月別アーカイブ: 5月 2011

田ごとの鳥海山

田植えが終わったばかりの水田に写る鳥海山。遊佐町の上吉出で撮影しました。山の中腹まで新緑に染まってきていますが、雪解けは例年にくらべ半月ほど遅いかんじです。笙ケ岳(西鳥海1635m)の下の「種まき爺さん」と「カラス」がまだはっきり形を成しています。鍋森あたりには「飼葉桶に口を突っ込む馬」が、右の月山森・ボサ森のあたりには「騎馬武者」が現れています。

渓谷の大水とイワカガミ

1週間ほど前に鳥海山の高瀬峡などに諸々の探索にでかけたのですが、驚きがふたつありました(ほんとうはもっとたくさんあるのですが、マニアックすぎるものもあり、割愛します)。そのひとつは高瀬峡遊歩道の最奥にある大滝の滝壺です。

 
大滝は落差30mほどの直瀑ですが、滝の直下は岩になっています。滝壺はそれよりやや離れて前方に直径10m、深さ1m程度でそれほど大きくはありません。いつもはこの滝壺の周囲の岸辺の河原は滝壺の水面とほぼフラットで、落水は45度ほど左に向きを変え南西側に流出しています。ところがこの日は滝に近づくにつれていつもの滝のようすと違うことに気づきました。滝自体は融雪期で水量が多く、上部からの流れに勢いがあるために直瀑ではなくすこし斜めに水が落ちている斜瀑のような姿になっています。しぶきも数十m先まで飛んでいました。異様なのは滝ではなくその手前の岸辺です。

まるで人工的に石垣を築いたかのように西側、つまり滝の真正面方向ですが、そこだけ1.5〜2mくらい高くなっています。すなわち最近ものすごい出水があって滝の上から流れ落ちてきた岩が、その水の勢いのままに岸辺に大量に打ち上げられてしまったようです。岩は大きいものは1mもあるのでたいへんな力です。太い流木も打ち上げられています。遊歩道はカラ沢の左岸沿いから、大滝が見えてくるあたりで中州というか右岸のほうにいったん小さな橋で渡るのですが、その橋も半分、土台もろとも流出破損していました。怖いのはもちろんですが、その出水のさなかの狂奔状態の滝と渓谷を一度自分の目で見てみたい気もします。
 
 
もうひとつの驚きですが、標高250mの某所でイワカガミの小群落を発見したことです。花はまだつぼみ状態ですが、まちがいないと思います。イワカガミは通常「高山植物」と目されているもので、鳥海山でも森林限界の1000〜1100mあたりから上で見かけるのがふつうです。部分的にはもうすこし低い、日当りのよい湿った場所でも散見しますが、せいぜい標高700mくらいでしょうか。そのイワカガミがもう人里にほど近い標高250mの地点でまとまって生えているのは、やはり私にはたいへんな驚きです。植物の「常識」をくつがえさせられる思いがします。

じつは昨年の春にも標高290〜300m付近でイワカガミの小群落を発見してびっくりしたのですが、今回はさらにそれを上回るものです。精査すればあるいはもっと低い所で見いだせるかもしれません。鳥海山おそるべし。
 

 

明治ミルクチョコレート

明治製菓のロゴが変わりましたね。明治製菓と明治乳業がいっしょになったことに合わせてブランドマークを一新したということのようです。以前のロゴはずいぶん長く使われてきたこともあり、それになじんだ人からはこの新しいロゴに対して違和感や反発もありますが、私はたいへんすぐれたデザインだと思います。

丸みを帯びた小文字の並びや、i j i が寄り添う人のすがたを象徴しているなど、じつによくできたロゴです。明治製菓の旧ロゴは亀倉雄策というデザイン界の大物(故人)によるもので、それが消えてしまうことを遺憾に思う人もいますが、そんなつまらない感傷にひたっていても仕方がありません。なんにせよ特定の個人を「神様」にしてしまってはおしまいです。

写真は明治製菓の定番のチョコレートのパッケージですが、新しいマークを全面に打ち出したものです。

オールレーズン

じつは6年前(2005年6月)旧ホームページで一度このオールレーズンのパッケージデザインについて取り上げたことがあります。オールレーズンはかなり以前からある超ロングセラーの菓子ですが、パッケージデザインがそれまでのものからリニューアルで斬新なものに変わったからです。私は個人的にはそれはいいデザインだと思ったのですが、一方では高踏的すぎるために一般受けはしないだろうとも書きました。

結果は思ったとおりで、ほどなくその新パッケージは姿を消し、反動ともいえるような実にへたくそなデザインのパッケージに変わりました。言葉は悪いですが、いなかの二流の菓子メーカーが適当に間に合わせで考案したような俗悪なしろものでした(そのときの写真を撮っていなかったのが、かえすがえすも残念です)。

さすがそれにはあちこちからクレームがついたのでしょう。売り上げ自体もダウンしたのかもしれません。私自身もそれまでに比べオールレーズンを買う回数が極度に減りましたからね。食べ物はなんといっても「味がいちばん」とはいえ、現物であれ包装であれあまりにも見てくれがわるいと食欲を萎えさせます。量販菓子は菓子をむき出しで販売することは不可能ですから、パッケージのよしあしは中身と同じくらいに重要です。

で、そのひどいパッケージは短命に終わり、いま店頭に並んでいるオールレーズンのパッケージが上の写真のものです。私が買ったのはこれで3回目。けっこういいんじゃないかと思います。オールレーズンは販売価格130〜150円程度の大衆的なふつうの菓子ですから、その中身とうまく釣り合っています。

じつは非常に高級な菓子であればむしろ話は簡単で、それらしいデザインはさして難しいものではありません。しかしこういうごく一般的な量産・量販の菓子のパッケージを、偉ぶらず低俗にならず品をもち、かつ個性的にデザインするのは至難の技だと思いますね。

経ケ蔵登山十二ノ滝コース

一昨日(5/12)経ケ蔵に十二ノ滝コースから登ってきました。先日5/5に登った円能寺コースとは反対側の、北からのコースですが、主稜線にあがるまではそうとうきつい勾配です。丸太で階段状に整備されていますが、上りはともかく下りはじゅうぶんな注意が必要です。道の両側が断崖に近い急斜面になっていますから、万一転落したら命がありません。ただそのぶん眺めはすばらしくいいです。

地震によるものなのかどうか、集落をすぎてすぐの売店・休憩所・広い駐車場のあるところから先は、数カ所の落石のため原則通行禁止になっていました。いつもだと十二ノ滝の遊歩道の入口すぐ近くまで車が入れるのですが、今回はレストハウスに車を停めて歩きました。しばらく林道をすすんでから赤い橋を渡ると、いよいよ急な登りです。

ヤブツバキ、オオヤマザクラ、オオバクロモジ、ハウチワカエデ、エンレイソウ、ミヤマスミレ、ナガハシスミレ、オオタチツボスミレ、セントウソウ、キバナイカリソウ、イワウチワ、キクザキイチゲ、ミツバツチグリ、コンロンソウ、ミヤマカタバミ、ヒトリシズカなど、たくさんの花が道沿いに咲いています。ただ前回はあれほど多かったオオミスミソウやスミレサイシン、エゾエンゴサクはもうほとんど見かけません。雪国の山の春は短く、めまぐるしく変化します。

前回見かけなかったか、ごくまれにしかなかった花で今回出会ったのは、モミジイチゴ、エゾイタヤ、ミヤマキケマン、カタクリ、チゴユリ、クルマバソウといった花ですが、特筆すべきはニリンソウです。主稜線の肩に上がるまでの中腹にニリンソウの大群落があります。ブナやケヤキなどの高木の林床一面に白い花がたくさん咲いていました。ニリンソウが咲き乱れる細い山道を行くのは幻想的ですらあります。


ニリンソウの道


ハウチワカエデ


セントウソウ


ミヤマキケマン


カタクリ


ブナ林の道をゆく


経ケ蔵山頂より鳥海山

黒柿孔雀杢&スポルト


材料置き場の整理をしていたら超弩級のクロガキ(黒柿)の板が出てきました。上がいわゆる孔雀杢といわれるもので、ただでさえ希少・貴重な黒柿の中でもさらに最高度の杢板です。材料単価としてはおそらくいま世界で最も高価な材料のひとつでしょう。

写真は2枚並べて撮ったのですが、写っている部分の実際の長さは約30センチです(全長は116センチ)。製材したままのやや荒れた肌でこれだけ密な紋様ですから、仕上削りをし塗装すればきっと見事なものになると思います。ただし厚みは残念ながら12ミリしかないので、作れるものが限られてしまいますが。

下のものは最近では欧米にならってスポルトとよばれる変わり杢です。焦げ茶の細い筋がいくつも入っていて、その線の区画内がうっすら青みをおびています。こちらも写っている部分の実長約30センチで、厚さは10ミリです。

スポルトはカエデ類やトチなどにはわりあい見かけますが、黒柿のスポルトはきわめて珍しいです。孔雀杢のような黒い紋様と違って、このスポルトは要するに材が水湿+腐朽菌とで腐れかけているということです。たまにこのような紋様を見ることはあっても、ほとんど例外なく木地がすでにぶかぶかしていることが多く、それではもちろん製品にはなりません。写真の材料は同様なものがもう1枚あるのですが、どちらも木地はしっかりしており、通常の加工にじゅうぶん対応できそうです。

仕入れたのはたぶん15〜20年前。材料の取り扱い量が現在よりずっと多かったし、私以外に数人働いていた頃で、材料の一枚一枚までは私自身がしっかりとはチェックしきれなかったかもしれません。

クルミのキャビネット

ご注文の品を一昨日(5/9)納品しました。オニグルミでできたキャビネットです。抽斗の内部はスプルスという針葉樹の柾目の材料を使用しています。もちろんオール無垢材で、合板や集成材などは使っていません。

寸法は幅430mm、奥行500mm、高さ500mm。抽斗の前板は一枚の幅広の板を上下に分割したものです。小節が一個ありますが、白太をのぞいて400mmほどあるので、クルミとしてはかなり太い材料といえます。底には目立たないように、直径38mmの自在キャスターを付けました。

通常こうした形式のキャビネットはデスクに付随するように使用されることが多いのですが、今回はこれ単独で、リビングで身のまわりのこまごましたものを整理整頓する目的でご使用になられるとのことでした。

工房まわりの花

わが工房(木工房オーツー)はいまは合併で住所表示が酒田市の一部になりましたが、すこし前までは八幡町(やわたまち)でした。町の中心部から東へ約3キロほど行った吉野沢という集落のはずれにあります。庄内平野から出羽山地へいくらか中に入った場所ですから、すこしおおげさにいうと工房の裏からあとはずっとどこまでも山が続いているという立地です。

工房は昔は工務店の作業場だったのですが、20年以上前に買い取りして土地・建物とも自己所有になっています。広さは105坪にすぎませんが、もとは川沿いの山地の一画を切り開いたところなので、けっこう山野草が生えています。自分で植えたりはいっさいしていないのですが、徐々に種類もふえている感じがします。もともと生えていたのもあるでしょうし、鳥や獣や昆虫が種を運んできたり、風で種が運ばれてきたりしたものもあるでしょう。

今日ためしに工房の敷地内に咲いている花を数えてみたら17種ありました。ヤブツバキ、ヒメアオキ、ニリンソウ、ムラサキケマン、ヒメオドリコソウ、カキドオシ、オオタチツボスミレ、スミレサイシン、ツボスミレ(ニョイスミレ)、オランダガラシ(クレソン)、エンレイソウ、セイヨウタンポポ、タネツケバナ、ミヤマハコベ、ミドリハコベ、コハコベ、ミミナグサ、です。他に種類が不明なものが数種。キクザキイチゲとエゾエンゴサクはほぼ終わりで、タチイヌノフグリとヤブジラミはつぼみでこれから。

そのなかからオオタチツボスミレ、ツボスミレ(ニョイスミレ)、ムラサキケマン、ニリンソウ、ミヤマハコベの写真をアップします。最後のミヤマハコベは12ミリくらいの小さな花ですが、清楚でかわいい花。私は大好きです。


オオタチツボスミレ
ツボスミレ(ニョイスミレ)

ムラサキケマン

ニリンソウ

ミヤマハコベ

クーピー

家具などを製作する場合、加工途中の木材にいろいろ書き込みをします。当工房ではその際にいちばん出番が多いのがクーピーです。

クーピーは正式名をクーピーペンシル(SAKURA COUPY-PENCIL)といい、サクラクレパスというメーカーの商標です。色材はクレヨンと色鉛筆との中間のような素材からできており、プラスチック系の色鉛筆の一種。特徴としては、芯だけでできているにもかかわらず、折れにくく、削りやすい、手が汚れにくい。消しやすいというキャッチフレーズもうたわれることがあるようですが、木材に使用した場合は消しゴムなどでこすっても薄くはなっても完全に消えることはありません。完全に消し去るには最後にカンナなどで材料自体の仕上削りをおこないます。

油性マーカーなどと違い、材料の中に浸透しないこと、手や衣類、他の部材などを汚染しない。それでいて通常の鉛筆などとくらべ明瞭な書き込みが簡単にできる点が非常にいいと思います。それに値段もバラ売りで1本70〜80円程度で、ペンシルホルダーを利用すればほとんど最後まで使い切ることができるので経済的です。

私の場合、機械による材料の切削方向や材料の厚みといった一次情報は「あお」のクーピーで、パーツとしての名前や番号、上下・左右などの二次情報は「ばらいろ」のクーピーでしるしています。だいたいはこの2色でだいじょうぶですが、場合によってはさらに「みどり」や、暗色の材料には「しろ」を用いることがあります。ちなみに写真で赤色の1〜3の番号は、はぎ合わせする際の手前からの順番付け(かならずその順序で。縦並びの材料の場合は必ず左が1番)、340+20とあるのははぎ合わせ完了時に必要な幅340mmに対して余裕がいま20mmあるという意味です。幅にすこし余裕があればクランプする際に当木がいらないわけです。

写真の材料はスプルスという針葉樹の無地・柾目の板で、抽斗の底板にするべくはぎ合わせをする前の状態です。当工房では抽斗の内部の部材=側板・向板・底板には建具用の柾目のスプルス材を用いることが多いです。値段的にはけっして安くないものですが、色白でほどよい硬さ、反り捻れなどの変形の少ないこと、安定的に入手できる点が気に入っています。

経ケ蔵登山

鳥海山の南東側から最上川まで30数kmにわたって南北に連なる山塊があります。標高は600〜900m程度でそれほど高くはありませんが、登山道などはごく一部分にしか存在せず、人里を少し離れると人手のあまり入っていない原自然が色濃く残っている山地です。だいいちの盟主は山地のほぼ中央に位置する弁慶山(887m)といっていいと思いますが、その弁慶山のかなり前方西側に位置する経ケ蔵に昨日(5/5)登ってきました。

標高は474mにすぎませんが、断崖絶壁の多い険しい山であり昔は修験者でにぎわったそうです。山頂に至る道は北の十二ノ滝からのものと、南西の円能寺の集落からのものと2本あります。これまで私は10回ほど登っていますが、今回は5歳になる子どもを連れて円能寺から向かいました。谷筋にはいくらかまだ雪が残っていましたが、尾根通しの道は乾いており、それほど暑くもなければ寒くもないという、ハイキングには快適な日和です。

案内図には登山口から頂上まで80分とありましたが、休憩や花と風景の写真撮影も含めて上り下りとも90〜100分という、のんびりゆっくりの山行でした。新緑が美しく、たくさんの花が咲いていました。上の写真は経ケ蔵の山頂から南側を写したもので、手前の新緑にけぶる山が標高426mの四十八坂でしょうか。その右肩に遠くかすんで見えるのが胎蔵山(729m)です。頂上のあずま屋で北から登ってきた男性の登山者に一人会ったきりで、天気もいいのにちょっともったいない気もします。

咲いていた花は私に分かるものだけでも20種類以上。春爛漫というとてもいい感じです。以下にその中からいくつか写真をアップします(コンパクトデジカメなのでピンぼけなどはご容赦を)。

オオミスミソウ

 

 

 

 

ミツバツチグリ

 

 

 

 

ミヤマカタバミ

 

 

 

 

ミヤマスミレ?

 

 

 

 

スミレサイシン

 

 

 

 

左)コンロンソウ 右)ヒトリシズカ

 

 

 

 

キクザキイチゲ

 

 

 

 

スミレ属の群落

 

 

 

 

エゾエンゴサク

 

 

 

 

キバナイカリソウ

 

 

 

 

オオバクロモジ

 

 

 

 

ハウチワカエデ