月光川のサケ

毎日ではありませんが夜8時くらいに散歩に出かけます。コースはいちばん多いのが月光川本流で、堤防や河川敷内の川縁を40分〜1時間ほど歩きます。夜にこの場所だとめったに人に出会わないので、社交的わずらわしさがないのがいいです。また暗いとはいえ、星や月や、安全のために携行するライトに照らされてけっこうさまざまな動植物を観察することができます。

 

今の時期だと川にサケ(シロザケ)が繁殖のためにたくさん遡上しています。月光川は主な支流だけで10本ばかりあり、それぞれに漁業組合があってサケの孵化事業を行っているのですが、月光川本流は組合が解散してしまったので遡上するサケは捕獲されることなく自然産卵しています。

卵がうまく育つためには絶えず新鮮な水がないとだめなので、比較的目の粗い砂礫があり底から伏流水や湧水が流れてくるような場所でなければなりません。月光川本流の場合は中流域から上流域に移行するあたり、旧朝日橋の上手数百メートルくらいがその適地です。


流れにそっと近づくとこれから産卵・放精しようとするサケや、すでにそれが終わったサケ、もう命を使い果たして川底に横たわっているサケなど、いろいろな個体を見ることができます。これからという個体は灯りや足音に反応してものすごい勢いで逃げてしまいますが、繁殖の使命を終えた個体はやせ細り変色してよろよろと泳ぐばかりで逃げる力もなくなっています。そうした個体や死んでしまった個体は「ホッチャレ」といいますが、昔から食用には適さないので「放ってしまえ!」からきているのかもしれません。もっとも現在では元気なサケでも食材としては海のサケに押されてあまり人気がなくなってしまいましたが(川にあがったサケが不味いわけではありません。適切な調理をすれば川のサケのほうがいい料理もたくさんあります)。

サケは川に入ってからはいっさい餌をとることなく、ひたすら繁殖地点をめざして川をさかのぼるのですが、産卵し放精し親としての役目を果たすとほどなく死んでしまいます。仔は無事に孵化して稚魚に育てば春先に川を下ります。そうして北洋を4年ほど回遊したのちに産まれた「自分の」川にもどってくるのですが、その回帰率は高くても数パーセント程度。日本海側だと遠距離を旅してくることもあってか1パーセントくらいといわれています。ほとんどは鳥や他の魚に食われてしまうか、病気や怪我で死んでしまうわけです。厳しいですが、それが命の営みですね。

ホッチャレももちろん無駄になるのではなく、人間こそ食べなくても他の動物の餌になりバクテリアが分解し、悠久の循環に組み込まれていきます。

 

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