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タイヤ交換

バン(日産バネット)のタイヤを新しいものに交換しました。5年間で64000km、1年平均で12800km走ったことになります。もっとも12月から3月くらいまでの約4ヶ月間は冬タイヤ=スタッドレスタイヤを履いているので、実質は43000kmほど。摩耗して滑ってあぶない感じになってきたので新品タイヤに履き替えました。5万円以上の臨時出費で痛いですが、安全にはかえられません。

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新しいタイヤはブリヂストンのECOPIA R680 という、いわゆる低燃費型の製品です。サイズは185R14。ブリヂストンのHPをみると、転がり抵抗を減らすことと、路面を確実にグリップするという相矛盾する要素をうまく調整しているようです。以前のR670に比べて転がり抵抗は20%低減、摩耗度や濡れた路面でのブレーキ性能はほとんど変わらずとか。燃費がそのまま20%減るわけではないでしょうが、たいしたものではあります。

パターンや全体の形状、ゴムの質などいろいろ改善点があるようですが、専門的な話はおいておくとしても、運転していてこれまでのタイヤとは明らかにちがうことはすぐ分かりました。バンはありていにいえばトラックに箱をかぶせただけの基本的に荷物車なので、タイヤの空気圧も高く乗り心地はけっしていいものではありません。乗用車にくらべると明らかにゴツゴツした感じです。それがこの新しいタイヤだとかなりスムーズ。音も静かです。驚きました。

※※※ 実際どれくらいの燃費なのかチェックしてみました(2013.09.27)。満タン後に480.3km走行し、また満タンにすると軽油が32.1リットル入りましたので、リットル当たり14.96km走ったことになります。上記の省燃費型タイヤに交換する前は13km半ばくらいだったと記憶しているので、およそ10%は燃費がよくなったことになります。したがって計算上でいえば年間11000円程度燃料費が下がることになります。

 

クルミの大テーブル&椅子

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オーナーが病気で亡くなって閉店してしまいましたが、酒田市のみずほ通りに「ラストリーフ(Last Leaf)」という、絵本と紅茶の専門店がありました。1995年にオープンしたそのお店の建物の基本設計と、テーブルや椅子・本棚などの家具什器の製作を、当工房で担当させていただきました。

その後お店を閉じることに決まってから家具類は希望する方に譲られたことは聞いていましたが、実際にその譲渡先での家具を私は見たことはありませんでした。それを私の娘が木工房オーツーのものであることにすぐ気がついてメールで送ってきた写真が上のものです。

酒田市飯森山3丁目にある東北公益文化大学内に置かれていますが、テーブルは大きさ幅2100mm奥行1600mm高さ650mmのオニグルミ製、詰めれば8〜10人は座れるサイズです。甲板の形は長方形と楕円形の中間的な形=スーパー楕円。椅子はラストリーフ用のオリジナルデザインで計16脚製作しましたが、大きさは幅430mm奥行450mm高さ860mm座面高さ380mmで、やはりオニグルミ製です。18年前に作ったテーブルと椅子が今も現役で多くの方に使われているのは、デザイン&製作者としてはなんともうれしいかぎりです。

ラストリーフの建物は現在フレンチレストラン『Nico(ニコ)』として活用されています(酒田市亀ケ崎3−7−2 ☎0234−28−9777)。内外装に若干の手が加えられていますが、基本的な骨格やレイアウトなどは以前のままなので、ぜひご覧になっていただきたいと思います。

ご参考までに、ラストリーフ開店当時の内外の写真を以下に掲載しておきます(当工房の旧ホームページより転載しました)。

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ハグロトンボ

山形県遊佐町のちょうど中心部を八面川(やつめがわ)という幅4〜5mの川が流れています。もともとは稲作の用水を主な目的とする古くからの人工水路ですが、田んぼがパイプ灌漑となったことによって「役目を終え」、20数年前にはいちどは暗渠になるはずだった川です。

しかしながら月光川の魚出版会(私も創設メンバーのひとりです)の手によるイバラトミヨの生息確認をはじめ、多くの人たちの尽力により多自然型護岸のモデルケースとして採択されて保護池が作られ、河川部分も現在のような形で存続されました。

主な水源は月光川本流からの導水ですが、町内の自噴井戸の余水があちこちから流入しているため、平野部の町中の人工河川とは思えないほどきれいな冷たい水が流れています。その八面川の川面をたくさんのトンボがとんでいました。

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カワトンボの仲間のハグロトンボ(羽黒蜻蛉)です。上の写真で、左の茶褐色の固体が雌、手前の羽が真っ黒で腹部が青緑の金属光沢を帯びている個体が雄。体長は60mmあまりで、比較的大柄です。おもしろいのはその飛び方です。大きめの羽をチョウのようにぱたぱたとはばたかせ、また小さな音をたてながら飛翔します。空中にじっと停止することもなければ、一直線にすばやく飛んでくるということもありません。草などにとまるときは4枚の羽をきっちり重ね合わせて立てて閉じて止まります。

子どもの頃はごくありふれたトンボだったのですが、河川や用水路の大半がコンクリート化されることで、激減してしまいました。今はいくらか回復してきたようですが、それでも身直にこんなに多くのハグロトンボを眺めることができる場所はごく限られています。

 

子どもの俳句

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8月13日の朝日小学生新聞に載っていた俳句です。全国の小学1〜6年生から投稿された俳句を、3人の選者が7句ずつ選んで載せているのですが、それぞれ第1句と第7句だけ抜き書きしてみます。

しなやかな体でにげるとかげかな (2年・久保田雄大)
急な雨入道尾雲はあったっけ (5年・甲斐田碧)
ひまわりが上から目線こわいなあ (4年・村上そわか)
運動し雨降るみたいに汗をかく (6年・実政樹)
すいかわりねらってねらってぼうをふる (2年・高橋恭)
玉ねぎ切るこれは汗かな涙かな (6年・中林瑞貴)

率直に言ってこれは俳句とはいいがたいと思います。俳句ではないなにかです。俳句は基本として5・7・5音からなる短かい詩ですが、むろん文学の一世界なので詩的創造性が求められます。しかし上の句のどこにそれがあるでしょうか? 少なくとも私には露ほども感じることができません。あまりにも当然で普通でありふれたことをただそのままに「5・7・5の形にしただけ」です。

俳句はその短さゆえに数ある文学ジャンルのなかでも小学生や中学生などの子どもでも比較的簡単に取り組めると思われているようです。いやむしろ俳句の態をなしていない程度の低い作品が「子どもらしいすてきな感性だ」などと賞賛されることも珍しくありません。

しかし俳句は短いがゆえに取り組みやすいのではなく、逆に短いがために言葉の精緻さや練度が極限まで要求され、たった17音で表現しなければならないという厳しい制約が科せられたとても難しい詩形式です。言葉が足りないと思えばいくらでも書き足せばいい一般的な詩とは異なります。したがって子どもでもなんとかなり時にはそれこそ大人以上にすばらしい作品を産み出すこともある詩とは根本的に異なります。むろん例外中の例外はあるかもしれませんし、天才的な年少の俳人が絶対にいないとは断言できませんが、その可能性はかぎりなくゼロにちかいでしょう。

言うまでもなく、子どもたちが俳句に興味関心をもち、その形式をなぞってみることを否定するものではありません。「俳句のようなもの」として一定の評価をあたえてもいいと思います。あくまでも「俳句のようなもの」としてです。そのうち俳句のほんとうの難しさに気づいてくれればしめたものです。ひょっとしたら1000人に一人くらいは俳句の門を開けて中に入るかもしれませんし。

けれども小学生向けの新聞とはいえ全国紙で子どもたちの俳句を募集し、紙面に掲載し評釈するというのは無理がありすぎるように思います。当人だけでなく保護者や教師などにも俳句に対する無理解と誤解とを広めるだけのような気がしてなりません。

 

真夏の高瀬峡

お盆休みですが、鳥海山の南西麓にある高瀬峡に行ってきました。知人の子供さんも交えて近々川遊びをする予定があり、その偵察をかねてのハイキングです。梅雨もあけてようやく晴天が続くようになったので、河川の増水も収まってきました。ヒノソ本流にかかる蔭ノ滝もカラ沢にかかる大滝もまずまずの水量です。

暑いし蚊やアブなどの虫も多いこの時期ですが、滝の前はさすがに冷気がたちこめておりたいへん気持ちがいいです。車道終点の山ノ神の駐車場から、遊歩道最奥の大滝までで40〜60分くらいですが、なぜか他の人たちは滝へそそくさと来てそそくさと帰ってしまいます。もっとのんびりゆっくり自然を楽しめばいいのにと思うのですが。

花は比較的少なくて、キンミズヒキ、ミヤマトウバナ、ヌスビトハギ、ハエドクソウ、ダイモンジソウ、オクモミジハグマ、ヤマトキホコリ、といったところ。アキノキリンソウやモミジガサなどはまだ蕾でした。

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蔭ノ滝の滝壺。水の透明度が非常に高い。波紋がないところでは水がないように見えます。

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カラ沢の大滝。上部の落ち口ですが、周囲の濃い緑に落水の白が映えます。

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大滝の最下部。柱状節理の垂壁や上流から落ちてくる大岩で、滝壺というほどの深さはありません。この写真には写っていませんが西日を受けて虹がかかっていました。

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大滝へはカラ沢の左岸を沢の流れにそってゆるゆると登ってくるのですが、その途中にサワグルミ(沢胡桃)の巨木が生えています。樹高30m、株立ちの周囲で7〜8mくらいでしょうか。奇数羽状複葉が逆光でとてもきれいに見えます。

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ヒノソ本流で、長坂道の徒渉点直下の流れ。右岸に大きな湧泉がありヒノソに合流しています。そのため厳冬期でもヒノソはこれより下流はしばらく降雪のいきおいに負けることなく水面がのぞいています。

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キク科のオクモミジハグマ。モミジのような葉と、つむじ風を連想させる花がすてきです。

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シソ科のミヤマトウバナ。5〜6mmほどの白い小さな花ですが、清楚な美しさがあります。こうした小さな花にも目がいくようになると山歩きの楽しみが倍加しますね。

 

白水晶クラスター

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子供ならびに私の鉱物コレクションですが、カテドラル水晶、フローライト(蛍石)、アメジスト(紫水晶)、パイライト(黄鉄鉱)に続く第5弾で、白水晶のクラスター=群晶です。母岩から引きはがして適当な大きさに割っただけの未加工品です。自然の不思議さとか美しさをできるかぎりそのままで味わうことが肝要ですから、装飾品として加工されてしまったものはほとんど興味がありません。

この水晶クラスターは産地はブラジルでミナス州コリント近郊の鉱山。大きさは幅10.5cm奥行7cm高さ3.5cm、重さは166gです。子供の手の平にちょうど収まるくらいの大きさで、びっしりと並んだ六角形の透明な結晶がすばらしくきれいです。

上の写真はiPad miniで撮りました。これもすこしぼけていますが、私がふだん使用しているコンパクトデジカメだと、こういう凹凸があり不規則に光っているようなものは接写モードにしてもまったくピントが拾えません。いつまでもジーコジーコ言ってます。かといって普通のモードでは焦点距離が長くて小さくしか写せないので、どちらもだめ。タブレットコンピューターにも負けてしまうようなカメラは情けないです。

 

テンプレート

ルーターでお盆などの彫り込みを行うときはテンプレート(ならい板)を使います。加工する材料にテンプレートをあてがい、ルーターにガイドベアリング付きの刃物(ビット)や、刃物よりやや径の大きいテンプレートガイドをそのテンプレートの内側にそわせながら材料を切削することで、同じ形状のものを比較的容易に複数製作することが可能になります。

ただそのテンプレートを作るのは決して簡単ではありません。何事も最初が肝心で、最初のテンプレート=マスターテンプレートをできるかぎりていねいに正確に作らないと、その後の切削用テンプレートやそれを使っての製品がみな狂ってしまいます。テンプレートの素材や作り方は工房や木工家によりさまざまかと思いますが、ここでは当工房の標準的な方法をご紹介します(実際に木工作業をされている方でないと理解しにくいかもしれませんがご容赦ください)。

まずマスターテンプレートですが、素材は4mm厚のシナ合板です。表面に圧着されたシナノキは色が白く平滑なので加工の目安となる線=墨が見やすいです。また厚みはあまり厚いと加工がたいへんですし、薄すぎるとへなへなして扱いにくく耐久性も劣るので、4mmまたは5.5mmくらいが適当でしょう。シナ合板はふつうの合板にくらべだいぶ高いですが、これがすべての元になるのでけちってはいけません。

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円形や方形などのテンプレートならわりあい簡単に作ることができますが、楕円や写真のようなスーパー楕円、またはオーガニックな変則的な形などの場合、最初のテンプレートを作ること自体がかなりの難問です。基本的にマスターテンプレートはほとんど手加工で作ることになりますが、断面がきっちり垂直になっているか確認します。テンプレートはこの上にルーターを乗せて材料の彫り込みをするので、周囲の余白が10cmくらいずつは必要です。あまり狭いとルーターが不安定になりぐらぐらするし、ビットまたはガイドをテンプレート内側に押し付けたときにテンプレートがひずんでしまいます。

切り抜きが正確にできたら、その切断面の合板木口に瞬間接着剤をたっぷりとまんべんなくしみ込ませ硬化させます。乾いたらサンディングペーパーを軽くあてて滑らかに仕上げ。合板の断面にはしばしば巣が開いていることがありますが、かならず木紛+瞬間接着剤で平らに埋めるようにします。もしこの処置をせずに使うとそこからテンプレートが破損してきますし、当然ながら材料の切削加工がうまくいきません。1mmのよけいな切削を修復するのはたいへんな手間です。

マスターテンプレートが完成したら、次は本番の切削用テンプレートですが、切削にどのような種類&寸法のビットを使うかによって、次のテンプレートの仕様が異なります。この例では、お盆の内側の入り隅に半径6mmの丸みをつけるのに12mm径のU字ビットを用いる予定なので、まずマスターテンプレートとまったく同形同寸のテンプレートをトップベリングガイド付きのストレートビット(トップパターンビットとも言います)で製作します。合板は9mm厚のシナ合板です。

このときいきなりトップベアリングガイド付ストレートビットでシナ合板を切り抜くのではなく、2mm程度の余白を残して糸鋸やジグソーでざっと切り落としてからルーターを使用します。一発でシナ合板を切り抜こうとすると抵抗が大きすぎるため、ルーターもビットもテンプレートもみな損傷する危険があるからです。怪我のおそれもあります。切断した合板木口を瞬間接着剤で硬化させるのは同じです。

さてお盆の入り隅はR6ですが、底は平面で径12mmのストレートビットで本番切削を行うので、これ用のテンプレートを、先ほど作ったU字ビット用のテンプレートを元に製作します。合板はやはり9mm厚のシナ合板ですが、切り抜きサイズはぐるりと6mmずつ小さくなるように、ルーターに18mm径の固定のガイドを取り付け、6mm径のストレートビットをルーターに装着します(差尺が12mmあればいいので、他の組み合わせも可)。このときも先に糸鋸などで粗切りします。

以上で「マスターテンプレート」「12mmU字ビット用テンプレート」「12mmストレートビット用テンプレート」と合計3枚のテンプレートができました。記載が前後しますが、お盆の材料を作業台に固定し、2枚の切削用テンプレートを差し替えながら加工するので、3枚のテンプレートは外形を同じにして固定用の木ネジの穴も3枚重ねて最初にボール盤で正確にあけておけばズレる心配がありません。さらに確認のために縦横のセンターラインをテンプレート盤面と木口にも引き、テンプレートの向き(左右や上下、名称など)を油性インキで明記し、保管・吊下用の径12mm穴をあけておけば万全です。

 

シャム柿ピンコロ

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ピンコロというのは通常は数cm〜10cm角程度の大きさのサイコロ状の石を意味する建築用語ですが、これは石ではなくシャム柿という硬い木で作ったもの。大きさは30mm角で、素木をサンディングしてからワッックスで軽く磨いています。面取りは0.5mmくらい。

いつもお世話になっている学童保育施設のサマーキャンプで、参加記念品として子供たちにわたしました。市販のものでなく、オリジナルの手作りで、かつ「子供だまし」的なちゃちなものではないものをという条件で、当工房で急遽こしらえました。木であればなんでもいいわけではなく、小さくとも見栄えがする、そう簡単には手に入らない珍しい木、持ち重りがして硬めで傷が付きにくい。こういった条件を満たすものとしてシャム柿は適任かと思います。

シャム柿は流通上の通称で、正式にはシリコレ(Ciricore)といい、メキシコ・中南米に産するムラサキ科の樹木です(Cordia dodecandra)。非常に珍しく、硬く重い木ですが、なによりおもしろいのはその木目です。写真では材の長さ方向の切断面=木口が見えているのですが、黒い筋は年輪とも節の跡ともいえないよく分からないもので、木工界では「バブル模様」と呼んでいます。どうしてこういう模様が生ずるのか、植物学者にも不明だとか(シャム柿についての詳しい記事は当ブログ2012年2月29日にも載せています。ご参照ください)。

サイコロ状の形、つまり立方体または正六面体ですが、この形には不思議な魅力があると感じます。石でも木でもガラスや金属その他の素材でも、きっちりとした立方体になっているだけで、不定形、または棒状や板状になっているものに比べてまったく同一素材であってもなにか違ったもののように見えます。

自然界にあるものは、顕微鏡的または分子・原子レベルはともかく、正多面体(正四面体・正六面体・正八面体・正十二面体・正二十面体)となっているものはまずありません。球形は珍しくありませんが、正六面体や正八面体などは見当たりません。それに比較的近い形はあっても歪んでいたり丸みがついているなどいわゆるオーガニック(有機的)な形です。つまり正六面体などのあまりにきっちりした形状は「不自然な」「無機的な」形なのかもしれません。そのことが逆に一種の魅力として映るのかもしれませんね。

穴をいちど埋める

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スツールの脚にホゾ穴を開けているところです。4本の脚に長手と妻手の幕板が通しホゾ組みされるのですが、幕板は当然ながら座板の受け材でもあるので同じ高さ。したがってホゾは脚の内部で上下で交差することになります。半分は短い小根ホゾで、もう半分は脚の外まで突きぬけクサビで締める通しホゾ。

通しホゾは組み立ててしまえば一体となって丈夫なのですが、脚だけでは2方向からのホゾ穴が貫通するのでよほどきっちり加工しないと脚の強度が落ちてしまいます。ホゾ穴は主に角鑿盤(かくのみばん)で開けますが、角鑿は正方形の中空の刃で木材を押し切り、内部の錐でそれをかき削る方式。したがって木材のほうに中空があると錐で削る前にホゾ穴が内部で折れて崩れてしまいがちです。

それを避けるために一方向から開けたホゾ穴に、ホゾ穴とぴったり一致する「詰め物」をして、それからもう片方からの穴開けを行うようにしています。写真の白いものがその「詰め物」です。今回は脚はウォールナットですが、詰めているのはそれよりすこし柔らかいスプルス。硬すぎる材料だと肝心の本体が傷ついてしまうおそれがあります。

このようにホゾ穴に詰め物をしつつ他のホゾ穴を開けるという(めんどうな)加工の仕方を他でされているかどうかは怪しいところです。いやその前に椅子などの家具を通しホゾ主体で組むこと自体が、現在ではかなりの程度に少数派といっていいでしょう。組み上がってしまえばホゾの組み方やホゾ内部の精度などほとんど分からなくなってしまいますが、製品の強度・耐久性には明らかに差が出ます。

 

トイレ完成

6月中旬に開始した酒田市内の某宅のトイレ改装工事が、先月27日にやっと完了しました。いくつか予想外のできごとがあってずいぶん手間取った部分や、天候などのせいで若干の工事中断などがあったためですが、結果的にはたいへん喜んでいただきました。当工房が設計と工事元請だったのですが(私自身の担当工事は木工・建具・塗装)、おおむね計画通りの仕上がりです。

新築または水回りのリフォーム等をお考えの方はぜひご相談ください。

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まず廊下から入口のドアをみたところ。お孫さんなどが指をはさんだりしないようにドアクローザーも付いています。リョービのいちばんシンプルなモデル。ドアはスプルスの四方枠+型板強化ガラスです。

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玄関からトイレ入口までの廊下は和風の作りであることと、玄関からじかにトイレが見えるのはやはり差し障りがあるため、廊下から40cmほど踏み込みがあります。ドアを開けると洋風で現代的な世界に。

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中に入りドアを閉めた状態。便器に座ったときの正面の壁に絵を飾っています。通常よりはやや低めの位置。ドアにはクローザーを付けたので、額縁に当たらないようドアの開き角度を任意に設定することができます。

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便器は最近はやりのタンクレスではなく、昔ながらの本体+タンク式です。ウォッシュレット付でTOTO製。左の棚は手すりを兼ねた高さ70cmで、壁から壁までのクルミの無垢一枚板です。縦のグリップは濃色のクルミで削り出し。棚板もグリップも壁を張る前に柱などに強く固定してあるので、支持金具などはいっさい表にあらわれません。時計は当工房の製品です。

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ドアのとなり、便器の左側の凹んだスペース(柱芯間で91cm)に手洗器と棚板、木枠の鏡を設置しています。床板は15mm厚、幅90mmのメープル無垢のフローリングですが、無塗装品のものに二液型ポリウレタン塗料(セラミックタイプ)を自前で艶消塗装。壁と天井はオフホワイトの無地のビニールクロスです。ドア枠や廻縁・幅木などはスプルスの柾目無地無垢材で、できるだけサイズは小さめにして目立たないようにしました。

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廻縁は水性塗料で白色塗装。照明も乳白ガラスのグローブのみのLEDの二灯です。オーデリック製。

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手洗器はイタリア・ホワイトストーン社の陶製ボウルで、30cm四方の大きさです。となりに同じ高さでクルミ一枚板の棚、壁に44cm角のクルミの木枠の鏡を固定したので、狭いながらもちょっとしたお色直し的空間になります。タオルバーはクルミの丸棒を加工して棚板と一体化しています。