月別アーカイブ: 8月 2013

白水晶クラスター

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子供ならびに私の鉱物コレクションですが、カテドラル水晶、フローライト(蛍石)、アメジスト(紫水晶)、パイライト(黄鉄鉱)に続く第5弾で、白水晶のクラスター=群晶です。母岩から引きはがして適当な大きさに割っただけの未加工品です。自然の不思議さとか美しさをできるかぎりそのままで味わうことが肝要ですから、装飾品として加工されてしまったものはほとんど興味がありません。

この水晶クラスターは産地はブラジルでミナス州コリント近郊の鉱山。大きさは幅10.5cm奥行7cm高さ3.5cm、重さは166gです。子供の手の平にちょうど収まるくらいの大きさで、びっしりと並んだ六角形の透明な結晶がすばらしくきれいです。

上の写真はiPad miniで撮りました。これもすこしぼけていますが、私がふだん使用しているコンパクトデジカメだと、こういう凹凸があり不規則に光っているようなものは接写モードにしてもまったくピントが拾えません。いつまでもジーコジーコ言ってます。かといって普通のモードでは焦点距離が長くて小さくしか写せないので、どちらもだめ。タブレットコンピューターにも負けてしまうようなカメラは情けないです。

 

テンプレート

ルーターでお盆などの彫り込みを行うときはテンプレート(ならい板)を使います。加工する材料にテンプレートをあてがい、ルーターにガイドベアリング付きの刃物(ビット)や、刃物よりやや径の大きいテンプレートガイドをそのテンプレートの内側にそわせながら材料を切削することで、同じ形状のものを比較的容易に複数製作することが可能になります。

ただそのテンプレートを作るのは決して簡単ではありません。何事も最初が肝心で、最初のテンプレート=マスターテンプレートをできるかぎりていねいに正確に作らないと、その後の切削用テンプレートやそれを使っての製品がみな狂ってしまいます。テンプレートの素材や作り方は工房や木工家によりさまざまかと思いますが、ここでは当工房の標準的な方法をご紹介します(実際に木工作業をされている方でないと理解しにくいかもしれませんがご容赦ください)。

まずマスターテンプレートですが、素材は4mm厚のシナ合板です。表面に圧着されたシナノキは色が白く平滑なので加工の目安となる線=墨が見やすいです。また厚みはあまり厚いと加工がたいへんですし、薄すぎるとへなへなして扱いにくく耐久性も劣るので、4mmまたは5.5mmくらいが適当でしょう。シナ合板はふつうの合板にくらべだいぶ高いですが、これがすべての元になるのでけちってはいけません。

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円形や方形などのテンプレートならわりあい簡単に作ることができますが、楕円や写真のようなスーパー楕円、またはオーガニックな変則的な形などの場合、最初のテンプレートを作ること自体がかなりの難問です。基本的にマスターテンプレートはほとんど手加工で作ることになりますが、断面がきっちり垂直になっているか確認します。テンプレートはこの上にルーターを乗せて材料の彫り込みをするので、周囲の余白が10cmくらいずつは必要です。あまり狭いとルーターが不安定になりぐらぐらするし、ビットまたはガイドをテンプレート内側に押し付けたときにテンプレートがひずんでしまいます。

切り抜きが正確にできたら、その切断面の合板木口に瞬間接着剤をたっぷりとまんべんなくしみ込ませ硬化させます。乾いたらサンディングペーパーを軽くあてて滑らかに仕上げ。合板の断面にはしばしば巣が開いていることがありますが、かならず木紛+瞬間接着剤で平らに埋めるようにします。もしこの処置をせずに使うとそこからテンプレートが破損してきますし、当然ながら材料の切削加工がうまくいきません。1mmのよけいな切削を修復するのはたいへんな手間です。

マスターテンプレートが完成したら、次は本番の切削用テンプレートですが、切削にどのような種類&寸法のビットを使うかによって、次のテンプレートの仕様が異なります。この例では、お盆の内側の入り隅に半径6mmの丸みをつけるのに12mm径のU字ビットを用いる予定なので、まずマスターテンプレートとまったく同形同寸のテンプレートをトップベリングガイド付きのストレートビット(トップパターンビットとも言います)で製作します。合板は9mm厚のシナ合板です。

このときいきなりトップベアリングガイド付ストレートビットでシナ合板を切り抜くのではなく、2mm程度の余白を残して糸鋸やジグソーでざっと切り落としてからルーターを使用します。一発でシナ合板を切り抜こうとすると抵抗が大きすぎるため、ルーターもビットもテンプレートもみな損傷する危険があるからです。怪我のおそれもあります。切断した合板木口を瞬間接着剤で硬化させるのは同じです。

さてお盆の入り隅はR6ですが、底は平面で径12mmのストレートビットで本番切削を行うので、これ用のテンプレートを、先ほど作ったU字ビット用のテンプレートを元に製作します。合板はやはり9mm厚のシナ合板ですが、切り抜きサイズはぐるりと6mmずつ小さくなるように、ルーターに18mm径の固定のガイドを取り付け、6mm径のストレートビットをルーターに装着します(差尺が12mmあればいいので、他の組み合わせも可)。このときも先に糸鋸などで粗切りします。

以上で「マスターテンプレート」「12mmU字ビット用テンプレート」「12mmストレートビット用テンプレート」と合計3枚のテンプレートができました。記載が前後しますが、お盆の材料を作業台に固定し、2枚の切削用テンプレートを差し替えながら加工するので、3枚のテンプレートは外形を同じにして固定用の木ネジの穴も3枚重ねて最初にボール盤で正確にあけておけばズレる心配がありません。さらに確認のために縦横のセンターラインをテンプレート盤面と木口にも引き、テンプレートの向き(左右や上下、名称など)を油性インキで明記し、保管・吊下用の径12mm穴をあけておけば万全です。

 

シャム柿ピンコロ

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ピンコロというのは通常は数cm〜10cm角程度の大きさのサイコロ状の石を意味する建築用語ですが、これは石ではなくシャム柿という硬い木で作ったもの。大きさは30mm角で、素木をサンディングしてからワッックスで軽く磨いています。面取りは0.5mmくらい。

いつもお世話になっている学童保育施設のサマーキャンプで、参加記念品として子供たちにわたしました。市販のものでなく、オリジナルの手作りで、かつ「子供だまし」的なちゃちなものではないものをという条件で、当工房で急遽こしらえました。木であればなんでもいいわけではなく、小さくとも見栄えがする、そう簡単には手に入らない珍しい木、持ち重りがして硬めで傷が付きにくい。こういった条件を満たすものとしてシャム柿は適任かと思います。

シャム柿は流通上の通称で、正式にはシリコレ(Ciricore)といい、メキシコ・中南米に産するムラサキ科の樹木です(Cordia dodecandra)。非常に珍しく、硬く重い木ですが、なによりおもしろいのはその木目です。写真では材の長さ方向の切断面=木口が見えているのですが、黒い筋は年輪とも節の跡ともいえないよく分からないもので、木工界では「バブル模様」と呼んでいます。どうしてこういう模様が生ずるのか、植物学者にも不明だとか(シャム柿についての詳しい記事は当ブログ2012年2月29日にも載せています。ご参照ください)。

サイコロ状の形、つまり立方体または正六面体ですが、この形には不思議な魅力があると感じます。石でも木でもガラスや金属その他の素材でも、きっちりとした立方体になっているだけで、不定形、または棒状や板状になっているものに比べてまったく同一素材であってもなにか違ったもののように見えます。

自然界にあるものは、顕微鏡的または分子・原子レベルはともかく、正多面体(正四面体・正六面体・正八面体・正十二面体・正二十面体)となっているものはまずありません。球形は珍しくありませんが、正六面体や正八面体などは見当たりません。それに比較的近い形はあっても歪んでいたり丸みがついているなどいわゆるオーガニック(有機的)な形です。つまり正六面体などのあまりにきっちりした形状は「不自然な」「無機的な」形なのかもしれません。そのことが逆に一種の魅力として映るのかもしれませんね。

穴をいちど埋める

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スツールの脚にホゾ穴を開けているところです。4本の脚に長手と妻手の幕板が通しホゾ組みされるのですが、幕板は当然ながら座板の受け材でもあるので同じ高さ。したがってホゾは脚の内部で上下で交差することになります。半分は短い小根ホゾで、もう半分は脚の外まで突きぬけクサビで締める通しホゾ。

通しホゾは組み立ててしまえば一体となって丈夫なのですが、脚だけでは2方向からのホゾ穴が貫通するのでよほどきっちり加工しないと脚の強度が落ちてしまいます。ホゾ穴は主に角鑿盤(かくのみばん)で開けますが、角鑿は正方形の中空の刃で木材を押し切り、内部の錐でそれをかき削る方式。したがって木材のほうに中空があると錐で削る前にホゾ穴が内部で折れて崩れてしまいがちです。

それを避けるために一方向から開けたホゾ穴に、ホゾ穴とぴったり一致する「詰め物」をして、それからもう片方からの穴開けを行うようにしています。写真の白いものがその「詰め物」です。今回は脚はウォールナットですが、詰めているのはそれよりすこし柔らかいスプルス。硬すぎる材料だと肝心の本体が傷ついてしまうおそれがあります。

このようにホゾ穴に詰め物をしつつ他のホゾ穴を開けるという(めんどうな)加工の仕方を他でされているかどうかは怪しいところです。いやその前に椅子などの家具を通しホゾ主体で組むこと自体が、現在ではかなりの程度に少数派といっていいでしょう。組み上がってしまえばホゾの組み方やホゾ内部の精度などほとんど分からなくなってしまいますが、製品の強度・耐久性には明らかに差が出ます。

 

トイレ完成

6月中旬に開始した酒田市内の某宅のトイレ改装工事が、先月27日にやっと完了しました。いくつか予想外のできごとがあってずいぶん手間取った部分や、天候などのせいで若干の工事中断などがあったためですが、結果的にはたいへん喜んでいただきました。当工房が設計と工事元請だったのですが(私自身の担当工事は木工・建具・塗装)、おおむね計画通りの仕上がりです。

新築または水回りのリフォーム等をお考えの方はぜひご相談ください。

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まず廊下から入口のドアをみたところ。お孫さんなどが指をはさんだりしないようにドアクローザーも付いています。リョービのいちばんシンプルなモデル。ドアはスプルスの四方枠+型板強化ガラスです。

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玄関からトイレ入口までの廊下は和風の作りであることと、玄関からじかにトイレが見えるのはやはり差し障りがあるため、廊下から40cmほど踏み込みがあります。ドアを開けると洋風で現代的な世界に。

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中に入りドアを閉めた状態。便器に座ったときの正面の壁に絵を飾っています。通常よりはやや低めの位置。ドアにはクローザーを付けたので、額縁に当たらないようドアの開き角度を任意に設定することができます。

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便器は最近はやりのタンクレスではなく、昔ながらの本体+タンク式です。ウォッシュレット付でTOTO製。左の棚は手すりを兼ねた高さ70cmで、壁から壁までのクルミの無垢一枚板です。縦のグリップは濃色のクルミで削り出し。棚板もグリップも壁を張る前に柱などに強く固定してあるので、支持金具などはいっさい表にあらわれません。時計は当工房の製品です。

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ドアのとなり、便器の左側の凹んだスペース(柱芯間で91cm)に手洗器と棚板、木枠の鏡を設置しています。床板は15mm厚、幅90mmのメープル無垢のフローリングですが、無塗装品のものに二液型ポリウレタン塗料(セラミックタイプ)を自前で艶消塗装。壁と天井はオフホワイトの無地のビニールクロスです。ドア枠や廻縁・幅木などはスプルスの柾目無地無垢材で、できるだけサイズは小さめにして目立たないようにしました。

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廻縁は水性塗料で白色塗装。照明も乳白ガラスのグローブのみのLEDの二灯です。オーデリック製。

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手洗器はイタリア・ホワイトストーン社の陶製ボウルで、30cm四方の大きさです。となりに同じ高さでクルミ一枚板の棚、壁に44cm角のクルミの木枠の鏡を固定したので、狭いながらもちょっとしたお色直し的空間になります。タオルバーはクルミの丸棒を加工して棚板と一体化しています。

 

胴腹ノ滝やっと減水

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写真は8月2日午前8時半頃のものですが、やっと減少に転じてきました。6月17日とほぼ同じ水準です。水温も前回・前々回は高めだったのですが、こちらも今回は右側8.9℃、左側8.8℃と下がってきました(気温は20.1℃)。梅雨の長雨のせいでしょうか、今年は7月に入ってからの増水と温度上昇が顕著でした。

滝の周辺ではいま薄紫色のオオバギボウシと白色のヒヨドリバナが咲いています。それから駐車場に至るまでの車道両側の草の刈り払い(車道整備の一環)で、ヤマジノホトトギスの株があるところは逐一マーキングして、他のいわゆる雑草といっしょに刈り取られてしまうことを防ぐ措置がされていました。「雑草」という呼称といい、何を除去し何を残すかはまったく人間側の主観的で恣意的なものですが、それはある程度はしかたがないかなと思います。たしかにヤマジノホトトギスをあれほど簡単にたくさん眺めることができる場所はそうそうありませんから。

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今年も消防学校へ

先週ですが、東田川郡三川町にある山形県消防学校の子供向け一日体験入学に行ってきました。申し込んで抽選に当たらないと参加できないのですが、わが家は昨年に続いて2回目です。午前10時から午後3時まで、途中で食堂での昼食をはさんで、いろいろな体験をします。

救急車&消防車に同乗したり、実際に消防ホースを手にして放水、梯子登り(今回は11mまで完登)、綱渡り、地震模擬体験(震度7強はちょっと怖い)、消火器の放水、煙幕退避訓練などを行いました。

消防学校側は現役の訓練中の学生が大勢スタッフとしてかかわるのですが、運営・進行についてはいくつか不備があると感じました。また参加者のほうも常識はずれの親子もいて困るのですが、まあそれなりに楽しめましたし大人のほうもいろいろ参考になることがありました。

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カエルがせいぞろい

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ようやく雨があがり梅雨明けかな?という気がしますが、はてさて。先日、降雨の合間に某所の庭を眺めていたら、直径10cmあまりの切り株の上にたくさんの雨蛙が並んでいました。蛙だからひなたぼっこというわけでもないようですが、枝の上や塀の上などあちこちに蛙がいます。

まだ体長1.5cmにも満たない蛙ですが、おたまじゃくしといい蛙といい敵に対して反逆するだけの強力な武器もなく、ひたすら「数で勝負」という生存戦略ですね。かつて大島弓子は『森のなかの一羽と3匹』という絵本の「カエル」という章で、さらりととても残酷で悲しい蛙の運命=事実を記しています(白泉社 1996年刊)。

運良く魚に食べられなければ/おたまじゃくしは まず足が出て//運良くザリガニに食べられなければ /おたまじゃくしは 次に手が出る//鳥にも蛇にも食べられなければ/おたまじゃくしは しっぽがとれて 蛙になれる/ここまでの生存確率1%/100匹のうち99匹は命をおとすのだ (p.44)

わたしはこの糸の/蜘蛛を食べた/親類の蛙は/ゴイサギに食べられた/近所の蛙が小学校の解剖で/大勢はてた/年長の蛙は車につぶされた/わたしが今生きてるのは/たぶん奇蹟なのかもしれないな (p.51)

翌日その蛙は死んでいた//蛙の死ぬのはなれっこなの/もう100回以上も見たことあるのと/自分に言った/池の中で泣いたら/水は涙をやさしく溶かした (p.53)

 

20年ぶり

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ずっと以前に当工房にてご注文で作らせていただいたウォールナットの椅子です。背側幕板の刻印を見ると1993とあるので、ちょうど20年ぶりの出会いということになります。

正確にはそのお客さまのところにはその後も何度も伺っているので、長さ2.2mの大きなダイニングテーブル(もちろん当工房製)とともにあるのをちらとは目にしているのですが、お客様さまのところで椅子をひっくりかえしてためつすがめつするわけにもいきません。今回は脚底のクッションのフェルトの交換を依頼されたので、工房に一晩あずかってきました。

ここぞとばかり隅々まで点検したのですが、まったくどこにも歪みやガタがきていません。自分で言うのもなんですが完璧です。むろん日常生活での細かな擦り傷や、窓越しの日射とはいえ陽に照らされて部分的には「色の濃いクルミ」のような淡い色合いになっていますが、非常にていねいに大切に使われているのがよく分かります。20年も使い込まれた家具とは第三者には信じてもらえないでしょうね。

この椅子は当工房の定番的な椅子のひとつです。貫の数や位置、部材の若干の寸法違いなどはありますが、これまでかなりの数を作っています。現代の一般的な椅子に比べるとごつくて重たい印象を受けるかもしれませんが、椅子は家具の中でもとりわけ強度・耐久性を必要とされるものです。見た目優先で、10年もしないうちにガタがきたのでは話になりません。