西原天気さんから句集をいただきました。和綴じふうの製本ですが、洋紙のファンシーペーパーを表紙と本文にフルに用い、タイトルと著者名(俳号)がローマ字表記という句集らしからぬ装丁の本です。句集というと一般的に、いかにもというかいまさら?というような時代錯誤あるいは無粋な装丁が多いのですが、これはなかなかにしゃれています。
西原天気さんは1955年兵庫県生まれで、現在東京に住まわれていますが、1977年に「月天」句会で俳句を始められたとのこと。「麦の会」「豆の木」を経て、2007年4月からはウェブマガジン「週間俳句」を運営されています。「週間俳句」はインターネットできっちりと俳句作品や俳句評論を展開するという先鋭的な試みで、読者もかなり多いと思います。
今回の句集は実質的に氏の第一句集といっていいようですが、14年にわたる句作を選抜編集したもの。編年体ではなく、「切手の鳥」「マンホール」「だまし絵」「名前のない日」という4つのパートに分けて納められています。題名の『けむり』にふさわしく、伝統的な俳句のがちがちの約束事からも、また「反伝統的」なこだわりからも自由な、一見するとたいそう軽い味わいの句が多い。しかしそれは見かけだけであって、よく読めばどの言葉もきりきりと選び取られ練られていることが分かります。
私は最近ほとんど俳句を作っていませんが、天気さんの句にはいたく共感するところがあります。むろん私の句の傾向とは異なる面もいろいろあって、ときに反発を覚えることもあるのですが、それもまた天気さんの句の重力というものでしょう。
なにはともあれ、帯に掲げられた10句をみなさんも味わってみてください。