茶櫃


「ちゃびつ」と読みます。急須や茶碗など茶飲み道具一式を入れておく容器です。一昨日(5/23)、縞黒檀の茶簞笥のリニューアルの件をご紹介しましたが、その茶簞笥といっしょに長年使用されていたものです。

材質はケヤキで実・蓋ともに板目の板を旋盤で掘抜いたもの。大きさは蓋が径281〜289mm、高さ33mm、実が径265〜269mm、高さ85mm、蓋をかぶせた状態の全体の高さが93mmです。茶櫃としてはやや小ぶりのものと思います。

正円ではなくいくぶんゆがんだ楕円形になっているのは経年変化および乾燥によるひずみです。完成後の製品の干割れを避けるために、とくに実のほうは三寸ほどの厚い板=半乾燥状態の材を段階的に挽いていくので、どうしてもいくらかの変形は生じてしまいます。この茶櫃の場合も、蓋は実のほうと木目の向きを合わせないとうまく収まりません。固いのをむりやり押し込むと蓋か実か、どちらかが壊れてしまいます。そのあたりは天然素材の特性ですが、現代の人工的な素材でできた製品に慣れた人からは不評が出るかもしれませんね。

お客様からこの茶櫃をお預かりした時点では軽く施された塗装も部分的にはげていて、蓋の薄い着色もまだらになっていました。実のほうには2カ所の割れもあります。茶の染みもだいぶ濃く付いていました。それで全体をサンディングし再塗装したのですが、思った以上に手間がかかってしまいました。しかしおかげでお客様からは「新品みたい。見違えるくらい」とたいへん喜んでいただきました。自然の材料ではじめにきちんと作られたものは、こうしてまたよみがえる。そこがいいところです。染みは完全には除りきれていませんが、それもまた数十年来の家族の生活の思い出というものです。

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