シャム柿ピンコロ

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ピンコロというのは通常は数cm〜10cm角程度の大きさのサイコロ状の石を意味する建築用語ですが、これは石ではなくシャム柿という硬い木で作ったもの。大きさは30mm角で、素木をサンディングしてからワッックスで軽く磨いています。面取りは0.5mmくらい。

いつもお世話になっている学童保育施設のサマーキャンプで、参加記念品として子供たちにわたしました。市販のものでなく、オリジナルの手作りで、かつ「子供だまし」的なちゃちなものではないものをという条件で、当工房で急遽こしらえました。木であればなんでもいいわけではなく、小さくとも見栄えがする、そう簡単には手に入らない珍しい木、持ち重りがして硬めで傷が付きにくい。こういった条件を満たすものとしてシャム柿は適任かと思います。

シャム柿は流通上の通称で、正式にはシリコレ(Ciricore)といい、メキシコ・中南米に産するムラサキ科の樹木です(Cordia dodecandra)。非常に珍しく、硬く重い木ですが、なによりおもしろいのはその木目です。写真では材の長さ方向の切断面=木口が見えているのですが、黒い筋は年輪とも節の跡ともいえないよく分からないもので、木工界では「バブル模様」と呼んでいます。どうしてこういう模様が生ずるのか、植物学者にも不明だとか(シャム柿についての詳しい記事は当ブログ2012年2月29日にも載せています。ご参照ください)。

サイコロ状の形、つまり立方体または正六面体ですが、この形には不思議な魅力があると感じます。石でも木でもガラスや金属その他の素材でも、きっちりとした立方体になっているだけで、不定形、または棒状や板状になっているものに比べてまったく同一素材であってもなにか違ったもののように見えます。

自然界にあるものは、顕微鏡的または分子・原子レベルはともかく、正多面体(正四面体・正六面体・正八面体・正十二面体・正二十面体)となっているものはまずありません。球形は珍しくありませんが、正六面体や正八面体などは見当たりません。それに比較的近い形はあっても歪んでいたり丸みがついているなどいわゆるオーガニック(有機的)な形です。つまり正六面体などのあまりにきっちりした形状は「不自然な」「無機的な」形なのかもしれません。そのことが逆に一種の魅力として映るのかもしれませんね。

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