これは一昨日(11/18)の鳥海山ですが、標高800mあたりで水平に線を引いたように白くなっています。雲がまだいくらかは残っているようですが、上の方の白さは新たに降った雪のためであるように見えます。これほどくっきりと「雪線」があらわれたのは珍しいかもしれません。
鳥海山は麓から頂上まで全体がきれいに見える日はそう多くはありません。晴天の日であっても上半分に雲がかかっていることがよくあります。頂上の標高は2236mですから、その半分というと1100mくらいになりますが、ちょうどそのあたりがおおむね森林限界となります。樹木の高さが人の背丈を下回るようになり、森林ではなく灌木帯もしくは草原というような景観に変わります。
高木が育たないのは端的には標高が上がるにともなう気温の低下ももちろんあるでしょうが、もうひとつの大きな要因が雲が発生しやすく日射がかなりさえぎられるからかもしれないと思います。大気は基本的には西から東に動き、日本海の湿気をたっぷりと吸った風が、日本に到達したとたんにいきなり2236mもの壁にぶちあたるわけです。その壁にそって上昇した風は冷やされて、含んでいた水蒸気は液体の水となり、それが雨や雪となって降下します。
私は20代の10年間ばかり首都圏に住んでいましたが、ときどき東京近郊の山に登っていました。奥多摩とか奥秩父、あるいは八ヶ岳などです。そこでは標高1100mというとうっそうたる樹木におおわれており、頂上付近の標高2000m前後になっても依然として「藪山」です。鳥海山とくらべると景観的には1000mくらいの差があるわけで、はじめはたいへん驚きました。
鳥海山は標高的には典型的な高山とはいえませんが、その高さのわりには森林限界がはやくあらわれ、標高1300mくらいですでに山岳風景となり、標高1800mともなると完全に岩だらけのアルペン的な過酷な環境になります。標高0mから2236mまで、海浜植物から高山植物までをひとつの山で連続的に見ることができる、比較的楽に高山の雰囲気を体験できるなどの理由から、全国的に非常に人気が高い山となっています。登山関係の雑誌などで北海道&東北エリアで大雪山とならんで一番人気であることもよくわかります。