月別アーカイブ: 8月 2012

遣方

 

自宅の建築工事が始まりました。今日は道路の下に埋設してある水道本管から自宅敷地内への引き込み工事と仮設水道蛇口の設置。手前の道路上の黒っぽい長方形のところがその工事の跡です。パワーショベル+人力で深さ1mほど掘って水道管を敷設したあと砂+砂利+アスファルトで埋め戻しをしました。私も人夫として手伝っています。地面は比較的掘りやすく、この後の基礎工事や配管工事も大きな支障なくすすめられそうで安心しました。

それから大工さんが遣方(やりかた)です。遣方というのは敷地に対しこれから建てようとする家屋などの正確な位置や基準となる高さを決めることです。これがいいかげんだと以降の工事がすべていいかげんなものになってしまいます。一見おおざっぱな作業のように見えるかもしれませんが、じつは要所をしっかりおさえた精密な作業です。

写真は遣方が終わって、日没間際に撮影してきたものです。近所の人が木の杭と横木をみて「大きな家だ〜」とうわさしていましたが、いえこれが普通の2階建てなら50坪くらいの家になりそうな大きさですが、実際には30坪(100m^2)の平屋です。自家用車を置くスペースなどを考えると土地の面積としてはこれでけっこう目一杯な感じですね。

 

ステンレスマグカップ

 

当工房でもう20年くらい愛用しているマグカップです。全体がSUS304というステンレス鋼でできており、本体は二重構造で中の空隙を真空に近い状態にしてあるため、断熱性にすぐれています。逆にいうとこのカップに注いだ飲み物は外気からの影響を受けにくいわけです。暑い今の時期なら冷たい麦茶やスポーツドリンクは冷たいまま、他の季節ならホットコーヒーや紅茶などを最後まで熱々で味わうことができます。金属のカップながら手や唇をやけどする心配もありません。

大きさは径70mm、高さ84mm、重さは大気圧でつぶれないように厚手のステンレス鋼が二重のためやや重く168gあります。容量は約200ml。取手はこの手のカップでよくあるような平板を曲げてスポット溶接した簡易なものではなく、無垢の楕円形の棒材を曲げて、本体にていねいにロウ付けしてあります。上縁はごく薄手にできていて口当たり、水切れも良好。よけいな飾りがいっさいなく、実用的でシンプルなたいへんすぐれたデザインのマグカップだと思います。

外底にK&Kという刻印が打ってあるのですが、調べてみても製造元はよくわかりませんでした。作業現場には陶磁器の高価で立派なカップより、こういったステンレスのマグカップのほうが断然似合います。非常に丈夫で、おそらくさらにこの先何十年も使えそうですね。

横道にそれますが、木製のカップやグラスは私は感心しません。したがって製作するつもりもありません。飲料の容器素材としては陶磁やガラスが適しており、長い歴史のなかですでに適切に使い分けられています。金属も野外や携行目的には向いているでしょう。木製の容器は汁碗は理にかなっていると思いますが、コーヒーや紅茶などを木製のカップで飲みたいとは思いません。私は酒はあまり親しみませんが、ビールやワインやウィスキーはやはり透明なガラスの器で飲んだほうが断然おいしそうです。 木という素材の幅を広げたい、オリジナリティを打ち出したいという気持ちは理解できますが、本来的に不向きな素材をあれこれいじっても不毛な努力なように思います。

 

地鎮祭

昨日の夕方、わが家の地鎮祭を行いました。当初の予定より2ヶ月ほど遅れましたが、いよいよ着工です。私と大工さんと木材建材屋さんが列席して、およそ1時間弱。私は自分が主役となって地鎮祭にのぞむのはこれが初めてなので勝手が分からず、まごまごしてしまいましたが、なんとか無事に終了しました。

写真は後片付けがすこし始まってしまってからのものですが、それぞれの器具や供物にいろいろないわれや意味合いがあるのでしょう。しかし、私には見当がつきません。私は個人的には正直のところとりたてて信仰心は持っていないのですが、小さな家一軒建てるにしても十数件の業者とのべ50人くらいの職人の力が必要です。これからおよそ3〜4ヶ月の工事期間中、関係者のみなさん全員に災厄がなく、無事に家が完成にこぎつけるようにていねいに祈願しました。

 

庄内海岸クルーズ

一昨日8月25日に飛島への定期船「とびしま」での「庄内海岸クルーズ」に参加しました。主催は山形県沿岸域総合利用推進会議で、山形県の日本海に面する遊佐町・酒田市・鶴岡市が入っています。このクルーズは酒田港を出航後、日本海を北上し、山形県と秋田県の境に位置する三崎の沖合までを往復するものです。所用時間は1時間半(航行1時間)。

毎年この時期に実施されていますが、私は今回でこれが3回目です。ただしこれまでは各広報に載せたあと申込先着順だったのですが、希望者が多いということで今回は抽選方式となったようです。なにしろ一人500円、6歳以下は無料で、夕涼みがてらふつうでは体験できない洋上のコースをクルージングできるのですから、乗ってみたい人はたくさんいるでしょうね。

さて当日は天気がよく気温はあいかわらずの30℃をこえる猛暑でしたが、海の上は適度に風もあって涼しかったです。乗客の餌やり目当てのウミネコは今回はあまり多くなかったですね。帰りがけの18時22分に日没だったのですが、水平線近くには雲が多く、最後の日本海に沈む夕陽は見ることができませんでした。残念という声がたくさん。

しかしその反対方向の庄内砂丘や鳥海山、三崎公園あたりの断崖は、かすんではいましたがまずまず眺めることができましたし、1枚目の写真のように鳥海山の上に発生した入道雲が夕焼けに照らされている迫力ある光景や、2・3枚目の写真のように半月を伴った飛翔する鳥のような形の雲など、私はいろいろ興味深かったです。

一眼レフの立派なカメラを持っている中高年の人も珍しくなかったのですが、ほとんどは夕陽を撮影するのに夢中。結局、景色を眺めるという単純なことでも既成概念や固定観念にいかに多くの人がしばられているかを、あらためて感じました。そんなことでは「普通の写真」しか写せないし、高価なカメラとまたとない機会がもったいないです。

 

 

 

エゾアジサイ

 

青色の花といえば「ヒマラヤの青いケシ」とか、まだ完全な青ではないようですが「青いバラ」などがしばしば話題にのぼります。園芸花や平地の花であればそれほどたいしたことはないのですが、山中で自然状態の、しかも総体で径20cm以上もある青い花を目にするとさすがにちょっと驚きます。しかもその青が非常に鮮やかなプルシアンブルー(または淡いコバルトブルー)ときたら、もう。

写真は鳥海山の標高500m付近、ブナ林の林縁に生えていたエゾアジサイ(蝦夷紫陽花)です。エゾアジサイはヤマアジサイの変種だそうで、花も葉もエゾアジサイのほうが大きく、北海道と本州北部および京都府以北の日本海側の山地に分布します。分類の体系にもよりますが、ユキノシタ科アジサイ属の落葉低木で日本固有種です(Hydrangea  serrata  var.megacarpa)。

外側の大きな花は装飾花で、基本4枚の花びらのように見えるのはじつは萼片です。内側の花のかたまりは散房花序で、小さな両性花の集合です。葉は対生、ふちにやや大きめの鋸歯。短い葉柄があり、広楕円形〜卵状広楕円形で先が尖っています。

私個人としては、園芸花としてどこでもよくみかけるアジサイはあまり好みではありませんが(うっとおしい、わざとらしい)、このエゾアジサイはたいそう魅力的に思います。

 

暑い猫

 

連日30℃を超える猛暑に人も猫も参ってます。猫は毛皮を着ているので、よけいたいへんです。わが家には冷房のエアコンはないので、猫はすこしでも涼しいところを探してときどき移動しています。写真の椅子の上もそのひとつ。クッションのない板だけの座面で床より高い位置にあること、背は細い丸棒だけで風が通りやすいなど、たしかにいくらか他よりましかもしれませんね。

ちなみにこの椅子はご注文のテーブル&椅子のセットを納品した際に、それまでお客さんが使用されていたものを「下取り」したものです。他の仕事で、注文の品ができるまでの臨時・代用の椅子などとしてときどき活用しています。材料はアルダー(ハンノキの仲間)に着色でしょうかね。

 

8/21の胴腹ノ滝&一ノ滝

 

上の写真は8月21日午前11時56分の胴腹ノ滝ですが、晴天昼時の林の中の写真は明暗差がありすぎて撮影が難しいです。肉眼では主観的に対象を切り取り明るさや焦点などを自動的に巧みに調整するのですが、機械(カメラ)はそんなことは原則できないので、明るいものは明るいままに暗いものは暗いままに客観的に平等に写します。色合いや大きさも機械的にそのままです。したがって目で見たときは大きく鮮やかに感じられていたものが、それを写真に撮るとがっかりすることがしばしばあります。

さて胴腹ノ滝のこのときの湧水温は右・左ともに9.0℃で、前回8月13日と変わりません。滝の前の気温は26.9℃と、平地とは5℃ほど低く涼しいです。水量は7/26→8/3→8/13→8/21と、差は小さいもののずっと下がり続けています。月光川や日向川の本川中流域は晴天続きのために水量が大きく低下し、流れが分断しそうなほどになっていますが、湧水100%の胴腹ノ滝はさすがにそれほどの変化はありません。

 

胴腹ノ滝の水温などを計り水も汲んだところで、ちょうど昼時になったので二ノ滝の駐車場まですこし足をのばしてみました。車を置いて5分ほど歩くと一ノ滝神社がありその先に一ノ滝が大きな音を立てています。雪解けの季節も終わり水量はだいぶ落ちていますが、それでも落差15mほどの垂直に落ちる滝は迫力があります。崖の途中まで鉄骨からなる展望用の階段があるので、滝の近くまで行って眺めることができます。この渓流は月山沢といい、月光川の本流筋にあたります。一ノ滝、二ノ滝、三ノ滝をはじめたくさん滝があり、鳥海山中でも有数の渓谷美を誇っています。

写真でおわかりのように滝壺の上のオーバーハングした崖は、上のほうが岩盤で下のほうが赤土まじりの岩石です。ふつうの地層であれば上が土っぽくて下が硬い岩になっているわけですが、ここでは逆です。これは山体崩壊などでぐずぐずになった土砂岩石の上に、大昔に鳥海湖あたりから流れ出した溶岩流が厚くかぶさったためです。しかし雪解時や大雨が降った後などに発生する膨大で激しい落水によって、この柔らかい地層が先にえぐられてしまいます。現在の一ノ滝ももうすこし浸食がすすむと上の岩盤が持ちこたえることができなくなって崩落するでしょう。実際滝のすぐ下流右岸の崖(神社側)の一部が最近崩れています。

3枚目の写真は一ノ滝の滝壺のアップですが、水の透明度がとても高いことや、水深がかなりあることがはっきり分かりますね。滝壺のまわりの岩の大きさから比べてみてですが、たぶん5m以上の深さがあるのではないでしょうか。

 

 

空蝉

虫嫌いの人はギョッとするかもしれません。大盛りのアブラゼミの抜け殻(空蝉=うつせみとも言います)です。子どもの夏休みの自由研究で、神社や招魂碑の境内で早朝に採取してきたとのこと。200個くらいありますかね。ケヤキの樹の幹などにたくさん付いていたそうです。

セミは地中で長い年月(3〜17年)を幼虫で過ごした後、地上に出てきますが、その際に最後の脱皮・羽化をして成虫になります。その残骸が写真の抜け殻・空蝉です。アブラゼミの場合は6年間地中で過ごし、地上では1ヶ月ほど生きるようです。一般的には1週間で死んでしまうと言われることが多く、この前みた映画のDVDのタイトルも『8日目の蝉』でした。しかし実際にはもうすこし長いのですね。

 

ピクトグラム


ある小学校の更衣室入口の上にかかげられた標識ですが、これはひどいです。まるで子ども(人間)が首からつり下げられている、処刑を連想させるようなおぞましいピクトグラムですね。

ピクトグラム(pictogram)とは文字のかわりに図形や絵によって、ある事柄や概念を伝えるものです。言語の差を超え、年齢や性別を問わず、あるいは文字を読めない人でも分かるようなシンプルで明瞭なデザインであることが必須条件です。たしかに上のピクトグラムでもあらかじめそこが男女別の更衣室であることをあらかじめ知っていれば「なるほど」とうなずけるかもしれませんが、そうでなくて最初に見れば、かなりの人が不快感をいだくのではないでしょうか。少なくとも私は嫌ですね。目にしたくないです。

私は現在の木工の仕事の前はグラフィックデザインの仕事をしていたこともあるので、こういったヘタクソで不適切なピクトグラムを見ると、非常に気になります。もっともそれを件の学校に訴えたところで「考え過ぎじゃないですか?」「替えるにしてもお金がかかるし」と一笑に付されることはほぼ確実でしょうけどね。デザインに対する認識および価値観は一般にはとても低いですから。

 

鳥海山夕焼雲

 

遊佐町の中心部から眺めた昨日夕刻6時21分の鳥海山ですが、複合のレンズ雲のようなおもしろい形の雲に覆われ、その雲が夕焼けに照らされています。見えている左の天辺は笙ケ岳、右側の天辺は月山森です。頂上方面は雲に隠れて見えません。

手前のこんもりした林は農家の敷地境界などに生えているケヤキやサクラ、マツなどです。面積的にはたいしたことはありませんが、町中にこういった林があることはうれしいことですね。