山形県遊佐町のちょうど中心部を八面川(やつめがわ)という幅4〜5mの川が流れています。もともとは稲作の用水を主な目的とする古くからの人工水路ですが、田んぼがパイプ灌漑となったことによって「役目を終え」、20数年前にはいちどは暗渠になるはずだった川です。
しかしながら月光川の魚出版会(私も創設メンバーのひとりです)の手によるイバラトミヨの生息確認をはじめ、多くの人たちの尽力により多自然型護岸のモデルケースとして採択されて保護池が作られ、河川部分も現在のような形で存続されました。
主な水源は月光川本流からの導水ですが、町内の自噴井戸の余水があちこちから流入しているため、平野部の町中の人工河川とは思えないほどきれいな冷たい水が流れています。その八面川の川面をたくさんのトンボがとんでいました。
カワトンボの仲間のハグロトンボ(羽黒蜻蛉)です。上の写真で、左の茶褐色の固体が雌、手前の羽が真っ黒で腹部が青緑の金属光沢を帯びている個体が雄。体長は60mmあまりで、比較的大柄です。おもしろいのはその飛び方です。大きめの羽をチョウのようにぱたぱたとはばたかせ、また小さな音をたてながら飛翔します。空中にじっと停止することもなければ、一直線にすばやく飛んでくるということもありません。草などにとまるときは4枚の羽をきっちり重ね合わせて立てて閉じて止まります。
子どもの頃はごくありふれたトンボだったのですが、河川や用水路の大半がコンクリート化されることで、激減してしまいました。今はいくらか回復してきたようですが、それでも身直にこんなに多くのハグロトンボを眺めることができる場所はごく限られています。
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