昨日、住宅建築現場の足場が組まれました。平屋なのでそれほど圧迫感はありませんが、建物のスケールが足場の大きさでおおよそ想像できます。総二階建にくらべると、当然ながら基礎と屋根はぐんと大きいですね。
いまは建築基準法の規制もあって足場はこのように鉄パイプでがっしり組まれているので、作業はずいぶん楽に安全になったと思います。私が工務店に勤めて大工仕事をしていたのはもう30年近く前のことですが、当時は民間の住宅の場合はまだほとんど丸太足場でした。スギの丸太を番線でしばったもので、踏み板に相当するものも単に細い丸太を2本横に並べただけのもの。濡れれば滑りますし、材料や道具も注意しないと容易に落下してしまいます。
また丸太足場ではそれ自体では自立せず、建物からつっかい棒をとったりして初めて安定するしくみなので、上棟前のまだ上物がなにもない段階で設置することは困難です。現在の自立式鉄パイプの足場のように、上棟にそなえてあらかじめ足場を組むなどということはできなかったわけです。したがって上棟のときは不安定な揺れる構造材=桁や梁や棟木の上に身ひとつで乗って柱のホゾに落とし込んだりしていきます。これは危険ですし、慣れないととうてい無理な作業なので、ふつうは大工ではなく鳶職が先頭になって行います。
ある程度家の形になってから初めて私たち=大工は上に上がるのですが、それでもまだ骨組みだけなので落ちたらもちろんアウト。私は高所恐怖症ではありませんが、二階建てくらいの高さの桁の上などはやはりとても怖いです。地面までの距離が7〜8mくらいなので、今落っこちたらあの石や土台に頭をぶつけて…という具合にあまりにもリアルに想像できる距離だからでしょう。
私自身は自分の建築現場では遭遇していませんが、よそではたまに梁から落ちて大怪我をしたとか死んでしまったなどといううわさをきくことがありました。それを想うと今はしっかりした足場が組まれ、安全帯を装着し、さらには落下を受け止めるネットを張ることもあります。ずいぶん進歩しましたね。それから大きな部材はすべて人手ではなくクレーンでつり上げて組み立てていきますから、昔ほど腕力も必要としなくなりました。