月別アーカイブ: 11月 2012

インド天蚕のタピストリー

 

インド北東部アッサム地方に生息する、ヤママユガの一種ムガサン(ムガ蚕)の絹糸を横糸に用いて製作されたタピストリーです。作者は山形県酒田市在住の十川眞紀さん。大きさは縦50cm、横75cmです。

私が斡旋・仲介するかたちで十川さんに特注品として作っていただき、私の家具等のお得意先のお客様の玄関に掲げています。iPhoneによる簡易な撮影のため、この特殊な絹糸の独特な質感は分かりにくいのですが、実際に目で見ると非常に表情豊かで魅力的です。

家畜化された通常の家蚕に対して、ほぼ天然の蚕=天蚕の繭から採れる絹糸の一種で、太さや色合いにむらがあり、そこがこの絹糸の扱いの難しさでもありまた良さでもあります。家蚕の絹糸に比べ当然ながらたいへん高価。色はベージュから淡いブラウン系が主で、このタピストリーの場合は下方の濃い部分はすこし染めてあります。

2011年12月4日の記事にも、十川眞紀さん作のタピストリーを 掲載しています。

 

10/31&11/11の胴腹ノ滝

胴腹ノ滝へは一週間から10日くらいの間隔で一昨年から通っています。毎日というわけではないので、その行かなかった1週〜10日の間のことはよくわかりませんが、今回はちょっとした異変かもしれません。今年の場合、5月8日が最大水量で、その後は若干のぶれはあるにしてもほぼ一貫して水量が減ってきていました。それは10月31日まで同じです。このまま冬の渇水期に突入するのかと思っていたら、なんと11月11日は一目見た瞬間「あっ、水が多い!」とわかるほど急激に水量が増えていました。驚きです。

自分が撮っている写真をずっとさかのぼって比較検討してみた結果、11月11日の湧水量は7月26日の湧水量とだいたい同じことが分かりました。ずっと下がりっぱなしだったのが、いきなり3ヶ月半ももどってしまったわけです。鳥居の前の渓流も水量はずいぶん多かったですね。ただ滝の水温は右側が8.8℃、左側が8.6℃とさほど変わっていません(10月31日は右8.8℃、左8.7℃)。

このところ雨の日が続いていました。たまに晴れ間があらわれても長続きしません。胴腹ノ滝の増水がそのせいだと断言するのははやすぎますが、関係はあるかもしれません。鳥海山の上半分はすでに雪に閉ざされていますから、雨の影響があるとしてもいま降った雨が直接的かつ短時日のうちに胴腹ノ滝の湧水に混じり合っているのではないだろうということは、湧水の温度があまり変わっていないことから推測できます。

 

 

 

タモの座卓

 

娘の家で使う座卓を納品しました。娘夫婦が酒田市内に自宅を新築したさいにテーブルがほしいということで、だいぶ前から頼まれていたのですが、他の仕事にまぎれてのびのびになっていました。私の方もいま大忙しなのですが、これ以上遅れるのはまずいということで、いそいでこしらえたものです。

材料はタモ(ヤチダモ)で、甲板は無地の板を3枚矧いでいます。サイズは幅1820mm奥行810mm高さ330mmとちょっと大きめ。4本の脚を長手と妻手の幕板でつなぎ、脚部と甲板は木製の駒で締結するというごくオーソッドクスな作りです。ただ身内の注文で材料費分だけ頂戴する仕事なこともあって、当工房の通常の仕様よりは若干簡略な作り。

はじめは座卓=ローテーブルではなくふつうの高さのテーブルを、という注文だったのですが、いよいよ製作する段になってダイニングの空間が椅子を並べるにはちょっと狭いということで座卓になったものです(まあ椅子を作る分の手間も省けますし)。椅子に座って、なおかつ後ろを人が通れるようにするには、110+80+110cm=300cmは必要です。

座卓にしろテーブルにしろ、1820mmすなわち6尺ですが、これくらいあるとやはりかなり見栄えがしますね。使い勝手としても長手に3人ずつ座れるので、ゆったりしていいです。

 

放射能汚染地図

 

2011年3月11日以来の、福島第一原発事故による放射能汚染を図示化したものです。インターネット(ツイッター)上で無料配布を告知されていたので、さっそく申し込みました。著者は群馬大学教授の早川由紀夫氏です。グラフィック(地図製図)は萩原佐知子氏。A2判両面印刷の非常に鮮明な地図です。国の補助金に加えて民間有志350名の寄付金を原資として作製されました。初版は2011年4月21日ですが、これは2012年8月8日に発行された七訂版です。

昨年3月に福島第一原発から放出され地表に落ちた放射性物質が、ほぼそのままの状態で保存されている場所の、2011年9月時点の放射線量率を表しています。セシウム134と同137の線量率ですが、芝生や草地の地上1mの値を示します。事故後すでに1年半が経過しましたが、放射線はまだ事故直後の7割程度にとどまっています。セシウム134は半減期2年ですが、セシウム137は半減期が30年と長いので、事故から5年経っても37%くらいまでしか下がりません。

この地図では最小が0.125マイクロシーベルト/時以上の線量率、最高は16マイクロシーベルト/時で、濃度ごとに8段階で色分けされています。最小の0.125でもそれを24倍、さらに365倍すると、法律で定められた放射線被曝量限度=1ミリシーベルト/年を超えてしまいます。1ミリ以下なら安全ということでは決してなく、低線量の場合の人体への影響についてはいまだに確定的なことがいえないので、とりあえずの許容量(がまん量)の目安にすぎません。

またこの汚染地図は比較的量が多く計測もしやすい、したがってポイントごとのデータが豊富なセシウムのみの値であって、他の核種、たとえばプルトニウムやストロンチウムといった非常に半減期が長く、より毒性の強い放射線物質については含まれていません。そのことを考慮に入れて見る必要があります。

北は岩手県花巻市・北上市まで、南は千葉県八千代市・市川市、群馬県のほぼ全域、東京都あきるの市・八王子市あたりまで0.125マイクロシーベルト/時程度に汚染されていることが分かります。汚染度は福島第一原発からの距離に単純に比例するわけではなく、そのときの風向きや地形に大きく左右され、さらにまた局所的なホットスポット(高濃度汚染箇所)が散在することが理解できます。人口の多い仙台市や東京の都心部などがわりあい低い汚染度ですんでいるのはまったくの幸運でしかありません。

私が住む山形県を見ると、これも僥倖としか言いようがないのですが、宮城県と隣合わせの山形市や天童市・東根市など一部に0.125マイクロシーベルト/時の網がかかっているだけです。だからといって他がまったく汚染されていないわけではありませんが、外部被曝に関する限りまあそれほどひどくは心配しなくてもいいかなという気持ちです。

この地図は両面印刷で、裏面にもさまざまな情報が載っていますが、そもそもの原発についての私自身の考えとともに後でまた詳しく取り上げたいと思います。

 

ベルヌーイ曲線

 

いま巷で話題になっているらしいハサミです。接着剤などを買いにホームセンターに行ったら、レジの近くで大々的に宣伝していました。インターネットでやたらにほめている人がいたことを思い出し、値段もそれほどでなかったので急遽買ってみました。PLUSのフィットカットカーブ(fitcutCURVE) です。

他のハサミと違うのは、刃がかなりカーブしていることです。写真でもすぐに分かりますね。これはベルヌーイの曲線というのだそうで、刃の開く角度が常に一定であるため、切る材料をしっかりととらえ、刃の全長にわたって軽くなめらかな切れ味を実現したそうです。柄だけでなく刃の部分も青いのはチタンのコーティングを施しているためです。

握りは刃渡り65mmに対し110mmほどもあって、刃の大きさの割には大きめです。また柔・硬ふたつの樹脂を組み合わせることで、力を入れやすく手が疲れないとか。

さっそく使ってみましたが、なるほど厚紙でも極薄のフィルムでもたいへんスムーズに切ることができます。厚みのある丈夫な刃なので、薄手の段ボールや細めの紐(梱包用の紐や紙紐・ビニールの紐など)、草花の剪定にも使えるでしょう。もちろん金属類は無理ですけどね。

この新しいハサミに対して「3000年目の革新」などとベタほめしているブログも散見しましたが、それはちょっと誇大宣伝でしょう。自宅および工房で使っている十種類近いハサミをあらためて検分してみましたが、まったく直線の刃というのはひとつだけで、あとはみな大なり小なりカーブしていました。完全なベルヌーイカーブではないかもしれませんが、基本的な原理はとうに了解済みであるということでしょう。

 

勾配削り

材料をまっすぐに平らに削るのは、手押鉋盤や自動鉋盤があれば容易いことですが、均一な厚みではなくテーパー(勾配)をつけて削るのはあんがい手間がかかります。例えばテーブル類であればまず4本の脚があるわけで、これにまったく同一のテーパーを付けて仕上げようとすると、1本ずつ墨付をしてそれに従って切ったり削ったりするのがふつうです。しかしこれを手道具で切ったり削ったりするにしても、昇降盤や横切り盤などでカットしてからそのナイフマークを手鉋で落とすにしても、けっこうな時間がかかります。すべてが同じ寸法に仕上がっているか何度も確認する必要もあります。

 

このめんどうな加工を、効率よくかつ正確に行うための治具が、写真の勾配削り用ベッドです。以前にもいちど紹介したのですが、他の木工家にきいてみると意外に同じ治具を活用している人は少ないようなので、あらためて掲載します。写真は座卓(ローテーブル)の脚を勾配3/100=0.03のベッドに載せているところです。切削中に動かないように部材寸法に応じたコマを前後に木ネジでベッドに止めていますが、片方は圧締用のクサビの勾配に合わせてわずかに斜めに止めています。

この状態でベッドごと材料を自動鉋盤に送り込みます。3/100の勾配でも長さ300mmの脚なら元と末とでは9mmの差があるので、一度では削れず(機械に無理がかかるし反発する危険がある)2mmくらいずつ削っていきます。途中までは目分量でいいのですが、最終回の切削だけはすべての部材を同一の条件で連続して通します。こうすることで、全部の部材に0.1mm以下の精度で正確なテーパーを付けることができます。最初のセッティングは慎重に行わなければなりませんが、あとは材料をただベッドに載せてやるだけです。

材料に青色の斜線をひいてあるのは、削りしろが一目で分かるようにするためのもので、クーピーで描いています。ちょうど上面の半分くらいまで切削が終わったところですね。この後、3つの面まで同じ勾配で削っていきます。

ただし、自動鉋盤は本来はまっすぐ平らに一定の厚さに削るために機械です。したがって自作の治具を用いて材料を斜めに削るというのはイレギュラーであり、想定外の使用法というべきです。私は5/100くらいまでの勾配削りはほとんどこの方法で行っていますが、木工機械と無垢材の扱いに習熟した方以外にはおすすめできません。最悪の場合機械の破損および怪我の可能性があります。

 

鳥海山初冬

きのう午前10時頃、旧八幡町の中心部あたりから眺めた鳥海山です。標高1100〜1200mくらいまで雪に覆われています。頂上が2236mなので、だいたい上半分はすでに冬山ということです。

しかしじつに美しい山です。余談ですが「出羽富士」なんてつまらない、アナクロな呼称はいいかげんやめましょうね、○×先生方。鳥海山は鳥海山であって、富士山のコピーではありません。

 

錦秋

埼玉県に住む甥が法事で帰ってきたので、翌日いっしょに旧八幡町の国道344号沿いに紅葉見物に出かけました。飽海郡側の最後の集落を過ぎ、青沢峠を越えて東側の最上郡真室川町に至るまでの山間の道路は、春は新緑、秋(晩秋)は紅葉のみどころがたくさんあります。滝もいくつかあります。

ただしそれほど広い道路ではなく曲がりくねった箇所も多いので、景色にみとれたり路肩に不用意に駐停車すると非常に危険です。344号が改修される前の旧道との接合箇所や、ところどころ路側帯が広くしてあるところに車を停めて、ゆっくり景色を眺めました。

一口に紅葉といっても、実際には淡黄色から黄色、橙色、赤、紅など、色合いはさまざまで、それは樹木の種類や個体や標高ごとに微妙に異なります。またすべてが紅葉しているわけではなく、まだほとんど緑のままのもあれば、すでに紅葉がすんで枯れ色になっているものもあります。それらが渾然一体となった錦秋のようすは、やはり幾度みてもすばらしいものだと感じます。

 

 

 

無垢フローリング

新築工事中の自宅ですが、一昨日から床板を張り始めています。無垢で無節のカラマツです。サイズは厚みは15mmですが、幅は仕上がりで75mm長さも910mmと、小幅&短尺のフローリングです。

 

当初はもっと広い幅の90〜105mmくらい、長さも1820mm、それに針葉樹ではなく広葉樹のつもりでいたのですが、他の工事や材料部分で予算が大きく膨らんでしまい、やむなく変更しました。建材屋さんと他の材料の打ち合わせをしているときに「無垢のフローリングで在庫があるんだけど」という話になり、きいてみると坪単価は半分以下です。予想より幅が狭く長さも短かかったのですが、現物をみて納得しました。

艶ありの塗装済みのものと無塗装のものと2種類あったのですが、つやつやてかてかは今回の住宅の基本方針にはまったく合わないので、無塗装品を選びました。見た目だけでなく、直に体が触れるところなので、その際の感触もたいへん重要です。ただ、格安品なので値段はいっしょとのこと。張るのは大工さんにやってもらいますが塗装はあとで自分で(家族で?)やることにしました。詳しくはまたそのときに書きますが、植物油ベースながらウレタン硬化剤と調合するタイプの木部塗料で、3分艶くらいの仕上がりになります。耐久性も一般的な「自然塗料」よりずっとあります。

このフローリングはいわゆる「床暖房対応品」というわけではなく、また加工精度もものすごくいいというわけではありません。きっと床暖房を稼働させたら板と板との間に少なからぬ隙間が生ずると思いますが、無垢材なのでそれも味わいのうちと考えています。それが気になる、嫌だというのであれば、合板メインで表面だけ無垢の極薄板を貼ったフローリングにすればいいと思います。合板も嫌だ、やっぱり無垢材でなければというのであれば、人工乾燥をがっちりした柾目の無地板の床暖房対応品なら変化は少ないでしょうが、値段はいま張っているフローリングの4倍以上するでしょうね。

フローリングのサイズもさることながら、ほぼ全室に床暖房のパネルとパイプを敷設しているので、万が一にもそれを傷つけないようにしないといけません。当然エア工具でバシッと釘うちなどは危なくてできないので、一本ずつ手で打っていくしかありません。全部でおよそ80平方メートル余り。大工さん、たいへんでしょうがよろしくお願いします。

 

充電式ジグソー

 

今度の工事現場で曲線切りをする必要があるので思い切って購入しました。マキタの充電式ジグソーJV140Dです。なぜ「思い切って」なのかというと、単相交流100Vの電源コード式の通常のジグソーなら20000円程度なのに、写真の14.4Vの汎用リチウムイオン充電池式だと、電池なしの本体だけで41000円もするからです(いずれも税別定価)。

100Vの電源コードをつないで使うジグソーはすでに持っていますが(日立工機の相当古いモデル)、この電動工具は曲率の小さいカーブを切ることが多いのでコードがあれやこれやにひっかかって難儀することがしばしばです。小さい部材を切り出すときは安全のために必ず作業台や馬などにFクランプで材料を固定しますが、このクランプにコードがわざとみたいにぶつかります。そのたび別のところをクランプし直すのですが、こういうことが連続するといやになりますね。直線的に切るだけならいいのですが、それならジグソーではなくふつうの丸ノコで切ったほうがはるかに効率的ですし。

また大きめの材料から木取をする際は、その材料を部分的にしか使用しない場合は、材料の端から端まで切り通さないでL型にカットすることがよくありますが(材料がもったいないので)、途中までは丸ノコで切り最後をジグソーで切ると都合がいいです。しかしそういったケースはしょっちゅうあるわけではないので、そのつど電源コードを引っ張ってきてジグソーを使うのもちとやっかい。

その点、ジグソーに限りませんが充電式の電動工具は、コードを気にせずしかも即座に、またどこでも使用できるので、非常に便利です。ただし欠点もあります。充電池(バッテリー)を背負っているせいだけではないと思いますが、同程度のコード式電動工具に比べるとけっこう重量があります。本機種だとバッテリー込みで2.7kg。また値段も冒頭で記したようにコード式に比べると、バッテリー&充電器不付で本体価格だけでも2倍以上割高です。それから性能は格段にアップしてきているとはいえ、コード式に比べれば馬力は劣りますし、いくらメモリー効果なしで継ぎ足し充電ができるリチウムイオンバッテリーといえど、長時間かつ量をこなすのは無理があります。

それでも一度充電式電動工具を使うともうもとにはもどれませんね。とくにドリルやインパクトドライバにいたってはほぼ100%充電式ばかり使用していて、100Vのコードのは当工房ではすっかりほこりをかぶっています。

さてマキタJV140Dですが、スペック的にはストローク26mmで回転数は0〜2600回/分、切断能力は木材135mmアルミ20mm難鋼材10mm、傾斜切断は0〜45度、本体寸法長さ255×幅73×高さ208mmといったところ。特長としては刃の交換は工具なしのワンタッチ式、ブレードは上下だけでなく前後にも動くオービタル式で4段階切り替え、稼働時に刃先を照らすLED照明、壁際まで切断できるようにベースの後方移動可能、化粧板や軟質材等を傷つけにくいようにする樹脂製カバープレートや毛羽立ちをおさえる刃口板(いずれも簡単脱着式)、などです。

じつはこの機械、購入したばかりでまだあまり使用していません。先日本棚の側板に電気コードを通す穴をあけたくらい。本来ならカタログ・取扱説明書上の話だけでなく、自分である程度使い込んでみてその結果をのべるべきだと思います。しかし信頼している木工家Mさんも先行して本機種を導入しており高い評価を下していますので、まずまちがいないでしょう。ということであえて先走って紹介してみました。