思っています。とくに冬場は工房で石油ストーブをたいており、薬缶で湯を簡単にわかすことができるので、わいたらすかさずその熱湯を魔法瓶に移しておきます。

保温性能がどれくらいすぐれているかですが、あまりいいかげんなことを書いてもと思い実験してみたところ、前々日の昼すぎに入れておいた熱湯が、48時間後でも42℃ありました。気温が4〜10℃くらいの環境でこれだけ保てばたいしたものです。買った当初、土曜日に入れておいた湯が、休み明けの月曜日でもけっこう熱々なのには、えらく感動しました。ちょっと昔なら、まさに魔法瓶です。

工房での昼食はだいたい自炊していますので、それ用にIHクッキングヒーターがあり、コーヒーや紅茶をいれたりスパゲッティなどをゆでる際は、薬缶や鍋に必要分だけ湯を魔法瓶から注げば、すぐに沸騰します。巷では「いま飲むぶんだけわかす」というタイプの小型の電気ケトルが人気のようですが、わざわざもうひとつ「調理器具」ふやす必要はありません。性能のいい魔法瓶なら、たとえ熱湯ではないにしてもいつでもどこでも暖かい湯を得ることができます。

サーモスでは屋外携行タイプやマグカップ様のもの、アウトドア用・業務用など、ステンレスの真空断熱構造をもったくさんの種類の容器がありますが、デザイン的にもすぐれた製品が多いと思います。とくに写真のTHS-2000は簡潔すぎるくらいにさっぱりしたデザインがじつにかっこいいです。じつは保温性能云々よりも最初はその外観に惹かれて買ったのです。

毎日が鳥海山

鳥海山の麓の町で生まれ育ち、20代の10年ばかりをのぞけば今も毎日のように鳥海山を眺めながら暮らしています。自宅と工房とは車で10分ほど離れていますが、その「通勤」の行き帰りでもかならず鳥海山の姿を目にします。大雨や吹雪でもないかぎりは、自然と頭が鳥海山のほうに向いてしまうんですね。

それで雲のかかり具合とか降雪の程度、新緑や紅葉の進行を確かめるなどします。いや、そういうことのためというよりも、とにかく姿を見ずにはいられない、姿を見ると安心するというかな。用事があって遠方に出かけて何日ぶりかで帰ってきたときも、鳥海山の姿を真っ先に探します。やあ、ただいま、というかんじで。

写真は昨日の朝と夕方の鳥海山です。

黄鉄鉱の結晶

黄鉄鉱(FeS2)の結晶です。鉄と硫黄の化合物で、写真のかたまりは大きさ約8×11センチあります。重さは956グラム。水に沈めて体積を計ってみたところ179mlありましたので比重は5.34ということになります。図鑑等で調べてみると、硬度6~6.5、比重は4.8~5.1とありました。英名はパイライト(Pyrite)で、火打石としても使われたとか。

まるで金みたいにきらきら輝いていますが、鉱物結晶としてはごくありふれたもので、これもたしか7000円くらいで購入したものです。しかしながらいかにも金属!鉱物!という風情がなんとも好ましいと思います。結晶の形はサイコロ状の6面体がもっともふつうですが、ほかに5面体、8面体、5角12面体というのもあるそうです。写真のかたまりもよく見るといろいろな形のものが混じっているようですね。

手の平にのるくらいの鉱物ひとつでも、自然の驚異や神秘というものをつくづく感じます。

ヒノソのゴルジュ

鳥海山の南西斜面を流れているヒノソ(檜ノ沢とも)という渓流があります。鳥海湖と鍋森(1652m)の間の凹部を源頭とし、下流で高瀬川となり月光川本流と合わさって日本海に注ぐ川です。遊佐町の白井新田地区から鳥海湖に至る万助道という登山道は、標高640m付近の渡戸(わたど)でこのヒノソに出会いますが、この渡戸からすぐ下流側はみごとなゴルジュになっています。

ゴルジュというのはフランスのgorge(=喉の意)からきている言葉で、山岳用語・登山用語としては両側が切り立った岸壁になっている廊下のような地形の渓谷をさすのがふつうです。このヒノソのゴルジュは幅の狭いところで3mくらい、深さはその2〜3倍程度、長さは200m弱と規模は小さなものですが、形状としてはまさに典型的なゴルジュといえるでしょう。

写真は今年10月下旬に湧水等の調査採取のおりに立ち寄ったものですが、秋期のうえに近々で降雨がなかったために、谷底にも水流はほとんどありませんでした。そこでそのゴルジュの底に降り立ってみたのが下の写真です。水は伏流水がところどころに顔を出しているものですが、おどろくほど澄んでいます。飲んでもおいしい水です。周りは大昔に鳥海湖あたりから流れ出した溶岩におおわれています。水かさの多いときはきわめて危険な場所ですが、この日は巣穴にこもったような不思議な安心感がありました。

鳥海山は単体の火山としては日本有数の規模をほこる山です。火山体の基底部だけでも東西26km、南北14kmあり、山体崩壊による堆積物もふくめれば南北に40kmにも及びます。五万分の1地形図でほぼ二枚分。「日本百名山」のブームや、中腹まで観光道路が延伸したことで、五合目から頂上にかけての上半分だけが近年注目をあびるきらいがありますが、じつはその下の部分のほうがずっと広大であり変化に富んでいます。隠れた穴場や秘境もたくさんあります。このヒノソのゴルジュもその一つといっていいでしょう。

充電式掃除機

ここ数年来、工房と自宅で使用している掃除機は充電式です。現在使っている機種はマキタのCL140FDとCL141FDの2機種。電池はリチウムイオンの14.4V3.0Ah(BL1430)のものですが、丸ノコやドリル、インパクトドライバーなどと共用のバッテリーとして使い回しが可能で、その汎用充電器で約22分で満充電ができます。

工房では交流電源100Vの小型集塵機や200Vの大型集塵機も使っていますが、自宅ではいまはこの充電式の掃除機だけです。吸込力は落ちますが、通常の細かいほこりやゴミを掃除するにはじゅうぶん間に合うくらいの力があります。充電式のいいところはなんといっても手軽&気軽に掃除ができることで、それは圧倒的に軽いことと電源コードのわずらわしさ(脱着やひきずり、ひっかかり)がないことです。とくに階段や車の中の掃除、または現場仕事でのちょっとした掃除にはもってこいです。あっ、それからスイッチオンでLEDの明かりが点くのもとても助かります。

マキタの充電式掃除機には電池が本体内蔵式のものや、専用電池式のもの、また電圧も7.2~18Vのものまでたくさんの機種がそろっていますが、やはり実際に使用してみると14.4Vの汎用バッテリー差込タイプのものがいちばん使い勝手&コストパフォーマンスがいいと思います。掃除途中で力が弱くなったら他の充電池と差し替えればいいので作業が中断しません。

リチウムイオンの充電池は、以前のニッケルカドミウムやニッケル水素タイプの充電池とちがって自然放電が非常にすくなく、またメモリー効果がないので継ぎ足し充電をしても電池がへたりません(充電は1000回くらいは可能なようです)。つまりいつでもフルパワーに近い状態で掃除ができるということです。

この充電式掃除機ですが、むろん短所(?)もあります。直流14.4Vのモーターで回ることやボディを軽小にするために防音措置がそれほどされていないので、コード付きの掃除機=交流100Vのモーターで回る掃除機に比べると音はちょっと大きいです。CL141FD(最新式はCL142FD)は強弱を切り替えることができますが、それでも夜中に使用するのはきびしいかもしれません。それから吸引力も100Vのに比べると弱い。小石やコインを吸い込むなんてことはできません。もっともふつうの掃除機でも大きなゴミや重さのあるゴミは、いきなり掃除機を使わずにほうきとちりとりで除去してから掃除機を使うというのが鉄則ですが。

あと価格的にも本体+充電池2個+充電器のセットだと定価で35000円前後します(通販をうまく利用すれば25000円くらいか)。当工房の場合はすでに共用の充電池をいくつも使用していたので、本体のみの購入ですみましたが、そうでない場合は一式そろえないといけないのでけっして「格安」とはいえません。

じつを言うと何年か前まではダイソンのサイクロン式掃除機にあこがれていたのです。性能もあるがめちゃくちゃかっこがいい! しかしこの充電式掃除機を使うようになってからはその欲望はきれいさっぱり消えてしまいました。いま欲しいのは、ちゃんとしたほうきですね。ホームセンターで1500円くらいで売っているようなちゃちなほうきではないやつです。

定番の時計3種類

昨日まで(11/21~23)時計展に出した特別製作の時計を3種類掲載しましたが、そのほかに定番としてときどき10個くらいずつ作っている時計が3種類あります。一部は旧のホームページにのせていますが、あらためて全種類のご紹介をします。

やや大きめの掛け時計で、ご家庭やオフィスでメインで使用できます。大きさは直径21センチ、厚さ25ミリ。材質は標準はサワグルミ(沢胡桃)で文字盤全体がすこし凹面になっています。1から12までの数字は特注の焼き印でひとつずつ手で押しています。若干の焼きむらがありますが、それも味わいということで。最初は家具のお得意先から「時計はないの?」というご注文で作ったものですが、さいわい好評でしたのですぐに定番化してしまいました。価格は税込定価14000円(送料は500円)です。在庫あります(2017.01)。

卓上時計です。材質はウォールナット(正式名はアメリカンブラックウォールナット)で、大きさは幅96ミリ、奥行46ミリ、高さ100ミリ。厚みをいかして底面だけすこし斜めにカットしています。スタンドなど背面によけいな出っ張りなしに前面が傾斜するようにです。文字盤はやや凸面。1から12までの数字は打撃で刻印したあとにその凹みを白くペイントしています。価格は税込定価8500円(送料は500円)。在庫あります(2017.01)。

小ぶりの掛け時計。材質はサワグルミ(沢胡桃)で、直径12センチのやや凸面。厚さは25ミリ。周囲に12本の細いスリット(12時はダブルのスリット)を入れています。吊りひもは径2ミリの皮革。キッチンや洗面所、トイレやご自分の部屋などにいかがでしょう。この時計も初めは家具のお客さんからのご希望で作ったものですが、どうせ作るなら定番化できるようなものを、ということでけっこう試行錯誤しました。価格は税込定価6500円(送料は500円)です。在あります(2017.01)。

h・m・s という時計

時計展に出した特製の時計三つ目は「h・m・s」。ごらんのように上からそれぞれ時・分・秒をあらわしています。3つの針の動きはきちんと同調、はしていません。それぞれに別のムーブメントで動いているからで、はっきり申し上げて秒なんかはあまりあてになりません。写真では12時0分10秒くらいですけど。

材質はタモですが、フレームはノーマルなタモ、文字盤は縮み杢または玉杢のタモです。大きさは幅160ミリ、高さ450ミリ、厚さ49ミリで、文字盤はフレームに溝ばめし前面はアクリルのカバーでおおっています。厚みに対し高さがあるので、基本的には壁掛仕様。

この時計も前回(11/22)の「BLACK TOWER」と同じく、なれないと時刻が即座にはわかりません。まあ、こういうのもたまにはいいかな、と。

※価格は税込定価35000円(送料は500円)。在庫あります。

BLACK TOWERという時計

前回(11/21)の時計=ユーランダケアエ(JUGLANDACEAE)とは対照的にちょっと遊びを入れた時計も出品しました。メキシコ産のシャム柿(シリコレ)の厚めの板を塔状にカット。上部に数字を刻んで時計台というイメージです。塔の下のほうには入り口orドアもちゃんとついています。大きさは幅100ミリ、高さ280ミリ、厚さは30ミリで、つや消し塗装を施しています。

材料も数字も針もすべて黒。それで「BLACK TOWER」。もちろんこれでは遠くからは時刻がよくわかりませんが、自分の部屋の壁などに掛けて比較的ま近い距離で見るには大丈夫でしょう。ときにはこういうヘンな時計もいかが?

※在庫あります。税込定価26000円(送料は500円)

ユーランダケアエという時計

直径40センチの大きくてシンプルなデザインの掛け時計。文字盤はサワグルミ(沢胡桃)の一枚板、フレームはアメリカンブラックウォールナットの50ミリ厚の板をリング状に切り抜いたものですが、両方ともクルミ科=ユーランダケアエ(JUGLANDACEAE)の樹木です。1から12までの数字と針は厚さ1ミリ強のホンコクタン(本黒檀)の板を糸鋸で切り抜いてこしらえました。3個くらい失敗して破損してしまいましたが。こちらはカキノキ科。

この時計は今年(2010年)の7月に、愛知県東海市のギャラリートータクで 開催された『16人の木工作家による時計創作展』に出品したもののひとつです。当工房には定番品の時計がいくつかありますが、それとは別に本展用に3種類(2種類は複数個)製作しました。

木製の手作り(一品ものor少量生産品)の時計でシンプル&モダン、そして機能的な時計は、意外にすくない気がします。

※本品は展示会初日にお買い上げいただきました。ありがとうございました。