O様邸リフォーム工事 その14

 

8月28日に完成引渡しを行った、山形県庄内町のリフォーム工事です。すでに引っ越しをされているのですが、その前の写真です。とはいうものの完成引渡しぎりぎりまで器具の調整や掃除などをしていたので、三脚をすえてじっくりと撮影をする余裕はありませんでした。したがってあまり鮮明とはいえない写真になりますが、各部分をやや詳しくみていきたいと思います。一部二階建ての住宅のうちの、一階の半分強を今回は全面改装(リフォーム)しました。対象床面積としては約12坪ですが、主要な水回りをすべて新しくしたのでずいぶん手間もコストもかかってしまいました。

外壁

既存の外壁材が痛んできていたことと、窓のアルミサッシをすべて新しくする関係で、一階の外壁の半分程度を張り替えしました。セメントを主材とする窯業系の14mm厚サイディングの横張りです。既存のそれは柱や土台などの構造材に直張りしたあったのですが、それはかなり古い工法です。現在はまず壁面全体の強度と気密性をたかめるために土台・柱・間柱・梁などの構造体に9mm厚さの構造用合板を全面張りつめ、次に防水透湿シートを貼り(窓周などの要所には防水テープも)、さらに湿気や熱気を逃がすために胴縁(20〜24×36〜40mmくらいの角材)を455mm間隔程度で打って、それに外壁材を取り付けるのがふつうです。

今回はふつうよく見かける構造用合板ではなく、より強度があり防火・遮音・透湿性にすぐれた「モイス」という無機質素材(主材はパーミキュライトという火山性物質)の構造用面材を採用しています。木質合板より数々の点で優れているのですが、コスト的には何割か高くつきますし、後からはまったくその存在が目に触れません。

モイス+胴縁の厚みぶんだけ既存の壁とは段差ができることになるので、そこは板金屋さんから水切・縁切用の金属板を取り付けてもらいました。また新しくした外壁の内部の熱気や湿気を排出できるように、その水切のすぐ下に外壁材のオプションとなっている専用の通気水切も入れています。

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窓はシングルガラスのアルミサッシだったものをすべてペアガラスのアルミサッシに変えました。窓枠が樹脂のものがいまは流行となっており、たしかに熱伝導率からいうとアルミや鉄より外部の暑さ寒さを伝えにくいのです。しかし強度的にどうしても厚ぼったい枠になりがちなことと、数十年先までの耐久性や質感などを考えると、やはりアルミサッシのほうがいいと判断しました。色合いも室内全体の配色とのマッチングからオフホワイトの窓枠です。

ガラスはキッチンやトイレ・洗面脱衣室・お風呂は、ペアガラスの外側の内面がスリガラスになっているという特殊(?)なものです。スリガラスはどうしても汚れが付着しやすくまたその汚れが落ちにくいという欠点があって、今はあまり使われなくなりましたが、こうして複層ガラスの内面に使えばその心配はありません。目に見える凹凸のある型ガラスにくらべ、透過光がとても柔らかい感じです。光は充分入りながらも視線はほぼ完全にさえぎることができるので、後からカーテンやブラインドを設置する必要もありません。庭など外を窓越しに眺めたいところは透明なガラスです。

窓のサッシについてはガラスだけでなくそのサイズにもかなり留意しました。窓をできるだけ大きくとって昼間の室内をできるだけ明るくしたい。しかし大きすぎるとサッシの枚数が増えてその窓枠がわずらわしい…。そこでキッチン前の窓と寝室の掃き出し窓は「関西間」の寸法のものにしました。通常の「関東間」は柱の中心から中心までを6尺(約1820mm)とするモジュールを基本としているので、その柱または間柱の内側に窓を設けようとすると、6尺窓といっても実寸は160cmくらいになってしまいます。それを「関西間」にすると190cmまで広がります。窓幅で30cmの差はずいぶん大きいです。そして横幅のある窓ながら2枚の引き戸におさえることができるので、縦枠が視線のじゃまにならず、すっきりした感じになります。

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間仕切戸

以前はダイニングルームと隣接する和室という二室の間取りだったのですが、これを約16畳の一室に変更しました。キッチンの左に造り付けの食器戸棚と構造壁がありますが、他は可能なかぎり一体感が出るように床と天井・壁などの仕上げを同じにしています。ただし必要に応じて区切って使うこともあるので、元の和室6畳のところに天井からの間仕切戸を設置しました。

上から吊っている2枚連動型の引戸で、枠はアルミで面材はやや乳白色のアクリル板です。ふだんは食器戸棚のかげに隠れてしまいます。 天井付けのレールとそのカバーは見えますが、床には敷居やレールがないので、部屋の一体感が強調されます。ただしあくまでも間仕切戸なのでよりかかったりできるだけの強度はありませんし、窓を開けていると風ですこし揺れたりもします。またストッパー&クローザーが付いていて開けるときも閉めるときも最後は自動的に静かに納まるのですが、無理やり手でやるとクローザーが壊れてしまうことがあるので注意が必要です。

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床の仕上げ材はメープル(北米産のカエデ類)の無垢板のフローリングです。サイズは厚さ15mm幅は90mmですが、長さ方向にはあらかじめ1820mmの長さに継いでいます。塗装済品と無塗装品があるのですが、後者を選び、後から半艶の水性ウレタン塗料を3回現場塗装しています。

フローリングを張る前の下地兼構造材として24mm厚のサネ付き合板を全面に張りつめていますし、その下の根太の間には50mm厚の硬質断熱材を入れています。合計89mm厚の床になったわけですが、踏んだ感じはあきらかに以前とは異なります。ただ当然とはいえ幅300mmほどの合板のフローリングなどを張るのにくらべ施行は手間がかかってたいへんですね。

洗面脱衣室とトイレだけは、どうしても水をこぼしがちなので無垢のメープルではなくいわゆる「クッションフロア」という樹脂シートにしています。色柄はカタログをみると驚くくらいに大量にあるのですが、木や石やコルクや寄せ木などに似せたようなものではない、ごくシンプルなライトブラウン色のものにしました。

天井と壁

天井と壁は通称「ビニールクロス」ですが、すべてを共通の一種類のオフホワイトにしました。わずかに凹凸のある左官仕上的なテクスチャーのものですが、遠目には白一色に見えるでしょう。

キッチン回りの壁は防火上の理由と汚れにくいように全面にキッチンパネルを貼っています。セメント+強化繊維を主材とする面材ですが、よくあるようなつるつるぴかぴかなパネルではなく、マットホワイトの無地のパネルなので、他の部分の壁と違和感はありません。 天井と壁との一体感や空間の広がりを出すために廻縁は白く塗装していますし、幅木とともにできるだけ小さいものにしています。幅木の高さは30mmですが、これだけあれば掃除機や雑巾がけで壁をこすって汚す心配はありません。

廻縁の一部は埋込型のピクチャーレールにして額縁などを自由につり下げることができるようにしています。もちろんこれら幅木や廻縁、ならびに窓枠や戸枠はMDF素材に木目プリントのフィルムを貼ったような市販の住宅部材ではなく、素材の針葉樹のスプルス柾目板を大工さんが一本ずつ加工したものです。

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建具

じつはまだ建具は未完成です。ボイラー室〜勝手口のドア以外はすべて木製(柾目のスプルス)の四方枠に全面大きくガラスをはめただけの、これ以上はないというくらいにごくシンプルな建具なのですが、ガラスがみな特殊なガラスなので、種類によっては注文してから最長で1ヶ月かかります。建築全体の工程のなかでいちばん最後のほうで採寸し、それから枠製作〜ガラス発注〜仮付調整〜本付となってしまうのがその理由です。そのためいまはそれなりに高級な住宅でもできあいの枠と戸がセットになっているものを採用するのが一般的になってしまいました。工期の短いリフォームではなおさらですね。

ガラスが収まって完全にできたらまたあらためて建具についてはご紹介しますが、トイレや脱衣室の戸が全面ガラスというと驚かれるかもしれません。もちろん素通しのガラスではなく乳白の特殊な強化ガラスで、光は半分ほど通すけれども人の姿は見えないものです。

キッチン&ダイニングルーム

キッチンについては8月23日のブログに記載しましたので省略します。長さは2550mmで標準的なものです。

お客様からははじめの打ち合わせで「アイランド型のキッチンで」というご希望もあったのですが、10畳のスペースにアイランドキッチンを設け、さらにそこに食卓を置いて飲食等をするというのはとうてい無理があります。動線としても無駄が多く、電気配線や給排水・排気にも難が。隣家との窓からの視線を気にされているようでしたので、それは窓ガラスを上述のようにスリガラスのペアガラスにすることによって解決しました。 ご家族5人が囲めるテーブルを置くと、もう周りにはふつうに歩いて通るだけのスペースしかとれません。したがってできるだけ床には物を置かなくてすむようにしなければなりません。

収納関係については後述しますが、壁面も有効に使えるようにすることと室内全体を見た目にもすっきりさせるために、一本引きの引き戸は壁内に戸袋式の収納としました。これは隣り合う空間の「寝室」も同様です。

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トイレ

便器はウォッシュレットと一体型のコンパクトなものです。自動洗浄などの仕組みはありますが、人が近づくとひとりでに蓋が開くといった仕掛けのない、いまとなっては比較的シンプルな一般的な便器です。停電時には手動で水を流すことができます。

手洗いのボウルは壁に半埋込型で、水栓は人感センサーのついた自動吐水式です。便器の左側の壁には45cm角の鏡がつけてあります。訪問客がちょっとしたお化粧なおしなどをする際に、トイレ内にこうした鏡があると便利かと思います。市販品ではなく当工房で作ったものですが、壁付けの留め金具が見えないようにガラスは上から落とし込み。材質はクルミです。

窓も最大限大きくとっているのですが、トイレというとなぜか入口の戸も窓も小さめで薄暗いのが通例ですが、そういうへんな固定観念はなくしたいです。トイレは必ずみんなが一日に何回となく使用するわけで、機器もですがその空間こそ快適なものにしなければなりません。

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洗面脱衣室

元の構造体の関係で、既製品の洗面台は採用困難ということで、洗面ボウルと鏡&小物収納戸棚は分離しました。洗面ボウルは幅70cmある陶器製でイタリアのもの。壁の補強をした上で太いボルト2本で壁に取り付ける仕様ですが、それでも若干の不安があるのとタオル掛けの設置のこともあって手前に支持板もくわえました。色の濃いクルミで厚みは38mmあります。幅は180mmなので、二つ折りにしたタオルを掛けることができます。

ボウルの正面に鏡等を設けることは物理的に不可能なので、右側の壁に造り付けしています。奥の小物収納戸棚は隣のユニットバスとの壁内空間を利用して内部奥行150mmの埋込型で高さ800mm。その手前の鏡は戸棚と同材(クルミ)同寸(幅400mm、高さ800mm)で、いずれも当工房で製作設置しました。室内に入ってすぐ左側は階段下の空間を利用してドラム式洗濯乾燥機を置いています。

この部屋の天井ははじめは他の部屋と同じ高さで水平の予定だったのですが、天井裏に予想外に低く梁が下がってきており、しかも分電盤を設置する壁面スペースの確保や窓もあまり小さくしたくないといった理由で、傾斜天井(勾配約17%)になりました。そのために当初予定していた照明も天井埋込のダウンライトに変更。

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お風呂

以前のお風呂は左官仕事でタイル張りの空間にポリバスを設置したものですが、今回はシステムバスです(ユニットバスともいいます)。ただ困ったのはもとの空間が一坪に足らない柱芯間1.5m四方ほどの間取りだったことです。

これでは通常の0.75坪のユニットでも収まらないので、細かいサイズオーダーが可能なタカラスタンダードの「ぴったりサイズシステムバス」製品にしました。これは奥行や幅を2.5cm刻みで変更できるほか、天井高さや出っ張っている柱や梁もある程度かわすことができます。 しかしながらそれでも横幅が20cmほど足りないということで、やむなく隣室側に20cm空間を拡大することにしました。つまりそのぶんの基礎から土台・柱・梁などの構造材も新たに構築しないといけないということで、これが今回のリフォーム工事の最大の難関でした。

古い図面と外観で「ここに柱や梁があるはずだから、……」と予想して設計し内装解体からはじめるわけですが、天井や壁を取り払ってみたら土台や柱が思った以上に痛んでいたり、ずいぶん低い梁が出てきたりで一苦労。しかしまあなんとか無事に納まりました。換気扇はオプションで浴室用のエアコンに変えています。 内部の色柄などは外壁のそれと同様にお客様のご希望によるものです。

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収納

水回りですから、ただでさえ物が多く、しかもこまごまとしています。元の品物をすべてそっくり納めるのはとても無理なので、お客様からはこれを機会にある程度は整理&廃棄していただいたのですが、それでもけっして広いとはいえない空間にいかに収納するかは悩みどころです。

そこでまずキッチンの左側に幅120cm、高さは天井までの食器戸棚を造り付けとしました。奥行きも通常より広い50cm。これだと径20cmくらいの食器でも2列収納できます。無垢材で作ると割高になってしまうので、フラッシュ専門の知り合いの家具工房にオーダーです。戸棚は上と下とに分かれていて中間の高さ50cmはオープンにしています。電子レンジや炊飯器などを置くようにするためですが、高さはキッチンのワークトップと同じ85cmです。素材は全体的にはポリ合板なのですが、このオープン部分の上下で電気器具の熱にさらされるところはメラミン合板を採用しています。また戸棚内部の棚板はふつうより枚数を多くし、ピッチも細かくして可動式にしています。

またキッチンとこの食器戸棚の間は、そのままでは50cm以上の隙間があいてしまうところを、ワークトップの高さと奥行きにあわせて補助テーブルを当工房で作り置いています。天板はやはりメラミン合板で、上に食器洗機を置けるようにしています。食器の下段の奥のほうはふだんは使わないものを収納しますが、場合によってはフルオープンできるように、補助テーブルは固定式とせず軽い作りとしています。

食器戸棚だけではまだ収納が不足です。そこでダイニングルームの隣室リビングルームとの境の引戸の上に2間幅のオープンの棚を設置しました。約1.7mのボックス状のものをふたつこしらえ、天井と壁を張る前に取り付けています。これはスギの無垢材を使って当工房で製作したものですが、奥行は40cmあるので、それなりに収納力はあるでしょう。

ほかには先に記したように洗面脱衣室の小物収納戸棚や、洗濯機の上の段、トイレの棚下の収納ボックス、ダイニングルームのキッチン反対側の壁付けの棚板などです。棚板にはパソコンのルーターなどをあげて置くのですが、後付けの腕木あるいは支柱でみっともなくならないように、壁を張るまえにあらかじめ壁内で棚板を固定しています。

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照明

照明器具は全面的にLEDです。消費電力が蛍光灯の半分程度とすくなく、即座に点灯し、寿命が4〜5万時間と長いので交換の手間が省けるなどの理由です。器具の選定は基本的に当工房で行ったのですが、室内全体のデザインにあわせてよけいな飾りがないごくシンプルなものに統一しています。ダイニングと寝室のシーリングライトは外観は同じですが中の光源に差があります。むろんいずれも調色&調光機能つき。

照明ではありませんが玄関のインターホンは液晶で録画機能もあるテレビドアホンに変更しました。ふつうに購入するとけっこうするので、通販で代行で購入し付けてもらいました。

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