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O様邸リフォーム工事 その14

 

8月28日に完成引渡しを行った、山形県庄内町のリフォーム工事です。すでに引っ越しをされているのですが、その前の写真です。とはいうものの完成引渡しぎりぎりまで器具の調整や掃除などをしていたので、三脚をすえてじっくりと撮影をする余裕はありませんでした。したがってあまり鮮明とはいえない写真になりますが、各部分をやや詳しくみていきたいと思います。一部二階建ての住宅のうちの、一階の半分強を今回は全面改装(リフォーム)しました。対象床面積としては約12坪ですが、主要な水回りをすべて新しくしたのでずいぶん手間もコストもかかってしまいました。

外壁

既存の外壁材が痛んできていたことと、窓のアルミサッシをすべて新しくする関係で、一階の外壁の半分程度を張り替えしました。セメントを主材とする窯業系の14mm厚サイディングの横張りです。既存のそれは柱や土台などの構造材に直張りしたあったのですが、それはかなり古い工法です。現在はまず壁面全体の強度と気密性をたかめるために土台・柱・間柱・梁などの構造体に9mm厚さの構造用合板を全面張りつめ、次に防水透湿シートを貼り(窓周などの要所には防水テープも)、さらに湿気や熱気を逃がすために胴縁(20〜24×36〜40mmくらいの角材)を455mm間隔程度で打って、それに外壁材を取り付けるのがふつうです。

今回はふつうよく見かける構造用合板ではなく、より強度があり防火・遮音・透湿性にすぐれた「モイス」という無機質素材(主材はパーミキュライトという火山性物質)の構造用面材を採用しています。木質合板より数々の点で優れているのですが、コスト的には何割か高くつきますし、後からはまったくその存在が目に触れません。

モイス+胴縁の厚みぶんだけ既存の壁とは段差ができることになるので、そこは板金屋さんから水切・縁切用の金属板を取り付けてもらいました。また新しくした外壁の内部の熱気や湿気を排出できるように、その水切のすぐ下に外壁材のオプションとなっている専用の通気水切も入れています。

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窓はシングルガラスのアルミサッシだったものをすべてペアガラスのアルミサッシに変えました。窓枠が樹脂のものがいまは流行となっており、たしかに熱伝導率からいうとアルミや鉄より外部の暑さ寒さを伝えにくいのです。しかし強度的にどうしても厚ぼったい枠になりがちなことと、数十年先までの耐久性や質感などを考えると、やはりアルミサッシのほうがいいと判断しました。色合いも室内全体の配色とのマッチングからオフホワイトの窓枠です。

ガラスはキッチンやトイレ・洗面脱衣室・お風呂は、ペアガラスの外側の内面がスリガラスになっているという特殊(?)なものです。スリガラスはどうしても汚れが付着しやすくまたその汚れが落ちにくいという欠点があって、今はあまり使われなくなりましたが、こうして複層ガラスの内面に使えばその心配はありません。目に見える凹凸のある型ガラスにくらべ、透過光がとても柔らかい感じです。光は充分入りながらも視線はほぼ完全にさえぎることができるので、後からカーテンやブラインドを設置する必要もありません。庭など外を窓越しに眺めたいところは透明なガラスです。

窓のサッシについてはガラスだけでなくそのサイズにもかなり留意しました。窓をできるだけ大きくとって昼間の室内をできるだけ明るくしたい。しかし大きすぎるとサッシの枚数が増えてその窓枠がわずらわしい…。そこでキッチン前の窓と寝室の掃き出し窓は「関西間」の寸法のものにしました。通常の「関東間」は柱の中心から中心までを6尺(約1820mm)とするモジュールを基本としているので、その柱または間柱の内側に窓を設けようとすると、6尺窓といっても実寸は160cmくらいになってしまいます。それを「関西間」にすると190cmまで広がります。窓幅で30cmの差はずいぶん大きいです。そして横幅のある窓ながら2枚の引き戸におさえることができるので、縦枠が視線のじゃまにならず、すっきりした感じになります。

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間仕切戸

以前はダイニングルームと隣接する和室という二室の間取りだったのですが、これを約16畳の一室に変更しました。キッチンの左に造り付けの食器戸棚と構造壁がありますが、他は可能なかぎり一体感が出るように床と天井・壁などの仕上げを同じにしています。ただし必要に応じて区切って使うこともあるので、元の和室6畳のところに天井からの間仕切戸を設置しました。

上から吊っている2枚連動型の引戸で、枠はアルミで面材はやや乳白色のアクリル板です。ふだんは食器戸棚のかげに隠れてしまいます。 天井付けのレールとそのカバーは見えますが、床には敷居やレールがないので、部屋の一体感が強調されます。ただしあくまでも間仕切戸なのでよりかかったりできるだけの強度はありませんし、窓を開けていると風ですこし揺れたりもします。またストッパー&クローザーが付いていて開けるときも閉めるときも最後は自動的に静かに納まるのですが、無理やり手でやるとクローザーが壊れてしまうことがあるので注意が必要です。

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床の仕上げ材はメープル(北米産のカエデ類)の無垢板のフローリングです。サイズは厚さ15mm幅は90mmですが、長さ方向にはあらかじめ1820mmの長さに継いでいます。塗装済品と無塗装品があるのですが、後者を選び、後から半艶の水性ウレタン塗料を3回現場塗装しています。

フローリングを張る前の下地兼構造材として24mm厚のサネ付き合板を全面に張りつめていますし、その下の根太の間には50mm厚の硬質断熱材を入れています。合計89mm厚の床になったわけですが、踏んだ感じはあきらかに以前とは異なります。ただ当然とはいえ幅300mmほどの合板のフローリングなどを張るのにくらべ施行は手間がかかってたいへんですね。

洗面脱衣室とトイレだけは、どうしても水をこぼしがちなので無垢のメープルではなくいわゆる「クッションフロア」という樹脂シートにしています。色柄はカタログをみると驚くくらいに大量にあるのですが、木や石やコルクや寄せ木などに似せたようなものではない、ごくシンプルなライトブラウン色のものにしました。

天井と壁

天井と壁は通称「ビニールクロス」ですが、すべてを共通の一種類のオフホワイトにしました。わずかに凹凸のある左官仕上的なテクスチャーのものですが、遠目には白一色に見えるでしょう。

キッチン回りの壁は防火上の理由と汚れにくいように全面にキッチンパネルを貼っています。セメント+強化繊維を主材とする面材ですが、よくあるようなつるつるぴかぴかなパネルではなく、マットホワイトの無地のパネルなので、他の部分の壁と違和感はありません。 天井と壁との一体感や空間の広がりを出すために廻縁は白く塗装していますし、幅木とともにできるだけ小さいものにしています。幅木の高さは30mmですが、これだけあれば掃除機や雑巾がけで壁をこすって汚す心配はありません。

廻縁の一部は埋込型のピクチャーレールにして額縁などを自由につり下げることができるようにしています。もちろんこれら幅木や廻縁、ならびに窓枠や戸枠はMDF素材に木目プリントのフィルムを貼ったような市販の住宅部材ではなく、素材の針葉樹のスプルス柾目板を大工さんが一本ずつ加工したものです。

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建具

じつはまだ建具は未完成です。ボイラー室〜勝手口のドア以外はすべて木製(柾目のスプルス)の四方枠に全面大きくガラスをはめただけの、これ以上はないというくらいにごくシンプルな建具なのですが、ガラスがみな特殊なガラスなので、種類によっては注文してから最長で1ヶ月かかります。建築全体の工程のなかでいちばん最後のほうで採寸し、それから枠製作〜ガラス発注〜仮付調整〜本付となってしまうのがその理由です。そのためいまはそれなりに高級な住宅でもできあいの枠と戸がセットになっているものを採用するのが一般的になってしまいました。工期の短いリフォームではなおさらですね。

ガラスが収まって完全にできたらまたあらためて建具についてはご紹介しますが、トイレや脱衣室の戸が全面ガラスというと驚かれるかもしれません。もちろん素通しのガラスではなく乳白の特殊な強化ガラスで、光は半分ほど通すけれども人の姿は見えないものです。

キッチン&ダイニングルーム

キッチンについては8月23日のブログに記載しましたので省略します。長さは2550mmで標準的なものです。

お客様からははじめの打ち合わせで「アイランド型のキッチンで」というご希望もあったのですが、10畳のスペースにアイランドキッチンを設け、さらにそこに食卓を置いて飲食等をするというのはとうてい無理があります。動線としても無駄が多く、電気配線や給排水・排気にも難が。隣家との窓からの視線を気にされているようでしたので、それは窓ガラスを上述のようにスリガラスのペアガラスにすることによって解決しました。 ご家族5人が囲めるテーブルを置くと、もう周りにはふつうに歩いて通るだけのスペースしかとれません。したがってできるだけ床には物を置かなくてすむようにしなければなりません。

収納関係については後述しますが、壁面も有効に使えるようにすることと室内全体を見た目にもすっきりさせるために、一本引きの引き戸は壁内に戸袋式の収納としました。これは隣り合う空間の「寝室」も同様です。

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トイレ

便器はウォッシュレットと一体型のコンパクトなものです。自動洗浄などの仕組みはありますが、人が近づくとひとりでに蓋が開くといった仕掛けのない、いまとなっては比較的シンプルな一般的な便器です。停電時には手動で水を流すことができます。

手洗いのボウルは壁に半埋込型で、水栓は人感センサーのついた自動吐水式です。便器の左側の壁には45cm角の鏡がつけてあります。訪問客がちょっとしたお化粧なおしなどをする際に、トイレ内にこうした鏡があると便利かと思います。市販品ではなく当工房で作ったものですが、壁付けの留め金具が見えないようにガラスは上から落とし込み。材質はクルミです。

窓も最大限大きくとっているのですが、トイレというとなぜか入口の戸も窓も小さめで薄暗いのが通例ですが、そういうへんな固定観念はなくしたいです。トイレは必ずみんなが一日に何回となく使用するわけで、機器もですがその空間こそ快適なものにしなければなりません。

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洗面脱衣室

元の構造体の関係で、既製品の洗面台は採用困難ということで、洗面ボウルと鏡&小物収納戸棚は分離しました。洗面ボウルは幅70cmある陶器製でイタリアのもの。壁の補強をした上で太いボルト2本で壁に取り付ける仕様ですが、それでも若干の不安があるのとタオル掛けの設置のこともあって手前に支持板もくわえました。色の濃いクルミで厚みは38mmあります。幅は180mmなので、二つ折りにしたタオルを掛けることができます。

ボウルの正面に鏡等を設けることは物理的に不可能なので、右側の壁に造り付けしています。奥の小物収納戸棚は隣のユニットバスとの壁内空間を利用して内部奥行150mmの埋込型で高さ800mm。その手前の鏡は戸棚と同材(クルミ)同寸(幅400mm、高さ800mm)で、いずれも当工房で製作設置しました。室内に入ってすぐ左側は階段下の空間を利用してドラム式洗濯乾燥機を置いています。

この部屋の天井ははじめは他の部屋と同じ高さで水平の予定だったのですが、天井裏に予想外に低く梁が下がってきており、しかも分電盤を設置する壁面スペースの確保や窓もあまり小さくしたくないといった理由で、傾斜天井(勾配約17%)になりました。そのために当初予定していた照明も天井埋込のダウンライトに変更。

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お風呂

以前のお風呂は左官仕事でタイル張りの空間にポリバスを設置したものですが、今回はシステムバスです(ユニットバスともいいます)。ただ困ったのはもとの空間が一坪に足らない柱芯間1.5m四方ほどの間取りだったことです。

これでは通常の0.75坪のユニットでも収まらないので、細かいサイズオーダーが可能なタカラスタンダードの「ぴったりサイズシステムバス」製品にしました。これは奥行や幅を2.5cm刻みで変更できるほか、天井高さや出っ張っている柱や梁もある程度かわすことができます。 しかしながらそれでも横幅が20cmほど足りないということで、やむなく隣室側に20cm空間を拡大することにしました。つまりそのぶんの基礎から土台・柱・梁などの構造材も新たに構築しないといけないということで、これが今回のリフォーム工事の最大の難関でした。

古い図面と外観で「ここに柱や梁があるはずだから、……」と予想して設計し内装解体からはじめるわけですが、天井や壁を取り払ってみたら土台や柱が思った以上に痛んでいたり、ずいぶん低い梁が出てきたりで一苦労。しかしまあなんとか無事に納まりました。換気扇はオプションで浴室用のエアコンに変えています。 内部の色柄などは外壁のそれと同様にお客様のご希望によるものです。

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収納

水回りですから、ただでさえ物が多く、しかもこまごまとしています。元の品物をすべてそっくり納めるのはとても無理なので、お客様からはこれを機会にある程度は整理&廃棄していただいたのですが、それでもけっして広いとはいえない空間にいかに収納するかは悩みどころです。

そこでまずキッチンの左側に幅120cm、高さは天井までの食器戸棚を造り付けとしました。奥行きも通常より広い50cm。これだと径20cmくらいの食器でも2列収納できます。無垢材で作ると割高になってしまうので、フラッシュ専門の知り合いの家具工房にオーダーです。戸棚は上と下とに分かれていて中間の高さ50cmはオープンにしています。電子レンジや炊飯器などを置くようにするためですが、高さはキッチンのワークトップと同じ85cmです。素材は全体的にはポリ合板なのですが、このオープン部分の上下で電気器具の熱にさらされるところはメラミン合板を採用しています。また戸棚内部の棚板はふつうより枚数を多くし、ピッチも細かくして可動式にしています。

またキッチンとこの食器戸棚の間は、そのままでは50cm以上の隙間があいてしまうところを、ワークトップの高さと奥行きにあわせて補助テーブルを当工房で作り置いています。天板はやはりメラミン合板で、上に食器洗機を置けるようにしています。食器の下段の奥のほうはふだんは使わないものを収納しますが、場合によってはフルオープンできるように、補助テーブルは固定式とせず軽い作りとしています。

食器戸棚だけではまだ収納が不足です。そこでダイニングルームの隣室リビングルームとの境の引戸の上に2間幅のオープンの棚を設置しました。約1.7mのボックス状のものをふたつこしらえ、天井と壁を張る前に取り付けています。これはスギの無垢材を使って当工房で製作したものですが、奥行は40cmあるので、それなりに収納力はあるでしょう。

ほかには先に記したように洗面脱衣室の小物収納戸棚や、洗濯機の上の段、トイレの棚下の収納ボックス、ダイニングルームのキッチン反対側の壁付けの棚板などです。棚板にはパソコンのルーターなどをあげて置くのですが、後付けの腕木あるいは支柱でみっともなくならないように、壁を張るまえにあらかじめ壁内で棚板を固定しています。

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照明

照明器具は全面的にLEDです。消費電力が蛍光灯の半分程度とすくなく、即座に点灯し、寿命が4〜5万時間と長いので交換の手間が省けるなどの理由です。器具の選定は基本的に当工房で行ったのですが、室内全体のデザインにあわせてよけいな飾りがないごくシンプルなものに統一しています。ダイニングと寝室のシーリングライトは外観は同じですが中の光源に差があります。むろんいずれも調色&調光機能つき。

照明ではありませんが玄関のインターホンは液晶で録画機能もあるテレビドアホンに変更しました。ふつうに購入するとけっこうするので、通販で代行で購入し付けてもらいました。

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クラッセ

 

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山形県庄内町のJR余目駅前に今年5月10日にオープンした複合施設、庄内町新産業創造館「クラッセ」です。古い米倉庫を全面改装した建物が中核ですが、レストランやカフェ、地元の物品販売所、庄内町情報館などが入っています。内容のくわしいことについてはグーグルなどで検索していただくとして、ここでは建物の外観について。設計は山形市の羽田(はだ)設計事務所です。

ふつう古い木造建築の改装や改築というと「黒い瓦屋根に白いしっくい壁」というあたりが定番ですが、このクラッセの場合はそれとは逆で、白い瓦屋根(特注品?)に濃茶色の板張りの壁がメインのデザインとなっています。勾配があって非常に面積の大きな屋根なので、黒い瓦では見た目にも重すぎる感じになるところを、逆転の発想というかおもしろいですね。冬になって屋根に雪が降り積もってもおおかたのイメージはこのままでしょうから、そういう意味での新鮮さもあります。

壁は個々の板は幅が一様ではなく細いものも広いものもあって、それをランダムに縦に張り付けています。板と板の隙間(目透かし)から下地の銀色の壁面がのぞいているので、全面亜鉛鋼板かなにかを張り巡らしたあとで化粧的に木の板を張っているのかもしれません。

 

 

コーヒーブレーク 26「地球儀」

 

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違うぞそれは違うぞと扇風機

わが家は昨年はじめの新築ながらエアコンはない。いちおう念のために電気配線と一部配管はしてあるが、昨年夏と今年の夏を経験した結果、エアコン(クーラー)はなくともなんとか大丈夫という結論である。断熱材はしっかり入れてあるし、風の通りを考慮した間取りにしている。もちろんそれらをいくら対策したとはいっても外気温より室内の温度が涼しくなるということはないので、暑い日は暑いのだがまあ我慢の範囲内である。風がないときや雨脚が強いときは扇風機の出番である。

地球儀に真っ暗な夜とほの暗い夜と

国の境界線は変わることがあるし、国家そのものがくっついたり離れたり、新たに出現したり消滅したりする。地球儀はだから常に「古い地球儀」である。いやそれほど昔のものではない、せいぜい数十年前の地球儀で自分が子どもの頃にはよく眺めていたはずの地球儀でさえも、ソビエト連邦があり東ドイツがある。いまは存在しない国家の名前をいくつも見いだすのは栄枯盛衰、無常感がただようというものだ。/国家をどのように定義するかによるが、日本が現在承認している国は195カ国。これは日本自体も含む数だが、朝鮮人民共和国(北朝鮮)などは含まれていない。/さて地球儀についてあらためて調べてみると、これも地球の何を主眼として表現するかにより異なるが、大きくは行政区分と地形区分のふたつだ。地形では陸地だけでなく海底の凹凸まで詳しく表したものもある。地球儀によっては照明を内部に組み込むことによって二つの要素を切り替えることができるものもあるようである。インテリアの飾りというか玩具のようなものは別として、実用的に役立つちゃんとした地球儀となると直径30cm、値段も2〜3万はする。地球儀を常時眺めていれば世界観がいくぶんか変わるかもしれない。

肺胞にシベリアの風鳥来る

秋は大陸などから季節の鳥が渡って来ることが多いので「鳥渡る」で秋の季語となっている。鳥来るでもまあ同類とみなしていいだろう。生物は食べるもののみならず、長期間そこで暮らすときはそこの水や空気といった自然環境の要素も体内に取り入れ、身体の細胞に刻み込んでいく。したがって同じ種類の生物であっても、体内の例えば水分を精密分析することで、どこ産のものか分かるという。それどころか一例でいえば某県のある湖沼が産地であり、しかもその湖沼の南西側の水深3m程度のところの魚であるということまで判別可能とも。むろんそのためには事前事後にも膨大なデータが必要なわけで、それはあまりにも大きな手間と費用がかかるので普通はやらないだけである。もし実施できれば「産地偽装」などは一発であばくことができるのだが。

 

O様邸リフォーム工事 その13

 

山形県庄内町で水回りを中心としたリフォーム工事ですが、いよいよ終盤です。システムキッチンや食器戸棚・照明器具・エアコン・テレビドアホン・便器・手洗器・洗面ボウル、鏡、間仕切戸、ピクチャーレールといった機器類が付いてほぼ完成に近い状態です。写真には養生のシートやフィルムといったものもまだすこし写っていますが、部屋の感じはおわかりいただけるかなと思います。

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しかし5カ所ある内部の木製建具(引戸3枚、ドア2枚)については昨日仮付調整したところで、まだ写真には登場していません。その建具は私が製作しているのですが、大工の木工事が終わってはじめて寸法取りが可能で、しかもガラスがみな強化ガラス等の特殊なものばかりなので確定寸法が出ないと発注できません。見込みでの発注ではリスクが大きすぎます。28日に完成引渡しの予定なのですが、結局引き戸やドアは本来のガラスが届くまで、そのガラスのかわりになるものを枠組に入れて9月10日頃まで使用することになりそうです。

完成引渡しの直前にあらためて写真をとってご紹介しますが、先にシステムキッチンについてだけすこし詳しく言及します。通常は本体(シンク・戸棚・コンロなど)と吊戸棚とレンジフードの3点がセットになっており、それでシステムキッチンと称しています。しかし今回はレンジフードはまだ新しい前の機器をそのまま利用し、また吊戸棚はキッチン前の窓をできるだけ大きく取りたい関係でセットから外すことにしたので、本体のみの新調です。メーカーはパナソニックで今年の新製品「ラクシーナ」。 サイズは幅2550mm、奥行650mm、ワークトップ高さ850mmです。ステンレストップのスタンダードなものですが、使い勝手はよさそうです。コンロはお客様の希望もありIHヒーターの3連。

 

槇島のほうき

 

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山形県庄内町の槇島(まぎしま)地区で約200年前から作られているというほうきを先日手に入れました。JRの余目(あまるめ)駅前の複合施設「クラッセ」の販売所です。このクラッセ自体も建築的になかなかおもしろい建物ですが、そちらはまた別に記事にすることにして、今回はほうきです。

販売所の壁面に数本展示販売されていたので、いちばんシンプルな感じのものを選びました。素材のイネ科ホウキキビを束ねるのに全体を黒い糸でがっちりと縛っているだけで、いわゆるへんに民芸調でないところが好みです。下の写真では一部金色の糸も使っていることがわかりますが、ホウキキビそのものも黄金色なのでむしろそれと解け合って目立たなくなっています。

いっしょに展示されてあった他のほうきは赤とか橙・青・紫などの色糸または一部多色の布を併用しているものもありましたが、いまいちデザインセンスがいいとはいえません。購入後に自宅でインターネットで検索してみたところ、伝統的には黒糸で縛るのが通例だったのを、昨年からBEAMSという衣料&雑貨等のセレクトショップでこのほうきを扱うことになりカラフルになった云々というような話が載っていました。

この槇島ほうきは後継者不足で素材も製作技術も途絶えてしまう寸前のところでなんとか復活したようですが、実用品としての機能を維持しつつ現代の生活空間にも似合うようなリデザインを希望したいところです。甘くないかちっとした感じにできれば男性にも受けそうに思います。

なお写真のほうきは全長95cmあり、かがまなくとも床を楽に掃くことができます。分類としてはこれは「座敷ほうき」でしょうかね。他に「長ほうき」「ミニほうき」「ロングミニほうき」などもあるらしいのですが、HPなどをみてもそれぞれの詳細がまったくわからないのでなんともいえません。私としては作業机の上を掃くこ小ぶりの槇島ほうきもほしいところです。

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バンの荷室改造

 

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他の工房で作った戸棚をお客様のところまで運搬することになり、この際ということでずっと懸案だった車の改造を行いました。とはいってもバンの荷室の床を合板でフラットにするだけです。

このバンは基本は貨物車でトラックに屋根が付いたようなものですが、乗車定員はいちおう6人となっています。前のほうに小柄な人なら無理してドライバー以外に2人、その後ろの荷室のほうに折りたたみ式のベンチがひとつあってここに3人です。ただし後席のシートベルトは道路交通法の改正で「後部席もかならずシートベルト着用」と義務づけられたので、それに合わせて急遽追加したものです。当初の車の設計にはなかったものなので、荷室の床の上に無造作に取り付けただけ。そのためシートを降りたんでも。ベルトの一部と取付金具がそこだけ床から3cmほど出っ張っているので、たいへんじゃまくさいです。

今までは運搬するものの保護や荷ズレを防ぐのと、このシートベルトの出っ張りを和らげるために厚手のキルトを下に敷くことが多かったのですが、それは単なる一時しのぎです。いつまでもそうもしていられないので、これを機会に改造しました。材料は12mm厚の合板と36×36mmの角材。荷室の天井高さをできるだけ犠牲にしたくないので角材は一面を31mmに減らしました。またふだん、たいした荷物がないときや3人以上の人を乗せる場合はやはり後席も必要なので、その場合はもちろんシートベルトも使えるように、新たな床板は前・中・後の3分割として、前の床板は簡単に外して中・後の床の上に置けるようにしました。

まあ自分の仕事車なので用が足りればよしということで、見てくれは適当です。写真は戸棚の運搬を無事終えたところですが、まだ床板の塗装はしていません。汚れが付きにくいようにするためにもそれなりの塗装はしたほうがいいのですが、仕事が一段落する来月に入ってからになるかもしれません。

 

アルビフロラ その3

 

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2ヶ月前にわが家にもらわれてきたアルですが(正式名はアルビフロラ albiflora、ラテン語で白い花の意)、へんなかっこうで床に寝そべっています。動物病院の前に捨てられていた3匹の仔猫のうちの一匹だったのですが、それにしてもずいぶん大きくなりましたね。生後3ヶ月をすぎたところかなと思いますが。

体長35cm、体重は1kgを超えています。仔猫というとわりあいころっとした体形を想像しますが、アルはまったく逆で贅肉というものが皆無のようですし手足が長めで全体がとにかくスレンダー。運動神経が抜群で、起きていればあちらこちらをとび回っています。とくに病気怪我もせずそそうもないのですが、人と遊ぶときにあまり力をかげんせずに噛むのが困りものです。たまにですが家族の手足に歯形がついて血がにじむことも。

11歳になる先住のトント(大猫で体重は5kgあります)とははじめのころほど激しく対立することはなくなりましたが、トントのほうはいまだに迷惑顔です。アルはそれでもかまわずちょっかいを出すのですが、トントからときどき猫パンチをくらっています。

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特急「いなほ」のカラーリング

 

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「いなほ」はJR東日本が運営する、新潟〜酒田〜秋田間の特急列車ですが、今年7月12日に旧来の485系から新型車両のE653系という車両に全部置き換えられました。そのいなほを先日、余目駅で間近に見ましたが、車両本体のデザインもですが、それ以上に車体のカラーリングがよくないですね。

「いなほ」はむろん稲穂のことで、秋田県・山形県・新潟県の穀倉地帯を縦断する特急列車であるところから名付けられたわけですが、ビジュアル的にそのイメージにひきずられすぎていると思います。熟した稲穂の色合いとか、日本海にしずむ夕陽であるとか、海風とか……。

誰がデザインし誰がその採用を決めたのか知りませんが、これではまるで高校美術部のポスターかデザイン学校1年生の習作みたいです。レベルが低くすぐに飽きてしまいそう。

 

コーヒーブレーク 25 「ブガッティ」

 

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水平線という大きな矢夏休み

目の錯覚や思い込みではないと思うが、左右さえぎるもののない海を眼前にすると、ほんのわずかながら水平線が円弧を描いているようにみえる。またよく晴れた空気の澄んだ日でも視界距離には限度があり、たとえ高倍率の双眼鏡でのぞいてもそれほど遠くまで見えるわけではない。したがってこの地球が丸いということは古代人でも、とりわけ海の民は直感的に感得していただろうと思う。むしろ都市に住む人間が「地球が丸いはずがない」という固定観念にしばられ、自らの感覚を否定していたのかもしれない。/視覚や聴覚・臭覚・味覚・触覚などによって体得される「事実」によって思考や理論は修正されねばならない。思考や理論によって眼前の事実を否定してはいけない。

 叩かれし西瓜は口きかずなり

さすがの猛暑も峠をこし、西瓜の季節ももう終わりである。暑いときは冷やしたメロンもいいが、もっと暑くなるとその甘くべたついた感じがきらわれて西瓜にとってかわられる。アイスクリームが氷菓にかわるのも同じ理由だ。わが家では妻の実家からメロンや西瓜はわけてもらえるので、まずお店で買ったことはないし、子ども時代も父の取引先の関係で同様にもらってばかりいた。しかしあらためてスーパーマーケットなどの店頭で大きな西瓜をみると、けっこう高いのにびっくりする。/さていくつも並んだ西瓜の食べごろをはかるのに手の平で西瓜の表面をぽんぽん叩いたりしたものだが、ほんとうにそれで中の熟れ具合がわかったかははなはだ疑問である。つまり実際の効力よりは食べる前の一種の儀式のようなものだったか。むろんのこと結局は包丁を入れて割ってみないとね。/それにしても歳時記でいまだに西瓜を秋の季語としているのには呆れる。昔はたしかに初秋のものであったかもしれないが、すでに事実としても人々の感覚やイメージとしてもまちがいなく西瓜は夏のものだ。

ブガッティは不格好だわ茄子の馬

ブガッティはもともはイタリアの高級スポーツカーのブランド。  1909年にエットーレ-ブガッティにより創設された自動車会社で、主に高性能のスポーツカーやレース車を作っていたが、この本家というか元祖というかブガッティと、現在ちまたで有名なブガッティはまったく別の会社である。/1987年に某実業家がブガッティの商標を入手し、1991年にEB110GTという高性能のスポーツカーを発表しにわかに注目を浴びる。しかし過大な投資により1995年に倒産。EB110は最終的に154台の生産にとどまったらしい。/現在はフォルクスワーゲンの傘下の子会社でフランスのブガッティ-オトモビルにブガッティの商標権・製造販売権は移行しており、2006年に販売開始されたヴェイロン16.4は約2億円というとほうもない値段と、時速400km以上という市販車最速クラスの超高性能が世間をさわがせた。/おもしろいのはその2億円なりの金さえ出せば誰でも買えるのかというとそうではなく、ブガッテイ側が「この車を買い所有するにふさわしいかどうか」を経済面のみならず人品骨格を厳しく審査し、それに通らなければいけないらしい。そのため買わんとする者はフランスのブガッティ本社に出向く必要があり(むろん事前審査をパスすればだろうが)、購入可となればとうぜんキャッシュ払い。お高くとまっているというよりは、そのへんの演出も含めての「超高級車」という販売戦略なんだろうね。

 

スリム&トーションビット

 

5月末頃より庄内町で行っているリフォーム工事ですが、いよいよ納期が迫ってきたので、私も大工仕事の一部を手伝いました。といっても実作業の主役は大工さんたちなので、私はいわば手元・助手としてです。例えば室内壁面の下地面となる石膏ボード張りですが、これは専用のネジをドリルドライバまたはインパクトドリルドライバで止めていきます。

その際にたまたま借りたインパクトドリルドライバの先端に付いていたビットが「スリム&トーション」と呼ばれるタイプのビットでした。私ももちろんそういうビットがあること自体は前から知ってはいましたが、実際使ってみるとたいへん具合がいいです。ネジに対する食いつきがよく、締め付け中にビットがネジ頭から外れる割合もかなり少なく感じました。

ビット先端のネジ部分の大きさが通常のビットより小さいので、締め付けようとしているネジ頭の溝をキャッチしやすいです。先端が小さいといってもプラス2のネジに切られている溝そのものがそれほど大きくはないので、必要十分なだけのくわえ代があります。またビットの軸の中程が細くしぼってあるのでその部分がわずかにねじれ(トーション)ることにより、回転力の直接伝達をある程度抑制し過度の衝撃を緩和します。そうすることでビット先端の欠けやネジの破損を防止する効果が高まります。

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使用感がとてもよかったので、さっそく自分のインパクトドリルドライバ用に同類の「スーパースリム&トーション」ビットを購入しました。上の写真がそれです。基本構造はみな同じですが、全長が110mm、85mm、65mmの3種類。写真のいちばん下のビットはごく一般的なビットですので、違いがよくわかるかと思います。見た目の印象では上の3本は下のに比べるとひ弱そうですが、実際は逆なのですね。値段的には旧来の通常のビットの倍以上しますが、それでもせいぜい実売価格250〜300円(5本セットの場合の単価)くらいのものですから、コストパフォーマンスは非常に高い。おすすめです。