原因はよく分かりませんが、樹木にはときおり瘤が生ずることがあります。そのせいで枯れてしまったというような話はきかないので、別に病気というのではなさそうですが、まあいずれにしろ奇形にはちがいありません。
用材としては一般的にはマイナス要因になるのですが、反面その瘤の部分に非常におもしろい杢があらわれることがあります。繊維組織が複雑に入り組んでいるので、乾燥途中に割れたりねじまがったりすることも多く、また虫害や腐朽がすすんでいる場合も珍しくありません。しかしまれにはそうした大きな欠陥がなく、木工の貴重な素材となることがあります。
写真のタモ(ヤチダモ)の瘤材もそういう希有な材料のひとつです。最近は瘤というより英名のバール(burl)と呼んだほうが、むしろ通りがいいかもしれませんが、タモのバールはめったにないのではないかと思います。私は初見です。タモの玉杢や縮みなどはわりあいよく見かけますし、当工房でもいくつか持っていますが、他の樹種にくらべるとそういう変わった杢でもあまりうるさくないのがタモのいいところです。
写真は木裏側でほぼ全体が写っていますが、サイズは厚さ110~200mm、幅は420mm、長さが750mmといったところです。厚みがそうとうあるので、いろいろな加工ができそうですが、さて。