月別アーカイブ: 7月 2014

右か左か

 

DSCN0610_2_2

写真は20年ほど前に当工房で、お客様のご注文により製作したウォールナットの椅子ですが、はたして右脚はどちらでしょう? 向かって左の脚を右脚と答える人が多いと思いますが、当工房では向かって右側の脚を右脚としています。その理由を説明します。

椅子はほとんどの場合脚が4本あり、それに人が腰掛けた場合は自分の体の右側にくるほうを右脚とする、つまり自分と同化して考えるわけですね。また箪笥類(チェスト)や戸棚類(キャビネット)についてはどうでしょうか。それらはほとんど片面使いで裏と表があるわけですが、これもデザインによっては生き物の体を思わせるものがあり向かって左側を右と感ずることもあるでしょう。それ自体はごくふつうの感覚といえます。

しかし右か左かは相対的なものなので、見方によって容易に入れ替わってしまいます。椅子の右脚を作っているつもりでじつは左脚を作っていたなどということになりかねません。とりわけ複数の人間が製作にたずさわっている場合は混乱や事故のもとです。背もたれのある椅子や長椅子では前後は誰にもはっきりしていると思いますが、それとは別に「向かって右が右脚」と決めてしまえば間違い勘違いは避けることができます。戸棚などでも「向かって右側の側板や扉や抽斗が右の〜」と一律に決めます。

椅子の製作では、同時に背もたれのないスツールやベンチを作ることもしばしばあり、通常はそれはシンメトリーの形(線対称または点対称)なのでそもそも右も左もありません。テーブル類の場合も、抽斗を組み込んだりしたデスクなど以外は同様です。ではこれらのケースでは右と左はどうやって決めるのでしょうか? ユーザー的にはどうでもいい話ですが、製作者としては各部材はあくまでも1対1の関係にある、すなわちAの脚はBという幕板と接合するのであってCと入れ替え可能ではありません。なぜなら均一素材の工業製品ではないので、木目や色合いなどに微妙な差があり、また若干とはいえ材料のひずみや収縮があるからです。

したがって右・左・前・後がとくに特定されない家具の場合、当工房では上(または表面)からみて1時の位置にあるものを1番とし、あとは時計回りに2番・3番・4番と決めています。したがって4本脚のテーブルであれば1番の脚は1-2の幕板の1番側と、1-4の幕板の1番側とのみ接合します。この番号は絶対的なものなので、見る向きによって変わるということはありません。もちろん各部材には加工の初期の段階からその番号を記入しておきます。

(※ 先に椅子で「向かって右が右脚」といいましたが、いっそ右とか左はやめて上のように絶対的な番号を振ることにするほうがいいかもしれません。その場合は一般的には左後脚とされている脚が1番で、左前脚が2番〜、ということになるでしょうか。)

以上の話はむろん当工房の場合はこうしているということであって、一般論としてそれが正しいかどうか適切であるかどうかとは関係ありません。木工家のなかにはたまに欧米の木工の「教科書」をなかば絶対視し、それにならうべきとする人がいますが、ばかばかしいことです。それぞれの木工家・木工房でルールを決めればいい話ですね。

 

90度カット定規

 

DSCN2762_2

 

DSCN2765_2

 

刃径165mmの新しい電動丸ノコを導入したことは当ブログの7月17日の記事で紹介しましたが、それ専用のカット定規です。木取などをする際に直角の墨線を引かなくとも、材料の木端の一辺にこれをあてがい丸ノコのベースの左側をこの定規のガイドに沿って切断すれば、ほぼ正確な直角になります。切断面の直角の精度は横切盤やスライド丸ノコで行うのにくらべればすこし劣りますが、それでも長さ1mにつきプラスマイナス0.5mmくらいの精度は出ているので、実用上はまったく問題ありません。

こうした丸ノコ用のカット定規は市販品でもいろいろありますが、自分がふだん使っている丸ノコにあわせてオリジナルで作れば、もちろん使い勝手は抜群です。丸ノコが材料の上を直接スライドすることもないので、塗装品や仕上削りの済んだ材料でも傷をつける心配がありません。

長い間使っているうちに材料の抵抗などによって刃が横ぶれして、ベースの薄板(3mm厚の合板)の右端のラインと丸ノコの刃の左側との間にわずかな隙間が生じてくることがありますが、その場合はガイドの幅を1mm程度切り詰めることで簡単に修正できます。

 

O様邸リフォーム工事 その10

 

DSCN2754_2

 

DSCN2750_2

 

山形県庄内町でのリフォーム工事です。外壁材の窯業系サイディングを張り、外部はほぼ終わり。内部は天井の石膏ボードをだいたい張って、いま床のフローリングの工事中です。

このフローリングは厚さ15mmのメープル(アメリカ産のソフトメープルで、カエデの一種)材で、幅は90mm、長さは1820mmの定尺です。無垢材フローリング一般としては、長さもまちまちの「乱尺タイプ」もあるのですが、施工の手間がかなりかかります。そこで長さ方向は数枚の無垢板をフィンガージョイントであらかじめ接着しているという「ユニタイプ」と呼ばれるものです。無塗装品なので、全部張り終わってから現場塗装をします。

無垢材100%ですから乾燥収縮などによる寸法誤差も1mm以下程度は避けられず、また当然ながら木目や色合いもみなすこしずつ異なります。張ってからも板と板との間が若干空いたりくっついたりをくり返します。無垢材はそこがいいところでもあるのですが、気になる人は気になるでしょうね。合板下地に表面だけごく薄い無垢材を張ったフローリングや、表面に木目を印刷したフィルムを貼ってあるフローリングのような寸法安定性や施工の簡便性、またコスト低減はのぞむべくもありません。

無垢材のフローリングは私の自宅をはじめ、これまでいくつか施工していますが、踏んだ感じはあきらかにちがいます。他の部材のように見た目での差ではなく、床板は毎日直接身体がじかに触れる部分ですから、ここはやはりいちばん重視すべきところにひとつといえるでしょう。

 

シテ7月句会 2014.7.16

 

短詩形同人誌『シテ』の同人を中心とする句会を、今年から隔月(奇数月第3水曜日)で行っていますが、今回はその3回目です。出席者は相蘇清太郎・今井富世・大江進・大場昭子・加藤明子・金井ハル・高瀬靖・西方ジョウ、南悠一・渡部きよ子の合わせて10名。(敬称略)

事前に無記名で2句投句し、清記された2枚の句群から参加者それぞれが当日2句づつ選び、合評が終わってから作者名が明かされるのはいつもの通り。まあいわばぶっつけ本番で、時間的にもすべてを2時間半のなかで行うので、かなり真剣に向かわないといけません。その緊張感も得がたいものです。では第一幕から。頭の数字は得点です。

2  吊り橋に弾みをつける青嵐
1  一族郎党ひきつれ浮いてこい
3  焼き鮎に鼻だけさめる眠り猫
2  若楓風吹き抜けし夕餉かな
1  コロッセオに猫一匹 殺すなネロよ
3  さみしくて水饅頭の餡の色
1  つばめの仔羽づくろいのみ覚えて旅立たず
1  葉のしずく風が拭いて夏至の月
0  ブラジャー剝いで水ナス齧る夏の白
2  朝顔やぐるりと家を絡めとり

得点がいちばん多かったのは3句目と6句目です。はじめの<焼き鮎に〜>は、猫はその語源ともいわれるようにしょっちゅう寝ていますが、鮎を焼いているとそれに反応してか鼻だけぴくぴく動かしているといった図です。わが家にも猫がいるのでよくわかる句ですが、「だけ」は言わずもながですし不要でしょう。五七五の短いなかに「鼻」をとり入れた時点ですでに鼻を特別視しているわけですから。作者は今井富世さん。

次の3点句<さみしくて〜>は私も取りました。俳句では悲しいとかうれしいとか寂しいといった感情を直裁に出すのはよくない、芸がないと一般的にいわれるのですが、この場合は水饅頭のあの半透明の葛を通してみえる餡の微妙な色合いが「さみしい」という感情とうまく呼応しています。たしかにそんな感じで、悲しいとか嬉しいというような感じではないですね。もっとも上五でいちど軽く切れるので、水饅頭の餡の色合いとさみしさとは直接的には関係なしと解釈することもできます。先に別の理由でさみしいことがあって、その気分のところにたまたま水饅頭と出会ったというふうにも。作者は南悠一さん。

2点句は3つありました。1句目<吊り橋に〜>は青嵐に吹かれて吊橋がいつもより大きく揺れている様子です。ただ「弾みをつける」では作為的かつ常套的なので、どんなふうに揺れているのかを客観的に具体的に描写したいところです。作者は大場昭子さん。

4句目<若楓〜>は、人家の玄関先とか庭先などによく植えられているカエデの樹の、まだわかわかしい緑の色と、そこを吹き抜けてゆく風のさわやかで涼しげな感じが目に浮かびます。じつは清記にはじめ「風」の字が抜けていたので、私は吹き抜けていったのが何なのかよくわからず悩みました。風とわかってみれば納得ですが、逆に優等生すぎてすこしもの足りない気も。作者は渡部きよ子さん。

次の10句目<朝顔や〜>は、通常好日的に表現されることの多いアサガオが、まるで蔦や葎類のようなちょっとおどろおどろしたふうに詠まれているのがおもしろいです。家のまわりをぐるりというくらいですから、半ば空家と化した住宅なのかもしれません。アサガオもそれくらい放置されるとイメージが変わるでしょうね。この句は私も取りましたが、欲をいえば下五の「絡めとる」をその語句を使わないでその感じをじわじわと出せればなおいいかなとも思いました。作者は西方ジョウさんですが、仕事の都合で出句のみの参加となりました。

1点句は四つ。<一族郎党〜>は私の句ですが、「浮いてこい」のフレーズそのものが夏の季語であり浮人形のことであるという予備知識がないと理解がむずかしいと思いますね。浮人形はお風呂などで遊ぶ玩具ですが、もちろんここでは大人が水底に沈んだ戦死者や入水者の悲哀や無念または呪詛を思い浮かべているところです。

<コロッセオに〜>はよく読むと下のほうと韻を踏んでいます。ありていに言えば語呂合わせにすぎないので、こういった句を今的で新しいとする見方には私は同意しません。コロッセオは古代の円形闘技場で、ネロはもちろん皇帝ネロで暴虐のかぎりを尽くしたことで知られています。作者は相蘇清太郎さん。

<つばめの仔〜>は中句で「のみ」とすでに詠んでいるので、最後の「旅立たず」は不要でしょう。作者は高瀬靖さん。<葉のしずく〜>は夏至の月が照る前に一雨でもきたのでしょうか。風がそれを乾かしているところでしょうが、それを「拭いて」とするのはどうかなあ。先の1句目の「弾みをつける」と同様に擬人的であり作為的すぎませんか。作者は加藤明子さん。

・・・・・

さてここまでで約1時間20分くらい経過しました。ひと休憩をはさんでから第二幕です。

4  今日一日合点ゆきたる合歓の花
2  幼いのだ尾を捨てられぬ青蛙
1  糠の中きゅうりなす指かくれんぼ
2  梅雨晴れの蝶高くたかく人逝けり
1  天の川どうか今宵は浅くなれ
2  息をつめ綿毛飛び越す小さき足
3  青嵐あの日の嘘が濡れてをり
1  キャベツにも小さな目玉の蝶止まりたり
2  蝉の穴極暑の棒の曲がり入る
0  校庭に水撒く部員の汗ひかる

最高点は1句目で4点<今日一日〜>の句です。読みは「きょうひとひ がてんゆきたる ねむのはな」ですが、その調べ自体がや懐古調でもあり、合歓の花のあの雰囲気とはよく響き合っているようです。いやがおうにも芭蕉の<象潟や雨が西施にねぶの花>を思い出すからかもしれませんが。作者は渡部きよ子さん。

次点3点句の<青嵐〜>は私には時勢が分かりにくかったです。夏の嵐がおそっているのは現在のことでしょうから、昔日の嘘を思い起こしてそれが濡れているということでしょうか? 嘘が濡れるということの意味はなんでしょう。青嵐とその嘘とになにか関連があるのかもしれませんが、よくわからないですね。よくわからないけれども妙に惹かれる句というのはあるわけで、この句もそうかも、です。作者は南悠一さん。

2点句は4句あります。2句目の<幼いのだ〜>は四肢が生えてもしばらくは尾が残っている蛙のようすですが、ここではむろん寓話的な表現です。「尻が青い」「尻尾をつけたまま」は未熟な者に対する皮肉の言葉ですが、この句では自分に向けての自虐的フレーズですかね。「幼くて」ではなく「幼いのだ」と強く言い切ったところに味わいがあります。作者は西方ジョウさん。

4句目<梅雨晴れの〜>は私も取りました。死者の魂が天空にのぼっていくことを蝶の姿に仮託しており、美しい追悼句です。「梅雨晴れ」という言葉も「高くたかく」というリフレーンも効いています。作者は高瀬靖さん。

6句目<息をつめ〜>は、タンポポかなにかの綿帽子を子どもが、その綿毛を壊さないように慎重に飛び越そうとしている図です。この句では「小さき足」が肝でしょうから、説明的に下五にそれをもってくるよりも上五に据えてまずそこに焦点をあてたほうがいいと私は思います。作者は加藤明子さん。

9句目の<蝉の穴〜>は私の句です。蝉は長い年月を地中ですごしたのち、土を穿って地表に出てくるわけですが、羽化を控えた日の夜に無事に地表に出られるようにあらかじめ穴を掘り終えているのではないでしょうか。蝉の羽化するころはとても暑い季節ですから、その蝉の穴にすらも熱気が侵入します。空気は陽気のいいときにはその存在をほとんど気にかけることもありませんが、極暑や極寒のおりはまるで固体のようなたしかな存在感を覚えます。高浜虚子に<去年今年貫く棒のごときもの>という有名な句がありますが、それも同様の感覚でしょうね。

1点句のうちの8句目<キャベツにも〜>は私が取ったのですが、キャベツと小さな蝶の取り合わせが新鮮です。私はこの蝶をジャノメチョウ(蛇の目蝶)もしくは翅裏に黒点のあるシジミチョウと受けとりました。モンシロチョウなどでは相方がアブラナ科のキャベツではあまりにも当たり前すぎるでしょうから。ただ「も」はなくてもいいかなと感じます。作者は相蘇清太郎さん。

・・・・・

さて、シテ7月句会はこれで終了しましたが、「おおむね当季の季語を入れる」という以外はいっさい制約のない投句をもとにした句会ですから、毎回どんな句がとびだすか非常に楽しみです。反面、選句はとても悩みます。よくできた優等生的な句をむろん評価しないわけではありませんが、個人的にはむしろ未完成でもいわゆる「問題句」をできるだけピックアップしようと考えています。視点や表現にオリジナリティがあるかどうかが大事で、他者にも問題提起となり刺激となるような句がのぞましいと思っています。

ただいわゆる形式的あるいは題材的な新規さはとくに私は求めてはいません。形やモチーフが従前の句にはない特異ものであっても、それだけで新しい句や詩になるわけではありません。インターネットなどで散見できる比較的年齢の若い方の「新しい句」のどこが新しいのか、私にはぜんぜん理解できないことのほうが多いです。現代用語辞典ではありませんが、ごく新入りの現代用語を用いてはいても、その切り口はあいかわらず陳腐で常套的で、なにやら珍奇な表現も必然性をすこしも感じません。

しかしながら世界は変転変貌し、100年前はおろか10年前には存在しなかったモノや現象や知見がいま身のまわりにも世界にもあふれかえっています。今を生きる人間の一人としては、それらのせっかくの「新しい」ことどもにも目を向けていかないと「もったいない」とは考えています。古来からの花鳥風月や伝統的風習文化を詠むだけが俳句ではないのもまたたしかです。

 

夏椿が咲いた

 

DSCN2747_2

 

今年もわが家の庭のナツツバキが開花しました。昨年の6月に植木市で買って玄関近くに植えたのですが、まだ裸地同然の状態で、暑さ寒さ、風と日射にもろにさらされて非常に厳しい環境です。そのためでしょう、背丈はあまりのびていませんし開花も昨年より20日ほど遅く、また花の数も半分くらいです。

同時期に庭に植えたブルーベリーは枝の一部が枯れて背丈が小さくなり花も咲きませんでした。草本のラベンダーはうまく根付いたようで昨年の倍くらいに大きくなりましたが、期待していた白花のホタルブクロのほうはまったく影も形もありません。完全に枯れてしまったようです。

今年も妻がいろいろな草花と野菜をすこし庭に植えていますが、私としては建物の外観とイメージに合わせて白い花が咲く草木を中心に庭を構成したいと考えています。しかし本格的に取り組むだけの時間もお金も園芸の知識もありません。しかしとりあえず先日、白花のムクゲを鉢植えで買ってきたので、敷地の入り口のあたりにでも植えようかと思っています。

 

O様邸リフォーム工事 その9

 

DSCN2743_2

 

DSCN2744_2

 

庄内町のリフォーム工事です。今回は私は設計と現場管理が主な任務なのですが、実作としては内部の木製建具5枚と、ダイニングの12尺幅吊棚&棚板、洗面脱衣室の小物収納戸棚、それに鏡2台を作ります。上の写真2枚は、木製建具の木取と一次下拵えを終えて養生をしているところです(機械の上やフローリング材の梱包の上に置いているのは撮影等の都合による一時的なものです)。

材料は北米の針葉樹のスプルスで、素材厚は38mm。これを最終的に33mm厚の建具に仕上げます。材料は建具用の特選材で柾目の乾燥材なのでもともと狂いはすくないものですが、それでも一気に最終の33mmまで削ってしまうと内部応力の影響でひずみが出る可能性が高いので、はじめは36mmの厚さに削るのにとどめ、しばらく養生します。すなわちよけいな荷重がかからないように写真のように一枚ずつ木端立てにし、風が通るようにそれぞれ隙間を設けて1週間は置いておきます。これを当工房では「一次下拵(いちじしたごしらえ)」と呼んでいます。

38mm厚さのものを36mmにする段階で、手押鉋盤と自動鉋盤を通しているので、ほぼ真っ平らでまっすぐな材料になっているはずですが、もしこの段階で36mmが全面にうまくかからない場合は、その後もだめな可能性が高いので、その分は木取をやり直すことがあります。さいわい今回は全部オーケーのようです。

養生している間にまた1〜1.5mm程度のひずみが出るものもあるかもしれませんが、それをまた一次下拵と同様に手押鉋盤と自動鉋盤を通して33mm厚ならびにそれぞれの所定の幅に仕上げます。おそらくこの二次下拵で下拵完了となるかと予想できますが、万一無理な場合は再度養生し三次下拵とします。このようにすこしずつ段階を踏んで養生の時間をみながら材料を仕上げていくのですが、建具材にかぎらず家具材全般にも必須の作業です。

 

コーヒーブレーク 23 「羽化」

 

DSCN0673_2

 

わが影をひと足ずつの踏絵かな

まさかとは思ったが「踏絵」または「絵踏」は歳時記によるとなんと春の季語だった。徳川時代の宗門改め(詮議)で春先に多く行われたからだそうだが、他の季節でも当然ながら行われたであろうし、春と踏絵とを強く結びつけなければならない合理的な理由はありそうにもない。したがって私は無視することにする。/また踏絵の話を見聞きするたびに思うのは、マリアやキリストのレリーフを踏むか踏まないかは、その人の信仰心とはなんの関係もなかろうにということである。単なる物だよね、それは。しかも幕府側が用意した愚劣・幼稚な仕掛けにやすやすと乗っかってしまい命まで失ってしまっては元も子もない。ほんとうに信仰心があるなら権力の差し出した偶像など笑って蹴散らしてしまえばよい。そのことを他のまともな信者や宗教家は非難しないだろうし、ましてもし事実、神がいるとするならそういうくだらない表面的なことに目くじらを立てることはけっしてあるまいと思うのだが、ちがうだろうか?

一族郎党ひきつれ浮いてこい

「浮いてこい」または「浮人形」は夏の季語である。つまり浮沈子(ふうちんし)の一種で、比重1.0よりわずかに軽い玩具をお風呂の底に沈め、ゆらゆらと浮かんでくるさまを楽しむもの。したがって形としては動物や乗り物などが多く、そのわずかな比重差が損なわれないように陶器やプラスチックや金属の外装の中に空気を密封するのがふつうである。しかし浮人形はともかく、かけ声である「浮いてこい」そのものがそのまま季語だとは、俳句になじんでいる方以外にはちょっと想像がつかないだろう。/あ、いま思ったのだが、浮人形は基本的には水面に対してかろうじてであれ浮くことが大前提で、そのイメージを通常は崩さないような形が選択されている。つまりアヒルであったり潜水艦であったり、である。しかしそうであるなら、あえて本来は水底に沈んでしかるべきものを浮人形に仕立てるのもおもしろいかも。

蝉の穴極暑の棒の曲がり入る

はるか昔になってしまうが、小学生の頃はよく蝉の羽化前の幼虫を捕まえたものだ。近所の神社境内に夕方出かけて、地面にあいている新しい穴をさがして、そこに麦わらのような細い草の茎を差し込んだり、水を注ぎ込んだりする。もしその穴にまだ幼虫が潜んでいるのなら、草をつかんだ幼虫を草といっしょにそっと引き上げるか、浸水におどろいた幼虫が穴の上にはい出してくるのを気長に待つのである。比較的名の通った神社の境内ならば、地面がきれいに掃き清められているのが常なので、穴を見つけることも新旧を判別することもたやすいからである。/捕まえた幼虫の一部は虫かごに入れて家に持ち帰り、蚊帳にくっつけておけば夜半に羽化の見物ができるのだった。

 

O様邸リフォーム工事 その8

 

DSCN2735

 

DSCN2736

 

山形県庄内町で5月末頃からすすめている、水回り全般を中心とするリフォーム工事ですが、写真は上が寝室の北側の掃き出し窓、下がキッチンの窓です。

元のアルミサッシは幅は9尺間(柱〜柱間が約2.6m)だったのですが、間取等の関係で幅はすこし詰めることになりました。通常の既存サイズのサッシであれば6借間(1.6m強)の横幅になるところを、「関西間」の1.9mにし、4枚戸を2枚戸に変えています。高さも構造的に可能な範囲でできるだけ高くしたので、窓の面積としては前とほぼ同じです。サッシ枠の色も褐色からオフホワイトになったことと、壁と天井がやはり白色のクロス貼り、床も明るい色のメープル材のフローリングを張る予定なので、全体としてはかなり明るい開放的な感じになるはずです。

寝室の掃き出し窓はたくさん植栽された庭の草木を観賞したいということで、透明のペアガラスにしています。もちろん後でレースカーテンと本カーテンを取り付けますが、室内側の壁を張る前にカーテンレールの来る位置に下地を入れておかなければなりません。これまでの改装工事の例でいうと、意外にカーテンレール用の下地は入っていないことが多く、カーテンの設置に難儀することがあります。

 

165mm 丸ノコ

 

5月下旬から庄内町で水回りを中心にリフォーム工事をしているのですが、木工事は今回は主に若い大工さんにやってもらっています。その彼が使っている可搬型電動丸ノコが旧来の径190mmタイプ(7型)ではなく、それより一回り小さい径165mmタイプ(6型)です。見た目にもあきらかにコンパクトで、使いやすそうです。

そのこともあって当工房でも、これまでサブで使用していたかなり古い日立工機の丸ノコのかわりに、 マキタの5732Cという最新型の165mmの丸ノコをメイン機種として導入しました。それが下の写真です。2枚目の写真は、右が現在使用中の190mmタイプ、左が今回の165mmの丸ノコですが、同じマキタの機械ながら一回り小さいことがよくわかります。

DSCN2599

DSCN2605

 

スペックとしては単相交流100V、1140W、通電ランプ、刃先LED照明、電子的回転制御、ソフトスタートといったところですが、190mmタイプが重さ3.2kgだったのに対し、こんどの165mmは2.6kgです。約2割減ですが、常時手に持って作業する丸ノコの場合、この違いは大きいです。特筆すべきは、刃が小さくなったにもかかわらず切断可能な材木の厚さは傾斜0で66mm、傾斜45°で46mmと、190mmと変わりません。

刃の直径が小さくなったのに切ることができる大きさが変わらないのは、モーターのドライブシャフトに刃を装着する部分の仕組みがこれまでとは異なるからです。作業能力が同じなのに軽く小さいのであれば、とうぜん誰でもそちらを選ぶと思いますが、実際建築現場では165mm丸ノコのほうが主流になりつつあるようです。カタログのラインナップをみても、190mmは機種も少なくすっかり傍流扱いになっています。

なお写真でノコ刃が真っ黒なのはテフロンのコーティングが施されているからで、レーザーによるスリット加工といい、これまた今ではごく普通といっていい刃物になってきています。ただし今回は「ノコ刃なし」で機械本体を購入したので、刃は別個に他のメーカーのものを選んで付けています。

 上記の黒いテフロンコーティングのノコ刃ですが、しばらく使ってみたところうたい文句ほどの性能はありませんでした。切れ味と精度がいまいち。それでマキタの標準・純正品であるダブルスリットというノコ刃に交換したところ、そちらのほうがずっといいです。写真で径190mmの丸ノコに装着しているのも同じダブルスリットという刃です。だてに純正品ではありませんでした。(2014.9.11)

O様邸リフォーム工事 その7

 

DSCN2679_2

 

すこし掲載があいてしまいましたが、山形県庄内町で現在工事中の現場のようすです。外壁下地は通常の構造用木質合板ではなく、無機質天然素材のバーミキュライトを主成分とした、三菱マテリアルの「モイス」厚さ9.5mmを構造体に張りつめ、その上に透湿防水シートを貼っています。この上に通気胴縁を打って、外壁材をこれに止めていきます。

モイスは木質合板に比べ不燃ですし遮音性や調湿性にすぐれています。昨年2月に完成したわが家の、外壁下地も全面にこのモイスを張っていますが、内壁が石灰ベースの左官材料のコテ塗りであることの相乗効果もあって雨が降り続いても湿っぽい感じはしません。窓ガラスの結露も非常に少ないです。ただ何割か単価が高いことと、合板に比べると重いし、あまり細く割って使うと割れやすい点は注意が必要です。

窓枠は白色のアルミサッシでガラスはペアガラスですが、写真の窓はキッチンの窓です。白く曇っているのは2枚のガラスのうちの外に面した方のガラスの内側がすりガラスになっているからです。外光は充分に取り入れることができますが、人物や室内の様子はほとんどわかりません。今回はこのタイプのペアガラスをキッチン以外にトイレと洗面脱衣室と浴室にも採用しました。

室内の工事のほうはあいにく適当な写真がありませんが、壁と天井の下地組がもうじきできあがります。