月別アーカイブ: 11月 2014

コーヒーブレーク 34 「K2」

 

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長き夜のモールス信号となる車列

正しくはモールス符号(Morse code)といい、長・短の符号のみで符号化された文字コードのこと。19世紀半ばに国際規格として制定された。基本的な仕組みとしては非常に単純なことから電信だけでなく音響や発光信号にも応用されている。無線電話やデータ通信が不可能な環境でも最低限度の通信を行うことができるので、電子機器などが高度に発達した現在でも、モールス符号はきわめて限定的ではあるが依然として使用されているのはそのため。

冷まじやK2絶頂より貝の骨

世界でいちばん高い山は言わずと知れたエベレストである。チベット語ではチョモランマ、ネパール語ではサガルマータで、標高は8850m。では世界で2番目に高い山はと問われ、K2(ケィ-ツゥー)と即答できる人はかなり少ないだろう。Kはカラコルム山脈の略で、2は正式に測量する前のとりあえずの記号でしかなかったのだが、計ってみたら8611mで、なんとエベレストに次ぐ世界第2位の高峰だった。偶然とはいえじつにすばらしい。K2にはゴドウィン-オースチンなる別名もあることはあるのだが、あまりにも野暮ったいこともあってほとんど口にされることはない。鋭く尖った風貌といい、その難攻不落ぶりといいK2こそがふさわしい名前というべきであろう。ちなみに初登頂は1954年で、これまでの挑戦者は300名余、死亡率はなんと23%におよぶとか。魔の山といわれるのもむべなるかなである。

クラスター爆弾となりぬ柿たわわ

ここ庄内地方でも、枝が折れんばかりにたくさんの実がなった柿の木をよくみかける。多くは庄内柿とよばれるやや扁平の渋柿であるが、柿以外にも多種多様かつ内外の果物が簡単に入手できるようになったためか、いまは柿はあまり人気がないらしい。渋みがあってすぐそのままでは食すことができないことも拍車をかけていると思うが、誰も採らないまま過熟してやがて地面に落ちて腐っている姿も珍しくない。果物や菓子類が乏しかった昔ではおよそありえなかった光景だ。/「クラスター」は実や花の房、塊、群れや集団など、同質のものがたくさん集まっている状態を意味する言葉。クラスター爆弾の場合は、ひとつの爆弾に多数の子爆弾が内包されており、投下された爆弾が爆撃対象近くで自動的に多数の子爆弾に分かれて、一度に広範囲にたくさんの物や人を破壊する。子爆弾に分裂する仕組みのためか不発弾となる割合も少なくなく、投下直後のみならず後々まで惨禍をもたらすことがある。

 

(※ 写真は月光川本流を遡上するサケの群れ。川床から湧水が出ているような場所で自然産卵・放精するが、 その後ほどなく死んでしまう。)

 

小さな箒

 

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当ブログの8月22日の記事でご紹介した山形県庄内町槇島(まぎしま)地区で作られている箒のいちばん小さなタイプです。「手箒」という感じでしょうかね。全長28cmくらいですから、この前の座敷箒の95cmに比べるととても小さいです。基本的な材料(ほうききび)や作りは同じですが、実際ちょっと使ってみた感じでは腰がけっこう強いです。毛先も硬めなので机上のほこりを払うといった用途よりも、それこそ作業机の上の木屑を掃くといったややハードな使い方に向いているかもしれません。

デザイン的な部分では見直しが必要かと思います。細かな点はまた機会をあらためて論考しますが、つり下げ用の紐の紅白の色合いと、それがビニール素材であることが非常に残念です。

 

ドア部材の二次下拵

 

1週間前に木取をし養生していたドアの部材の、二次下拵をしました。四方枠の仕上厚33mmに対し、前回は39mmでいったん切削を止めてようすを見ていたのですが、結果は縦框の平で最大1.5mmの反りにとどまっていました。上下の横桟は0.5mmくらいです。アメリカン-ブラック-ウォールナットのドア枠としては上出来といっていいと思います。

今回は厚さで3mm減らして36mmまでとしました。仕上厚さに対して3mmプラスです。幅の方は仕上がりに対しそれぞれ2mmプラス。この調子であれば次の三次下拵えで仕上寸法までいきそうです。

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手押鉋盤→自動鉋盤を通して36mm厚まで切削。青色のクーピーでマーキングした矢印は「その方向に切削して36mmにした」という意味です。

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上下の横桟は厚さを36mmまで削ったあと、幅は昇降盤で仕上幅プラス2mmでカットしました。数字にダッシュが付してあるのは、丸鋸で切断したままなので「およそ○○mm」という意味です。誤差は0.2mmくらい。

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材料を細幅で使用した場合はとくにどちらが木表か木裏かわからなくなることがあります。表と裏とでは色つやも異なりますし収縮膨張の度合いも異なります。したがってそれを考慮して製品では使う向きを決定します。そのため当工房では木口に木裏方向を矢印でかならずマーキングしています。

 

晴れた朝の鳥海山と白鳥と

 

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先日(11/20)は「森林限界」というタイトルで、中腹まで雲と雪におおわれた鳥海山をご紹介しましたが、今回はうってかわってきれいに晴れ上がった朝の鳥海山です(11/21- am8:07&09)。群れをつくって飛んで行く白鳥の姿もみえました。稲刈りが終わった田んぼにはひつじが生えてまた緑色になってきていますが、もうじき一面雪に覆われてしまうことでしょう。

 

ドアの木取

 

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ウォールナットでドア2枚ぶんの木取をしたところです。素材厚40mm(公称。実際には42mm強)からとりあえず両面にプレーナーがかかる39mm厚のところまで削りました。幅は仕上寸法に対し3〜5mmくらい、長さは70mm大きくしてあります。当工房ではこれを一次下拵(いちじしたごしらえ)と呼んでいます。ウォールナットで建具を製作するのは初めてなので、材料面では内心かなり心配していたのですが、余裕をもって一次下拵を終えることができました。

最終的には仕上厚の33mmまでもっていくのですが、一気に削ると内部応力の変化でひずみが出るので、このまま1週間程度放置します。これは養生と呼んでいますが、各部材によけいな圧力がかからないように、積み重ねたりせず一枚ずつ間隔をあけて木端立てにします。風も通るようにするわけです。その後にまた手押鉋盤で平面出しを行い、自動鉋盤との併用で徐々に厚さを減らしていきます。おそらく三次下拵まで必要かと予測しています。

 

森林限界

 

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これは一昨日(11/18)の鳥海山ですが、標高800mあたりで水平に線を引いたように白くなっています。雲がまだいくらかは残っているようですが、上の方の白さは新たに降った雪のためであるように見えます。これほどくっきりと「雪線」があらわれたのは珍しいかもしれません。

鳥海山は麓から頂上まで全体がきれいに見える日はそう多くはありません。晴天の日であっても上半分に雲がかかっていることがよくあります。頂上の標高は2236mですから、その半分というと1100mくらいになりますが、ちょうどそのあたりがおおむね森林限界となります。樹木の高さが人の背丈を下回るようになり、森林ではなく灌木帯もしくは草原というような景観に変わります。

高木が育たないのは端的には標高が上がるにともなう気温の低下ももちろんあるでしょうが、もうひとつの大きな要因が雲が発生しやすく日射がかなりさえぎられるからかもしれないと思います。大気は基本的には西から東に動き、日本海の湿気をたっぷりと吸った風が、日本に到達したとたんにいきなり2236mもの壁にぶちあたるわけです。その壁にそって上昇した風は冷やされて、含んでいた水蒸気は液体の水となり、それが雨や雪となって降下します。

私は20代の10年間ばかり首都圏に住んでいましたが、ときどき東京近郊の山に登っていました。奥多摩とか奥秩父、あるいは八ヶ岳などです。そこでは標高1100mというとうっそうたる樹木におおわれており、頂上付近の標高2000m前後になっても依然として「藪山」です。鳥海山とくらべると景観的には1000mくらいの差があるわけで、はじめはたいへん驚きました。

鳥海山は標高的には典型的な高山とはいえませんが、その高さのわりには森林限界がはやくあらわれ、標高1300mくらいですでに山岳風景となり、標高1800mともなると完全に岩だらけのアルペン的な過酷な環境になります。標高0mから2236mまで、海浜植物から高山植物までをひとつの山で連続的に見ることができる、比較的楽に高山の雰囲気を体験できるなどの理由から、全国的に非常に人気が高い山となっています。登山関係の雑誌などで北海道&東北エリアで大雪山とならんで一番人気であることもよくわかります。

 

柾目無節長尺のウォールナット厚板

 

酒田市のKさん宅のリビングのドアを2枚取り替えることになりました。現在のドアは合板のフラッシュで、小さ目の型板ガラスが一枚上のほうにはまっている形式のものです。筑後35年くらい経つそうで、だいぶ痛んできてもいるのですが、それだけでなく暗い感じであるとか、リフォーム工事をした部屋の他の部分との見た目の調和などが気になるとのお話でした。

はじめの打ち合わせではドア枠の材料はスプルスで見積もりをすることにしていたのですが、住宅のリフォーム工事をされた折にアメリカン-ブラック-ウォールナット製の市販品の戸棚やテーブル・椅子などをそろえられたという経緯もあり、結局ドアの枠もウォールナットで作ることになりました。

しかしウォールナットはクルミの仲間の広葉樹で、幹が多かれ少なかれ曲りくねっています。そのためドアや引き戸といった建具用の柾目+無節+長尺の材料を取ることはきわめて困難です。通常の家具の扉くらいのサイズならなんとかなると思いますが、高さ2m前後もある建具だと厳しい。まして乾燥していてすぐ使える材料となると見当もつきません。当地の建具の基本厚さは仕上がり33mmなので、ウォールナット材で建具を作るとなれば素材の厚さは40mmは必要です。

普通であれば「できません」と断るところですが、長く取引のある材木屋さんに問い合わせをしたところ「あります。ただし8枚一組一括なら」という返事がかえってきました。今回実際に使用するのはせいぜい3枚くらいだと思うので、8枚仕入れてしまうと短期的には完全に赤字になってしまいますが、お客様が強く希望されていることもあり、悩んだ末に8枚全部購入することにしました。

写真は当工房に先日搬入されたそのウォールナットの板を検寸して、2700mm切断可のパネルソーに立てかけたところです。なかなかの壮観で、一立方メートル(1m^3)あたりの単価的にも、玉杢や縮みなどの杢の出ているものやそれ一枚でデスクなどに使えるような幅広の「一枚板」をのぞけば、これまで仕入れたウォールナットの中ではいちばん高い材料です。

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市販テーブルの手直し

 

酒田市内の某宅のドアを作り替えることになり、その打ち合わせに伺った際に気になったテーブルを手直しすることになりました。材料がウォールナットの無垢材なのはいいのですが、脚と甲板は金属プレートを介してボルトで接合しているだけですし、甲板は薄いわりには幕板がなく、反り止めを兼ねた横架材2本が甲板裏に木ネジで止めてあるだけ。

店舗で展示販売されていたものに対し、甲板の大きさと脚の長さはすこし希望で詰めてもらったそうです。つまりセミオーダーというわけですが、全体のバランスがよくありません。指物としての本格的な作りではないのは市販量産品ではしかたがないのですが、標準サイズに対しお客様の希望されるサイズが大きく違った場合は、本来であれば脚の太さとか甲板の厚さなど全体を見直すべきです。それをまったくしないでただ寸詰めをしただけでは当然デザインバランスが崩れてしまいます。

当工房に持ち帰っての手直しですが、根本的な改変は無理なので、お客様がいちばん気にされていた(不満をもたれていた)甲板の縁や脚の4片などを、体が当たっても痛くないようにもっと大きな丸面にしました。甲板の高さも、同じくセミオーダーされた椅子の座面の高さとマッチしないため、さらに40mm切り詰めました。まあ無垢材だからこそできることで、これが合板などだったらお手上げです。

ちょっとわかりづらいとは思いますが、写真上は手を加える前のもので、下2枚は甲板の縁と角、脚の4片に大きめの丸面を施した後のものです。見てくれはともかく、使い勝手としてはかなり改善されたと思います。

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アルビフロラ その5

 

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わが家の猫の2匹のうちの1匹は、5ヶ月前に捨て猫を動物病院からもらいうけたアル(正式名はアルビフロラ。albiflora、ラテン語で「白い花」の意)です。おそらく5月中頃に生まれたと思われるので、現在生後約6ヶ月ということになります。

この間、ぐんぐん成長し、いまでは体長約40cm、体重は2.3kgにもなりました。病気怪我もいっさいなく、部屋中を駆け回っています。人間でいえばいま小学校高学年くらいかと思いますが、あまりにも元気活発なので、もう1匹の猫トントは困惑しています。11歳半くらいになるトントはもう仔猫・中猫といっしょにじゃれあって遊ぶだけの気力体力はないかもしれません。

以前にも同様の写真を載せましたが、今回はいっそうみごとなかっこうで寝そべっていたので思わず写してしまいました。後脚が完全に後方にのびきって「開き」の状態になっています。これまで私は通算7匹の猫を飼ってきましたが、こんなかっこうでいつも寝そべっている猫はみたことがありません。よほど体が柔らかいとみえます。とくに股関節がものすごく柔軟なのでしょうね。

いくらか変化もあります。ひとつは以前ほどはやたらに人をかじらなくなったことです。それにすこしは手加減をするようにもなりました。痛いことは痛いですが、牙が手に食い込んで血がにじむようなことはなくなりました。

それから首輪です。わが家の猫は伝染病や交通事故を避けるために戸外に出さないようにしています。しかし人の出入りなどにともなって不意に外に出てしまう可能性も考えられなくはないので、その際には飼い猫であることがすぐわかるように首輪をつけています。まあ唯一のおしゃれアイテムでもあるのですが、アルにもすこし前から首輪をつけています。径をいちばん小さくしてやっとつけることができるという状態ですが、最初からまったくいやがらないのは予想外でした。いまつけているのは薄茶色のバーバリーチェックのような柄のものですが、トントと同じくだいたい1ヶ月ごとに他の首輪に替えています。

水槽の架台

 

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わが家ではザリガニとメダカを水槽で飼っているのですが、その水槽を載せるための台です。床に直置きにすると床暖房を稼働した際に水槽の水が暖かくなりすぎるおそれがあることや、床板のフローリングに水槽の跡や汚れがつく可能性も大きいです。水槽の中を側面から眺めるにしても低すぎますし、リビングの床に直接置いたのでは見た目もよくありません。

これまでは古いプラスチックの籠を裏返しにしてその上に水槽を載せていたのですが、水はやはり重いです。横33cm奥行24cmほどの小さな水槽ですが、これに水を張ると重さ20kg近くに。そのため籠がだんだんへたってきて、ついに水槽がすこし傾いてきました。わが家の猫が家人が留守・就寝のときに水槽の蓋の上にときどき乗っている可能性もあるので、なおさらです。妻からも「なんか倒れて悲惨なことになりそうね〜」と何度も言われましたし、床暖房の本格的な稼働の前にということで仕事の合間に専用の架台を作りました。

ただしいくら自家用といってもすぐ壊れてしまっては困りますし(そうそう作り直してはいられません)、訪問客の目につく場所でもあるので、材料はあるものの間に合わせですが作りはしっかりしたものです。汚れも付きにくいように塗装はふだんの家具同様に4回施しています。材料は甲板はスギ、脚部はベニマツ(紅松)。寸法は幅460×奥行300×高さ160mmです。