渓谷の大水とイワカガミ

1週間ほど前に鳥海山の高瀬峡などに諸々の探索にでかけたのですが、驚きがふたつありました(ほんとうはもっとたくさんあるのですが、マニアックすぎるものもあり、割愛します)。そのひとつは高瀬峡遊歩道の最奥にある大滝の滝壺です。

 
大滝は落差30mほどの直瀑ですが、滝の直下は岩になっています。滝壺はそれよりやや離れて前方に直径10m、深さ1m程度でそれほど大きくはありません。いつもはこの滝壺の周囲の岸辺の河原は滝壺の水面とほぼフラットで、落水は45度ほど左に向きを変え南西側に流出しています。ところがこの日は滝に近づくにつれていつもの滝のようすと違うことに気づきました。滝自体は融雪期で水量が多く、上部からの流れに勢いがあるために直瀑ではなくすこし斜めに水が落ちている斜瀑のような姿になっています。しぶきも数十m先まで飛んでいました。異様なのは滝ではなくその手前の岸辺です。

まるで人工的に石垣を築いたかのように西側、つまり滝の真正面方向ですが、そこだけ1.5〜2mくらい高くなっています。すなわち最近ものすごい出水があって滝の上から流れ落ちてきた岩が、その水の勢いのままに岸辺に大量に打ち上げられてしまったようです。岩は大きいものは1mもあるのでたいへんな力です。太い流木も打ち上げられています。遊歩道はカラ沢の左岸沿いから、大滝が見えてくるあたりで中州というか右岸のほうにいったん小さな橋で渡るのですが、その橋も半分、土台もろとも流出破損していました。怖いのはもちろんですが、その出水のさなかの狂奔状態の滝と渓谷を一度自分の目で見てみたい気もします。
 
 
もうひとつの驚きですが、標高250mの某所でイワカガミの小群落を発見したことです。花はまだつぼみ状態ですが、まちがいないと思います。イワカガミは通常「高山植物」と目されているもので、鳥海山でも森林限界の1000〜1100mあたりから上で見かけるのがふつうです。部分的にはもうすこし低い、日当りのよい湿った場所でも散見しますが、せいぜい標高700mくらいでしょうか。そのイワカガミがもう人里にほど近い標高250mの地点でまとまって生えているのは、やはり私にはたいへんな驚きです。植物の「常識」をくつがえさせられる思いがします。

じつは昨年の春にも標高290〜300m付近でイワカガミの小群落を発見してびっくりしたのですが、今回はさらにそれを上回るものです。精査すればあるいはもっと低い所で見いだせるかもしれません。鳥海山おそるべし。
 

 

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