月別アーカイブ: 9月 2013

フォトスタンドの穴の仕上

DSCN1012

 

追加製作中のフォトスタンドBタイプですが、角ノミ→トリマー→手ノミで開けたベースの穴を、最後はサンディングペーパーで仕上げます。この穴はあとからスタンドの板を差し込んでスライドさせるためのもので、直接目に触れるわけではありませんが、それでもそれなりにきれいにしておかないと「仕事が雑」という印象を与えかねません。むろんそれ以前にあまり粗面ではスライドに支障をきたすかもしれません。

外側の凸部を磨くのはわりあい簡単ですが、凹部や穴の内側を磨くのはけっこう面倒です。上の写真では穴の大きさよりそれぞれ1mm薄い板に、両面テープでサンディングペーパーを貼付け、それで磨いています。刃物の切削痕(ナイフマーク)やビットの軽い焦げ跡などを除去して通常の8割方くらいにきれいになればよしとします。ただし穴の形はあくまでもきっちりした長方形でないといけないので、ペーパーを不用意にかけてエッジがだれてしまうといったことがないように注意します。

この作業ではペーパーの切れ味が鈍ったらただちににペーパーを貼替えしなければなりませんが、そのためには前のペーパーがきれいにはがれてくれないと困ります。それで当工房ではずっと以前からテラオカのNo.7220という両面テープを使用しています。このテープは接着層の基材がやや厚めに丈夫にできているので、貼ったテープをはがすときに接着層がちぎれることはまずありません。また接着剤も「糊残り」がほぼ皆無の良質のものです。

通常の両面テープでしかも貼ってからすこし時間が経った場合、はがそうと思ってもなかなかうまくはがれてくれません。しまいにはこすり落とそうとする指先が痛くなってしまいます。テラオカのNo.7220はその点、接着力は強いのにはがすのも簡単にきれいにできるので、非常に使い勝手がいいです。ただし値段は同等サイズの普通の両面テープにくらべて2〜3倍くらいするので、後からはがす必要のない場合は安いふつうの両面テープでというように使い分けしています。

こうした「はってはがせる」タイプの両面テープは十数年前はあまり市販されておらず、最初に手にしたのがテラオカのNo.7220だったので、それ以来こればかり使っています。ニットーやセキスイ、3Mなど、他のメーカーからも今は同タイプの両面テープが出ていますが、まあ義理立てという意味もありますので。

 

道標の取付け

DSCN1016_2

 

9月24日に山形県立遊佐高校の2年生たちといっしょに、鳥海山の吹浦口の登山道に道標を取り付けました。写真上は山形新聞9月25日の記事、下の写真は荘内日報9月25日の記事です。他に遊佐町広報からの取材もありました。

中腹の大平(おおだいら)から登り始め、二ノ宿(にのしゅく)、見晴台、清水大神(しみずおおがみ・しみずおおかみ)、とよ、河原宿の5カ所です。下見では7カ所の設置を想定していたのですが、当日は時間等の関係で一部割愛しました。5カ所はいずれも既存の道標(標柱)が朽ち果てて倒壊したり地名の文字がまったく判読不可能な悲惨な状態になっていたので、その替わりです。

厚み25mm幅87mm長さ260mmのヒノキの板に地点名を油性マーカーで2回なぞり、それを樹の幹や枝にはシュロ縄で、岩にはステンレスの針金でしばりつけました。板面には「遊佐高校」の焼印を小さく押しています。

基礎をうち柱を立てて標識を取り付けるような本格的な道標ならもっといいのでしょうが、それにはかなりの費用と時間がかかます。また国定公園内ですから小規模とはいえ「建造物」としての申請と許可を得ることが必要です。遊佐町なり山形県なりが積極的に予算化し施工してもらえれば御の字なのですが、機会あるたびに進言してもまったく実現する気配がありません。とりわけ吹浦口(大平コース)は往時にくらべ登山者が減少しているので、利用者の多い象潟口(鉾立コース)などから後回しにされているきらいがあります。

板きれにマジックで名前を書いてそれを樹や岩にしばりつける方式なら、行政だよりにしなくともいつでもどこでも簡単に実施できます。風雨や氷雪にされされて長くはもたないかもしれませんが、過去の実績からすると3〜5年程度は保つようです。登山のついでに点検し、もし痛んでいたら即座に補修または交換することもできます。

昔は(といっても40〜50年ほど前)地元の高校山岳部や社会人山岳会などが、こうした道標の作製と取付を自主的に行っていたように記憶していますが、最近はあまりそういう動きが見られなくなったのが残念です。中高年の登山人口はひところよりは低減しているとはいえ依然として大勢をしめているのに、ほとんどの人は個人的に登山を楽しむだけで、道をきれいにする補修する、鳥獣草木・景観等の自然を保護するといった社会的意識は希薄ですね。

DSCN1017_2

 

フォトスタンドの穴あけ

定番商品のフォトスタンドBタイプですが、在庫がなくなってしまったので20個ほど追加製作しています。このフォトスタンドは2枚の板からなり、ベースに開けた細長い穴にスタンドの板を差し込んで任意にスライドさせることで、掲示するものの厚みに自由に対応することができるようになっています。写真であるとかCD・DVDのケースであるとかですね。

下の写真はそのスタンドの入る穴を加工しているところですが、穴の大きさは左右で1mm、上下で0.5mmのクリアランスしかなく、また使用時には隠れて見えなくなるとはいえ、やはり穴の内側もきれいに正確に仕上げたいところです。

それにはまず一回り小さいサイズの角ノミで裏と表の両側から下穴を開けた後、次はトリマーに6mm径のストレートビットを装着してやはり両側から規定寸法の縦・横にきっちり切削します。いくら切れのいい刃であっても原理的にいって角ノミだけでは削り肌が荒れるので、切れ味のいいビットで必ずもう一度仕上げ掘りをおこなわなければなりません。さらにビットでは4つの角は丸みが残りますから、それは手ノミできれいに落とします。最後は木辺に貼付けたサンディングペーパーで穴の内側を研磨して終わりです。

NCルーターでもあれば別でしょうが(零細弱小木工房にはとうてい不可能な高価で大型の機械です)、手持ちのルーターやトリマーでの切削は、ごく浅い彫り込み以外は角ノミもしくはドリルによる下穴を開けてからでないと、ビットや機械に対する負担が大きすぎるし、危険でもあります。

DSCN1000_2

 

子鹿

IMG_0799_2

 

鳥海山の中腹で、山岳観光道路ブルーライン添いの大平(おおだいら)にある鹿公園の子鹿です。学童保育の子どもたちといっしょに先日(9月20日)でかけたのですが、子どもたちはフェンスの前の草むらをむしって鹿たちに草をたくさんあげていました。鹿は数十頭いるのですが、やはり今年生まれたばかりかと思われる子鹿が人気です。

犬でも猫でも他の動物でも、動物の子どもはみなとてもかわいいですね。それはその動物自体が愛らしいということなのか、見る側の人間の感性がそのようにあらかじめできているのか分かりませんが、おそらくはまだ庇護を必要とする幼い動物と、成長した保護者・保護動物との間のよくできた協同的で本能的な仕組みであるように思います。

20アンペア

DSCN1001_2

 

自宅の契約電力を50アンペアから20アンペアに変更しました。今年2月に新築し引越した際には、現状の配線設備上の上限である50アンペアでとりあえず契約したのですが、半年近くその状態で電気を使用してみた結果、その必要はまったくないことが分かりました。

考えてみれば引越する前の借家の電気が20アンペアで、たまにはブレーカーが落ちたことはあるものの絶対的な不都合はありませんでしたし、新しい家での電気の使いかたも基本的には前とたいして変わっていません。

暖房は灯油ボイラーを熱源とする温水循環式床暖房で(前の家では部屋ごとに石油ストーブ)、暑いときは扇風機。つまりエアコンはありません。調理はIH式コンロではなくガスコンロです。電子レンジは500Wのごくシンプルなもので、常時は使いません。冷凍冷蔵庫は300リットルくらいで、そんなに大きいものではありません。洗濯機は洗濯のみで乾燥機能はないので、天気がわるい場合は室内で衣類乾燥機を使って衣類を乾かします(じつはこれがいちばん電気を消費しているようです)。掃除機はマキタの充電式のものだけです。大画面のテレビや大掛かりな音響映像設備もありません。照明器具はほとんど100%近くLEDです。

したがって炊飯器と電子レンジと洗濯機と衣類乾燥機を同時に使ったりしない限り、ブレーカーが落ちることはありません。実際50から20にアンペアを下げてから一度もブレーカーが落ちたことはないです。同じ20アンペアでも各電気器具の省電力化がすすんでいることも貢献しているでしょう。

今時の新築の家で20アンペアの電気契約はたぶんかなり珍しいと思いますし、電力会社からも「ほんとうにそれで大丈夫ですか?」と何度も念を押されてしまいましたが、まあ問題はありませんね。アンペアダウンしていちばんいいのは基本料が大幅に下がったことです。自宅は東北電力管内で「従量電灯B」というタイプの契約ですが、基本料金が50アンペアだと1575円、20アンペアだと630円なので、毎月945円の差が出ます。もうひとつのいい点は、電気の使い方に注意を払わざるを得なくなることです。無造作に使えばやはりブレーカーが落ちて、パソコンの製作中のデータが消えてしまったなどという事態になりかねませんから。

50アンペアから20アンペアに下げる場合、電力会社→電気屋さんからブレーカーをそれ用に交換してもらわなければなりませんが、無料でできます。反対にアンペアを上げる場合は、その程度にもよりますがけっこうな出費になるようです。既存の配線設備では上げることが不可能なこともあります。

 

 

現の証拠

DSCN0997_2_2
DSCN0993_2

 

ゲンノショウコです。フウロソウ科フウロソウ属の多年草で、いまさかんに工房の敷地内で白い小さな花を咲かせています(Geranium  nepalense  ssp .  thunbergii)。漢字で書くと「現の証拠」で、変な名前のように思われるかもしれませんが、生薬の一種で胃腸薬(下痢止めなど)として用いられ、薬効がすみやかなことによります。「ほらみろ、言ったとおりだろ」というわけです。

花の直径は10〜15mmほどですが、葯や花弁基部の紫色の筋、紅色の花柱など、よく見るとたいへん繊細で美しい花です。高山植物のハクサンフウロも同じ仲間の植物ですが、むこうは淡紅色で大きさももうすこし大きいですね。

工房のゲンノショウコは人為的に植えたものではなく、ひとりでに生えてきていつのまにか繁殖しているもの。そういう意味では「雑草」なのですが、かつて昭和天皇が言われたように「雑草という名前の草はない」のです。私としては人工的に改変された園芸花はグロテスクな感じさえ受けることがしばしばで、やはり自然の野山で出会う自然の草木のほうがずっと美しいと思います。

 

栗のテーブル

DSCN0982_2 DSCN0979_2

 

栗の小ぶりのテーブルです。大きさは幅1130mm奥行600mm、高さもやや低めの630mmです。これとほぼ同様の栗の学習机については2013年6月25日の記事で紹介しましたが、今回のものには抽斗がありませんし、寸法が若干異なります。

先の学習机のほうはご注文があって製作したものですが、今回のテーブルは「予備品」として木取は同時に、その後の加工は後から行いました。使い勝手や強度上はまったく問題はありませんが、木目の並び具合や色合いなどにいくらか不揃いがあり、甲板の一部に仕上げ削りでも取りきれなかった変色がわずかにあります。脚には小さな節がすこし。

個人のデスクとしてちょうどいいくらいの大きさですが、なにかの補助テーブルとしても使われてもいいかなと思います。上記のようにやや難点もあるので、通常価格より大幅にお安くします。ご希望の方はメールにてご連絡ください。

※※大阪府の方から上記のテーブルをご購入いただきました。ありがとうございました。コメントもいただきましたので、どうぞ。↓ (2014/1)

台風過

DSCN0987_2

 

昨日の台風の跡です。自宅からは車で10分ほど離れた場所に工房があるのですが、もう築40年くらい経っている作業小屋なので、強風と大雨の襲来でいつ壊れるかびくびくしながら仕事をしていました。

幸い建物には目立った被害はなかったのですが、キリの木のかなり太い枝が折れて、隣の材料置き場に落下してしまいました。そのほかにも枝の破損はたくさん。ウドの群れもすべて風でなぎ倒されています。写真に写っている折れ枝などを集めた小山は径2.5mくらいあります。川のほうの増水はさほどではありませんでした。

工房の建物と敷地は、もともとは大工さんの作業場だったのですが、賃借→買取して当社(有限会社オーツー)の所有となっているものです。窓を増設したり土間の半分ほどに床を張ったり、事務室をこしらえるなど、いろいろ手を加えてはいるのですが、肝心の骨組みや屋根・外壁の波トタンなどはそのまま。さすがにあちこち痛んできました。

冬場の移動などを考えると、ほんとうは自宅にもっと近ければいいのですが、これから移転するとか、現在の建物におおがかりな改修を施すのはあまりにもたいへんです。かといって放っておくわけにもいかず……。

 

つむじ風

DSCN0885_2

 

渦を巻くようなみごとな綿毛。バラ科チングルマ属のチングルマ(稚児車)という高山性の落葉矮性低木です(Sieversia  pentapetala)。綿毛は花が咲き終わった後の花柱が羽毛状にのびたもので、風のせいなのか花自体がそうなりやすい物性を持っているのか、つむじ風のように右または左回りに巻いていることが珍しくありません。花は白色5弁の虫媒花ですが、種子は風によって散布されます。

鳥海山には地面を覆い尽くすような大きな群落もそこかしこにあり、いっせいに白い花が咲いている光景はすばらしいものがあります。しかし花が終わってからの写真のような渦巻く綿毛の姿もなかなか情趣に富んでおり、私は開花期と同じくらいに好きです。

やがてこの綿毛もみな風に飛ばされて消え、葉が赤くなります。個体差があるので、3枚目の写真ではすでに半分くらい紅葉がすすんでいますね。

DSCN0896_2

 

DSCN0881_2

 

鍋森

鳥海山は複合成層火山で、約60万年の歳月の中で幾度となく大規模な噴火や山体崩壊を繰り返しているため、下からの一見おだやかで秀麗な山容とはうらはらに非常に複雑な地形をしています。

鳥海湖は噴火口の跡ですし、その周囲にある扇子森や鍋森は溶岩丘です。粘度の高い溶岩がむくむくと盛り上がってそのまま冷えて固まったのですね。また山体崩壊のほうは頂上(新山)北面の場合は約2500年前と比較的新しいためすぐにそれと分かりますが、じつは南西面の笙ケ岳〜御浜〜扇子森〜ボサ森〜月山森〜天主森の馬蹄形も古い山体崩壊の跡です。

崩壊して巨大な谷間になった後から鳥海湖付近から流れ出した溶岩が、その山体崩壊の凹みを埋めつつ麓近くまで達しました。その先端が八森〜山ノ神〜吉出山〜胴腹ノ滝〜金俣地区の急斜面です。また、崩壊した古い地層と、新たに流下した溶岩との境界線であり急峻な谷間となったものが、西側のヒノソであり東側の月山沢・西ノコマイ。つまりヒノソも月山沢も巨視的にみると右岸と左岸とでは地質が大きく異なるわけです。そうしたことを知ったうえで鳥海山を眺めるとまたちがった面白さがたくさんわいてきます。

DSCN0910_2
笙ケ岳第4峰(岩峰)北側の鞍部付近からみた頂上方面。左寄りの三角峰が頂上の新山(2236m)、その右奥で写真中央が七高山(2230m)、右端から左側に下ってくる尾根が行者岳・伏拝岳・文殊岳と続く外輪山。

DSCN0944_2
笙ケ岳第3峰付近からみる鍋森。左側ドームが鍋森の主峰、それより低く小さく写真中央よりやや右側のドーム〜右端の山体が前鍋森。そしてこの前鍋の背後に東鍋森がある。

DSCN0938_2
笙ケ岳第2峰と3峰の間の稜線(吊り尾根)上に点在する池溏(ちとう)と鍋森。

DSCN0915_2
笙ケ岳。左から第1峰(1635m)、2峰、3峰。