「トラと漂流した227日」と副題が付いた映画です。パソコンにDVDを入れて自宅で観たのですが、圧巻でした。すこし前にかなり話題になった映画なので、内容の説明は省きますが、少年とトラとの交流の物語でもなければ、海難→票流譚でもありません。むろん冒険ファンタジーなどではないです。
少年の名前はパイ(Pi)で、それは円周率のあのパイ。3.1415926535897932……とどこまでも続く、割り切れない無限数ですが、そのことが象徴するように全篇にさまざまな寓話に満ちた映画ですね。生と死や、神と人間、破壊と慈愛、喪失と復活、等々……。
猛るベンガルトラの姿や飛翔するトビウオ、荒れ狂う大洋、静謐な凪いだ海など、ほとんどの映像がCGで作られたものだそうですが、それをまったくといっていいほど意識させない非常に美しいみごとな映像です。
陰惨な場面は周到に隠されていますが、遭難に至る前のインドでの生活篇にも伏線と暗喩がいっぱいで、私も2回観てやっとひととおり意味を理解しました。けっして分かりやすい作品ではなく、賛否両論かもしれませんが、私自身はじゅうぶん楽しめましたし、考えさせられることが多かったです。おすすめ。