6月28日に始まった、鳥海山・飛島ジオパーク構想の「ジオガイド養成講座」も今回で5回目。8月23日、会場は遊佐町の生涯学習センターで、午前午後とも座学でした。
9:30〜12:00は環境省鳥海南麓自然保護官事務所の自然保護官である鎌田健太郎氏の「自然を守ろう」です。国立公園のレンジャーでもある氏の公園法(おもに国立公園)とエコツーリズムとの関係、野生動物の保護のあり方など、興味深い話がいろいろありました。たとえばアメリカの国立公園は人為的影響を極力排し、自然をそのままに保全保護していこうとするのに対し、日本の国立公園では自然を保護しながらもすぐれた景観の地に積極的に人を呼び寄せようとする面もだいじにしている、といったことです。
ただ残念なのは、日本のレンジャーには捜査権や警察権などはなく、かりに不法な捕獲や採取を見つけても注意をうながす程度のことしかできないことです。組織的な盗掘などはまだ別の方法・法律で対処のしかたがあるが、個人の「できごころ」みたいなレベルだといかんともしがたいとのこと。
ジオパークだけでなくエコツーリズムとかグリーンツーリズム、自然遺産等々のわりあい似たような施策もあり、それらとジオパークとの擦り合わせをどうやっていくかも課題のようです。
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13:00〜15:30は山形大学地域教育文化学部教授である八木浩司氏の「東北地方日本海側の地質と地形の特徴」です。
まずジオパーク構想にからめて考えるとすれば、基本的に鳥海山は出羽山地(出羽丘陵)・庄内平野・月山と、一連なりのものとして考えるべきであるということ。3000万年前くらいまではユーラシア大陸の一部であったものが徐々に分離し日本列島と日本海ができた。さらにその海に堆積した土砂等がやがて隆起してほぼ現在の日本列島のような陸地を成したことを、あちこちに露出した地層からみることができる。
鳥海山ならびに月山はもとからあった出羽山地の一部を覆うようにして生成された新しい火山である。東北地方には南北に顕著な断層が多くあり、庄内から眺めた出羽山地が手前の急な高まりとその背後の群境に至る山並みとの二重に見えることや、月山西面が急傾斜を成しているのもその断層によるものだとのことです。いやあ、これは私は知らなかったのでかなり驚きました。
鳥海山南西面裾野にある遊佐町の当山〜袋地〜天狗森の高みもそのせいだったんですね。そこが隆起する前からあった川はその高まりを下刻して流れる場合がしばしばあり、したがってかつては川であって今は丘陵の一部をなしているところの天辺あたりからは、角の取れた丸い石が現れるのだそうです。はい、今度は私もそのつもりでよく観察してみようと思います。
八木氏の講義は私には非常におもしろかったです。他の先生方の講義もそうですが、科学的・歴史文化的な「事実」をふまえたお話は知的興奮をもたらします。架空の物語なんぞは目じゃありません。
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さてじつは今回のジオガイド養成講座が遊佐町で行われるということで、私の提案で湧水の「きき水」を行うことになりました。町内の3カ所の湧水(1カ所は自噴井)を前日夕方に2リットルのペットボトルにそれぞれ3本汲んできて、冷蔵庫に保管して温度を一定にしておき、それを昼休み時間に受講生たちに飲んでもらいました。
どの水がどこのものであるかは先入観を排するために最後まで伏せておき、3つの水の中でいちばんおいしいと感じた水に票を投じてもらいます。結果ですが、胴腹ノ滝の湧水が11票、月光川河川公園の自噴井の水が12票、女鹿の神泉ノ水の舟の最上段の水(水源は湧水)が13票でした。きれいに三分しましたね。過去の同種のきき水ではもっと偏りが出ることが多かったのですが、今回は「被験者」が酒田市・遊佐町だけでなく仁賀保市・由利本荘市などの広範囲にまたがったこともその一因かもしれません。もっとも私自身もあらためて感じたのですが、おいしいかどうかは別としても、同じ鳥海山の水でありながらまるで味がちがうということは皆さんにもはっきりと感じていただけたのではないかと思います。