月別アーカイブ: 6月 2011

エゴノキ


 

そろそろ梅雨かな、と思っていると咲いているのがこのエゴノキ(Styrax  japonica)です。鳥海山麓の標高200〜300mくらいのところであちこち満開でした。エゴノキといってももちろんエゴイズムとはなんの関係もありません(言うまでもないか)。果皮に強いえぐみがあり、魚を捕る毒流し漁にも昔使われたことなどからきた名前のようです(異論あり)。今は毒流し漁は全面禁止ですが。

エゴノキ科エゴノキ属の落葉高木で、山野の雑木林などに生えます。別名をチシャノキ、チサノキ、ロクロギといいますから、ろくろ細工や将棋の駒などに向いた緻密で粘りのある木質なのでしょう。白い花で花冠の先が深く5裂し、下向きに群がるように咲きます。完全には平開せずややすぼまって咲くのも趣があります。樹高10mほどになるけっこう大きな樹木ですが、花が下垂してたくさん一度に咲くので、目立ちます。いい香りとともに、林の一画にまるで明かりが灯ったような雰囲気です。

史跡鳥海山展

山形県遊佐町(ゆざまち)の生涯学習センターで「史跡鳥海山展」が6月19日まで開かれています(午前9時〜午後4時半 遊佐町生涯学習センター   tel 0234−72−2236)。昨日の夕方訪れてみたのですが、非常におもしろかったです。

鳥海山は信仰対象としては山それ自体が御神体で、これを管轄する大物忌神社(おおものいみじんじゃ)は山頂=新山に本殿、西麓の吹浦(ふくら)と南麓の蕨岡(わらびおか)に口ノ宮があります。2008年3月に、遊佐町側の鳥海山中腹〜山頂周辺、二つの口ノ宮境内地、牛渡川そばの丸池、合わせて917haが国の史跡として指定されました。その後、2009年に秋田県側の金峰神社境内地と森子大物忌神社境内地などが追加。これらを一括して「史跡鳥海山」の国史跡指定を受けたものです。

今回の展示はこの史跡指定を記念し、主に歴史的側面に焦点をあてた展示となっているとのこと。往事の山岳信仰や登拝のようすをあらわす絵地図やスケッチ、神像・器物、山岳名所番付表、古い絵葉書など、いろいろ興味深いものが展示されています。コピーや写真だけでなく、通常は「門外不出」とでもいうべき現物そのものが多く展示されています。

私は個人的にいちばん興味があったのが、山の絵地図です。現在の登山ルートやポイントとの異同や、すでに今では忘却の彼方となってしまったような古道がしるされていたからです。ガラス越しに写真は撮ったのですが、細かい文字までは読み取りできません。あとで関係者・責任者に頼んでもっと精細な撮影をさせていただこうと考えています。

 

ミズタビラコ

私が使っているコンパクトデジカメはNikonのCOOLPIX P5100という機種で、いちおう接写モードもあるのですがほとんど使いものになりません。いくらやってもピントが合わないことが多く、レンズの解像度もよくありません。風景や人物などはまあまあですが、上の写真でお分かりのようにマクロには向いていませんね。

写真はムラサキ科のミズタビラコ(Trigonotis  brevipes)です。キュウリグサの仲間ですが、くるんと巻いた花序、白色またはわずかに青紫色をおびた花が密に連なりとても愛らしいと感じます。山地の比較的流れの安定した渓流付近に生える多年草ですが、草丈10〜20cm程度と低く、花冠の大きさは径3mmくらいしかないので、野草にそれほど関心がなければ見過ごしてしまいそうな控えめな植物です。個体数としてはとくに珍しい植物とはいえませんが、生息地はわりあい限られているように思います。

ミズタビラコは漢字で書くと水田平子ですが、キュウリグサの別名をタビラコとすることがあり、またキク科にオニタビラコやコオニタビラコ、ヤブタビラコがあるなど、素人にはとてもまぎらわしいです。

玉簾ノ滝と二ノ滝

山形県の庄内地方で「北庄内の三大名瀑」と称されるのが鳥海山南西面の二ノ滝、升田の玉簾ノ滝、平田の十二ノ滝です。異論もありますが、昔から一般によく知られ比較的アプローチが容易な大きな滝という意味で、まず妥当な選択といっていいと思います。また三つの滝はそれぞれタイプが大きく異なるという面でも面白いです。

玉簾ノ滝は落差63mもある直瀑で、まわりの柱状節理がみごと。二ノ滝は落差は25m(?)といわれていますが、二股に分かれた落水と膨大な水量、そして滝下の巨岩の渓流が見応えがあります。十二ノ滝は連続的に階段状に連なる落水とそのまわりの大きな樹木との対称がすてきです。したがって地元贔屓を別とすれば「どの滝がいちばん」とはいいがたい個性がそれぞれの滝にあります。

先日、子どもを連れて二ノ滝と玉簾ノ滝に行ってきました。日曜日で天気もよかったので多くの人が観賞に訪れていました。はじめは続けて十二ノ滝もみて三大瀑布めぐりを完遂するつもりでいたのですが、時間切れで十二ノ滝には結局行けませんでしたが、前ふたつの滝はとても良かったです。四季それぞれに良さがありますがちょうど今頃は水量が多くたいそう迫力がある一方、滝の周りの新緑が美しく、おすすめ。駐車場から徒歩で、二ノ滝は20〜30分程度、玉簾ノ滝は10〜15分程度です。

電子式水温計

湧水の温度などを計るのに私が使用しているのが写真のデジタル水温計です。株式会社佐藤計量器製作所(skSATO)のSK−250WPという機種で、防水型。測定の精度はプラスマイナス0.1℃です。サーミスタ式の温度センサーは1mのコードが付いているので、対象からややはなれている場合でも測定することができます。湧泉は足場がいいところばかりではありませんし、湧水の水面が岩間などからわずかにしかのぞいていないこともあるので、これは助かります。

電池は単三が四本ですが、本体右側の白い板はパワースイッチが誤って押されないようにするためや、液晶が割れたりしないようにするための自作の発泡アクリルの防護板です。以前、湧水の温度をいざ調べようとしたらスイッチが入りっぱなしになっていて電池切れだった苦い経験があるので、自分で取り付けたものです。

アクシデントといえば、こうした電子機器には故障がつきものです。まったくうんともすんともいわないのならダメだということがはっきり分かるのでまだいいのですが、測定・表示が微妙に狂った状態だと、それと気づかないまま正しいデータだと思って誤って記録してしまう可能性があります。そのため、ときおり他の温度計と比較したり、割れない限りは逆に信頼性がある0.1℃目盛の水銀温度計と比較したりする必要があります。

このデジタル水温計は価格22000円くらいのものですが、ホームセンターなどではこれより一桁安い値段で0.1℃まで温度表示されるデジタル水温計が売られています。しかしその値段の差にはむろん意味があるわけで、計測精度の差であり、機器の耐久性の差です。実際、鳥海山の湧水を調べ始めたごく初期の頃に、そのたぐいの簡易な温度計を使ったことがありますが、精度がわるく不安定なため、すぐに廃棄処分したことがあります。ちゃんとした電波時計でもないかぎり、秒針のある時計でも時・分はともかく、秒はほとんどあてにならないのと同様です。

※本機種は現在は廃番になっており、後継機種はSK-250WPIIです。あるいはひとつ上のモデル、SK-1260がいいかもしれません。

ヤブジラミ

きちんとした標準的な名前にもかかわらず、植物の名前にはじつに不遇としかいいようのないものがあります。ハキダメギク、ママコノシリヌグイ、ヘクソカズラ、クソニンジン、ウバユリ、オオイヌノフグリ、タチイヌノフグリ、ヌスビトハギ、ブタクサ、ギンリョウソウモドキ、クサレダマ、ステゴビル、チョロギダマシ、バアソブ、バカナス、ママコナ、ヨゴレネコノメ、ニセアカシア、等々。

ヤブジラミ(Torilis  japonica)もそのひとつで、漢字で書くと薮虱ですが、むろんシラミとはまったく無関係のれっきとしたセリ科の植物です。野原や道ばたなどにふつうに見かける植物で、高さ30〜70cm、枝先に複散形花序を付けます。白い小さな花は大きさ4〜6mm程度ですが、それがたくさん咲いて群生しているようすはなかなかみごとなものと思います。あまりにありふれた植物すぎるためかそれほど注目されませんが。

名前は、薮かげに生え、カギ状に曲がった刺毛が密生する実が衣類などに容易にひっつくためにまるでシラミのようだ、というところから来ています。白い清楚な花なのに変な名前を付けられたためにずいぶん損しているのではないでしょうか。

植物に正式な標準和名を付すのは植物学者の仕事なわけですが、必ずしも言葉にたいする美的センスがあるとはかぎらないので、なかには変な名前が付いてしまうことがあります。一度付いてしまった名前をかえるのはとても難しいので、結局それが絶対的なものとして幅をきかせることになります。専門家はそれでもその植物の実体を知っているので、名前がどうであってもさして関係ないのですが、一般の人は名前から受ける印象や誤読によってそうとう勝手なイメージをその植物に抱くことになります。

名付けることはその対象を把握する第一歩ですが、場合によってはそのことがよけいな色眼鏡やフィルターとなってしまうことも。

5/27と6/8の胴腹ノ滝


上の写真は5月27日朝、下は6月8日朝の胴腹ノ滝です。カメラの撮影条件(シャッタースピードや絞りなど)が同じではないのですこし分かりにくいですが、前回(5/20)掲載した5/11&18にくらべ徐々に水量が減ってきています。写真を並べよく見比べて分かる程度の差ですが、いちおう雪解けの影響による湧水量増加のピークは過ぎたとみていいと思います。

水温は5/27が右・左ともに8.8℃(気温13.7℃)、6/8が右8.8℃、左8.7℃(気温14.3℃)です。これまで調べたかぎりでは、左の滝の湧水のほうが0.1℃低いことが多いのですが、毎回というわけではないし、逆に左のほうが高い場合も一回ありました。帯水・湧出している地層が微妙に左右で違っている可能性もないとはいえません。

「右と左で水の味がちがう」と主張する人がときおりいますが、水質を分析し数値的にみるかぎり味を左右するほどの違いは両者にみいだせません。ただ、水温からいえば左右がまったく同一ではないこともたしかで、ひょっとすると味覚のほうが正しいかもしれませんね。さらに継続して調べてみます。

 

日ノ山と月ノ山

6月7日の朝、鶴岡市の中心部より北北西約4kmのところからみた日ノ山=鳥海山(写真上)と、月ノ山=月山(写真下)です。庄内平野から見ることができる二つの大きな山で、北の鳥海山と南の月山は、じつは二つでワンセット。

「日と月」は「昼と夜」であり、「陽と陰」「生と死」、また宇宙のことでもあります。私は無宗教の人間ですが、鳥海山や月山を眺めるたびに畏怖畏敬の念が起こるのはたしかですね。とりわけ真冬のごくたまに訪れる快晴の紺色の天空の下、真っ白に輝く鳥海山と月山は比類無き美しさとともに神秘的で荘厳です。

鳥海山は明治以降はそれが統一的な名称になっていますが、それ以前はさまざな名前で呼ばれていました。鳥海山、鳥ノ海、松岳山、吉出山、鳳凰山、北山、温海山、そして日山です。日山という呼び方は遊佐町杉沢の重要無形民俗文化財の番楽「比山の舞」にその名残があります。

 

新緑

 

いま樹木の新緑がとていいですね。とくに晴れた日の下から見上げた逆光気味の景観がすばらしく美しいです。写真は上がホオノキ、下がコナラです。

 

ホオノキは枝先に放射状に広がる非常に大きな葉で、他の樹木と区別しやすいですが、このあたりに混在するミズナラとコナラはちょっと区別がむずかしい。でも写真で分かるように葉柄がはっきりしているのがコナラです。ミズナラの葉柄はごく短く、そのつもりでよく見ないと葉柄がないみたいです。

フクロウのぬいぐるみ

フクロウのぬいぐるみですが、テディ・ベアで有名なドイツの人形メーカー、シュタイフ(Steiff)社のもの。1968年製造のビンテージ品です。少々汚れていますが、どこも壊れてはいません。インターネットで売りに出ていたので、つい買ってしまいました(新品のテディ・ベアなどは数万〜十万以上もするのでとても買えませんが、これならなんとか私でも可)。子どもにというのではなくていちおう自分用です。デザインの本質を考える際の参考になるでしょうから。高さは23センチ。

アニメのキャラクターグッズとか、あまりに幼児玩具的な感じのぬいぐるみは好きではありませんが、これはなかなかいい味が出ていると思います。まだ若いふくろうでしょうが、なんとも愛らしいですね。