月別アーカイブ: 5月 2011

カピバラ

これは俗に「世界最大のネズミ」とウワサされるカピバラです。大型犬くらいの大きさがあり、ネズミというにはおどろくべき巨体ですが、たしかに顔のあたりの雰囲気はネズミに似ていなくもないですね。

保育園のバス遠足で先日、秋田市の大森山動物園に行ってきました。トラとかゾウとかキリンなどの目玉の動物もさることながら、もうひとつのお目当てがこのカピバラ。正午すぎで気温も26℃にもなったらしいので、屋外の日向のカピバラはどてっと横になって寝ていましたが、室内にいたカピバラはごらんのように静かにたたずんでいました。

カピバラは体長105〜135cm、体重も35〜65kgにも達するそうで、ネズミ目(齧歯目)では最大。分類としてはヤアマラシ亜目カピバラ科カピバラ属カピバラ(Hydrochoerus hydrochoerus) で、カピバラ属の唯一の種。思いのほか珍しい動物のようです。ただ大きいだけのネズミではなかったんですね。性格がとてもおだやかで人になつきやすいため、ペットとして飼っている人もいるそうです(秋篠宮も飼われておられるとか)。

ラジオ

新品のポータブルラジオです。ふだんほとんどラジオを聴くこともない私があえてラジオを購入したのは一番には熊対策です。一人きりで山に出かけるときは熊よけのカウベルをかならず持っていくのですが、鈴ですから静止中はとうぜん無音です。歩いているときはいいですが、休憩中や湧水の温度を計ったりしているときなどはほとんど音がしません。私はこれまでの数百回の登山中に、熊そのものに出会ったことはありませんが、足跡や糞や気配などには何度も遭遇しています。ということは、風向きや沢音・風音などのかげんで今後ばったり熊と鉢合わせしないとも限りません。近年は鳥海山やその周辺の山地でも熊の出没情報が多いですし。

それでインターネットなどで調べてちょうど良さそうなラジオを手に入れることにしました。登山ではもろもろの装備でかなりの重量になりがちですので、ラジオもできるだけコンパクト・軽量なほうがいいのですが、熊対策以外にも天気や震災情報を聴くこともあるでしょうから、受信感度や音質はある程度以上は必要です。簡単に故障しないくらいの耐久性も。それでソニーのICF-P21にしました。

大きさは69/30/118mm、重さは185gで、携帯電話よりはすこし大きいですが片手で楽に握れる大きさです。デザインは特別いいともいえませんが、まずまず。値段はオープン価格となっていて、3.11の大震災後直後は1万円を超えるようなべらぼうな値段で売っていたところもあったようですが、今回は送料・手数料込みで2800円ほどでした。まあ妥当な値段といっていいでしょう。

話は若干横道にそれますが、私は車の運転中や工房での作業中にラジオやCDなどを聴くことはまずありません。気がちってだめなのです。とくに音楽などは、いかに高音質の機器であっても大なり小なりノイズが入ってくることは避けようがなく、「この音楽はこんな音のはずがない」とむしろ不快感が先にたってしまいます。音楽を聴くなら他のことをしながらではなく、音楽だけに集中しできるだけいい条件で聴きたいと思っています。山でもできればラジオなど鳴らして行きたくはないのですが、熊に合う可能性がある場合はやむなしです。

ショートケーキのような

酒田市内の某地区に並ぶ建売住宅(?)。狭い敷地に建ぺい率ぎりぎりに建てられた総2階建ての住宅。外壁の色や屋根の向きなど若干の違いはありますが、ほとんど同じような設計と建材で作られていることが分かります。

こういった住宅群は「ショートケーキのような建物」といって貧しく悪しき建物の典型例のように語られることが多いです。でも、しかたがないと思います。もっと広い敷地に、一軒一軒が自由設計でゆったりと建てることができれば、もしそれが可能なら、誰だってそのほうがいいに決まっています。しかし今の日本でふつうの勤め人がそれを実現することは非常に困難です。

ショートケーキのような建売住宅であっても通勤通学に支障のない市街地なら、土地と建物その他の諸費用合わせて2000万にはなります。その費用の大半を銀行などからの借金でまかなうとすれば、年収は最低でも500万くらいないと無理でしょう。それも今現在だけでなく今後すくなくとも20~30年を通じてです。むろん途中で勤め先が倒産などという事態があってはなりません。

年収500万なんてへでもないような建築家や評論家が批判する「ショートケーキ論」はお気楽なたわごとです。問題は狭小で画一的な住宅群ではありません。それは表層的な結果論でしかないのですから。もっと根本的な、政治や経済のしくみ、土地本位制的な文化基盤をこそ問題とし批判しなければならないと思います。

 

鳥海山立体マップ


鳥海山が噴火した場合、溶岩や噴石、降灰・火山泥流などの災害がどこまで及ぶかを予測した火山防災マップです。ユニークなのはベースの地図が平面図ではなく衛星写真および国土地理院発行の1/20万地勢図をもとにした非常に精密な立体模型であること。縮尺は1:75000で比高1:1.15です。つまり垂直方向には15%強調してあります(上)。それとは別に災害予想図が印刷された透明なカバーがあり、ベースの地図にすっぽりかぶせる形になっています(下)。

このマップは平成13年(2001年)に山形県庄内総合支庁によって発行されたものです。製作は住鉱コンサルタント株式会社、ニシムラ精密地形模型。本来は県内の官公庁や防災機関、公民館・学校などに限定配布する目的で作られたマップですが、当時私は「遊佐自然文化学校」という任意の民間団体の活動で月1回程度、遊佐町内の小学生4〜6年生と鳥海山に登っていたこともあり、庄内総合支庁に電話して2部だけとくべつに分けていただきました。

どれくらいの精度があるかをみるために、試しにカメラでごく浅い角度から写真を撮ってみました。まるで本物の鳥海山を写したみたいですね。鳥海山ならびに周辺の出羽山地や丁山地の一部もよく表現されており、山屋にはこれはたまらないアイテムといっていいでしょう。地形のありようや成り立ちがよく理解できます。

ほんとうはこういうマップこそ有料ででも一般の人が入手できるようにしてもらいたいものです。精密模型の金型を作るのにえらいお金がかかったとのことですが、それをうまく回収するようにしたほうがいいと思うのですが、やはりお役所は商売気がぜんぜんないですねえ。もったいない。

煙草入

おそらくは紫檀でできた煙草入です(自分で実際に使用している材種以外はいまいち分からない)。昨日(5/25)の茶櫃や、その前の縞黒檀の茶簞笥と同じくお客様のご実家でお父様が長く使われていたものです。大きさは皿が136/118/8mm、実が116/100/29mm、蓋が111/97/8mmで、手の平に載るくらいのサイズです。

じつはお父様が残された品で、私が個人的にいちばん感心し気に入ったものの最右翼がこの煙草入でした。写真ではどうもそのよさがうまく表現されていないきらいがありますが、皿・実・蓋ともに指物ではなく一枚の板を彫って作ってあるところがとてもすてきです。彫刻とか象眼・螺鈿といった加飾はまったくありませんが、そのことがいっそう魅力的。

ただ長年煙草(刻み煙草?)を入れていたせいか全体に煙草の臭いや脂などが濃密にしみついていて、再塗装するべく劣化した前の塗装を削り落とすのはたいへんでした。何時間もサンディングしていると身体から衣類からすべて煙草くさくなり……。喫煙せず喉も丈夫とはいえない私は、作業終了後大急ぎでお風呂に入り、着ていたものを全部洗濯しました。

茶櫃


「ちゃびつ」と読みます。急須や茶碗など茶飲み道具一式を入れておく容器です。一昨日(5/23)、縞黒檀の茶簞笥のリニューアルの件をご紹介しましたが、その茶簞笥といっしょに長年使用されていたものです。

材質はケヤキで実・蓋ともに板目の板を旋盤で掘抜いたもの。大きさは蓋が径281〜289mm、高さ33mm、実が径265〜269mm、高さ85mm、蓋をかぶせた状態の全体の高さが93mmです。茶櫃としてはやや小ぶりのものと思います。

正円ではなくいくぶんゆがんだ楕円形になっているのは経年変化および乾燥によるひずみです。完成後の製品の干割れを避けるために、とくに実のほうは三寸ほどの厚い板=半乾燥状態の材を段階的に挽いていくので、どうしてもいくらかの変形は生じてしまいます。この茶櫃の場合も、蓋は実のほうと木目の向きを合わせないとうまく収まりません。固いのをむりやり押し込むと蓋か実か、どちらかが壊れてしまいます。そのあたりは天然素材の特性ですが、現代の人工的な素材でできた製品に慣れた人からは不評が出るかもしれませんね。

お客様からこの茶櫃をお預かりした時点では軽く施された塗装も部分的にはげていて、蓋の薄い着色もまだらになっていました。実のほうには2カ所の割れもあります。茶の染みもだいぶ濃く付いていました。それで全体をサンディングし再塗装したのですが、思った以上に手間がかかってしまいました。しかしおかげでお客様からは「新品みたい。見違えるくらい」とたいへん喜んでいただきました。自然の材料ではじめにきちんと作られたものは、こうしてまたよみがえる。そこがいいところです。染みは完全には除りきれていませんが、それもまた数十年来の家族の生活の思い出というものです。

ごろんごろん

わが家の二番目の猫、トントです。畳の上で仰向けになってごろんごろんと左右にはげしく転がっているところ。ちぢめた前脚もキュートなりよ。

縞黒檀の茶簞笥

お客様からおあずかりした縞黒檀の茶簞笥です。お父様の遺品だそうですが、数十年前に京都だかで「中古品」として購入されたようです。大きさは幅744mm、奥行330mm、高さ897mmと小ぶりのものですが、前面はすべて縞黒檀の練り付け(薄板をニカワなどで他材の表面に貼りあわせること)。天板や側板などは前縁以外はセンの木に着色、抽斗内部はキリです。大事に使われていたらしく、大きな痛みはなく、部分的な補修と再塗装で新品に近くよみがえりました。

練り付けといってもその縞黒檀の単板は厚さ3mmほどありますし、目はみなきれいにそろっています。製作されたのはおそらく戦後すぐか戦前かもしれません。というのは底板のまったく陰になる箇所などは荒木のままだからです。製材されただけのかなりざらざらした状態の肌が残っています。今なら簡単に機械で平面出しと準仕上げ削りができますが、昔はすべて手作業だったでしょうから、わりあい高級品でも陰になるところは手カンナによる仕上削りはされていないことが珍しくありません。

お父様は木でできたものがお好きだったようで、この茶簞笥の他にも多少手を入れればまだまだ使えそうなものがいくつか残っており、当工房で順次補修中です。

コチャルメラソウ


ユキノシタ科のコチャルメラソウ(Mitella pauciflora)です。じつに変わった形の花。花弁が羽状に7つから9つに裂けています。ただし花弁の長さは4mmくらいで、しかもごらんのような淡褐色+緑黄色なのでよくよく観察していないと見過ごしてしまいそうです。チャルメラというのは中国の楽器のラッパのことで、本種は関東以西に自生するチャルメラソウに比べ葉などの全体像が小さめだそうです。しかし花のほうはコチャルメラソウのほうが大きいようで、混乱しますね。

私もじつは先日はじめて自生のコチャルメラソウを目撃しました。図鑑などで調べるとそれほど珍しい種でもなさそうなのに、なかなか見る機会がない、ぜひ一度野外で実物を見てみたいと長らく思っていたのですが、なんのことはない鳥海山山麓のよく訪れる場所にまとまって生えていました。花が咲いていなくても葉や茎などだけで識別できる能力があればとっくに分かっていたんでしょうが。花がなくても植物の種がすぐ分かる方もいますが、とうてい私にはまねできません。

5/11&18の胴腹ノ滝

上の写真は5月11日の午後5時13分、下の写真は5月18日の午前8時33分に撮ったものです。湧出水量としてはほぼ同じくらいですが、上のほうがわずかに多いでしょうか。水温は11日が右8.9℃、左も8.9℃です(気温12.3℃)。18日は右が8.8℃、左が8.7℃でした(気温10.8℃)。18日の温度は5月3日ならびに4月25日とまったく同じです。

スギの木にさえぎられて左右両方の滝の全体が一枚の写真に写らないのが難点ですが、冬期間はもちろん、雪がまだ滝の周辺にあった4月はじめ頃にくらべても相当程度の水量増加となっていることは明白です。ただ雪解水による河川の水量はだいぶ落ち着いてきており、昨日(5/18)掲載した高瀬峡大滝の写真でも分かるように渓流の水の濁りはかなりとれてきました。したがって、この5月11・18日あたりが胴腹ノ滝の湧水のとりあえずのピークかもしれません。なお継続して調べてみますが。