月別アーカイブ: 12月 2011

12/30の胴腹ノ滝

雪の中、恒例の胴腹ノ滝行脚です。積雪は50〜60cmくらいあり、道路の除雪も万全ではないのでひやひやしながら昨日午前10時ころ車を運転して行きました。水量はまた一段と減ってきました。気温も零下2.9℃ですから、すでに滝の上部後背地表面からの新たな水の浸透はほとんどなくなったきたと考えられます。そのぶん地下水圧が下がるので、今後も春先まで滝の水量はずっと減り続けると予想しています。湧水温は右・左とも前々回・前回と変わらず8.6℃でした。

水量の正確な計測はかなり難しいので、ほぼ定位置からの写真撮影を毎回行い、それをパソコン上で比較検討しながら推移をみています。しかし1枚目の写真では左側の滝が、手前にある樹の雪の重みで垂れ下がった枝に邪魔されてよく見えません。困りました。それで、よく分かるようにすぐ近くから右(2枚目)と左(3枚目)と別々に撮った写真もあげてみました。

今回は私が調査と水汲みをしている間に、ほかに水汲みに来た人は2組3人でした。連日の降雪で主要道と町中の除雪で忙しいせいか、岩野の集落から胴腹ノ滝入口までの道路は除雪が手薄になっています。道路幅も狭くなって車のすれ違いや駐車にも細心の注意が必要な状態です。私はいつも車にシャベルを積んでいるので、車をもうすこし路肩に寄せられるように、道路脇に小山をなしている雪を幅1m長さ15mばかり雪かきをしました。ほとんどただ同然でこれだけいい水を汲んで味わえるのだから、すこしくらいはお返しをしなくてはと思います。

 

 

 

石田徹也の絵

 

31歳の若さで亡くなった石田徹也さん(1973〜2005)の遺作集。2006年に求龍堂から出版されたこの作品集には10年間100余の作品が納められていますが、いずれも一種の「自画像」といっていいと思います。シュールでなんとも不思議な絵です。私はリアルな写実的な絵も好きですが、こういうのもいいですね。

私は石田さんのことはまったく知らなかったのですが、書店の陳列棚でこの本を見てたいへん驚きました。これは買わないといけないと思いました。

 

 

 

雪かき

 

ここ1週間ほど、連日雪が降っています。大雪注意報も出ており、自宅と工房まわりの雪かきに追われる毎日です。積雪は40〜50cmほど。その降り積もった雪を除けるだけでもたいへんですが、広さ約50坪ある工房のトタン屋根から滑り落ちる雪も半端な量ではありません。落雪を放っておくと軒まで上がり窓ガラスを割ったりしてしまいますので、まめにこれも片付けておかないといけません。

数年前にヤマハの除雪機を導入してからはこうした雪かきもだいぶ楽にはなりましたが、それでも降雪が多い日は朝と晩の2回、場合によっては日中にもという具合に何度も雪かきをします。機械で全部できるわけではなく、手でやらないといけない部分もけっこうあります。また、仕事にも生活にも自動車はいまや不可欠で、車がいつでも自由に出入りできるようにするには、それの経路を残雪が皆無に近いくらいきれいに除けておく必要があります。そのため子どもの頃に比べて、自動車が普及したことで除雪の手間は逆に倍以上に増えたと思います。

除雪機ですが、先日は道路脇に小山になって積もった雪(除雪車がどけた雪の塊)を片付けていたら、雪の中に混じっていた小石をかんで排雪のプロペラの取付ボルトが折れてしまいました。エンジンやシャフトなどの主要部分が壊れないようにするために、異物をかんだりした際にはそこで破損するようにわざと一部分の強度を落としているのですが、たしかこれで導入以来3度目の破損トラブルです。とくに今回は本来であれば当工房ではやる必要・義務のないところを自主的に除雪していての故障だったので、ちょっと複雑な気持ちです。修理費もばかになりませんし(多いときは3万以上かかったことも)。

除雪機はすぐに修理に出したのですが、戻ってくるまでの3日間はスノーダンプやアルミスコップなどを用いての手作業による雪かきを余儀なくされました。やはり機械があるのとないのとでは時間も体力も大違いです。そのため、本業の木工の仕事もしなければならないので、除雪作業は最低限度にしかできませんでした。それでもなお気分的にいえば「半日は雪かきで終わってしまった」という感じです。

工房のある集落では、ちょっと見たところ個人で除雪機を持ってそれを駆動しているのは他には2軒くらい。あとは相変わらずの手作業でたいへんな苦労をしながら雪かきをしています。しかもそのほとんどは高齢の方たちです。若い人も住んでいないわけではありませんが、彼らが雪かきをしている姿を見かけることはあまりありません。中学生とか高校生くらいなら、その気があれば爺婆よりずっと作業がはかどると思うのですが、それは「俺・私の役割ではない」ということでしょうかね。

野帳

野帳。英語ではフィールドノート(field note)でしょうかね。写真は私が現在仕様中のもの(左)とこれから使おうと思っているもの(右)、それに筆記用のボールペンです。

 

野帳はおもに登山やハイキング、それに湧水の調査などに用いています。いちばん重要なのは耐水性・耐久性で、降雨降雪のなかや濡れた手で扱っても記録が汚れたり紙が破れたりしないことです。それに手に持って腰があることと、携行と収納しやすいようにコンパクトであることも欠かせません。

上の野帳は2種類とも表紙にLEVEL BOOK と記してあります。測量用の手帳というのが本来的な意味なんでしょうが、むろん野外で水濡れの可能性のある環境での筆記記録であれば何にでも向いています。メーカーはともにコクヨで、左(セ-Y11)はビニールカバー+紙の表紙+樹脂の中紙24頁という構成、右(セ-Y31B)は表紙も中紙もすべて樹脂製30頁という構成です。中紙は樹脂をベースとする合成紙で、水没してもよれよれになったりすることはありませんし、ちぎるのが難しいほどの強度があります。

左のタイプはもう何年も何冊も使ってきて、特別不満もなかったのですが、先ごろ敬愛する水門学の専門家が右のタイプの野帳を使われていたので、それをさっそく真似ることにしました。表紙がかなり厚く硬いので、手持ちで筆記するときもへなへなしませんし、これだけ鮮やかな色なら紛失もしにくいと思います。先の専門家はさらにこの野帳にご自分で紐を通して首にかけていましたが、貴重な記録が万一水に流されてしまったり、崖から落としてしまったりしたら悔やんでも悔やみきれませんものね。

写真下方のボールペンは加圧式で、上向きでもインキが途切れることはありませんし、濡れた紙に書いてもかすれにくいのです。パイロットのDown FORCE(ダウンフォース)という製品で、ノック式であることや鮮明な色あいの太めの軸であることなど、やはり野帳同様にフィールドでの記録に最適と思います。

 

裁縫板材料検分

先日12月22日に記事にしたカヤの木の裁縫板ですが、一昨日ばらして材料の検分をしました。幅30cmくらいの板を2枚、裏側5カ所でボルトを半ば埋め込む形で接合してあるのですが、表のほうはその接合箇所を中心に何カ所か、節穴等の目隠しを兼ねたチギリ様の埋木もしてあります。

甲板の接合には接着剤も併用していますが、これはニカワ(膠)ですね。強く叩くと木地はさして傷つくことなく接合面ではがれてしまいました。現在の接着剤に比べるとやはり強度はだいぶ落ちると思います。ボルトはおそらく戦時中の物資不足の中でなにかの転用らしく、軸径も7〜7.5mmと不揃いで、ナットも厚みや外径が同じではありません。ワッシャーは板金を四角く切り出したようで、これも正確な長方形ではないです。

最初は、ボルトやナットにはかなりサビが浮いていたのでうまくナットを回せるかどうか危ぶんだのですが、潤滑油を浸透させたり、片方のナットが外れたボルトを、モンキーレンチでつかめるようにディスクグラインダーですこし軸面を平らに削ったりしてなんとか外せました。

裁縫板の下方にはすり脚と道具入れの箱が左右に付いていたのですが、再利用できるような材料・作りではなかったので、ばりばりと壊して取ってしまいました。左上に積んである残骸がそれです。また後方中央に立てかけてあるケヤキの板は、Tさんが同時に持参されたもうひとつのほうの裁縫板の甲板で、これもこんどカヤ主体で製作する家具の一部に再利用する予定です。

これらの材料で家具を作るのは2〜3か月ほど先の予定ですが、新材で作るのと違って古材は不確定・不明な要素が強いので、とりあえず先行して材料の検分をしたということです。これをやっておかないとはっきりした見通しが立ちません。

 

12/21の胴腹ノ滝

旧八幡町にある工房では19日に除雪機が今冬初出動しました。写真はその2日後の21日朝の胴腹ノ滝の写真ですが、こちらもだんだん雪が積もってきて、積雪はおよそ15cmくらいあります。水量は明らかに落ちてきました。湧水温は右・左ともに8.6℃で、前回12月10日と変わりません。気温は滝の手前の社の正面、地上高約1mでマイナス2.0℃です。湧水とは10℃以上も違うので、温度を計ったりペットボトルで水を汲んでいる際もたいへん温かく感じます。

道路の除雪は滝の入口のもうすこし先のカーブのところまで除雪車が行ってくれているので、水汲みをする場合も問題なくアプローチできるのですが、やはり雪が積もりはじめると来訪者がとたんに減ります。春から秋の他の季節もいいのですが、冬は冬で雪景色の中を黒々と流れる湧水の滝と渓流、鮮やかな緑の苔、そしてある意味では常識はずれの「温かい湧水」を体感できるなど、とても魅力的なんですけどね。大勢の人による喧噪もないので、静かに自然を楽しみたい方には断然おすすめです。滝を眺めながらコーヒー・紅茶など湧かして飲むのもいいんじゃないでしょうか。

あ、それから車は必ずカーブのところで方向転換して、下り方向に左側いっぱいに寄せて停めてください。たまに右側とか、道路の両側に停めている人がいますが、それでは他の人の大迷惑になります。カーブの所も安全に方向転換できるように駐車はしないようにしましょう。

 

裁縫板

遊佐町のTさんが先日、古い裁縫板を2台工房に持ってこられました。亡くなったお母様が長年裁縫台として使われていたものだそうで、1台は甲板がカヤの木のバール(瘤様の杢の出た材料)2枚はぎという非常に珍しいものです。下の写真がそれです。サイズは1810/623/270mmといったところ。もう1台はすこし小ぶりのケヤキの一枚板のものです。

手持ちの材料や古い家具を持参されて、「これで何か作れませんか?」と打診されることがときどきあります。今回もそのケースなわけですが、一般論的にいえば保管状態がよほどいいものであるとか、めったにないような貴重な材料である、寸法もわりあい大きめ、といったものでないと、それで何かの家具をあらたに製作することは難しい場合が多いです。反りや捻れがある、虫食いや腐りや割れがある、釘や金物・砂礫などの異物をかんでいる、乾燥が足りない、ホゾ穴や溝などが多数あり再利用するには量的に足りない、などといった理由からです。

それから別の理由もあります。畳一枚分もあるような大きな一枚板であるとか、先日も書いた黒柿や極上の杢板といった高級な材料であればまた話は異なりますが、注文家具の場合ふつうは値段の3割前後が材料代です。30万なら10万くらいが材料費。つまり7割または20万は材料代以外の加工賃と諸経費ということになります。したがってお客様が材料を持ち込まれても大幅に安くできるわけではありません。それどころか古材利用・転用はまっさらな材料から家具を製作するよりもよけいに手間がかかることがしばしばで、浮いたはずの材料費以上の手間賃がかかることさえあります。

以上のことを詳しくお伝えし理解していただいたうえで、それでもというときは喜んで作らせていただきます。今回Tさんは「母親の形見として残したい」とのご意向でした。どういうものができそうか、何に仕立てたらこの材料がいちばん生きるかをTさんとお話し、さっそく図面と概算見積を書くことになりました。

 

ソフトブロックの大怪獣 2

わが家の5歳児のたっての願いで、ソフトブロックで作った怪獣の第2弾を披露します。できあいの完成形の玩具とちがって、こういうブロックは遊ぶ側の能動的な創意工夫の余地があっていいですね。いまではブロック(ハード、ソフト、フラットピースのものなど4種類うちにあります)でモノを作ることについては私はとてもかないません(←親ばか)。

 

西原天気句集『けむり』

 

西原天気さんから句集をいただきました。和綴じふうの製本ですが、洋紙のファンシーペーパーを表紙と本文にフルに用い、タイトルと著者名(俳号)がローマ字表記という句集らしからぬ装丁の本です。句集というと一般的に、いかにもというかいまさら?というような時代錯誤あるいは無粋な装丁が多いのですが、これはなかなかにしゃれています。

西原天気さんは1955年兵庫県生まれで、現在東京に住まわれていますが、1977年に「月天」句会で俳句を始められたとのこと。「麦の会」「豆の木」を経て、2007年4月からはウェブマガジン「週間俳句」を運営されています。「週間俳句」はインターネットできっちりと俳句作品や俳句評論を展開するという先鋭的な試みで、読者もかなり多いと思います。

今回の句集は実質的に氏の第一句集といっていいようですが、14年にわたる句作を選抜編集したもの。編年体ではなく、「切手の鳥」「マンホール」「だまし絵」「名前のない日」という4つのパートに分けて納められています。題名の『けむり』にふさわしく、伝統的な俳句のがちがちの約束事からも、また「反伝統的」なこだわりからも自由な、一見するとたいそう軽い味わいの句が多い。しかしそれは見かけだけであって、よく読めばどの言葉もきりきりと選び取られ練られていることが分かります。

私は最近ほとんど俳句を作っていませんが、天気さんの句にはいたく共感するところがあります。むろん私の句の傾向とは異なる面もいろいろあって、ときに反発を覚えることもあるのですが、それもまた天気さんの句の重力というものでしょう。

なにはともあれ、帯に掲げられた10句をみなさんも味わってみてください。

 

日向川白濁

先週の金曜日9日くらいから気になっていたのですが、日向川本流がかなり濁っています。すでに10日くらい経っていますが、いっこうに収まる気配がありません。

最初は冬期間によくある土木工事のせいかと思ったのですが、それならもっと黄土色〜茶色の水なはずですし、濃度も日時によってかなり変化するはずです。結局現時点(12月18日朝現在)で分かったのは、日向川本流の山間部上流にあたる鹿ノ俣川流域で地面の崩壊があり、何かが沢に流出しているらしいということです。標高800m付近にある鶴間池近くの崖が崩壊しているという話もありますが、また聞きですし、真偽を確認できていません。

きのう昼過ぎに、日向川沿いでもっとも上流に位置する升田・貝沢集落まで足を運び、かいざわ橋で写真を撮ってきました。上が上流方向、下が下流方向です。たしかにお風呂にバスクリンを溶かしたような色合いの白濁した流れで、なんとも異様な光景です。断言はできませんが、土砂の流入ではなく火山性の物質(硫化物など)が流れ込んでいるのかもしれません。下流の尻地・六ツ新田ではすでにサケの遡上が途絶えてしまったそうですし、アユやカジカといった他の魚も壊滅的打撃を受けている可能性があります。

もしほんとうに鶴間池か、さらにもっと上流部で崖または山体の崩壊があり、なにかが流れ出しているとすれば現地に行って確認したいところですが、すでに滝ノ小屋への道路は完全に雪に埋もれてしまっています。行くとすれば標高500mほどの大台野の集落から長時間の雪上歩行を余儀なくされるでしょう。さて、どうするか。