日別アーカイブ: 2017年2月3日

コーヒーブレーク 98 「十三月」

 

 

古暦十三月は開かぬまま

[ふるごよみ じゅうさんがつは あかぬまま] 年末になると取引のある業者からカレンダーをもらう。それ自体はありがたいことではあるのだが、工房内に掲示する最低限必要なふたつくらいを残してあとは廃棄することが多い。もちろん事前に「不要です」と告げることができる場合はそうしている。/例えばの話、建設業者が自社が設計施工した建物の写真を大きく掲げ、しかもその社名が大きく印刷されてあるカレンダーを配るのは、その会社の広告宣伝にすぎないわけで、もらったほうは「なんで無料であんたのところの宣伝をしないといけないんだ!?」と内心思うだろう。あるいは観光絵葉書のようなありきたりの名所旧跡や女優のカレンダーなんぞをもらってもちっともうれしくはない。どうせ進呈するなら、実用的でもっとセンスのあるカレンダーを選択、もしくはオリジナルで作ったらどうか(その上ですみっこに小さく会社名を記すのはもちろんオーケー)。

生きものの生れる前のごと雪明り

[いきものの あれるまえのごと ゆきあかり] 雪が降ったあくる朝の景色はいい。しかもそれが晴れていて青空がのぞいているとなれば、ほかに比べようもないほどに美しくすばらしいと毎回思う。地球は今から46億年前に誕生したが、この惑星に生命が生じたのは40〜38億年前であろうといわれている。水が水という液体でとどまることが可能であった太陽との絶妙な距離や、地球の質量、大気の組成などいくつもの偶然が重なって奇跡的に生命が発生したらしいことがわかっている。そうした原初の生命が登場する前にもはたして降雪があったのかどうか。

まっしろな白鳥そうでもない白鳥

[まっしろなはくちょう そうでもないはくちょう] 動物の「種」としていう意味では白鳥という鳥は存在しない。白鳥は7種類のカモ科の水鳥に対する総称である。またこの中にはコクチョウという色の黒い鳥も含まれる。つまり「黒い白鳥」である。冗談みたいな話だが、もちろん本当である。/古くは白鳥は「くぐい」または「くくい」とも呼ばれ、漢字変換すると一発で「鵠」と表示されることから、思った以上に昔は一般的な名前であったのかもしれない。ただし漢字はよくみると左側は「告」ではなく「牛+口」のような形である。国語辞典をひくと、白鳥の古名であることと共に、弓の的の意であるとも記してある。的の中心の丸が白丸であることからのようだ。さらに「正鵠を射る(せいこくをいる)」はその由来から考えれば「正鵠を得る」でも正しい用法であるとも。