縞黒檀の茶簞笥

お客様からおあずかりした縞黒檀の茶簞笥です。お父様の遺品だそうですが、数十年前に京都だかで「中古品」として購入されたようです。大きさは幅744mm、奥行330mm、高さ897mmと小ぶりのものですが、前面はすべて縞黒檀の練り付け(薄板をニカワなどで他材の表面に貼りあわせること)。天板や側板などは前縁以外はセンの木に着色、抽斗内部はキリです。大事に使われていたらしく、大きな痛みはなく、部分的な補修と再塗装で新品に近くよみがえりました。

練り付けといってもその縞黒檀の単板は厚さ3mmほどありますし、目はみなきれいにそろっています。製作されたのはおそらく戦後すぐか戦前かもしれません。というのは底板のまったく陰になる箇所などは荒木のままだからです。製材されただけのかなりざらざらした状態の肌が残っています。今なら簡単に機械で平面出しと準仕上げ削りができますが、昔はすべて手作業だったでしょうから、わりあい高級品でも陰になるところは手カンナによる仕上削りはされていないことが珍しくありません。

お父様は木でできたものがお好きだったようで、この茶簞笥の他にも多少手を入れればまだまだ使えそうなものがいくつか残っており、当工房で順次補修中です。

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