とっくり缶

 

缶がずらり並んでいますが、手前左のラベルを貼ってある一本以外はすべて空缶です。製缶メーカーの株式会社坂本空缶というところから直接購入したばかりのもので、薄手の鋼板にスズメッキをほどこした1リットル容器です。一般にはブリキ製のとっくり缶と呼ばれています。当工房ではこれに塗料類を入れています。充填しても片手で持てる重さと大きさであることや、口が小さいので、調合・塗装用の塗缶(とかん)に直接注ぐことができます。

塗料類はたいてい1〜16リットルの角形の缶に入れてあることが多く、これだと塗缶に注ぐときにはそのつどノズルやジョウゴや軽量カップを使用しなければなりません。一度使用したノズル類はいうまでもなくすぐにきれいに拭き取り、または洗浄しなければならず、またごく少量の塗料などを正確に注ぐのもたいへん困難です。

0.5リットルとか1リットル程度のとっくり缶なら、塗缶自体をデジタルの計量器にのせてゼロ設定をすれば、グラム単位で正確に迅速・簡単に注ぐことができます。塗料は主剤と硬化剤と専用のシンナー(希釈剤)に分かれていることが多いのですが、それぞれを規定通りの比率できっちり調合しないと本来の性能を発揮できません。最悪の場合、危険ですらあります。目分量でおおざっぱに1対2とか1対4などというのはとんでもない話です。

中身を入れたとっくり缶には当然ながらしっかりしたラベルを貼ります。さらにはがれにくいようにするのと、塗料等で汚れたり文字がにじんで判読できないような困った事態にならないようにするために、ラベル全体を半透明のポリエステルの養生テープで覆います。このテープは表面がクロス状にすこし凹凸があるので、缶をぐるりと1〜2周するように巻いておけば、塗缶に注ぐ際の滑り止めにもなります。ラベルは缶の蓋にも貼ります。よくある二液型塗料の場合などは、主剤と硬化剤の蓋をまちがえて締めてしまうとたいへんなことになりますから。むろんこれも養生テープでカバーリングをします。

さてこの坂本空缶というメーカーですが、サイトを見るといろいろな形や大きさ・材質の容器を作り販売していることが分かります。なかでも私は丸くて平たいスチールのかぶせ蓋の容器=メンタム缶・キャンディ缶・ラウンドケース缶に興味をそそられました。それを何に使うのかという具体的な意味合いよりも、缶自体の簡潔なたたずまいに惹かれます。

 

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