月別アーカイブ: 9月 2012

胴腹ノ滝と秋の花

 

9月19日午前8時36分の胴腹ノ滝は右・左ともに水温8.9℃(気温25.2℃)、9月26日午前8時0分の胴腹ノ滝は右・左ともに8.8℃(気温14.4℃)でした。水量は9月13日にくらべて9月19日はほぼ同じ、9月26日は右側だけわずか減っていますが、左側は同じです。滝の右と左とでは水温も水量も必ずしも同一パターンで変化するわけではありませんので、水源や地中の経路が同じでたまたま出口(湧出口)が二つというわけではなさそうです。写真は9月26日のものですが、9月も下旬に入ってからうそのように涼しくなりましたね。

胴腹ノ滝周辺や付近の水辺にはいまたくさんの秋の花が咲いています。その中からいくつか簡単に披露します。ノコンギクは朝露をたくさん浴び、それに朝日が当たって輝いているのですが、この写真ではうまく表現できていません。

ゴマナ(キク科)

ノコンギク(キク科)

ダイモンジソウ(ユキノシタ科)

ツリフネソウ(ツリフネソウ科)

ガマの穂(ガマ科)

 

上棟

 

わが家の上棟です。昨日と今日、柱や桁や梁・母屋・棟木を組みました。これで家の骨組みができたわけで、棟上げ(上棟)が無事成ったということでふつうなら上棟式を行うのですが、今回は見送りです。8月28日に地鎮祭をきっちり実施したことと、なにせ予算的に非常に厳しい状況なので、棟上げに参集していただいた職人方々にわずかですが金一封とお酒などをわたしてお礼としました。

上の写真は昨日の夕方の段階でのものですが、平屋の作りで30坪しかも一つ屋根の単純な切妻なので、わりあい棟上げはスムーズにすすみました。やはりクレーンの力と人手の多さ(6人?)は強力です。今日はさらに屋根下地(スギのメラ板)を張り、垂木を切りそろえて鼻隠しと破風を取り付け、間柱と筋交いをいくつか設置しました。

下の写真が今日の夕方のものですが、だいぶ家らしくなってきました。南北に16m余と細長いことと、屋根が6寸勾配と比較的急なこともあって、西側の道路のほうから眺めるとかなりボリューム感があります。

 

 

土台敷

明日は上棟ですが、それに備えて昨日は土台を敷きました。大工さんが二人で作業をしていました。材料は当初予定では予算の関係もあって防腐剤加圧注入のベイツガだったのですが、105mm角のベイヒバに変えました。これは、工事のやりかたを工務店一括発注から施主直営・個別発注に変えたことで、主要木材建材供給の業者と支払条件等をめぐって交渉が決裂したためです。「現金で全額一括前払い」を要求されては、とてもじゃないが……。

結果的にはかえってよかったかもしれません。トータルの値段は基本同じで、土台はいちばん耐久性のあるベイヒバになりましたし、他の主な構造材も一段グレードがアップしました。今までも取引のあるすぐ地元の業者で信用がありますし。支払いも納品した分ずつ月ごとの精算でだいじょうぶになりました。

上の写真は土台がほぼ全部敷き終わったところですが、部屋の中ほどでコンクリートの立上げ基礎がないところは、鋼製のジャッキ式床束(ゆかづか)でベタ基礎から角材を受けます。これも木製の床束を一個づつ加工し高さ調整をしていた頃にくらべ格段に効率的になりました。

下の写真は立上げの基礎と土台とを締結するボルトのナット部分です。土台上端からボルトの頭が出ていると不都合が多いので、いまはこうして専用のナットを使って面一になるように納めます。また土台と基礎との間には黒いものがはさまっていますが、これは土台パッキンといって、コンクリートの基礎や地面からの湿気をさえぎるための樹脂製の穴明きプレートです。これを用いることによって、旧来の建物のような風窓(通気口)を外周の基礎に設けなくてもよくなったので、そのぶん基礎の強度が増しています。木造建築はなんといっても水湿・水濡れには弱いため、ベタ基礎や土台パッキンや透湿防水シートなど、あれこれの対策をしています。

 

 

足場組み

昨日、住宅建築現場の足場が組まれました。平屋なのでそれほど圧迫感はありませんが、建物のスケールが足場の大きさでおおよそ想像できます。総二階建にくらべると、当然ながら基礎と屋根はぐんと大きいですね。

いまは建築基準法の規制もあって足場はこのように鉄パイプでがっしり組まれているので、作業はずいぶん楽に安全になったと思います。私が工務店に勤めて大工仕事をしていたのはもう30年近く前のことですが、当時は民間の住宅の場合はまだほとんど丸太足場でした。スギの丸太を番線でしばったもので、踏み板に相当するものも単に細い丸太を2本横に並べただけのもの。濡れれば滑りますし、材料や道具も注意しないと容易に落下してしまいます。

また丸太足場ではそれ自体では自立せず、建物からつっかい棒をとったりして初めて安定するしくみなので、上棟前のまだ上物がなにもない段階で設置することは困難です。現在の自立式鉄パイプの足場のように、上棟にそなえてあらかじめ足場を組むなどということはできなかったわけです。したがって上棟のときは不安定な揺れる構造材=桁や梁や棟木の上に身ひとつで乗って柱のホゾに落とし込んだりしていきます。これは危険ですし、慣れないととうてい無理な作業なので、ふつうは大工ではなく鳶職が先頭になって行います。

ある程度家の形になってから初めて私たち=大工は上に上がるのですが、それでもまだ骨組みだけなので落ちたらもちろんアウト。私は高所恐怖症ではありませんが、二階建てくらいの高さの桁の上などはやはりとても怖いです。地面までの距離が7〜8mくらいなので、今落っこちたらあの石や土台に頭をぶつけて…という具合にあまりにもリアルに想像できる距離だからでしょう。

私自身は自分の建築現場では遭遇していませんが、よそではたまに梁から落ちて大怪我をしたとか死んでしまったなどといううわさをきくことがありました。それを想うと今はしっかりした足場が組まれ、安全帯を装着し、さらには落下を受け止めるネットを張ることもあります。ずいぶん進歩しましたね。それから大きな部材はすべて人手ではなくクレーンでつり上げて組み立てていきますから、昔ほど腕力も必要としなくなりました。

 

 

本黒檀の摘み

 

 

マグロで家具の摘みを5つ作りました。扉や抽斗などの取っ手として用います。マグロといってももちろん魚とはまったく無関係で、黒檀(エボニー)の仲間でもほぼ全体が黒一色の黒檀が「本黒檀」であり、俗に真黒=マグロと呼ばれています。銘木屋さんやまともな木工家などであればそれで通ずるはずです。

本黒檀も元々はただの「黒檀」だったはずですが、数十年くらい前からすでに非常に品薄となり入手が困難となっています。あったとしてもものすごく高価で、1立方mあたり1000万くらいするかもしれません。そのため黒檀に似た木でそれに替わる木ということで縞黒檀やカリマンタンエボニー、ブラッドウッドなどが出回っています。今では黒檀といえばふつうは縞黒檀のことをさすようで、本来の黒檀を知っていてそれを希望する人は、本黒檀なのか縞黒檀あるいはその他の黒檀類似種なのかを確かめなければなりません。

写真上は16mm角に下拵えをした本黒檀を、扉などに取り付ける際の軸(裏からクサビで締めます)を9mm角で切り出した後に、表に現れる部分のテーパーを削っているところです。長さは全体で48mm。手前はいまやりかけで、奥がだいたい加工が終わったもの。本黒檀は硬くて重い木ですが、そのわりには刃物の通りはいいので、ノミやカンナで削ったりノコギリで切ることはそれほど難しいことではありません。古くから指物や彫刻などの素材として珍重されてきた理由がよく分かります。

下の写真は成形の終わった摘みです。形が分かるように明るいライトを間近であてていることとサンディングペーパーをざっとかけているので、今はやや色白で木地に色むらが見えていますが、これに塗装をするとそれこそ真っ黒になります。

今回は5つ作って所用時間は180分でした。1個当たり36分です。材料と手間とで、一個あたりの原価は千数百円といったところでしょうか。これを高いとみるか安いとみるかは人それぞれでしょうが、こうした小さな(しかし重要な)パーツひとつにもできるだけオリジナリティを出す工夫はいわゆる「手作り家具」には必要だろうと思います。しかもさりげなく、がいいかな。

 

鉋盤の刃交換

 

 

材木の平面出しと厚みを正確に決めるのに鉋盤という大きな木工機械を使います。ふつうはまず最初の基準面となる第一平面を切削するための「手押鉋盤」と、その第一基準面を元に反対側または側面の第二平面を切削して厚みや背の高さを決めていく「自動鉋盤」とのふたつの機械に分かれていますが、当工房の場合はふたつの機能が合体した「兼用機」です(そのほうが場所をとらないし値段も割安になるのですが、常時複数人で作業するには向いていません)。

モーターで高速回転する太いシャフト(鉋胴)に長い刃をそれぞれ2枚ずつ取り付け、それで材木を削るのですが、当然使用するにつれ刃先が摩耗して切れ味が鈍ってきます。ときには異物をかんで刃こぼれを起こすこともあります。そのためときどき刃を新しいものに交換しなければなりません。刃の交換はだいたいほとんどの工房・木工所で自前で行っているようです。

刃は刃先のみを交換する替え刃式と、刃全体を取り外して再研磨して使う研磨式の二通りありますが、当工房のは研磨式です。研磨は機械刃物専門の研磨屋さんに出すのですが、その間機械を使えないのでは作業に支障が出るので、予備の刃も2組用意しています。使用中・予備・研磨中の、あわせて3組というわけです。

刃の大きさは手押鉋盤(写真上)は刃幅305mm、自動鉋盤(写真下)は455mmです。木工所によってはさらに大きな350mm&600mm、さらには自動1000mmなんてものもありますが、値段がぐんと跳ね上がってしまうので一般的とはいえません。また刃の材質も当工房のはふつうの高速度鋼(ハイス)ですが、より耐久性の高い超硬合金製のものもあります。ただしこれもまた値段はずっと高くて、自動鉋盤用の455mmの刃2枚で10万以上するようです。もし3組そろえればそれだけで30〜40万ほどの出費となるので、おそろしくて手が出ません。

刃の交換は径19mmの高張力ボルトをソケットレンチで緩めて古い刃を取り去り、かわりに新しい刃をセットするのですが、鉋胴に止めた真鍮製のストッパーに刃先を軽くつきあてて刃の出を決めてからボルトを本締めします。真鍮製なのは刃を極力痛めにくいようにするためです。これで完了ならいいのですが、ボルトを締める順序や圧力をよほど注意深くやらないと刃の出がそろいません。刃2枚のそれぞれの奥と手前の4点の誤差が0.05mm程度以下に収まっていないと鉋盤の用をなしません。

0.05mmの差は肉眼ではとうぜん分かりませんので、ボルトを締め前後の定盤を所定の位置近くまでもどしてから、木製の自家製の定規を刃口の上に置いて鉋胴を手でそっと回して定規の送りをみます。上の写真で板に2本の線が引いてありますが、4点ともに、この2本の線の間隔ぶんだけ定規が刃先に乗って移動すれば良しということです。一致しなければ最初からやりなおしです。

実際のところ、刃の交換はかなり面倒です。 刃先4点の送りを完全に一致させようとすると(手押と自動を合わせれば計8点)、順調にいっても30分はかかります。調子がわるいと1時間以上。ちなみに刃交換の作業はすべて素手で行います。もちろん刃を機械にぶつければ刃がだめになってしまいますし、手に当たれば手がざっくり切れてしまいます。危ないから手袋をはめて、と思われがちですが、逆に素手でやることによって刃や工具や自分の体などすべてに細心の注意を払わざるを得ない状況をあえて作るということです。

 

基礎天端均し

 

住宅の基礎ですが、立ち上がり部分の基礎の枠をみな外し、上面をモルタルできれいに仕上げています。これを基礎天端均(きそてんばならし)といいますが、これがきっちり正確にできていないと、この後の木工事や屋根葺き等の水平がみな狂ってしまいます。その意味でもきわめて重要な行程です。

工事最初の遣方(やりかた)で周囲に木の杭と横木を回していますが、この板の水平度はその後の基礎工事などでいくぶんなりとも誤差が生じているおそれがあります。そのため、基礎の天端均しをするときはレベル(水準器)を用いて基準となる水平線をあらためて出して(基礎の側面に打ってある赤い線がそれです)、そこから一定の高さでモルタルを置いていきます。専用の定木をセットしてからコテを使って水平に均していくわけですね。厚さは2cm前後でしょうか。もちろんこの作業は専門家=左官屋さんが行うのですが、みごとなものです。

後日この基礎の上に土台をボルトで固定していくのですが、床を張るのは以前の場合だと、まず大引(おおびき)という太い角材を3尺(909mm)間隔で土台と面一になるように引き、さらに根太(ねだ・ねた)というやや細い角材を1尺〜1尺2寸(303〜364mm)間隔で並べ、その上に床板を打ち付けていきました。いわゆる在来工法の床張りですが、土台+大引+根太と重ねていくので、そのまま床を張ったのでは誤差が累積して水平にならない可能性がかなりあります。それぞれの木材の製材時の寸法誤差もあります。したがって根太を並べる前に部屋の周囲の柱に水平線を出し水糸を張って、そこから一定数値のさがりで根太の高さの微調整を一点ごとに行っていました。

根太の上端を正確にそろえないと床が傾いてしまったり波打ってしまうので、上記の作業は慎重に行わなければなりませんが、率直にいうなら経験的にこれはかなり面倒な作業ですし、職人の腕の差がもろに出てしまいます。そこで現在では根太を使わずに床を張る工法が主流になっていますが、それはその工事が始まってから詳しく説明したいと思います。

 

スクレイパー

 

アメリカはスタンレー(STANLEY)社のスクレイパー。ちょっと前のことですが、某塗料店でみつけて思わず買ってしまいました。スクレイパーといっても木材をかき削るほうのスクレイパーではなく、ガラスや金属面などにこびりついた汚れや、不要なステッカーなどをはがすための道具です。

全体が金属でできているのがたいそう好ましいです。刃の出し入れは中央の真鍮製の金具を前後にスライドさせて行いますが、その機構を、プレスした2枚のスチールではさんで側面で溶接しています。使っているうちにネジがゆるんでガタついたなどということがない堅牢な作りです。

プラスチックなどに比べての耐久性や使い勝手の差ということもありますが、感覚的に「これぞプロの道具」という匂いがふんぷんと漂います。大きさは11×48×95mmで、重さは57gです。刃は専用の刃を、ペンチなどを使って横からスライド式で脱着する方式ですが、カミソリのように薄くて鋭い刃です。写真の右下にあるのが外した刃ですが、酷使しても本体から不意に刃が外れたりしないように一枚づつあらかじめ背金をかませてあります。

値段は刷毛や塗料などといっしょに買ったのでもう忘れてしまいましたが、替刃10枚とあわせて2000円くらいだったように思います。

 

高校生と心字雪渓へ

 

 

一昨日9月18日に地元の高校、遊佐高校の生徒34名・教師2名といっしょに、鳥海山の心字雪渓まで登ってきました。これは「鳥海山の湧水」という総合学習の一環で、私は2000年から非常勤講師を勤めています。心字雪渓は大雪渓とも呼ばれますが、8月から9月にかけて雪渓の雪の残り具合がちょうど「心」という漢字に似たあんばいになるのでそう呼ばれることがあります。鳥海山の南側斜面で標高は1600mくらいのところにあります。上の写真は八丁坂の途中からの遠望(いちばん奥が月山)、下の写真は「心」の2画目の下部にあたる雪渓です。

ちょうど森林限界をこえた位置にある滝ノ小屋から上はいっさい日陰らしい日陰がなく直射日光をもろに浴びます。また、前日から続く今の時期としては異常といっていい猛暑(35℃前後)で心配したのですが、山の上はさすがに平地にくらべ7〜10℃ほど気温が低いので、まあなんとか全員登行・下山=合わせて4時間のフィールドワークを遂行できました。雪渓の規模もだいたい昨年なみで、雪解+湧水の冷たい水と夏場の雪の感触を楽しむことができました。ただし雪渓の下から流れ出している渓流の水は、雪の汚れも混じっているので見た目よりは汚れているので注意が必要です。飲用には適さないと思います。

花は、ヨツバヒヨドリ、ミヤマアキノキリンソウ、ハクサンフウロ、シロバナトウウチソウ、ミヤマセンキュウ、ヤマハハコ、シラネニンジン、エゾウサギギク、ミヤマキンバイ、エゾオヤマリンドウ、ミヤマリンドウ、など。わりあい風はあったせいか遠くまで視界がきき、月山や丁山地、出羽山地などの山々もきれいに眺めることができました。

 

立上基礎コンクリ打

昨日の施工ですが、住宅の基礎の立ち上がり部分のコンクリート打ちが行われました。ところどころ上に飛び出ている金物は、基礎と土台(米ヒバ角材)を締結するためのアンカーボルトです。四隅は一回り太く長いホールダウン式のボルトを使います。

この後は天気にもよりますが、基礎の天端均しをしてから、9月28日頃に上棟を行う予定です。わくわくどきどきといった心境です。私も以前は大工仕事をしていましたし、棟梁格として現場の指揮をとったこともあるのですが、こうして一軒の住宅の工事の進行具合を連日みていくと、新たにいろいろと発見があります。自分の家だからという面もあるので、よけいに注意深く観察しているためかもしれませんが。