月別アーカイブ: 8月 2013

パイライト ノジュール

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パイライト(pyrite)は黄鉄鉱のこと。ノジュール(nodule)は一般用語としては団塊のことですが、鉱物としては堆積岩中にできた、周囲の成分と異なる塊状のものをいいます。中心部に化石や砂粒などを核としてもち、そのまわりにケイ酸分や炭酸塩、鉄酸化物などが凝集したものです。

黄鉄鉱については当ブログの2010年11月27日にも記事を載せていますが、あちらは不定形の塊だったのに対し、こちらは団子状のみごとな塊です。大きさは手の平に収まる6×5×3cmほど、重さは242gです。形状のせいとその大きさのためかと思いますが、実際手にのせてみると見た目よりはずっと重量感があります。比重は5.0。

黄鉄鉱は硫黄と鉄が半々くらいの組成からなる硫化鉱物で、硬度は6〜6.5と鉄より硬く、ハンマーなどで叩くと火花が飛び散ります。ギリシャ語でpyrは火を意味し、それが鉱物名となっています。しかし湿気には弱く脆くなってしまうようで、写真のノジュールももともと入っていたひび割れのところからぱかっと一部がはがれてしまいました。

 

雲、雲、雲

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昨日の午後6時頃、帰宅するのに車を走らせていたら、じつに美しい雲がたくさん空に浮かんでいました。思わず道ばたに車を停めてしばらくの間眺めいってしまいました。

 

スクエアミラー

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オニグルミ製の正方形の鏡です。大きさは27×447×447mmで、5mm厚の鏡を溝にはめこんでいます。写真は撮影用に、工房に残っていた石膏ボードに仮止めして写したものです。作業スペースの壁に立てかけた木材がいろいろ映っています。

通常こういった細い角材を4本組んで作る木枠の場合、できるだけ反りや捻れが出ないように柾目の材料を用い、表側にその平行する木目が出るように組み立てるのが原則です。しかしこの鏡ではあえて向きを90度変えて板目の面が表に来るようにしています。全体のサイズが比較的小さいことと、通直素直な材料であること、また板目面にすこしうねるような杢(キルテッド)が出ていることからそれを活かしたいとの理由です。

鏡はやはり壁に密着していないと納まりがよくありません。見た目にもそうですが、5mm厚のガラスはけっこう重さもあるので、地震などで落下しないように確実に固定する必要があります。ただしその固定の仕方が問題で、頑丈な受け金具などが表に出るのは野暮というもの。

そこでこの鏡の場合は下の写真のように、まず丈夫な裏桟を利用して4カ所壁に木ネジで止めます。この桟は左右の縦枠にあらかじめホゾ組みしてあります。壁面が石膏ボードや薄手の化粧板などの場合は、それ用のアンカー付きのネジや専用プラグを必ず用います。

それから上の桟のスリットから鏡を静かに落とし込み、残った隙間を目板で塞ぎます。目板はぴったりの精度で先に作ってあるので指で押し込めばオーケーです。鏡はふつう顔がちゃんと写るように目線よりやや上方に取り付けるので、この目板部分はあとからは見えません。

この鏡はじつは当ブログで先頃何度か掲載していた酒田市内某宅のトイレ改装工事の際に製作した鏡の兄弟分で、材料は共木です。一枚のクルミの板から4個分の鏡の材料が取れたので、1枚はそのトイレの手洗器の上の壁に取り付け、残り3枚はそれとは若干スタイルを変えて「予備品」としてこしらえました。

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※※ご希望の方に販売します。
価格は税込みで19500円です。

取り付けるには若干のコツといくつか機械・道具が必要です。ご自分で取り付けが無理な場合は、当方で出張にて作業を行いますが、その場合は別途料金が発生します。

 

 

 

 

 

ライフ・オブ・パイ

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「トラと漂流した227日」と副題が付いた映画です。パソコンにDVDを入れて自宅で観たのですが、圧巻でした。すこし前にかなり話題になった映画なので、内容の説明は省きますが、少年とトラとの交流の物語でもなければ、海難→票流譚でもありません。むろん冒険ファンタジーなどではないです。

少年の名前はパイ(Pi)で、それは円周率のあのパイ。3.1415926535897932……とどこまでも続く、割り切れない無限数ですが、そのことが象徴するように全篇にさまざまな寓話に満ちた映画ですね。生と死や、神と人間、破壊と慈愛、喪失と復活、等々……。

猛るベンガルトラの姿や飛翔するトビウオ、荒れ狂う大洋、静謐な凪いだ海など、ほとんどの映像がCGで作られたものだそうですが、それをまったくといっていいほど意識させない非常に美しいみごとな映像です。

陰惨な場面は周到に隠されていますが、遭難に至る前のインドでの生活篇にも伏線と暗喩がいっぱいで、私も2回観てやっとひととおり意味を理解しました。けっして分かりやすい作品ではなく、賛否両論かもしれませんが、私自身はじゅうぶん楽しめましたし、考えさせられることが多かったです。おすすめ。

 

ホゾの頭の仕上

当工房では家具等の組み立てに通しホゾを採用することが多いのですが、ホゾの先端(頭)が接合相手の部材の表面に出てきます。これをきれいに仕上げる方法としていちばんスタンダードな方法を紹介します。

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1枚目の写真はスツールの幕板のホゾが脚の表に出ているのをノコギリでカットしているところです。ホゾの頭を相手部材の表面と同じ高さにそろえる(面一にする)こともありますが、可能であればホゾの先端を少しだけですが出るようにします。これはほとんどの場合、ホゾと相手部材とは繊維方向が90度くらい異なるのが通例で、そのためにたとえ充分に乾燥した材料であっても経年変化や温度・湿度の影響により、段差が生ずることがよくあるからです。面一に仕上げたはずのホゾの頭が、いつの間に突き出すとか逆に凹んだりするわけです。これは見た目にきれいではありませんし、接合強度の低下にもつながります。

そこで最初から数ミリ程度ホゾのほうを長く仕上げておきます。こうしておけば部材の拡張収縮が多少あっても見た目にはまず分かりませんし、強度の低下を防ぐこともできます。ただしその分、また手間が増えてしまいます。

実際どのくらい長くしておくかですが、製品全体のボリュームとか部材の寸法とかによって異なるとはいえ、家具の場合はたいてい1〜3mm程度です。あまり長いと身体や衣類などが引っかかってしまうなど邪魔になることもありますし、見た目にもうるさい感じになることがあります。過ぎたれば及ばざるが如し、ですかね。

上の例では1.5mm出の仕上げです。しかしながらいくつもあるホゾの頭をきっちり同じ長さに仕上げるのは意外に難しいので、厚さ1.6mmのヒノキの薄板をホゾの周囲に「貼ってはがせる」両面テープで貼付け、それをガイドにして目の細かいノコギリでホゾを切り落とします。ノコギリは背金のある替刃式8寸目の薄手のノコギリを、背金だけ寸詰めにして刃のほうを若干反らせるようにして切っています。目の粗い、また切れ味のわるいノコで切るとホゾの角が折れてしまうので要注意です。

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2枚目の写真はノコギリで切り落としたホゾの木口を、やはりヒノキの薄板をガイドにしてノミできれいに整えているところ。材料はアメリカン-ブラック-ウォールナットで比較的刃の通りはいいほうですが、よく切れるノミで慎重にやらないとやはりホゾの角が欠けてしまったりします。基本的には2方向から少しずつ削ったほうが安全でしょう。

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3枚目の写真はヒノキの薄板を外し、さらにホゾの頭の四周をノミで面取りしたところです。面の大きさは見付きで1mm。ホゾの頭は最終的にはサンディングペーパーをかけて完全に平滑になるようにします。ホゾの出が1.5mm仕上なのにガイドの薄板が厚さ1.6mmだったのは、それを見込んでのことでした。

 

タイヤ交換

バン(日産バネット)のタイヤを新しいものに交換しました。5年間で64000km、1年平均で12800km走ったことになります。もっとも12月から3月くらいまでの約4ヶ月間は冬タイヤ=スタッドレスタイヤを履いているので、実質は43000kmほど。摩耗して滑ってあぶない感じになってきたので新品タイヤに履き替えました。5万円以上の臨時出費で痛いですが、安全にはかえられません。

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新しいタイヤはブリヂストンのECOPIA R680 という、いわゆる低燃費型の製品です。サイズは185R14。ブリヂストンのHPをみると、転がり抵抗を減らすことと、路面を確実にグリップするという相矛盾する要素をうまく調整しているようです。以前のR670に比べて転がり抵抗は20%低減、摩耗度や濡れた路面でのブレーキ性能はほとんど変わらずとか。燃費がそのまま20%減るわけではないでしょうが、たいしたものではあります。

パターンや全体の形状、ゴムの質などいろいろ改善点があるようですが、専門的な話はおいておくとしても、運転していてこれまでのタイヤとは明らかにちがうことはすぐ分かりました。バンはありていにいえばトラックに箱をかぶせただけの基本的に荷物車なので、タイヤの空気圧も高く乗り心地はけっしていいものではありません。乗用車にくらべると明らかにゴツゴツした感じです。それがこの新しいタイヤだとかなりスムーズ。音も静かです。驚きました。

※※※ 実際どれくらいの燃費なのかチェックしてみました(2013.09.27)。満タン後に480.3km走行し、また満タンにすると軽油が32.1リットル入りましたので、リットル当たり14.96km走ったことになります。上記の省燃費型タイヤに交換する前は13km半ばくらいだったと記憶しているので、およそ10%は燃費がよくなったことになります。したがって計算上でいえば年間11000円程度燃料費が下がることになります。

 

クルミの大テーブル&椅子

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オーナーが病気で亡くなって閉店してしまいましたが、酒田市のみずほ通りに「ラストリーフ(Last Leaf)」という、絵本と紅茶の専門店がありました。1995年にオープンしたそのお店の建物の基本設計と、テーブルや椅子・本棚などの家具什器の製作を、当工房で担当させていただきました。

その後お店を閉じることに決まってから家具類は希望する方に譲られたことは聞いていましたが、実際にその譲渡先での家具を私は見たことはありませんでした。それを私の娘が木工房オーツーのものであることにすぐ気がついてメールで送ってきた写真が上のものです。

酒田市飯森山3丁目にある東北公益文化大学内に置かれていますが、テーブルは大きさ幅2100mm奥行1600mm高さ650mmのオニグルミ製、詰めれば8〜10人は座れるサイズです。甲板の形は長方形と楕円形の中間的な形=スーパー楕円。椅子はラストリーフ用のオリジナルデザインで計16脚製作しましたが、大きさは幅430mm奥行450mm高さ860mm座面高さ380mmで、やはりオニグルミ製です。18年前に作ったテーブルと椅子が今も現役で多くの方に使われているのは、デザイン&製作者としてはなんともうれしいかぎりです。

ラストリーフの建物は現在フレンチレストラン『Nico(ニコ)』として活用されています(酒田市亀ケ崎3−7−2 ☎0234−28−9777)。内外装に若干の手が加えられていますが、基本的な骨格やレイアウトなどは以前のままなので、ぜひご覧になっていただきたいと思います。

ご参考までに、ラストリーフ開店当時の内外の写真を以下に掲載しておきます(当工房の旧ホームページより転載しました)。

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ハグロトンボ

山形県遊佐町のちょうど中心部を八面川(やつめがわ)という幅4〜5mの川が流れています。もともとは稲作の用水を主な目的とする古くからの人工水路ですが、田んぼがパイプ灌漑となったことによって「役目を終え」、20数年前にはいちどは暗渠になるはずだった川です。

しかしながら月光川の魚出版会(私も創設メンバーのひとりです)の手によるイバラトミヨの生息確認をはじめ、多くの人たちの尽力により多自然型護岸のモデルケースとして採択されて保護池が作られ、河川部分も現在のような形で存続されました。

主な水源は月光川本流からの導水ですが、町内の自噴井戸の余水があちこちから流入しているため、平野部の町中の人工河川とは思えないほどきれいな冷たい水が流れています。その八面川の川面をたくさんのトンボがとんでいました。

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カワトンボの仲間のハグロトンボ(羽黒蜻蛉)です。上の写真で、左の茶褐色の固体が雌、手前の羽が真っ黒で腹部が青緑の金属光沢を帯びている個体が雄。体長は60mmあまりで、比較的大柄です。おもしろいのはその飛び方です。大きめの羽をチョウのようにぱたぱたとはばたかせ、また小さな音をたてながら飛翔します。空中にじっと停止することもなければ、一直線にすばやく飛んでくるということもありません。草などにとまるときは4枚の羽をきっちり重ね合わせて立てて閉じて止まります。

子どもの頃はごくありふれたトンボだったのですが、河川や用水路の大半がコンクリート化されることで、激減してしまいました。今はいくらか回復してきたようですが、それでも身直にこんなに多くのハグロトンボを眺めることができる場所はごく限られています。

 

子どもの俳句

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8月13日の朝日小学生新聞に載っていた俳句です。全国の小学1〜6年生から投稿された俳句を、3人の選者が7句ずつ選んで載せているのですが、それぞれ第1句と第7句だけ抜き書きしてみます。

しなやかな体でにげるとかげかな (2年・久保田雄大)
急な雨入道尾雲はあったっけ (5年・甲斐田碧)
ひまわりが上から目線こわいなあ (4年・村上そわか)
運動し雨降るみたいに汗をかく (6年・実政樹)
すいかわりねらってねらってぼうをふる (2年・高橋恭)
玉ねぎ切るこれは汗かな涙かな (6年・中林瑞貴)

率直に言ってこれは俳句とはいいがたいと思います。俳句ではないなにかです。俳句は基本として5・7・5音からなる短かい詩ですが、むろん文学の一世界なので詩的創造性が求められます。しかし上の句のどこにそれがあるでしょうか? 少なくとも私には露ほども感じることができません。あまりにも当然で普通でありふれたことをただそのままに「5・7・5の形にしただけ」です。

俳句はその短さゆえに数ある文学ジャンルのなかでも小学生や中学生などの子どもでも比較的簡単に取り組めると思われているようです。いやむしろ俳句の態をなしていない程度の低い作品が「子どもらしいすてきな感性だ」などと賞賛されることも珍しくありません。

しかし俳句は短いがゆえに取り組みやすいのではなく、逆に短いがために言葉の精緻さや練度が極限まで要求され、たった17音で表現しなければならないという厳しい制約が科せられたとても難しい詩形式です。言葉が足りないと思えばいくらでも書き足せばいい一般的な詩とは異なります。したがって子どもでもなんとかなり時にはそれこそ大人以上にすばらしい作品を産み出すこともある詩とは根本的に異なります。むろん例外中の例外はあるかもしれませんし、天才的な年少の俳人が絶対にいないとは断言できませんが、その可能性はかぎりなくゼロにちかいでしょう。

言うまでもなく、子どもたちが俳句に興味関心をもち、その形式をなぞってみることを否定するものではありません。「俳句のようなもの」として一定の評価をあたえてもいいと思います。あくまでも「俳句のようなもの」としてです。そのうち俳句のほんとうの難しさに気づいてくれればしめたものです。ひょっとしたら1000人に一人くらいは俳句の門を開けて中に入るかもしれませんし。

けれども小学生向けの新聞とはいえ全国紙で子どもたちの俳句を募集し、紙面に掲載し評釈するというのは無理がありすぎるように思います。当人だけでなく保護者や教師などにも俳句に対する無理解と誤解とを広めるだけのような気がしてなりません。

 

真夏の高瀬峡

お盆休みですが、鳥海山の南西麓にある高瀬峡に行ってきました。知人の子供さんも交えて近々川遊びをする予定があり、その偵察をかねてのハイキングです。梅雨もあけてようやく晴天が続くようになったので、河川の増水も収まってきました。ヒノソ本流にかかる蔭ノ滝もカラ沢にかかる大滝もまずまずの水量です。

暑いし蚊やアブなどの虫も多いこの時期ですが、滝の前はさすがに冷気がたちこめておりたいへん気持ちがいいです。車道終点の山ノ神の駐車場から、遊歩道最奥の大滝までで40〜60分くらいですが、なぜか他の人たちは滝へそそくさと来てそそくさと帰ってしまいます。もっとのんびりゆっくり自然を楽しめばいいのにと思うのですが。

花は比較的少なくて、キンミズヒキ、ミヤマトウバナ、ヌスビトハギ、ハエドクソウ、ダイモンジソウ、オクモミジハグマ、ヤマトキホコリ、といったところ。アキノキリンソウやモミジガサなどはまだ蕾でした。

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蔭ノ滝の滝壺。水の透明度が非常に高い。波紋がないところでは水がないように見えます。

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カラ沢の大滝。上部の落ち口ですが、周囲の濃い緑に落水の白が映えます。

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大滝の最下部。柱状節理の垂壁や上流から落ちてくる大岩で、滝壺というほどの深さはありません。この写真には写っていませんが西日を受けて虹がかかっていました。

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大滝へはカラ沢の左岸を沢の流れにそってゆるゆると登ってくるのですが、その途中にサワグルミ(沢胡桃)の巨木が生えています。樹高30m、株立ちの周囲で7〜8mくらいでしょうか。奇数羽状複葉が逆光でとてもきれいに見えます。

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ヒノソ本流で、長坂道の徒渉点直下の流れ。右岸に大きな湧泉がありヒノソに合流しています。そのため厳冬期でもヒノソはこれより下流はしばらく降雪のいきおいに負けることなく水面がのぞいています。

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キク科のオクモミジハグマ。モミジのような葉と、つむじ風を連想させる花がすてきです。

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シソ科のミヤマトウバナ。5〜6mmほどの白い小さな花ですが、清楚な美しさがあります。こうした小さな花にも目がいくようになると山歩きの楽しみが倍加しますね。