マグロで家具の摘みを5つ作りました。扉や抽斗などの取っ手として用います。マグロといってももちろん魚とはまったく無関係で、黒檀(エボニー)の仲間でもほぼ全体が黒一色の黒檀が「本黒檀」であり、俗に真黒=マグロと呼ばれています。銘木屋さんやまともな木工家などであればそれで通ずるはずです。
本黒檀も元々はただの「黒檀」だったはずですが、数十年くらい前からすでに非常に品薄となり入手が困難となっています。あったとしてもものすごく高価で、1立方mあたり1000万くらいするかもしれません。そのため黒檀に似た木でそれに替わる木ということで縞黒檀やカリマンタンエボニー、ブラッドウッドなどが出回っています。今では黒檀といえばふつうは縞黒檀のことをさすようで、本来の黒檀を知っていてそれを希望する人は、本黒檀なのか縞黒檀あるいはその他の黒檀類似種なのかを確かめなければなりません。
写真上は16mm角に下拵えをした本黒檀を、扉などに取り付ける際の軸(裏からクサビで締めます)を9mm角で切り出した後に、表に現れる部分のテーパーを削っているところです。長さは全体で48mm。手前はいまやりかけで、奥がだいたい加工が終わったもの。本黒檀は硬くて重い木ですが、そのわりには刃物の通りはいいので、ノミやカンナで削ったりノコギリで切ることはそれほど難しいことではありません。古くから指物や彫刻などの素材として珍重されてきた理由がよく分かります。
下の写真は成形の終わった摘みです。形が分かるように明るいライトを間近であてていることとサンディングペーパーをざっとかけているので、今はやや色白で木地に色むらが見えていますが、これに塗装をするとそれこそ真っ黒になります。
今回は5つ作って所用時間は180分でした。1個当たり36分です。材料と手間とで、一個あたりの原価は千数百円といったところでしょうか。これを高いとみるか安いとみるかは人それぞれでしょうが、こうした小さな(しかし重要な)パーツひとつにもできるだけオリジナリティを出す工夫はいわゆる「手作り家具」には必要だろうと思います。しかもさりげなく、がいいかな。
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