月別アーカイブ: 5月 2012

高校生たちと

 

先週の5月24日に続いて、地元の高校=山形県立遊佐高等学校の2年生生徒たち30余名と湧水のフィールドワークです。鳥海山の南西側麓に広がる白井新田地区は約210年前に鶴岡を拠点とする酒井藩によって開田された地域です。

比較的なだらかで広大な土地(当時は大部分が原野・山林)はあるものの丘陵地のような小高いところなので水が不足しています。これでは水稲を栽培するのは困難です。そのためにもっと標高の高いところにある湧泉の水を人為的に引っ張ってきました。3kmほどの距離を人手でえんえんと掘って用水路を作ったわけです。素堀なので一見しただけでは非常にきれいな渓流のようにしか思えないかもしれませんが、まったくの人工河川です。

田んぼに最初に水が入る地点である藤井の集落から、山中の山ノ神というところまで、用水路に沿って2時間近くみんなで歩きました。山ノ神は村と山との境界線・結界にあたる場所で、いわばこれより下は日常の世界、これより上は非日常の世界です。かつては村人が山に入る際にはここで安全豊穣を祈願しました。数年前までは大きな赤松がはえていたのですが、残念ながら松枯病で枯れてしまい、今は切株しか残っていません。

今回のフィールドワークは水路の立体交差や温水溜池、他の用水路に水を融通するための仕掛けなどを観察しながらの勉強です。狙いは、湧水とその利用の仕方、また湧水を主な水源とする河川と、雨水(うすい)を主な水源とする河川との景観や植生のちがいなどを把握することです。もちろん授業の一環なのですが、天気もいいとあって気分は半分ハイキングですね。

山中の湧泉はこの山ノ神までは自然に流下してきて、ほどなくヒノソという谷川に合流していたのですが、それを強引に向きを変えて藤井まで持っていったのです。中には尾根を4mくらいも掘削した切通しの箇所もあり、当時の苦労がしのばれますが、現在でもこの水路を維持管理または補修するためにじつは多くの人が関わっています。

午後からは高瀬峡遊歩道に向かいました。ただし時間がないので、ヒノソにかかる第一吊橋をわたり蔭ノ滝までの往復です。滝の直前のヒノソの徒渉点では、前回よりはやや水量がおさまってはきたもののまだ雪解けの影響による増水で、結局ほぼ全員が流れに足を入れ「冷たい!痛い!」とわーわー言いながら渡りました。

子供用自転車

小学1年生のわが家の子供が、やっと自転車に乗れるようになりました。自転車自体はおととしくらいに通販で買っていたのですが、すこし前までは補助輪をつけて乗っていました。それが今年になってから近くの公園などで練習したところ、わりあいはやくスムーズに一人でこげるようになりました。めでたし、めでたしです。自転車というのは不思議で、いったん乗れるようになるとその後なんらかの事情でずっと乗っていなくとも、またすぐ乗れてしまいますね。時間が経ったから忘れた、まったく駄目ということはまずありません。

子供が三輪車を卒業して、そろそろ自転車が必要かなと思ったときに、真っ先に心配したのが、キャラクターものやファンシーものなどではない、シンプルでまともなデザインの子供用自転車ってあるんだろうか?ということでした。ホームセンターやショッピングセンターなどで売っているのは「こんなものはただでもいらない」と思うようなひどい自転車ばかりです。

それでインターネットでいろいろ探してみてヒットしたのがエー・エヌ・デザインワークス(a.n.design works)というブランドのAND-Vシリーズの子供用自転車でした。株式会社コア・ジャパンという若い会社の自社開発の自転車です。フレームの色は何種類かあったのですが、サドルやレバー、タイヤのカラーとシンクしていることや、他にはあまりない色ということで、オレンジを選びました。サイズはたしか16インチだったかと思います。

値段は税込12800円だったと思うので、子供用自転車としてはやや高目。とはいえしょせんは低価格&普及品です。品質的にはまあまあというところで、それは価格からいってしかたがありませんが、デザイン的にはなかなかのものだ思います。子供も気にいっているようです。

 

5/28の胴腹ノ滝

 

5月28日午前10時頃の胴腹ノ滝です。水量は前回(5/19)の予想どおり徐々にですが減ってきています。水温も左右とも0.1℃下がり、右が8.6℃、左が8.5℃です。気温は17.8℃で、鳥居あたりの気温より1.6℃低いです。無風状態だと大量の湧水で空気が冷やされて滞留しているためでしょう。

下の写真は駐車場造成の工事のようすです。車道とはかなりの高低差があるので、すこしづつ盛土して落ちつくのを待ちながら工事しているのかもしれません。立看板を見ると6月末までの工期とありました。

ただ、工事車両とはちがう不審な車も1台みかけました。右端に写っている白いバンがそれですが、仙台のナンバーで、作業服姿の男性が20リットル入りくらいの容器に数十個も胴腹ノ滝の湧水を汲んでいました。もともとそこから自然に湧いて出て流れている水なので、個人が自家用の飲料水として少量を汲んでいくのはかまわないのですが、商売目的で大量に汲んでいくのはやっぱり良くないですね。昨年にも一度同じような光景をみかけた記憶があるのですが、ひょっとすると同じ車かもしれません。

胴腹ノ滝周辺は個人の私有地ですし、車道から滝までの歩道の整備なども基本的に個人が善意で行っています。水も生活用水や農業用水・産業用水として下流側で地元の人が使用していますから、当然水利権もあるはずです。したがって無断で営業目的で大量の水を採取するのは許されないと思います。バンの後部ドアをあけて水を積み込むところにも出会ったので「それ自家用?もし商売目的だったら違法かもしれないねえ」と声をかけたら、「いやいや、そんなんじゃない」と言って、そそくさとまた滝のほうに行ってしまいましたけどね(念のために車のナンバーはしっかり控えさせていただきました)。

 

キンバエ

子供と公園に遊びに行ったら、足元のコンクリートの上になにやらピカリと光るものが。よく見るとハエの死骸です。体長は9mmほどですが、コバルトブルーの金属光沢がじつにみごとです。写真はiPhone4Sで撮ったものですが、携帯電話でここまで写るというのは驚きです。

あとで自宅ですこし調べてみたのですが、写真一枚だけでは、ハエ目クロバエ科のハエで、俗にキンバエまたはギンバエと呼ばれている、という以上のことは分かりませんでした。それに腐肉や糞などにたかるらしいので、あまり追求する気も起こりませんし。

 

マイデスク

 

クルミの机と椅子ですが、じつはこれは5月20日にご紹介した椅子に、5月22日にご紹介した机を組み合わせて撮影しています。お客様のSさんがご自分の部屋で専用で使われる椅子&机とのことでご注文があり、先日納品しました(諸々の事情で遅れてしまいましたが、Sさんまことにありがとうございました)。

木工房オーツーとして家具や木製小物などを作り始めて28年ほどになりますが、ご注文いただく家具でいちばん多いのはやはりテーブル類です。ダイニングテーブルであるとか机、座卓、センターテーブルなどですね。椅子といっしょにということももちろん少なくはないのですが、例えば大きめの食卓に椅子4〜6脚ともなると合計金額はけっこうなものになるので、椅子は市販の既製品というケースもあります。

ただ最近目立つのは個人専用の机と椅子です。書斎と呼んでいいのかどうかはそれぞれ異なるでしょうが、家族のテーブルなどとは別に自分専用の机と椅子がほしいという希望は徐々に増えているように感じます。いわばマイデスクですね。自分の部屋で自分の椅子に座り、自分の机で読み書きをしたり音楽を聴いたり思索にふけったり…。人にはやはりそういう空間と時間が必要だと思います。その際の椅子と机は直接肌に触れるものであるだけに、ぜひとも自分の体格と用途と好みに合ったものにしたいところですが、既製品ではなかなか合うものがないのが実情です。

机は置くスペースがあるのであれば大きいほうがなにかと便利で見映えもしますが、気をつけないと物置と化してしまうこともあります。反対に、個人で使われる机なら上記のような大きさのもの、必要最小限の大きさのほうが否応なしにきれいに片付くのでよしとする考えもあります。構造はあまり特殊なものにしてしまうとそのときは良くても、数十年以上の寿命を考えるとむしろできるだけシンプルにしたほうが応用転用がきいていいかもしれません。収納部分は別置きの家具として作るか、市販品でもキャビネット類なら比較的安くて便利なものがたくさんあります。

マイデスクですが、さて値段はどのくらいかといいますと、当然のことながら材種とそのグレードと大きさと構造等の違いによって 、椅子は1.5〜2倍、机は3倍くらいまでの開きがあります。たとえば甲板(天板)が畳一枚ほどもある机であれば材料実費だけですくなくとも20万はします。小ぶりのサイズでシンプルデザイン、甲板も一枚板でなく何枚かの矧合であれば仕上がりで15万くらいから。椅子は7万くらいからです。マイデスク、おひとついかがでしょうか。

 

月山と鳥海山

山形県の庄内平野からは、南に月山(標高1984m)、北に鳥海山(2236m)というふたつの大きな山が見えます。どちらも火山ですが、景観はかなり異なりますし、それぞれに特異な生物相を抱いています。かつて、鳥海山は日の山=日山(ひやま)であり、月山は月の山=月山(つきやま)、すなわち庄内に暮らす人々にとって両峰は日月=昼と夜=陰陽=宇宙を象徴するものとして、崇められ恐れられた存在でした。

きのうは前夜に雨がすこし降ったこともあってか、空気がきれいに澄んで月山と鳥海山がともにじつにきれいに姿をあらわしました。上の写真が月山、下の写真が鳥海山で、旧平田町付近から撮影したものです。

 

 

胡桃の机

 

ご注文をいただいて作ったオニグルミの机です。大きさは幅1300mm、奥行600mm、高さ628mmで、やや小ぶりのサイズです。奥行はあまり深くありませんが、個人の机として使用するのであればこれで間に合います(対面でかつ食卓としても使う場合は最低750mmは必要です)。

甲板(天板)は同じ丸太から採った共木で、ほぼブックマッチ的な板を2枚矧ぎ合わせています。脚部はシンプルな4本脚ですが3面にテーパーをほどこし。幕板と脚、幕板と中桟(根太)の接合は例によって大入通しホゾのクサビ打ち込みです。通しホゾの頭はそれぞれ1.5mm出ていますが、これは材料の伸縮の差をのがすためと、クサビの効き代を増すためです。木口が濃色になるので、構造上必要な措置が見た目のアクセントにもなっています。飾りのための飾りではなく、構造そのものが飾りにもなるというのがベストかと思います。

強度だけでいうなら、脚同士は幕板だけでなく下のほうに貫も入れたほうが確実に丈夫になりますし、事実ほかでは机・デスクの場合はそういう構造のものが少なくありません。ただそれでは見た目に鈍重な感じになってしまいますし、将来的に他の用途に転用する場合は、その貫がじゃまになりかねません。お客様からどうしてもという強いご要望があるのでないかぎり当工房では貫なしのすっきりした作りにしています。けれどもそのせいでぐらぐらしたりしては困るので、とくにホゾとホゾ穴などの加工は念には念を入れて慎重に行っています。

 

5/19の胴腹ノ滝

 

5月19日午前11時すぎの胴腹ノ滝です。水量は多いですが、前回の5月8日と詳細な写真で比較すると、やっと減少に転じてきました。水温のほうも4月3日から5月8日まではずっと一定(右が8.9℃、左8.8℃)でしたが、今回はそれぞれ0.2℃下がって、右が8.7℃、左が8.6℃です。気温は12.9℃でした。

昨年の記録をみると、5月11日に最大水量と冬以降では最高温度を記録(左右とも8.9℃)。その次の5月18日には水量がやや下がり水温も右が8.8℃、左が8.7℃と下がっています。したがっておおよそのところ、水量・水温の変化はともに昨年と同様のパターンを描いていることが分かります。一昨年以前はどうだったかのかは、残念ながら記録がないので不明です。

なお今、滝へ向かう歩道の入口のところ(手前左側)で、すこし前から駐車場の造成工事が始まっています。バスでも入れるくらいの大きめのスペースになるようですが、工事の車両出入り口のすぐ近くに自家用車を停めるとあぶないしじゃまになります。水汲みに訪れる際は注意したほうがいいですね。

 

胡桃の椅子

 

 

 

 

 

 

 

 

地元の女性の方からのご注文の椅子で、材質はオニグルミ。サイズは幅420mm、奥行445mm、高さ850mm、座面高さ360mmです。じつはこの椅子は今回はじめて製作したもので、たった1脚のためにまずスケッチをし設計図を描き、原寸図や型板をこしらえ、専用の治具もいくつか作りました。製作途中でいくらか問題があってやり直ししたところもあり、結局通常の所用時間の2倍半ほどの手間がかかってしまいました。もちろんこれだけで終わってしまったのでは大赤字です。

家具そのものを作るのにかかる時間と、デザインワーク〜原寸図・型板・治具などを作る時間とは分けて考えないといけません。前者は全体の数量(台数)にだいたい比例しますが、後者は作る家具の数量にかかわらずほぼ一定です。1台だけ作るのでも100台作るのでも、それが新作であるかぎり必ず原寸図その他を新規に用意しなければなりません。

後者にかかるコストも、製作した家具の値段の一部に含めて計算し、いずれはぜんぶ回収しなければなりませんが、今回のように1脚だけの注文の場合は実際のところ丸ごとすぐに上乗せすることは不可能です。それでどうするかというと、その後もくりかえし注文していただけるような普遍性のある魅力的なデザインにする=定番化をめざすか、それがとうてい無理そうな家具の場合は、残念ながらはじめから受注を断ることになります。

むろん本体の製作費以外に原寸図や型板や治具等々に実費でこれだけ別にかかることをお伝えし、それをお客さんに丸ごと了承していただければ、どんな特別な家具でも作ることはできますが、そういうケースはまれにしかありません。とりわけ椅子の場合は水平・垂直な部材の組み合わせではなく各所に勾配(傾斜)がついたりカーブがついたりすることが普通なので、新たに1脚2脚だけ作るというのは難しいのです。

今回もはじめは当工房の定番化しているいくつかの椅子のなかから選んでいただこうと考えていたのですが、すこし小柄で非力な女性のそのお客様には「重すぎる」ということで却下。まったく新たにデザインすることになったものです。できるかぎり軽くするといっても、強度・耐久性に不安があるようでは話になりません。もちろん見た目の美しさも無視できません。外形寸法をこれまでの椅子よりやや小さめにし、それぞれのパーツの幅や厚みを2mm、3mmと減らしたりするなどして、全体として3割近く軽くなりました。重量4.45kgです。仕口はいつものように「大入通しホゾ、クサビ締め」にしていますから、細身ながらいっさいぐらついたりはしません。

「なんだ、そんな程度か。まだまだ重いな」と言われるかもしれませんが、耐久性などを考えると私にはこれが限界と思います。軽量化自体が自己目的化しては本末転倒。完成した椅子はお客様に喜ばれ納得していただけたので、それでじゅうぶんです。

 

海岸の湧水

 

 

鳥海山麓西側の山体が日本海に没するところにある釜磯海岸の湧泉です。縁の急崖まで含めて直径2mくらいですが、まるっきっり噴火口のよう。「火口」からは湧水が勢いよく噴出しています。

湧出口はこの海岸のいたるところにありますが、その中でもこれは比較的大きなものです。湧出口に棒を突っ込んでみると岩にぶつかりますが、その深さは50cm以上ありました。満潮で大波が来ると海水が混じってしまい回りの砂地もいったんフラットになってしまいますが、波打ち際が後退するとまた写真のような光景が現れます。その繰り返しです。

地元に住む私たちは、子供の頃から何十年となく見なれた光景なのでこれがあたりまえとしか思っていないのですが、海岸から(海中からもですが)これだけの淡水が湧いて出ているのを他所の人が見るとたいへん驚きます。とくに水文学(すいもんがく)などの専門知識のある方は言葉を失うほどびっくりするようです。このあたりから県境の三崎公園にかけての海底湧水は専門家(総合地球環境学研究所・谷口真人教授 他)の実測値ですでに世界一の湧水であることが分かっています。地域の宝ですね。