ステンレスマグカップ

 

当工房でもう20年くらい愛用しているマグカップです。全体がSUS304というステンレス鋼でできており、本体は二重構造で中の空隙を真空に近い状態にしてあるため、断熱性にすぐれています。逆にいうとこのカップに注いだ飲み物は外気からの影響を受けにくいわけです。暑い今の時期なら冷たい麦茶やスポーツドリンクは冷たいまま、他の季節ならホットコーヒーや紅茶などを最後まで熱々で味わうことができます。金属のカップながら手や唇をやけどする心配もありません。

大きさは径70mm、高さ84mm、重さは大気圧でつぶれないように厚手のステンレス鋼が二重のためやや重く168gあります。容量は約200ml。取手はこの手のカップでよくあるような平板を曲げてスポット溶接した簡易なものではなく、無垢の楕円形の棒材を曲げて、本体にていねいにロウ付けしてあります。上縁はごく薄手にできていて口当たり、水切れも良好。よけいな飾りがいっさいなく、実用的でシンプルなたいへんすぐれたデザインのマグカップだと思います。

外底にK&Kという刻印が打ってあるのですが、調べてみても製造元はよくわかりませんでした。作業現場には陶磁器の高価で立派なカップより、こういったステンレスのマグカップのほうが断然似合います。非常に丈夫で、おそらくさらにこの先何十年も使えそうですね。

横道にそれますが、木製のカップやグラスは私は感心しません。したがって製作するつもりもありません。飲料の容器素材としては陶磁やガラスが適しており、長い歴史のなかですでに適切に使い分けられています。金属も野外や携行目的には向いているでしょう。木製の容器は汁碗は理にかなっていると思いますが、コーヒーや紅茶などを木製のカップで飲みたいとは思いません。私は酒はあまり親しみませんが、ビールやワインやウィスキーはやはり透明なガラスの器で飲んだほうが断然おいしそうです。 木という素材の幅を広げたい、オリジナリティを打ち出したいという気持ちは理解できますが、本来的に不向きな素材をあれこれいじっても不毛な努力なように思います。

 

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