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鳥海湖

昨日(7/6)、総合地球環境学研究所の教授、中野孝教さんと鳥海山に登ってきました。湧水や表流水などの調査と採取のためです。大平口から鳥海湖・蛇石流まで、朝8時から午後5時半までの山行でしたが、計7カ所・20kgほどの水を採取できました。

天気は薄曇りでしたが、鳥海湖から頂上方面まで、また稲倉岳や海岸線と飛島まできれいに眺められました。鳥海湖も半分くらい岸辺は雪渓がかぶっていましたが、その切れ目から湖水を調査し水を取ることができました。中野さんは鳥海山の中腹以上に登ったのはこれがはじめてで、たいへんな感激ぶりです。

花もたくさん咲いていて、オオイワカガミ、コイワカガミ、ハクサンチドリ、ヨツバシオガマ、ツマトリソウ、ゴゼンタチバナ、ニッコウキスゲ、ベニバナイチゴ、ウラジロヨウラク、ウラジロナナカマド、ヒナザクラ、チョウカイアザミ、ショウジョウバカマ、ミヤマキンバイ、ハクサンイチゲ、チングルマ、コシジオウレン、イワイチョウ、シラネニンジン、アカモノ、……。雪解けとともに多くの花がいっせいに開花しています。じつにみごとですが、今日は水の調査なのでゆっくり観察・観賞するゆとりはありません。それに背負った水の重いこと。正直のところかなり疲れました。

 

充電式タッカー

タッカー。ホチキスの親分みたいな機械です。針(ステープル)の大きさはさまざまですが、これは幅10mm、長さ10〜22mmのコの字型の針を打ち込むことができます。マキタのST120Dという機種ですが、通常のタッカーと違うのはエアーや100V交流電源ではなく、充電式バッテリーを装着して駆動すること。後ろに付いている「14.4V」と書いてある黒い四角いものがそれで、マキタの最も汎用性の高いリチウムイオンバッテリーBL1430です。

ドリルや丸ノコ、掃除機、作業灯などと共通のバッテリーなので、いつでも簡単に差し替えして使用できます。すでに充電器とBL1430を使っていれば、使用頻度がよほど高い工具でないかぎり本体のみの購入ですむので、経済的にもとても楽です。当工房の場合、計7種9台の充電式工具を5台のバッテリーで回しています。ここ数年は基本的に一人での作業なので、バッテリー不足を感じることはまったくありません。

タッカーは製品(家具や木製小物など)に使用することはありません。表からは見えないようなところだからといって、ステープルでばんばん止めてあるのは興ざめしますから。長期間の耐久性の点でも不安があります。したがって当工房ではタッカーは作業する上での補助器具=治具などをこしらえるのに用いるだけです。そのぶん出番はぐっと少ないので、エアーホースや電源コードを回すことなくすぐに使える充電式タッカーは便利です。

短所をあえてあげれば、やはり重いこと。電池とモーターが本体組み込みの一体型なので総重量2.2kgと、エアー式の倍ほどの重さがあります。ステープル止めを多用常用してい木工所や家具メーカーなどでは圧倒的にエアー式タッカーであることは納得できます。

飲食店の椅子

昨年4月に酒田市内の某飲食店に、テーブルとともに8セット16人分納品した椅子です。総予算とのかねあいや、あくまでも「業務用」ということで、当工房の標準的な仕様にくらべいくらか簡略化した作りです。超繁盛店のため酷使されていますがどこもガタはきていません。たしか艶消しの塗装のはずだったのですが、あまりにも多用され拭きこまれているためかすっかりつやつやになっています。座面にも擦り傷や凹み(鍵とかボタンとか)がたくさん付いています。材質はクルミ。

お店の床がクッションフロアなので、椅子の足下はフェルトを取り付けているのですが、それがひとつ取れてしまったということで修理。ただし金物店に当該部品の在庫がなく取り寄せするまでの数日間の応急措置ということで、工房にいったん持ってきた際の写真です。

その部品は特殊なものではなく、ごく一般的なものなのですが、小売店はいま在庫をできるかぎり持たないようにしているので、今回のような急ぎの場合は困ってしまいます。在庫を持たないというのはあらゆる業界の「常識」になっていて、それも理解できなくはないのですが程度問題ですね(トヨタのカンバン方式も単に下請・孫請に必要部品の在庫保持を押し付けているだけで、革新的生産方法でもなんでもありゃしないです)。

大槌町

3月11日の大地震と大津波によって壊滅的被害を受けた岩手県大槌町(おおづちちょう)です。先日(6/29・30)、ある支援活動の打ち合わせで役場の方々とお会いしてきました。

こちら遊佐町からは私をふくめて6名でしたが、ワゴン車が北上山地を抜け海に近づくにつれ、みな驚きの声をあげました。津波による残骸が至る所に山積みになり、あるいはまだまったく手つかずのまま散在しており、かと思うとかろうじて残った鉄骨や鉄筋コンクリートの建物もよく見るとみな歪んでいたり火災で黒く焦げています。木造住宅などはコンクリートの基礎以外はみな波にさらわれて跡形もありません。車もまるでスクラップ目的でつぶしたようにめちゃくちゃな姿で転がっています。大槌町も豊富な湧水で知られおり、それを利用した大規模なサケの孵化場や、非常に珍しい淡水型イトヨの生息地もあったのですが、いずれも津波で甚大な被害を受けていました。

大槌町の人口はおよそ1万6千人でしたが、この地震と津波でその1割近くもの方が亡くなっています。町長もその一人でしたので、行政機能も混乱状態にあります。3月11日からすでに4ヶ月近くになろうとしていますが、復興はまだほんの少ししかすすんでいません。

新聞やインターネットなどでこの大槌町をはじめ各地の被害状況をさんざん見たのですが、自分の目で実際に「現場」を見るとその惨状に言葉を失います。被害の規模があまりにも巨大で、それゆえに逆に目の前の光景が白昼夢のようで、現実感が欠落してしまいそうです。打ち合わせが終わって、その日の夜は岩手県内陸部の花巻のビジネスホテルに泊まったのですが、とても寝苦しい夜でした。

黒柿とセンのペーパーウェイト

ペーパーウェイトのDタイプですが、A、B、C、D、Eとある中でいちばん数が出ているものです(A~Cは現在は廃番)。もっとも当工房のメインは家具で、小物類はその合間に作っているだけなので量はたかが知れています。

このDタイプは幅24mm、高さ30mm、長さ180mm、重さは約300gです。木だけではいくら比重の高い木であってもペーパーウェイトとして使うにはとうてい重さが足りないので、中にステンレススチールの丸棒を仕込んでいます。形状としては断面は下のほうがややすぼまった台形で、長手は上面だけがほんのすこしカーブを描いています。

この製品の場合、材質自体の面白さ幻妙さを味わうということが狙いなので、普通によく使われる材料ではなく特殊な材種や紋様の出た、いわゆる「銘木」を用いています。サイズが小さいので普通一般の木ではただの木片みたいになってしまいますから。これまで10種以上の材料を使ってこのペーパーウェイトをこしらえてきましたが、もっとも人気があるのが写真上の黒柿です。次は写真下のセンの縮み(カーリー)や、タモの波状杢などです。

黒柿はそういう名前の木があるわけではなく、カキノキに稀に出現する黒っぽい模様のことで、それが入った木材のことを慣習的に古来から黒柿と称してきました。日本特産で大昔から珍重されてきた材料ですが、柿渋の需要が減退するとともに現在ではたいへん希少で高価なものになってしまいました。カキノキそのものは白っぽい、木目も目立たない硬く滑らかな材質の木ですが、その地肌に対して黒い紋様の入り方は千差万別です。最終的には個人の好みの問題ですが、「孔雀杢」といわれるような特に細密な羽毛様・さざ波様の黒柿はやはりばつぐんの人気があります。希少価値があることはもちろん、眺めているだけでも吸い込まれそうな不思議な魅力があります。

センは植物学的な正式な名前はハリギリといい、ウコギ科ハリギリ属の落葉広葉樹。樹高25m、直径1mにもなる大きな木です。家具材としても重用されますが、写真のような細かい縮緬様の杢が生じたセンはまた格別な味わいがあります。縮みは単なる表面的な模様ではなく、材質全体におよぶ構造的なものなので、見る角度によって輝きや凹凸具合が異なります。仕上げはむろんきわめて平滑であり鏡面塗装を施していますが、一見すると材料自体が波打っているように錯覚しそうです。

黒柿とセン、ともにいま在庫として手元にあるのはこれだけです。黒柿のほうは紋様の細かいものから先に売れてしまったので、黒柿としては「並」の品です。価格は黒柿とセンともに税込定価8000円(化粧箱入。送料は個数にかかわらず500円)です。ご希望の方はメールにてご連絡ください。

在庫切れです。近くまとめて数十個製作する予定でいますが、杢の出ている銘木を使用しますので、値段は個別に変わります(2014.11)。

6/17&28の胴腹ノ滝

6月17日と28日の胴腹ノ滝です。17日の滝の水量は、前回(6/10)掲載した5月27日・6月8日よりさらに減っていますが、下の写真の6月28日には一転してまた水量が増えています。これまで撮影した中では最大の水量だった5月11日をさらに上回っています。

7〜10日程度の間隔での撮影なので断定はできませんが、6月23日前後に庄内地方全域でかなりの大雨が降り、そのあとも大降りでこそありませんがほとんど間断なく雨が続いているためその影響を受けての湧水の増加ではないかと思います。胴腹ノ滝が見える寸前の鳥居の前の渓流は岸辺の草がなぎ倒されていて、あきらかに出水した跡がありました。しかし滝の下の流れにはそれを上回るような増水の跡は観察できませんでしたので、胴腹ノ滝の水量としては撮影時の28日あたりがピークかもしれません。

水温は写真の前日の6月16日朝の計測ですが、右・左ともに8.6℃(気温14.8℃)、28日朝は右が9.1℃、左が9.0℃(気温19.4℃)でした。28日は水量だけでなく水温もこれまでの最高値を示しています。

28日は滝とその下の渓流一帯に霧が立ちこめていました。とりわけ暑いときやひどく寒いとき、そのうえ風もあまりないといった条件が重なると、豊富な湧水の温度と空気の温度の差からこのように霧が発生することが多いです。なかなか幻想的ですね。

 

海浜植物

鳥海山の西端は日本海に没しています。つまり標高0mから2236.4mまで鳥海山だということです。もちろん0m以下の地中深いところまでさらに山体は広がっています。日本は山国で、25000分の1の地形図に記されている山名だけでも5万を超えます。日本はいたるところ山だらけなわけですが、しかしその山国でさえ標高2000mをこえるような大きな山が海からじかに聳え立っている例は、じつは他にはありません。子どもの頃から今日に至るまで日々鳥海山を眺めながら生活している人間にとって、大きな山のその裾が海に達している光景は、それで当たり前のようにしか感じていませんが(私も以前はそうでした)、じつは希有なことだったんですね。

鳥海山は「花の山」として登山者には非常に有名な山です。とはいえそれはほぼ100%高山植物のことを指しています。たしかに鳥海山には固有または稀産の高山植物がいくつかありますし、他の高山植物の種類も個体数もたいへん多く、山自体の景観とあいまってそれは文句なくすばらしいものです。おおぜいの人が全国から花を目当てに鳥海山をおとずれるのはしごく当然のことでしょう。

けれども鳥海山の花の魅力は高山域にとどまりません。波が打ち寄せるような海際の海岸植物から、低中山域、森林限界〜頂上にかけての高山植物までの多種多様な草木が連続的に生息しています。「海から山の花」、そのように視点を変える、あるいは拡張するだけで「鳥海山の花」は飛躍的に広がり、また独自性をおびることになります。他の山ではそれを観察し体験しようとしても不可能なことなので、貴重な観光資源としておおいにアッピールしてもいいと思います。

以下の写真は6月21日に海のすぐそばの砂地で撮ったものですが、厚い葉や短い草丈、毛が密に生えているので銀色の体色、といった海岸の植物の典型的な姿を見ることができます。


ハマボウフウ(セリ科ハマボウフウ属)


マンテマ(ナデシコ科マンテマ属)


コモチマンネングサ(ベンケイソウ科キリンソウ属)


シロヨモギ(キク科ヨモギ属)


ハマナス(バラ科バラ属)


カワラヨモギ(キク科ヨモギ属)

足袋

工房では足袋をはいて仕事をしています。作業場の母屋は4×6間=24坪の広さがありますが、そのうちの3分の2ほどは板張の床です。木取や下拵などの一次加工を終えたら、あとは靴を脱いで座業中心の作業となります。油圧のテーブルリフターを利用した立ち作業台も併用しますが、比率としては床に座り「馬」を使っての座業のほうが多いです。

座業中心なのは昔、木工を始める前に5年ばかり大工をしていたことも大きな理由です。大工の現場仕事ではむろん立ち作業用のテーブルなどはなく、床に馬を二三台並べその上に加工部材を置いての作業が基本です。材料を押さえるのはクランプなどではなくまずは自分の手足や胴体。膝で固定したり、材に座ったり。足も足袋なら仕上が済んだ材料にもじかに上がることができます。スニーカーなどの靴履きだと靴底の跡が付くのでそういうわけにはいきません。

作業用の足袋は厚手の木綿でできています。指付きの靴下を履いてからさらにこの足袋を履くのですが、重ねているとはいえ布地のみの足ごしらえですから、裸足にわりあい近い感じで仕事をすることができます。これに慣れると、ちょっとした加工でも必ずクランプを必要とする立ち作業は逆にわずらわしくてしかたがありません。

ただし短所もあります。厚手とはいってもしょせん布だけでできているので、作業内容にもよりますが短かければ3ヶ月くらいしか保ちません。いつもこすれるあたりが薄くなって穴があいてしまいます。また真冬はさすがに冷たいです。あまり冷たいので厚手の靴下の上に無理矢理足袋を履いたり、足用のホッカイロを使うこともあります。まあ、当地ではぎりぎりなんとかセーフというところで、今以上に寒ければ冬は足袋は無理ですね。

昔は木工に限らず室内での作業では職人は足袋をはくことが普通だったようですが(足袋のみ、または足袋+草履)、現在ではそうとうに珍しい、まぎれもなく少数派といっていいでしょう。知り合いの木工家でも足袋を日常的に用いている人は片手で数える程度。そのため足袋を扱っているお店が年々少なくなっていることも悩みのたねです。もっと需要があれば耐久性を高めるために化学繊維を用いたり、冬用に中綿入りの足袋にする。あるいは色柄のバリエーションを増やしてファッション性を加味するなど、さまざまな展開がありそうですが。

 

落花

6月17日にエゴノキの開花について取り上げましたが、これは落花のほう。樹木直下の地面を埋め尽くすように花が散っています。離弁花とちがって花の形は大きく崩れることなく、またなぜか上向きで着地しているものが多いことや、色がほぼ純白であることから、遠くからでもとても目立ちます。

落花の向こうは緑なす雑木林で、その対比があざやか。生々流転、有為転変といったところでしょうか。

電動チェーンソー

チェーンソーは機構上、常に刃そのものが潤滑油で濡れている必要があるため、材木等を切断する際にそのオイルが材料に付着してしまいます。したがって家具や木製小物などの製品を作るのにチェーンソーを直接用いることはないのですが、不要かつ大断面の残材を整理する時などにチェーンソーを使うことがたまにあります。

工房や自宅から離れた遠い野外で使うのであれば当然ガソリンエンジン式のチェーンソーが必要ですが、こうした機械はある程度頻繁に使い続けていないといざというときにうまく動かないことが多いです。燃料も潤滑油も入っているのにうんともすんともいわないことがある。ほったらかしにされた車と同じです。またガソリンエンジンの場合、運転音がかなりうるさい。排気ガスも出ます。木を切っていない間も長時間作業を中断するのでないかぎりエンジンをアイドリング状態にしていなければならないなど、なかなか扱いがやっかいです。最初にエンジンを始動するのがなんとかうまくいっても、一度止めると再起動にてこずることも珍しくありません。

その点、電気モーターで動くチェーンソーなら、100Vの電源コードをつなげさえすればいつでもすぐに簡単に使うことができます。潤滑油(チェーンオイル)は必須ですが、あとはとくにメンテナンスというほどの手間もありません。個人的には材木を切断しているとき以外はまったく無音であることがいちばん気にいっています。エンジン式のチェーンソーのように機械に追い立てられている感じがありません。唯一、欠点といえるかどうかは分かりませんが、電源がかならず近くになければならず、電気コードが足下に常に伸びていることです。気をつけないとコードを材料といっしょに切ってしまったり、コードに足を引っ掛けてしまうおそれがあります。

当工房でもエンジン式のチェーンソーはあるのですが、案の定めったに使わないために調子はよくありません。アマチュアユースの安い機械だということもあるかもしれませんが、これでは単に「ストレス製造機械」にしかならないので、数年前にマキタの電動チェーンソーMUC401を導入しました。非常に快適です。それまでのチェーンソーを使う際のおっくうさが無くなりました。もっともチェーンソー自体はエンジン式であれモーター式であれ、材料からの反動が多かれ少なかれあり、40cmの長いチェーン刃がむき出しになっているなど、基本的にかなり危ない機械であることには変わりがありません。

※ エンジン式の本格的なチェーンソーはマキタからも何機種か出ています。ひょっとするとチェーンソーの専業メーカーのOEMかもしれませんが、新しいモデルなどは見た目もなかなかいいしスペック的にも魅力があります。しかし値段も高く(7万前後)、仕事でも私用でもほとんど出番はなさそうですね。