スツールの脚にホゾ穴を開けているところです。4本の脚に長手と妻手の幕板が通しホゾ組みされるのですが、幕板は当然ながら座板の受け材でもあるので同じ高さ。したがってホゾは脚の内部で上下で交差することになります。半分は短い小根ホゾで、もう半分は脚の外まで突きぬけクサビで締める通しホゾ。
通しホゾは組み立ててしまえば一体となって丈夫なのですが、脚だけでは2方向からのホゾ穴が貫通するのでよほどきっちり加工しないと脚の強度が落ちてしまいます。ホゾ穴は主に角鑿盤(かくのみばん)で開けますが、角鑿は正方形の中空の刃で木材を押し切り、内部の錐でそれをかき削る方式。したがって木材のほうに中空があると錐で削る前にホゾ穴が内部で折れて崩れてしまいがちです。
それを避けるために一方向から開けたホゾ穴に、ホゾ穴とぴったり一致する「詰め物」をして、それからもう片方からの穴開けを行うようにしています。写真の白いものがその「詰め物」です。今回は脚はウォールナットですが、詰めているのはそれよりすこし柔らかいスプルス。硬すぎる材料だと肝心の本体が傷ついてしまうおそれがあります。
このようにホゾ穴に詰め物をしつつ他のホゾ穴を開けるという(めんどうな)加工の仕方を他でされているかどうかは怪しいところです。いやその前に椅子などの家具を通しホゾ主体で組むこと自体が、現在ではかなりの程度に少数派といっていいでしょう。組み上がってしまえばホゾの組み方やホゾ内部の精度などほとんど分からなくなってしまいますが、製品の強度・耐久性には明らかに差が出ます。