月別アーカイブ: 11月 2011

11/19&29の胴腹ノ滝

 

 

鳥海山も上のほうはすっかり雪に覆われてしまいましたが、写真上が11月19日昼過ぎ、写真下が11月29日朝の胴腹ノ滝です。滝の湧水の温度は19日は右・左とも8.8℃(気温13.1℃)、29日が右8.8℃、左8.7℃(気温7.1℃)です。水量は若干の変動はありますが定かではなく、ほぼ同じとみていいでしょう。晴れた日の日中以外は湧水のほうが気温よりも温かくなってきました。「湧水は冷たい」という一般の常識がすでにくつがえっています。

昨年の例にならうなら、積雪がもっと下のほうにまでおよんでくると大きな変化があると思いますので、推移に注目したいと思います。

 

大槌町再訪と民泊研修 1

11月25〜26日に岩手県大槌町および遠野市に行きました。大槌町は6月29日に次いで私は二度目の訪問ですが、今回はしらい自然館を拠点とする「鳥海山おもしろ自然塾推進協議会」の主催による、野菜類の販売とラーメンの炊き出し、民宿関連の研修視察が主な目的です。

一日目の25日の早朝5時半頃に、小型バス1台と1.5トンのパネルバン(箱形トラック)1台とに分乗して遊佐町を出発。総勢20名の参加ですが、秋田と岩手の県境をこえるあたりは降雪で、皆さん先行きをかなり心配しました。高速のパーキングや道の駅などで休憩をとりながら約6時間のドライブでしたが、さいわい目的地が近づくにつれ晴れ間がみえてきました。ラーメン炊き出し部隊は昼食に間に合わせなければならない関係で、前日にすでに現地入りして準備に追われているはずです。

海岸近くの釜石市や大槌町は、前回の訪問時よりは瓦礫等はだいぶ片付いているとはいえ、やはり惨憺たる光景であることには変わりがありません。今回はじめて震災被害地を目の当たりにした参加者も多く、やはりみな言葉を失っていました。テレビや新聞などで接するのと、自分の目で実際見るのとではまったく違います。

大槌町の仮設住宅は多数分散していますが、その中でもおよそ500世帯といういちばん大きな規模の「大槌第5」に向かいました。壊滅状態の海岸部の平地から大槌川に沿って上流に10km近くもさかのぼったところの、決して広いとはいえない所に仮設住宅がたくさん並んでいます。集会所のかたわらに野菜類をおろして野天販売を開始。

事前に今回の催事は役場を通じて伝えてあるので、すでにたくさんの方が並んでいます。大根やネギ、白菜、人参、ごぼう、ジャガイモ、水菜、パプリカ、ほうれん草、青菜、ちんげん菜、米、餅、笹巻きといった遊佐町産の食べものを廉価で販売する一方、集会所内ではラーメン約200食を無料で提供しました。両者ともたいへん盛況だったのですが、風がものすごく強いのにはまいりました。ときおり突風が襲ってきて、並べた野菜類もなにもかもが吹き飛ばされてしまいそうになるほどです。それに気温は3〜5度くらいでしょうか、寒いです。着込んで、トラックを風よけにしながらの約2時間あまりの販売でした。

夕刻からは場所を遠野市に移し、土渕町のたかむろ水光園という大きな旅館に泊まりました。大方は鉄筋コンクリートの新しい建物ですが、一部に南部曲り家が併設してあり、私も含め6名はこちらの大座敷・小座敷に泊まりです。本館からの長い渡り廊下や曲り家内部は各種の展示場も兼ねており、千本にもおよぶという囲炉裏の自在鉤や、鍋や釜や鉄瓶などの鋳物、それに遠野市の水道事業に使われた鋳鉄の水道管などがたくさん展示されており、圧巻です。

※ かんじんの仮設住宅や野菜等販売のようすは、カメラの不備で撮影できませんでした。すみません。二日目26日についてはまた明日にでもレポートします。

 

切断機

 

切断機とはまたずいぶん大雑把すぎる名前です。材料を切断するための機械はたくさんあり、当工房で使用しているものに限っても丸ノコ、充電丸ノコ、スライド丸ノコ、ジグソー、レシプロソー、チェーンソー、ディスクグラインダーがあります。これらはAC100V電源または充電池の可搬型の機械ですが、200Vの据置型の大型の機械も含めれば、昇降丸鋸盤、バンドソー、パネルソー、糸鋸盤もそうですね。ところがなぜか写真のようなタイプの、切断用砥石をモーターで回転させその上下動で主にパイプやアングルなどの金属類をカットする機械を伝統的・慣習的に「切断機」と呼んでいます。

機種はマキタの2414NBで、14型、つまり切断砥石の直径が14インチ=約355mm(厚さは4.5mm)の大きさの切断機ということです。金属類が対象なので手前のバイスでがっちり材料を締め付けて切るのですが、そのバイスは材料の大きさが異なってもスピーディーに移動できるようにクイック式になっています。単相交流15A、1430W、3800回転/分、重量16.2kg、外形寸法500*280*600mmといった仕様です。

当工房ではほとんどが無垢の木材相手の仕事で、金属類を切断することはめったになくまた量的にも少ないのですが、だからこそなのですが外注してもなかなか思うようには切ってもらえないことが多いです。パイプを1本2本切るのでは、それは業者は内心嫌でしょうね。それで思い切って先日切断機を購入しました。近々予定している仕事でちょうどステンレスパイプ&丸棒を切る必要があるためです。

木工房と金属加工はじつは相性がとても悪いです。鉄であれアルミや真鍮であれ、金属を切ったり削ったりすれば必ず金くずが出るわけですが、それがうっかり木に付着したり食い込んでしまうとその木を切ったり削ったりしたときにたちまち刃が痛んでしまいます。とくに当工房の作業場は三分の二くらいが板張りにしてあり座業主体で家具などを作っているので、その床面に金属屑は厳禁です。切断機も盛大に火花が飛び散るので注意が必要です。

したがってこの切断機を使用する際は、コンクリートの土間に機械を置きまわりを厳重に囲うか、野外で使用することになると思います。なおメーカーがマキタなのは、ベストかどうかはともかく「マキタなら大きな外れはないだろう」という安心感からです。切断機はなんでもいいならホームセンターあたりで1万もしないようなものもありますが、見るからに作りが雑で、とうてい買う気はしません。

 

とっくり缶

 

缶がずらり並んでいますが、手前左のラベルを貼ってある一本以外はすべて空缶です。製缶メーカーの株式会社坂本空缶というところから直接購入したばかりのもので、薄手の鋼板にスズメッキをほどこした1リットル容器です。一般にはブリキ製のとっくり缶と呼ばれています。当工房ではこれに塗料類を入れています。充填しても片手で持てる重さと大きさであることや、口が小さいので、調合・塗装用の塗缶(とかん)に直接注ぐことができます。

塗料類はたいてい1〜16リットルの角形の缶に入れてあることが多く、これだと塗缶に注ぐときにはそのつどノズルやジョウゴや軽量カップを使用しなければなりません。一度使用したノズル類はいうまでもなくすぐにきれいに拭き取り、または洗浄しなければならず、またごく少量の塗料などを正確に注ぐのもたいへん困難です。

0.5リットルとか1リットル程度のとっくり缶なら、塗缶自体をデジタルの計量器にのせてゼロ設定をすれば、グラム単位で正確に迅速・簡単に注ぐことができます。塗料は主剤と硬化剤と専用のシンナー(希釈剤)に分かれていることが多いのですが、それぞれを規定通りの比率できっちり調合しないと本来の性能を発揮できません。最悪の場合、危険ですらあります。目分量でおおざっぱに1対2とか1対4などというのはとんでもない話です。

中身を入れたとっくり缶には当然ながらしっかりしたラベルを貼ります。さらにはがれにくいようにするのと、塗料等で汚れたり文字がにじんで判読できないような困った事態にならないようにするために、ラベル全体を半透明のポリエステルの養生テープで覆います。このテープは表面がクロス状にすこし凹凸があるので、缶をぐるりと1〜2周するように巻いておけば、塗缶に注ぐ際の滑り止めにもなります。ラベルは缶の蓋にも貼ります。よくある二液型塗料の場合などは、主剤と硬化剤の蓋をまちがえて締めてしまうとたいへんなことになりますから。むろんこれも養生テープでカバーリングをします。

さてこの坂本空缶というメーカーですが、サイトを見るといろいろな形や大きさ・材質の容器を作り販売していることが分かります。なかでも私は丸くて平たいスチールのかぶせ蓋の容器=メンタム缶・キャンディ缶・ラウンドケース缶に興味をそそられました。それを何に使うのかという具体的な意味合いよりも、缶自体の簡潔なたたずまいに惹かれます。

 

月光川のサケ

毎日ではありませんが夜8時くらいに散歩に出かけます。コースはいちばん多いのが月光川本流で、堤防や河川敷内の川縁を40分〜1時間ほど歩きます。夜にこの場所だとめったに人に出会わないので、社交的わずらわしさがないのがいいです。また暗いとはいえ、星や月や、安全のために携行するライトに照らされてけっこうさまざまな動植物を観察することができます。

 

今の時期だと川にサケ(シロザケ)が繁殖のためにたくさん遡上しています。月光川は主な支流だけで10本ばかりあり、それぞれに漁業組合があってサケの孵化事業を行っているのですが、月光川本流は組合が解散してしまったので遡上するサケは捕獲されることなく自然産卵しています。

卵がうまく育つためには絶えず新鮮な水がないとだめなので、比較的目の粗い砂礫があり底から伏流水や湧水が流れてくるような場所でなければなりません。月光川本流の場合は中流域から上流域に移行するあたり、旧朝日橋の上手数百メートルくらいがその適地です。


流れにそっと近づくとこれから産卵・放精しようとするサケや、すでにそれが終わったサケ、もう命を使い果たして川底に横たわっているサケなど、いろいろな個体を見ることができます。これからという個体は灯りや足音に反応してものすごい勢いで逃げてしまいますが、繁殖の使命を終えた個体はやせ細り変色してよろよろと泳ぐばかりで逃げる力もなくなっています。そうした個体や死んでしまった個体は「ホッチャレ」といいますが、昔から食用には適さないので「放ってしまえ!」からきているのかもしれません。もっとも現在では元気なサケでも食材としては海のサケに押されてあまり人気がなくなってしまいましたが(川にあがったサケが不味いわけではありません。適切な調理をすれば川のサケのほうがいい料理もたくさんあります)。

サケは川に入ってからはいっさい餌をとることなく、ひたすら繁殖地点をめざして川をさかのぼるのですが、産卵し放精し親としての役目を果たすとほどなく死んでしまいます。仔は無事に孵化して稚魚に育てば春先に川を下ります。そうして北洋を4年ほど回遊したのちに産まれた「自分の」川にもどってくるのですが、その回帰率は高くても数パーセント程度。日本海側だと遠距離を旅してくることもあってか1パーセントくらいといわれています。ほとんどは鳥や他の魚に食われてしまうか、病気や怪我で死んでしまうわけです。厳しいですが、それが命の営みですね。

ホッチャレももちろん無駄になるのではなく、人間こそ食べなくても他の動物の餌になりバクテリアが分解し、悠久の循環に組み込まれていきます。

 

シックネスゲージ

 

日本語でいうと隙間定規。主に機械類の隙間に挿入することによってその隙間の寸法がいくらであるのかを測定します。がたつきがなくぴったり無理なく挿入できるリーフ(各定規の葉片)の厚みが、その隙間の寸法というわけです。写真のシックネスゲージは長さ65mmの炭素工具鋼のリーフが25枚、組みになっており、厚さは最も薄いものが0.03mm、最も厚いものが1.00mmです。家具作りでは出番は少ないのですが、今回は小簞笥の抽斗と本体との隙間を決めるのに用いました(小簞笥については11/17に掲載)。

抽斗は隙間が小さければ小さいほど見栄えはしますが、よく乾燥しかつ通直な材木であっても温度湿度の変化によっていくぶんかは寸法が増減したり変形することを避けることはできません。乾燥材(含水率10%程度以下)であれば長さ方向は実用上は無視してもいいくらいですが、幅や厚みは思ったより変わるとみたほうがいいでしょう。仮に0.1%の延び縮みなら、幅1mの天板は1mm、0.3%なら3mmは動くわけです、実際テーブル類の天板(甲板)はそれぐらいは変化します。抽斗の場合も同様に変化しますので、あまりぴったりに作ってしまうと温湿度等によって膨らんだときにきつくなって開け閉めできなくなってしまいます。きついのを無理に引っ張って取っ手を壊してしまったといった故障はよく耳にします。

かといってあまり隙間が大きいのはみっともないし逆に開け閉めするときのがたつきの原因にもなりかねません。したがって見てくれと機能とのちょうどいい折り合い点をみつける必要があります。この小簞笥の例では、本体全体の寸法が高さ30cm程度で、いちばん大きい抽斗の高さ(=材料的には幅)も10cmちょっとです。このくらいの大きさのものであれば隙間はかなり小さくても支障ないはずなので、抽斗前板と本体との隙間は左+右で0.1mm、上+下で0.25mmになるように調整しました。

実際のその調整の手順としては、1)本体が組み上がったら、その開口部の大きさに合わせてまず抽斗の前板を決めます。この段階では隙間はゼロのつもりできつめにぎりぎりにします。ほとんど余裕はない状態なので、少し力を入れすぎて本体の中に押し込んでしまうと取るに取れない困ったことになるので要注意です。2)次にその前板に合わせて抽斗の側板・向板・底板などの寸法を、前板よりわずかに、0.2mm程度大きくなるようにして全体を組み立てます。3)組み上がった抽斗の、前板からはみ出した部分を慎重に削り段差をゼロにします。これで抽斗全体が本体に一応入り込むはずなのですが、スムーズに開け閉めできるようになお少しずつ削り合わせます。4)抽斗の全段が開閉できるようになったら、いよいよ隙間の調整です。シックネスゲージをそのつどあてがいながら、所定の隙間にそろうように何度でも本体に入れたり出したりして決めていきます。

このように抽斗やあるいは扉が本体の内部に収まるようにする形式のことをインセットといいますが、上記の説明でおわかりのようにじつに面倒です。しかしきれいに収まったインセットの抽斗や扉はたいへん美しいと思います。ただあまりに微妙すぎる加工と調整なので、機械的な量産は不可能で、結局手作業でひとつひとつ合わせていくしかありません。

その手間暇と熟練の技能を嫌って、現在ではとりわけ市販の量産のほとんどの家具の抽斗や扉は、それが本体にかぶさるような形式のアウトセットになっています。これであれば最初の加工と組立を図面通り計算通りにきちんと作りさえすれば、あとからの微調整などはまず必要ないのですね。コスト第一ならアウトセットにかぎると思います。

 

レンズ雲

 

午後からちょっと用事があって鳥海山の南面標高600m付近にある鳥海高原家族旅行村(旧八幡町)に出かけたのですが、ほとんど雲のない晴天下、北東方向になぜかレンズ状の雲がひとつだけ浮いていました。写真はもう形が崩れはじめていますが、これより30分くらい前まではみごとに整った形のレンズ雲でした。

レンズ雲は俗称かと思ったら、じつはれっきとした学術用語で Lenticularis と記すとのこと。こういった形の雲は荒天の前兆である場合が多いといわれていますが、上空にかなりの強い風が吹いているときに現れることは確かなようです。またレンズ雲は「地震雲」でもあるという話がありますが、どうやらうわさの域を出ません。

 

小さい簞笥

 

 

小簞笥というとなにやら和風っぽい感じですが、材質は左がアメリカン ブラック ウォールナット(ウォールナット)、右がアメリカン ブラック チェリー(チェリー)なので、むしろ洋風にミニチェストとよんだほうが似合っているかもしれません。両方とも同じ方からのご注文にて作らせていただいたもので、大きさは幅315mm、奥行355mm、高さ325mmです。抽斗の底板内寸はA4判の書類やファイルが楽に入る大きさにしています。Mさん、まことにありがとうございました。

ウォールナットもチェリーも欧米では家具材として昔から定評がある材で、最近とくにまた人気が高くなっているようです。とくべつ杢板や大判のものでない普通グレードの材料であっても、単価的に家具材としては最も高いほうの部類に入ります。ただ日本の広葉樹などとちがって広大な面積で昔から計画的に森林経営を行ない木材を生産しているため(とくにアメリカ&カナダ)、必要なぶんだけ必要な時に確実に材料が入手できる点は非常にいいです。

 

この小簞笥はもちろんすべて無垢材を使用していますが、本体の左右の側板と天板は長い板から順繰りに木取っているので木目が連続。接合は前留合わせ(とめあわせ=45度で合わせ)の9枚組です。また3杯の抽斗の前板は幅300mm以上の一枚板を3つに切り分けて使っているので、やはり木目が連なっています。背板は段欠で本体に四方みぞばめにしています。

家具はサイズが多少変わっても作る手間はそれほど大きくは変わりませんし、小さいものほど加工の精度が厳しく求められるので、こういった小簞笥などはずいぶん割高な値段に思われるかもしれません。

 

山また山

10月中頃に鳥海山の御浜近くから眺めた南方の景色です。時刻は記録によると午前8時53分。まだ朝もやがかかり全体が青く沈んでいますが、遠景に山並みの上端がくっきりと見えています。

左側の二等辺三角形のシルエットが月山(1980m)で、その稜線を右に下ってまた少し高くなったところが湯殿山(1500m)。それらよりもっと向こうの右側に長く続く山並みは朝日連峰です。いちばん右に見えているのがたぶん以東岳(1772m)でしょう。

山に登ると当然ですが見通しがききます。晴れていて空気が澄んでいれば意外なほど遠くまで見えます。粟島や佐渡島、飯豊連峰、吾妻山、蔵王、神室山地、栗駒山、岩手山、早池峰山、和賀山地、八幡平、等々……。それらの島や山などを「あれは何々、こっちは何々」と思案するのも登山の楽しみのひとつです。あらためて日本は山の国なんだなと実感します。

 

子どもの絵

わが家の5歳児がかいた絵です。いったいこれらはなんでしょうかね。でも、これくらいの年齢の子どもでなければ書けないような、なかなかいい味を出してます。Tシャツなどの絵柄に仕立てたらけっこういいかも知れません。