先週の5月24日に続いて、地元の高校=山形県立遊佐高等学校の2年生生徒たち30余名と湧水のフィールドワークです。鳥海山の南西側麓に広がる白井新田地区は約210年前に鶴岡を拠点とする酒井藩によって開田された地域です。
比較的なだらかで広大な土地(当時は大部分が原野・山林)はあるものの丘陵地のような小高いところなので水が不足しています。これでは水稲を栽培するのは困難です。そのためにもっと標高の高いところにある湧泉の水を人為的に引っ張ってきました。3kmほどの距離を人手でえんえんと掘って用水路を作ったわけです。素堀なので一見しただけでは非常にきれいな渓流のようにしか思えないかもしれませんが、まったくの人工河川です。
田んぼに最初に水が入る地点である藤井の集落から、山中の山ノ神というところまで、用水路に沿って2時間近くみんなで歩きました。山ノ神は村と山との境界線・結界にあたる場所で、いわばこれより下は日常の世界、これより上は非日常の世界です。かつては村人が山に入る際にはここで安全豊穣を祈願しました。数年前までは大きな赤松がはえていたのですが、残念ながら松枯病で枯れてしまい、今は切株しか残っていません。
今回のフィールドワークは水路の立体交差や温水溜池、他の用水路に水を融通するための仕掛けなどを観察しながらの勉強です。狙いは、湧水とその利用の仕方、また湧水を主な水源とする河川と、雨水(うすい)を主な水源とする河川との景観や植生のちがいなどを把握することです。もちろん授業の一環なのですが、天気もいいとあって気分は半分ハイキングですね。
山中の湧泉はこの山ノ神までは自然に流下してきて、ほどなくヒノソという谷川に合流していたのですが、それを強引に向きを変えて藤井まで持っていったのです。中には尾根を4mくらいも掘削した切通しの箇所もあり、当時の苦労がしのばれますが、現在でもこの水路を維持管理または補修するためにじつは多くの人が関わっています。
午後からは高瀬峡遊歩道に向かいました。ただし時間がないので、ヒノソにかかる第一吊橋をわたり蔭ノ滝までの往復です。滝の直前のヒノソの徒渉点では、前回よりはやや水量がおさまってはきたもののまだ雪解けの影響による増水で、結局ほぼ全員が流れに足を入れ「冷たい!痛い!」とわーわー言いながら渡りました。